これまで一般的な介護現場では、ベテランやカリスマなど、個人の経験や力量による属人的なケアが提供されてきました。それに対し、「科学的介護」が社会的にも推し進められるなかで、当社では、2019年より「MCS版自立支援ケア」を導入。科学的根拠に基づいた再現性の高いケアに取り組んできました。
「MCSケアモデル」を基盤とすることで、スタッフ間でケアの目的や考え方に対する共通認識を持ち、身体面の評価、認知症のBPSD(行動・心理症状)の消失・緩和のための根拠に基づいたケアを選択できます。誰でもどこでも高品質のサービスを提供できる仕組みの構築により、ご利用者のさらなる生活の質の向上につなげています。
認知症になっても、寝たきりになっても自身の想いが表出でき、何をしたいのか、どこに行きたいのか、何を食べたいのか、誰と会いたいのか、何をすると楽しいのか、何もしない等、自分の行動を自由に選択して、実行できる状態を目指します。
ご利用者の「当たり前の生活を実現する」ために、生活を支える私たち介護職が諦めずに共に歩んでいく。どのような状態にあるご利用者であっても、当たり前の生活を実現するための道しるべとして6つの状態を目指します。「6つの目指す状態」に対して、ご利用者の状態を評価する独自のアウトカム指標を設定しています。
生活課題に直結する要素を「6つの目指す状態」として設定。おいしく味わえる食事状態やトイレでの排せつ、自分の足でしっかりと歩ける歩行状態、快適な睡眠など身体面での状態改善や、自分の望み・想いを表出できる状態をつくること、また、認知症の方の「不確かさ」で「不安」な状況を「確か」で「安心」できる状況にすることなど、この6つが整うことで「当たり前の生活を実現する」ことにつながると考えています。
6つの目指す状態にするために心身の状況やその人を取り巻く環境に関する12の解決方法を確立しています。
その人の独自性を尊重した生活の支援
人、もの、地域のつながりで役割を感じ、心が豊かになる
場所・時間・人などが確かになり安心できる
生活空間が整い安心して自由に行動できる
安全な生活を支え「自分でできる」可能性を増やす
「美味しい」を感じ肺炎が予防できる
自分の意思で自由に移動することができる
正しい姿勢を保持し、正しい姿勢を維持する
医療と連携し 数値やデータに基づいて健康状態を把握する
脳がシャキッと目覚める状態にする
病気やケガをしにくい身体づくり
不必要な薬を減らし薬に依存しない生活・状態の確立
6つの状態を目指すためには、まず「水分」「栄養」「運動」、医療と連携した「処方薬の適正化」、正しい「姿勢」、「口腔機能」など、身体の状態改善が必要です。
また、当社が大切にしてきた「人」と「人」との関係性や「つながり」、「コミュニケーション」など、安心感やその人の意欲を引き出すことで、行動の変化につながります。さらに、安心して自由に行動できる「生活空間」や自分でできる可能性を増やす「靴・道具」などの基本的な生活環境を整えることも大切だと考えています。
これまで蓄積してきた各事業所での特徴的な取り組みを生かしつつ、「MCSケアモデル」をケアの基盤とし、当社のミッション「認知症を取り巻く、あらゆる社会環境を変革する」やビジョンの実現に向けて取り組んでまいります。
当社では、MCSケアモデルの「当たり前の生活」を目指すためのケア手法の一つとして、科学的根拠に基づいた「MCS版自立支援ケア」を実践しています。85%以上の方の認知症の周辺症状や心身の状態改善が見られています。
対象者 4,489名
※6か月間の導入期間の中でご利用者の問題行動(BPSD)と身体機能のいずれかが改善した割合
一人ひとりの身体面の調査・評価・分析
当社独自の身体機能や栄養状態、
認知症状に関する約250項目のアセスメント
(調査・評価・分析)を実施
科学的根拠に基づいたケア
昼食までにより多くを摂取することで脳の覚醒水準向上
食事で約60g+必要に応じて20gプロテイン等補食
「SIDE」(スケール)の結果に応じて脹脛運動を個別設定
周辺症状の改善・消失で不要な薬の減薬を医師に提案
※心不全・腎臓病・糖尿病等、医療からの制限がある方を除く(状況に応じて医師に都度相談)
86歳の小松さまは、認知症の症状が進行し、食事の仕方やトイレの場所が認識できない状態で入居した。入居間もない頃は、夜から次の日の朝まで歩き続けていた。この姿を見た娘さんは、もう二度と以前の「大好きだった母」を見ることはできないと諦めていたが、自立支援ケアが始まって8か月。小松さまと娘さんの「当たり前の生活」は取り戻すことができた。
圧迫骨折で車いす生活となった森さま。食事を残されることも多く、部屋で過ごすことを希望され、活気がみられない。骨折する前の活動的な森さまの姿は失われていた。しかし、スタッフが声かけや自立支援ケアを続けることで再び歩くことができたり、畑作りの手伝いをしたりとできることが増えていき、次第に森さまらしさを取り戻すことができた。
認知症の発症後、風邪や尿路感染症をきっかけに昼間もうとうとと眠ることが多かった田中敏夫さま。体力も低下していったが、自立支援ケアを開始して7か月後、表情が明るくなり、少しずつ田中さまらしさを取り戻してきた。