日本人の2人に1人が花粉症だといわれており、国民病ともいわれる花粉症の改善・治療方法は日々進化しています。
では、どのような治療法があるのでしょうか。
本記事では花粉症の治療について以下の点を中心にご紹介します。
- 花粉症にはどのような治療法があるのか
- 花粉症にはどのような検査方法があるのか
- 花粉症の予防方法とは
花粉症の治療について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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花粉症とは
花粉症とは、体内に侵入してきた花粉を敵とみなして排除しようとする免疫反応です。
敵とみなした段階で、対抗するために抗体をつくります。
抗体は花粉に接触するたびにつくられ、蓄積されていきます。
蓄積された抗体は、ある一定のレベルになると、次に花粉が侵入したときにヒスタミンなどの化学物質を分泌します。
そのため、今まで花粉症とは縁のなかった人が、ある日突然花粉症を発症するのです。
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花粉症の治療方法
花粉症の治療には、症状に合わせていろいろあります。
その中でも薬物療法は即効性があり、予防としても使われています。
薬剤を上手に使い分けることで、大きな副作用もなく花粉の季節をやり過ごすことができます。
抗ヒスタミン薬
花粉症治療のなかでも、薬物療法の基本となるのが抗ヒスタミン薬です。
アレルギー症状の原因となるヒスタミンの働きをブロックする働きがあります。
効果としては、くしゃみや鼻水、鼻づまりといった症状を抑えます。
今までは、抗ヒスタミン薬は眠くなるという副作用がありました。
しかし、最近では「第2世代抗ヒスタミン薬」が登場し、副作用も軽減されています。
抗ロイコトリエン薬
ロイコトリエンもヒスタミンと同じようにアレルギー症状を起こす化学物質です。
とくに血管を広げて粘膜の腫れを引き起こし、鼻づまりを起こします。
花粉症の症状の中でも、とくに鼻詰まりがひどいときに処方されます。
眠気などの副作用も少なく、ぜんそくがあっても使うことができる薬です。
少しずつ効果が高まる性質のため、継続して服用する必要があります。
また、誰にでも効果があるわけではなく、約3割ほどの方には効かないとされています。
ステロイド薬
花粉症の症状が強く出たときに使われるのが、ステロイドによる治療方法です。
花粉症のすべての症状に対して効果があります。
しかし、ステロイド薬には強い副作用も報告されています。
鼻噴霧用
強力な抗炎症作用をもつ薬です。
局部的に使われるステロイドであるため、副作用が少ないこともメリットといえます。
花粉症の初期から連用することで、ピーク時の症状を抑えることができます。
定期的に使用しないと効果があらわれないことがあります。
使用方法については、医師の指示に従いましょう。
初めて使うときには、あまり効果が実感できません。
しかし、連用して3~5日後には効果が実感できるという方が多いようです。
経口用
鼻噴霧用ステロイド薬を使っても、症状が抑制できない場合に使用します。
抗ヒスタミン薬との配合剤としてよく使われます。
ただし、ステロイド薬は効果がある反面副作用が心配な治療方法です。
一般的には、1週間をめどに使用します。
点鼻用血管収縮薬
点鼻用血管収縮薬は、鼻の粘膜を収縮させる働きがあります。
市販の点鼻薬でも血管収縮作用のある点鼻薬が売られています。
即効性があるため、一時的に使用するのには非常に優秀な薬です。
ただし、頻繁に使うと効果が薄れるばかりか、薬剤性鼻炎を起こします。
ステロイド注射
ステロイドには、強力な抗炎症作用があり、花粉のつらい症状を抑えます。
ステロイド注射薬は、体内に長期間留まる性質をもっています。
1回の注射で2~3カ月間、効果は持続します。
そのため1回ステロイド注射をしておけば、1シーズン花粉症に悩まされないといわれています。
しかし、ステロイド注射には重大な副作用のおそれがあると、厚生労働省でも注意喚起しています。
感染症、胃潰瘍、糖尿病、高血圧、緑内障などを悪化させることもあります。
使用に際しては、医師とよく相談することです。
漢方薬
漢方薬は、花粉症の主な症状である鼻炎を治療するのに効果を発揮します。
漢方薬には、眠くなるような成分は入っていません。
受験生やドライバーにとっては、ありがたいのではないでしょうか。
漢方薬には即効性はありませんが、体に負担をかけないというメリットもあります。
花粉症の症状があらわれる前から飲み始めると、体質改善にもなるでしょう。
アレルゲン免疫療法
花粉症の治療で、注目されているのがアレルゲン免疫療法です。
薬で押さえるのではなく、身体をアレルゲンに対応できるように改善していく治療方法です。
アレルゲン免疫療法には「皮下免疫療法」と「舌下免疫療法」があります。
皮下免疫療法
皮下免疫療法は、アレルギーの原因物質を皮下注射で体内に取り込む治療方法です。
花粉の抗原を原料とした抽出液を少しずつ体内に入れ、花粉に対する反応を弱めていきます。
ごくまれではありますが、アレルギー反応が強く出てしまい、アナフィラキシーショックを起こすこともあります。
そのため、皮下注射のあとは注意深く観察する必要があります。
最初の1年は2週間に1回皮下注射を行います。2年目からは1ヶ月に1回程度になります。
これを2~3年続けていくという長期間に渡る治療となります。
しかし、70~80%の患者さんに効果があるといわれています。
舌下免疫療法
舌下免疫療法は、アレルギー物質を含んだ経口薬を1日1回服用する治療法です。
花粉症の症状の改善、あるいは軽減が期待できます。
舌下免疫療法の効果は「スギ花粉症」と「ダニアレルギー症」に対してのみとなっています。
そのため、検査結果でスギ花粉症であることが確定診断された方のみの治療法となります。
使用方法は、1日1錠、舌の下に錠剤を置きます。
一定時間そのままにしておいて、その後に飲み込みます。
舌下免疫療法のメリットは
- 体質を根本から改善できる
- 注射の痛みがない
- 自宅で治療が可能である
- 保険適用である
- 5歳以上の子どもも治療が受けられる
服用するのは毎日で、2~3年続ける必要があります。
治療対象
- 5歳以上65歳未満で、スギ花粉またはダニアレルギーの方
- 花粉症の薬や点鼻薬で効き目のない方
- 医師の指示に従い毎日きちんと服用できる方
- 治療期間が2~3年となっても根気強く続けられる方
- 月に1度受診可能な方
治療対象外
- 対象年齢以外の方
- 妊娠・授乳中の方
- 治療中に妊娠の可能性がある方
- 口腔内に抜歯(治癒していない)・傷・炎症がある方
- ぜんそくなどの症状が強く出ている方
- がんや免疫系の病気があり薬(ステロイド・抗がん剤など)を服用されている方
このような条件に当てはまる方は、担当医師に必ず相談しましょう。
花粉症の手術
薬物療法による治療を施しても症状が改善されない場合、手術を行うこともあります。
どのような手術があるのかみていきましょう。
レーザー手術
レーザーを照射して、下鼻甲介粘膜を変性縮小させてアレルギー反応を起こしにくくします。
鼻づまりやくしゃみ、鼻水といった症状を緩和することができます。
手術時間は片側で10分程度、1回で治療は終了します。
効果の持続は6~24か月です。
鼻中隔矯正術
花粉症で鼻づまりがひどく、鼻中隔湾曲症がある場合には、鼻中隔矯正術が行われます。
局部麻酔のもと、左右の鼻の穴を仕切る鼻中隔から異常に曲がった軟骨を取り除く手術です。
術後は出血を防ぐため、ゼリー状の詰め物をするので、鼻づまり状態となります。
術後の鼻洗浄によって徐々に楽になり、2~3週間で鼻づまりが解消されます。
粘膜下下甲介骨切除術
下甲介粘膜の下にある骨を取り除くことによって、鼻腔を広げて鼻づまりを解消する手術です。
局部麻酔のもと、下甲介粘膜を切開して中の骨を取り除きます。
手術は30分ほどで終わります。
3~4週間後くらいから効果を実感することができます。
後鼻神経切断手術
刺激を感知する神経を遮断して、くしゃみや鼻水を抑える手術です。
下鼻甲介の後ろに位置する神経を切断する手術になります。
手術自体は片側につき15分ほどで終わります。
ただし、この手術は鼻中隔矯正手術などと組み合わせることが多くなります。
そのため1時間から1時間半程度の手術時間になるケースもあります。
花粉症の検査方法
もしかしたら花粉症かもしれないと思ったら、自己判断は禁物です。
近くの医療機関で検査を受けましょう。
検査の流れなどを紹介しましょう。
問診
医療機関を受診すると、まず問診となります。
質問される内容は次のようなものが中心となります。
- いつぐらいから症状が出たのか
- 症状の強さや症状
- 他にアレルギーはあるか
- 家族にアレルギー体質の人がいるか
前鼻鏡検査
器具を使って、鼻の奥を診る検査です。
鼻汁の色や粘度、量、鼻汁がどこから出ているのかなどを調べます。
花粉症だけでなく、副鼻腔炎、ポリープ、鼻中隔湾曲症の有無も同時に調べます。
粘膜の色や腫れ具合などを総合して診断を行います。
血液検査
アレルギーが原因なのかを調べる検査です。
血液検査で血中のIgE値を調べ、総IgE値が高いとアレルギー性の病気と診断されます。
また、どの原因物質に対してアレルギー反応が出るのかも調べることができます。
抗体検査
花粉症の場合は、花粉にだけ反応する特異IgE抗体という免疫物質が作られます。
抗体検査をすることで、体内にどの物質に対する特異IgEがあるかを調べる検査です。
原因が花粉だけなのか、どの花粉に対してアレルギー症状が出るのかなどを調べることができます。
抗体検査では、200種類以上のアルゲンを検査、測定することができます。
皮内テスト
花粉症の場合は、花粉にだけ反応する特異IgE抗体という免疫物質が作られます。
抗体検査をすることで、体内にどの物質に対する特異IgEがあるかを調べる検査です。
原因が花粉だけなのか、どの花粉に対してアレルギー症状が出るのかなどを調べることができます。
抗体検査では、200種類以上のアルゲンを検査、測定することができます。
スクラッチテスト
注射針などで、皮膚に引っかき傷をつけ、さまざまなアレルゲンを垂らします。
アレルゲンに反応した場合には、赤く腫れるなどの皮膚症状があらわれます。
プリックテスト
プリック針という検査用の針を刺し、そこに少量のアレルゲンを注入します。
15分ほどして針を刺した部分が虫刺されのように赤く腫れていれば、原因と特定されます。
鼻X線検査
鼻や副鼻腔を総合的に診断するのに必要な検査です。
花粉症から副鼻腔炎を発症している可能性があり、副鼻腔洞内の状態を知るのに欠かせません。
鼻X線検査により、副鼻腔の形、骨の状態、粘膜の腫れ具合、膿の有無などがわかります。
花粉症の予防方法
花粉症は治療も大切ですが、予防も必要です。
花粉症を悪化させないためにも、できるかぎり予防を心がけましょう。
自分でできる予防方法には、次のようなものがあります。
- 花粉が多く飛んでいる日は、花粉情報を確認し外出を控える。
- 外出するときには、めがね、マスク、帽子を着用する。
- 外出から帰ってきたら、玄関に入る前に花粉をよく払う。
- 外出から帰ってきたら、洗顔、うがい、できれば鼻うがいをする。
- 花粉が多く飛んでいる日には窓を開けない。
- 花粉が多く飛んでいる日には布団は干さない。
- こまめに掃除をする。
- 免疫力を付けるため、栄養バランスの取れた食事を心がける。
- たばこ、お酒は控える。
市販の点鼻薬の注意点
花粉症の症状で、鼻づまりなどを解消するため市販の点鼻薬を使用する方も多いでしょう。
ドラッグストアなどで手軽に購入できます。
市販の点鼻薬の中には、血管収縮成分が含まれています。
血管を収縮させることで、鼻づまりを解消することができます。
即効性がありますが、持続性はありません。
立て続けに使うとさらに有効時間が短くなってしまいます。
使用頻度が高くなるとリバウンドを起こし、薬剤性鼻炎になる危険性があります。
使用する場合には使用方法をよく読んで、1日2回、10日を目安に使いましょう。
市販の点鼻薬を使っても症状が改善されない場合には、医療機関を受診しましょう。
花粉症の患者数
花粉症で悩んでいる人の数は、正確なところはわかっていないのが実情です。
全国的な調査は1998年から10年ごとに実施されています。
花粉症の有病率をみてみると
- 1998年 19.6%
- 2008年 29.8%
- 2019年 42.5%
10年ごとに10%以上増加していることがわかります。
2019年では、実に2人に1人が花粉症に悩まされているということになります。
また、花粉症の発生年齢も低年齢化しています。
5~9歳の子どもの有病率をみてみると
- 2008年 13.7%
- 2019年 30.1%
10代では49.5%という有病率でした。
このように、花粉症は全世代で増加傾向にあると言えます。
出典:環境省「花粉症環境保健マニュアル2022」
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花粉症の治療まとめ
ここまで、花粉症の治療について紹介してきました。
花粉症の治療の要点を以下にまとめます。
- 花粉症の治療法には「薬物治療」「アレルゲン免疫療法」「手術」がある
- 花粉症の検査方法には「血液検査」「抗体検査」「皮内テスト」「X線」など
- 花粉症の予防方法は花粉の飛散情報に注意して、花粉に接触しないようにするなど
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。