高齢になるにつれ、認知症予防を意識する人は増えています。
加齢や生活習慣などが代表的な認知症の危険因子です。
では、認知症とタバコの関係性はご存知でしょうか?
こちらの記事では、以下の点に沿って疑問を解決していきます。
- 認知症とタバコの関係性
- 非喫煙者と喫煙者の認知症発症率
- 認知症患者の方に禁煙を促すコツ
認知症予防に繋げるためにも、参考にしていただけると幸いです。
是非最後までご覧ください。
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タバコは認知症を引き起こす?
多くの有害物資を持つタバコは、さまざまな健康被害が指摘されています。
認知症も無関係ではありません。
タバコは、9つある認知症の危険因子のうちの一つとされています。
ここでは、タバコと認知症の関係性、非喫煙者とのリスクの差について解説します。
タバコは認知症の原因
ニコチンによる血管収縮作用が認知症の原因となります。
タバコを吸うと、ニコチンの血管収縮作用により血液の流れが悪くなります。
脳への酸素が供給されなくなり、脳細胞が死滅していきます。
その結果、認知症を引き起こす要因となるのです。
過去に「タバコは認知症を予防する」という説が有力視されましたが、現在は完全に否定されています。
非喫煙者との認知症リスクの差
喫煙者と非喫煙者には、どの程度リスクの差があるのでしょうか。
ある研究によると、50歳から60歳までの高齢者が1日11本以上のタバコを吸った時、20年後に認知症を発症するリスクが約1.4倍になります。
1日に41本以上のタバコを吸った場合、認知症発症のリスクは約2.1倍にまで高まります。
アルツハイマー型認知症、血管性認知症は特にタバコとの関連性が高いです。
喫煙者は非喫煙者に比べて、「アルツハイマー型認知症」になる可能性が約2.3倍高いことがわかっています。
次いで高いのが「血管性認知症」であり、非喫煙者の約2.2倍高いです。
タバコ以外の認知症の原因についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
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タバコは認知症を進行させる?
タバコは認知症を引き起こすだけではありません。
すでに認知症と診断されている方が喫煙すると、認知症を進行させる危険があります。
タバコのニコチンによって脳に酸素が行き届かなくなり、脳細胞が死滅していきます。
脳へのダメージが蓄積されることは、認知症患者にとってとても危険です。
反対に喫煙を辞める、本数を減らすことによって認知症の進行を遅らせることが期待できます。
認知症の進行について興味がある方は、こちらもあわせてお読みください。
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認知症患者がタバコを吸うことの危険性
認知症患者がタバコを吸う危険性は、認知症を進行させることだけではありません。
認知症患者の多くは、理解力の低下しているため喫煙していること自体を忘れてしまう可能性もあります。
「タバコを吸っていることを認識していない」「火の始末を忘れる」といったことから火事を起こす危険性が高まります。
認知症患者に禁煙を促す方法
「百害あって一利なし」のタバコですが、タバコを吸っている間は一時的に気分が良くなるというのも事実です。
「タバコを吸わないとイライラする」のは、認知症患者も同じです。
認知症患者からむやみにタバコを取り上げると、「怒る」「暴れる」「思わぬ行動をとる」などのトラブルに発展する可能性があります。
認知症患者に禁煙を促すためには、むやみにタバコを禁止することは避ける方が良いです。
タバコを吸うことのデメリットを伝え、徐々に本数を減らすことを提案してみてください。
提案の仕方としては、「共感すること」が大切です。
認知症患者の多くは、根本的に「自分のことを理解してもらっていない」と考えています。
共感したうえで、本数を減らすことのメリットを伝えるとより効果的です。
もし順調に本数が減り、認知症患者の気分を害していないなら禁煙を推奨します。
本数を徐々に減らし、最後には禁煙するのがベストです。
禁煙が難しい場合は、電子タバコに切り替えるというのも1つの手です。
火を使わない電子タバコなら、火事のリスクが無くなります。
ニコチンを含まない電子タバコに切り替えることができれば、認知症の進行を軽減することにも繋がります。
タバコを吸うメリット・デメリット
「タバコを吸うことにメリットはない」というのが世間一般の考えとされています。
しかし、タバコを吸うことに、まったくメリットがないわけではありません。
本記事の最後に、タバコを吸うメリット・デメリットを紹介します。
メリット
タバコを吸っている時間はとてもリラックスした気持ちになれます。
気持ち良さを気軽に楽しめることが、タバコを吸うことのメリットです。
世の中には、タバコを何十年と吸い続けているにもかかわらず、長生きしている方がいるのも事実です。
デメリット
タバコを吸うことのデメリットはさまざまありますが、大きく分けると3つあります。
3つのデメリットとは、「喫煙者自身の健康被害」「副流煙による周囲の方々への健康被害」「出火原因となる可能性」です。
喫煙者自身の健康被害
タバコが身体に害を及ぼすのは、タバコの有害物質の代名詞「ニコチン」「タール」だけではありません。
タバコの煙には約4,000種類もの化学物質が含まれており、タバコを吸うことで有害物質が身体を駆け巡ります。
以上の有害物質が認知症をはじめさまざまな病気を引き起こします。
喫煙者は「がん」「糖尿病」「心臓病」「慢性気管支炎」などを発症する危険性が、非喫煙者よりも高いです。
副流煙による周囲の方々への健康被害
もう1つの深刻なデメリットが、副流煙による周囲の方々への健康被害です。
副流煙を吸う周囲の人々は、喫煙者以上に健康被害のリスクがあります。
出火原因となる可能性
火事の原因の1位は、タバコの不始末です。
認知症患者の多くは理解力の低下が認められているので、火の不始末を起こす可能性が高いです。
認知症患者のタバコはより厳重に注意を払う必要があります。
タバコで肺がんのリスクも?
タバコはさまざまな疾患の原因となります。
代表的な疾患には以下があります。
- 認知症
- 肺がん
- 脳卒中
- 心疾患
- 糖尿病
タバコの煙に含まれるニコチンは、血管を傷つけることで動脈硬化を招きます。
すると血管がもろくなるため、脳梗塞・心疾患などのリスクが高まります。
タバコの煙には発がん物質が数多く含まれます。
そのため、体内で煙が通過する部位にはがんが発生しやすくなります。
具体的には、口腔・咽頭・食道・肺などです。
喫煙は、胃がん・大腸がんなどとの関わりも指摘されています。
また、喫煙は糖尿病などの生活習慣病を誘発・悪化させる要因でもあります。
さらに、インフルエンザの罹患率を高めたり、症状を悪化させたりするとも指摘されています。
脳の健康だけでなく、身体の健康を長く保つためには、禁煙を心がけることが大切です。
認知症と生活習慣病の関係についても解説していますので、興味のある方はこちらもあわせてお読みください。
生活習慣病は、ほとんどの方が一度は耳にしたことがある言葉ではないでしょうか。生活習慣病は、様々な病気と関わりがありますが、中でも認知症と深い関わりがあるとされています。今回は、生活習慣病と認知症の関係を紹介した上で、生活習慣の見[…]
出典:厚生労働省「喫煙とがん | e-ヘルスネット(厚生労働省)」
出典:厚生労働省「喫煙と循環器疾患 | e-ヘルスネット(厚生労働省)」
出典:厚生労働省「喫煙と呼吸器疾患 | e-ヘルスネット(厚生労働省)」
出典:厚生労働省「喫煙と糖尿病 | e-ヘルスネット(厚生労働省)」
認知症とタバコのまとめ
ここまで、認知症とタバコの関係についてお伝えしてきました。
要点を以下にまとめます。
- タバコは認知症の症状を進行させる
- 喫煙者の認知症発症のリスクは、非喫煙者のおよそ約1.4倍~2.3倍
- 認知症患者の方に禁煙を促すコツは、「タバコをむやみに取り上げない」「共感する」こと
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。