認知症対策として国はどのような対策をとっているのでしょうか。
認知症対策として2012年に公表されたオレンジプランを修正した新オレンジプランが2015年に発表されました。
この記事では新オレンジプランの
- 設置背景と目的
- 柱となる施策
- 実際の取り組みと課題
について紹介します。
ぜひ最後までお読みください。
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新オレンジプランの設立背景について
オレンジプランが設立された理由は、認知症患者が可能な限り住み慣れた環境で、本人の意思が尊重される生活を続けることができるようにするためです。
従来は、入院や施設の利用が前提となっていましたが、オレンジプランによって環境の変化の適応が苦手な認知症の方の症状悪化を防ぐ効果も期待されています。
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オレンジプランとは?
新オレンジプランは2015年に厚生労働省によって発表されました。
厚生労働省はオレンジプランの目的を「認知症の人の意思が尊重され、出来る限り住み慣れた地域の良い環境で、自分らしい暮らしを続けることができる社会を実現する」こととしています。
つまり、認知症になった方に入院や施設の利用を強制するのではなく、本人の意思で、自立した生活を送り続けられる環境を整備することが目的です。
さらに、認知症の介護者に対する支援も重要な目的の一つとされています。
新オレンジプランの活動
新オレンジプランでは、このあとに示す7つの施策を柱に掲げています。
具体的な活動の例は、認知症に関する広報活動、認知症治療の環境整備、介護者の支援、認知症研究の推進などです。
また、認知症に対して早急に、適切に、継続的に対応するためには当事者、医療、行政、地域など様々な連携が必要となります。
連携を実現するために必要な施設や人員の強化も、新オレンジプランの重要な活動です。
1:普及・啓発の促進
認知症に対する正しい理解を広めることを目的としている施策です。
基本的な考え
認知症は、誰でも発症する可能性のある身近な病気であることを、広報活動やキャンペーンを通じて社会全体で認識するように目指します。
具体的な活動
具体的な活動は以下の通りです。
- 認知症患者が自ら語る形式で、認知症に対する理解を深めるための広告やキャンペーンを全国規模で実施
- 認知症サポーターを養成し、養成した認知症サポーターが活躍できる環境を整備
- 学校で認知症患者や高齢者との交流会などを実施することで、認知症や高齢者に対する理解を深める教育を実施
2:適切な医療の提供
認知症に対応可能な医療や介護を拡充し早く、適切な対応を目指している施策です。
基本的な考え
早期診断、早期対応を軸として、医療と介護が連携し、症状に対する適切な対応の実現を目指します。
具体的な活動
具体的な活動は以下の通りです。
- かかりつけ医に対する認知症対応の研修や認知症サポート医の養成を推進
- 認知症に対する早期対応を可能にするために認知症初期集中支援チームの市町村への設置を促進
- 認知症の症状に適切に対応するために医療従事者や看護職員に対する研修を実施
3:若年性認知症対策の強化
高齢者の認知症とは異なる問題や特性が生じる若年性認知症の患者様に適切な対応を提供することを目指します。
基本的な考え
就労や生活費などの経済的な問題が生じる可能性の高い若年性認知症患者に対して、居場所づくりや社会参加の支援を目指します。
具体的な活動
具体的な活動は以下の通りです。
- 若年性認知症と診断された方に対するハンドブックを配布
- 若年性認知症患者の特性に即した社会参加支援を実現するために、自立支援にかかわる関係者のネットワークの調整役の配置を進める
4:介護者への支援
介護者の負担を減らすことで最終的に認知症の方の生活の質の向上を目指します。
基本的な考え
認知症の介護者を支援することで、最終的に認知症患者本人の生活の質の向上につながるという考えのもと、介護者の精神的・身体的負担の軽減を目指します。
具体的な活動
具体的な活動は以下の通りです。
- 介護者の身体的負担軽減のための介護ロボット開発を支援
- 認知症患者本人と介護者様が地域や専門家と情報共有できるように認知症カフェなどの設置を促進
5:優しいまちづくりの促進
認知症患者様に対する生活の支援、生活しやすい環境の整備を行うことで、認知症の方だけではなく、高齢者様に優しい町の実現を目指します。
基本的な考え
生活の支援というソフト面と、環境の整備というハード面の両方を支援します。
就労支援および環境の安全確保を行うことで認知症の方を含む高齢者全体に優しい社会の実現を目指します。
具体的な活動
具体的な活動は以下の通りです。
- 地域環境のバリアフリー化促進や公共交通機関の充実を図る
- 仕事の提供やボランティア活動の募集など社会参加への支援拡充活動を行う
- 地域での見守り体制や交通安全の強化による高齢者の生活における安全確保を目指す
6:介護モデル等の研究開発及びその成果の普及推進
認知症の研究や調査を行い、新しい対応方法を模索します。
基本的な考え
認知症の原因やメカニズムの解明を通じて、認知症の予防や対処法のモデル作成といった研究開発を目指しています。
具体的な活動
具体的な活動は以下の通りです。
- 原因のはっきりしていない認知症に対する大規模調査などを実施し、予防方法、根本的治療方法の開発につなげる
- ロボット技術やICT技術を応用した認知症対応への応用方法開発の支援や普及促進を行う
7:認知症の方と家族の視点の重視
この施策では、認知症の当事者様の意見や経験を実際の活動に取り入れることを目指しています。
基本的な考え
初期段階の認知症患者様のニーズ調査や、認知症への理解を深めるキャンペーンに対する認知症患者様やご家族様の参画推進など、当事者様の意見を取り入れることを目的としています。
具体的な活動
具体的な活動は以下の通りです。
- 初期の認知症患者様が何を求めているか調査し、ニーズに合わせたサービスを提供することを目指す
- 認知症の患者様やご家族の意見を、地域の認知症対策や自治体の企画・立案に反映させる
オレンジの意味って何?
国が進めるキャンペーンによる「認知症サポーター」が腕につけるリングがオレンジ色をしています。
そのオレンジ色のリングから、認知症の方を助けるイメージをとり、「オレンジプラン」という愛称が付けられました。
オレンジプランの取り組みについて
オレンジプランでは実際、どのような施策を策定し、活動することで地域との連携を実現しているのでしょうか。
これからご紹介するのでご確認ください。
施策について
地域連携を目指す新オレンジプランでは、専門の相談員などの地域連携を支える人材の育成や環境の整備、認知症にかかわる関係者間のネットワークの強化といった目標を掲げています。
地域との連携
地域の医療機関や地域包括支援センター、認知症疾患医療センターなどと連携を持つ歯科医院や薬局との情報共有によって地域社会との連携を深めています。
歯科医院や薬局で認知症が疑われる場合には、かかりつけ医などと情報を共有し、早期対応を実現するように働きかけています。
また、専門の相談窓口を設置したり、教育研修を実施することで対応可能な人員の増強、対応機会の増加によっても地域連携強化を目指しています。
新オレンジプランの課題
様々な施策や活動を掲げているオレンジプランですが、これからの課題や批判の声が浮彫にもなりました。
ここからは、課題である認知度とあがった批判の声をご紹介いたします。
認知度
2017年に実施された調査では、新オレンジプランについて知っていると答えた方はわずか6%以下にとどまりました。
オレンジプランの存在を知らないと、負わなくても済む負担を負うことになるかもしれません。
しかし、国が主導となって様々な対策を講じているオレンジプランも存在が知られていなければ意味がありません。
今後オレンジプランの意義や見込まれる効果などについて、さらに効果的に周知する必要があります。
批判
オレンジプランでは最終的に入院や施設の利用となる従来の対応を「不適切」として、「改善」することが目標でした。
しかし、従来の方法で認知症対応に尽力していた方々からすると、自分たちの対応が間違っていたとされることになり、少なからず不満の声が上がり、批判も生じました。
認知症カフェについて
認知症カフェは認知症にかかわる様々な方が利用することで、多くの方が交流することを目指した施設です。
認知症カフェの目的や活動についてご紹介いたします。
認知症カフェの目的
利用者を限定せず、認知症にかかわる様々な方々が利用できます。
様々な方が利用することで、情報交換や相談ができる場所となることを目指して設立されました。
認知症カフェの活動
情報交換や相談、社会参加の機会を提供する場として設立されています。
カフェごとに方針は様々ですが、自由な時間を過ごす、ワークショップに参加する、運営側として参加するといった方法で交流できる機会が設けられています。
認知症カフェの運営団体
認知症カフェを運営するうえで必要な資格や条件などはありません。
NPO法人や介護事業者などが運営している場合が多いです。
認知症の家族を持つ個人が運営している認知症カフェもあります。
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新オレンジプランのまとめ
認知症対策としてオレンジプランを国が進めています。
今回紹介したオレンジプランについてまとめます。
- 新オレンジプランの目的は認知症の方が自分らしく自立した生活を続けるための環境を整えること
- 新オレンジプランには認知症に関する教育や、適切な医療の提供、介助者への支援、研究開発といった7つの柱がある
- 新オレンジプランの取り組みは地域と医療・介護の連携を目指すこと、課題は知名度の低さや医療関係者からの批判
ここまでオレンジプランの、施策や活動、課題などを中心にお伝えしてきました。
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。