認知症のうち、約4.3%を占めるのがレビー小体型認知症です。
レビー小体型認知症は薬物療法によって症状を緩和することができます。
では、治療薬ごとの効果や副作用の違いはご存知でしょうか?
本記事では、レビー小体型認知症の治療薬について以下の点を中心にご紹介します。
- レビー小体型認知症の治療方法
- レビー小体型認知症の治療薬の効果
- レビー小体型認知症の治療薬の副作用
- レビー小体型認知症の治療薬を使用する時期
レビー小体型認知症への不安を解消するためにも、参考にしていただけると幸いです。
ぜひ最後までご覧ください。
スポンサーリンク
レビー小体型認知症とは
レビー小体型認知症は、アルツハイマー型認知症、血管性認知症に次いで3番目に多い認知症です。
脳に「レビー小体」という異常なタンパク質の塊が蓄積することで発症します。
しかし、レビー小体ができる原因は分かっていません。
レビー小体型認知症の症状としては、幻視や睡眠時の異常行動、パーキンソン症状(手の震えや体のバランスが取りづらくなる)などが代表的です。
他の認知症は認知機能が徐々に低下していきますが、レビー小体型認知症では認知機能に波があります。
調子のいいときは全く問題ないように見えるため注意が必要です。
症状の進行に従い、記憶力の低下が目立つ場合もあり、うつ病やアルツハイマー型認知症などと誤診されることも多いです。
三大認知症の一つとされているレビー小体型認知症。発症すれば幻視や妄想をともなう可能性のあるレビー小体型認知症ですが、どのような対策や予防があるのでしょうか?今回は、レビー小体型認知症について以下の点を中心にご紹介します。[…]
スポンサーリンク
レビー小体型認知症の治療方法
レビー小体型認知症では、患者によって様々な症状が出ることが特徴です。
そのため、症状に合わせた治療方法や治療薬を選択する必要があります。
ここでは、薬物療法と非薬物療法についてご紹介いたします。
薬物療法
薬物療法では、症状の種類によって治療薬を変更します。
認知症の症状が強い場合は抗認知症薬、パーキンソン症状が強い場合は抗パーキンソン薬を服用します。
また、うつや幻覚などの症状が現れている場合は抗精神病薬、便秘などの自律神経症状が現れる場合は自律神経症状の治療薬が処方されます。
医師との相談の上、症状にあった薬を処方してもらうことが大切です。
また、処方された薬によって症状が悪化した場合はすぐにかかりつけ医に相談しましょう。
非薬物療法
薬物療法に対して、運動や音楽などで脳への刺激を与える方法が非薬物療法です。
転倒や誤認を防ぐために、住環境を整えることも治療の一環とされています。
代表的な方法を以下にまとめます。
- 回想法:昔の経験や思い出を語り合う
- 運動療法:ストレッチやウォーキング
- 音楽療法:好きな音楽を聞いたり演奏する
- 作業療法:食事や入浴、家事といった日常生活にかかわる作業を行う
部屋を片づけ、明るくしておくことで転倒しにくい環境を作ることも大切です。
また、衣替えをして、不必要な洋服はしまうことで季節の誤認を防ぐ効果が期待できます。
レビー小体型認知症の治療薬
レビー小体型認知症の症状を改善するために処方されるのが抗認知症薬です。
抗認知症薬ごとの効果や費用をご紹介します。
アリセプト
アリセプトは、ドネペジル塩酸塩という化学物質が有効成分として働く薬です。
エーザイ株式会社から製品名アリセプトとして販売されています。
また、複数の製薬会社からジェネリック医薬品も販売されています。
効果
アルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症の進行を遅らせる効果があります。
また、記憶障害や注意力の低下などを改善する効果も見込まれます。
ただし、病気自体を治すことはできません。
服用をやめると服用前と同じ状態に戻ったり、場合によっては急激に進行する可能性もあります。
費用
アリセプトの費用は、保険適用前の金額で1日約200円~600円です。
自己負担割合が1割の方は1日約20円~60円、3割の方であれば約60円~180円となります。
また、アリセプトにはジェネリック医薬品があるため、ジェネリック医薬品を選択した場合はより安く済みます。
副作用
胃・十二指腸潰瘍や嘔吐といった消化器症状が出ることが知られています。
特に用量を増やした場合には注意が必要です。
その他の服作用としては、不整脈や失神など循環器の異常があります。
生死にかかわる可能性もあるので、心疾患を患っている方は特に注意が必要です。
リバスチグミン
リバスチグミンは1日1回貼るだけの貼り薬です。
イクセロンパッチやリバスタッチパッチという名称で販売されています。
錠剤と異なり有効成分が皮膚から吸収されるため、飲み込みが苦手な高齢者におすすめです。
皮膚からゆっくりと有効成分が吸収されるため、飲み薬で多く見られる消化器系の副作用が出にくい特徴があります。
効果
アリセプトと同様に、記憶障害や注意力の低下などを改善する効果が見込まれます。
服用により、認知症症状を数か月~1年ほど前の状態まで戻せる可能性があります。
しかし、劇的な改善は見込めません。
服用を中止した場合は、以前と同じ状態まで急速に進行する恐れがあります。
費用
1枚の価格は約300円~400円です。
1日1枚使用します。
自己負担割合が1割の方は、1日30円~40円、3割の方であれば90円~120円となります。
リバスチグミンもジェネリック医薬品が販売されています。
副作用
アリセプトと同様の効果があるため、副作用もおおよそ同じです。
不整脈や狭心症などの循環器系副作用がみられる場合があります。
また、嘔吐や胃潰瘍、十二指腸潰瘍といった消化器症状も見られます。
いずれも発生率は1%未満のため、必要以上に恐れることはありません。
ただし、症状が疑われる場合は速やかにかかりつけ医などに相談しましょう。
ガランタミン
アリセプトに次いで2番目に承認された治療薬です。
アリセプトとは少し異なる作用で認知症に効果があります。
効果
ほかの多くの認知症治療薬と同様に、認知症症状の進行を遅らせることが期待されます。
病気の進行そのものを止める効果はなく、あくまでも進行を遅らせるという点に注意してください。
服用を中止した場合は、以前と同じ状態まで急速に症状が進行する恐れがあります。
費用
保険適用前の金額で、1日分が約180円~400円です。
1日に2回服用します。
自己負担割合が1割の方であれば、1日18円~40円、3割の方であれば54円~120円となります。
ガランタミンにもアリセプトやリバスチグミンと同様にジェネリック医薬品が開発されています。
副作用
ガランタミンの副作用として不整脈や失神といった循環器系症状が知られています。
また、急性汎発性発疹性膿疱症と呼ばれる副作用により発熱や紅斑、水ぶくれ、膿をともなう小さな発疹がたくさんできてしまうこともあります。
手足のしびれや筋力低下、赤褐色の尿をともなう横紋筋融解症という副作用にも注意してください。
いずれも頻度は低いですが、念のため初期症状などには注意しましょう。
メマンチン
メマンチンは2011年に発売された抗認知症薬になります。
メマンチンは中等度以上のアルツハイマー病に適応となっています。
メマンチンはグルタミン酸が神経を攻撃する作用を抑制して、神経を守る作用があります。
他の認知症薬と作用する機序が異なるので、併用して飲むことができる特徴があります。
もう一つの特徴は怒りや興奮、徘徊など認知症で発生する周辺症状を抑える可能性が認められています。
しかし、他の薬と同じように生活が劇的に変わるほどの効果は期待できない可能性があります。
レビー小体型認知症の向精神薬
認知症に対する、抗うつ薬や抗不安薬の使用は保険適用外とされています。
使用に当たってはリスクと利益を十分に検討することが必要となります。
本人や家族、医師と十分な相談のもと処方することが大切です。
処方後は常に有効性を確認し、減薬や中止ができるかについて検討する必要があります。
実際に処方される薬と効果の例は以下の通りです。
- トラゾドン:抗不安効果
- フルボキサミンやパロキセチン:抑うつ症状の解消
- ベンゾジアゼピン系抗不安薬:抗不安効果
認知症に対する向精神薬の処方は副作用の発生リスクを伴います。
また、薬剤に対する過剰な反応が起こることも考えられます。
専門医との慎重な検討の上、処方と処方後の観察が必要です。
パーキンソン病への治療薬
レビー小体型認知症は、レビー小体という異常なタンパク質の塊が脳内に蓄積することで発症します。
また、レビー小体はパーキンソン病の原因としても知られています。
レビー小体型認知症とパーキンソン病の併発が多い理由は、両者の原因が同じだからです。
レビー小体型認知症と併発したパーキンソン病の治療には以下の薬が使用されます。
- レボドパ:手の震えや運動機能を大幅に改善する
- エンタカポン:レボドパの効果を助けるための補助薬
- ベンツトロピン:手の震えを軽くする
ほかにも、パーキンソン病自体の治療薬が処方される場合もあります。
しかし、いずれも副作用や症状の悪化などを考慮する必要があるので、医師への相談を第一としてください。
レビー小体型認知症の治療薬を使用する時期
様々な治療薬をご紹介しましたが、症状の進行度合いによって使用する薬は異なります。
レビー小体型認知症の進行度合いごとに、適切な治療薬をご紹介します。
軽度
軽度のレビー小体型認知症では、便秘、うつ症状、睡眠時に暴れる、大声で寝言を言うなどの症状が現れます。
便秘には消化管運動改善薬、大声の寝言にはクロナゼパムなどが処方されます。
その後、レビー小体型認知症に特徴的な以下の3つが見られます。
- 幻視
- 認知機能悪化と改善の波
- パーキンソン症状
一般的に、幻覚症状にはドネペジルが処方されます。
中等度
中等度ではパーキンソン症状が強くなり歩行などが困難になります。
また、認知機能の低下が顕著になり、認知機能の状態が悪い時間が増えていきます。
パーキンソン症状にはレボドパ、認知機能の改善にはドネペジルといった薬が処方されます。
高度
高度のレビー小体型認知症ではパーキンソン症状と認知機能がさらに悪化します。
ほとんどの方が車いすを必要とします。
嚥下障害が認められる場合もあるため、飲み込む必要のないリバスチグミンに変更することがあります。
パーキンソン症状も進行しているため、レボドパが併用されることもあります。
レビー小体型認知症まとめ
ここまで、レビー小体型認知症の治療薬についてお伝えしてきました。
要点を以下にまとめます。
- レビー小体型認知症には、薬物療法と非薬物療法が効果的
- レビー小体型認知症の治療薬の効果は、進行を遅らせること
- レビー小体型認知症の治療薬の副作用は、消化器症状や循環器症状
- レビー小体型認知症は、病状の進行度によって薬が異なる
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。