高齢者に多く、徐々に認知機能が低下していく認知症。
認知症になってしまったら、お金の管理はどうすればいいのでしょうか。
本記事では、認知症とお金の管理について以下の点を中心に紹介します。
- 認知症の人に多いお金のトラブル
- 認知症になったときのお金の管理方法
- その他の管理方法
お金の管理方法への疑問を解消するためにも、参考にしていただけると幸いです。
ぜひ最後までご覧ください。
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認知症発症後のお金のトラブルとは?
認知症の人にありがちなお金のトラブルには以下のようなものがあります。
- 金銭管理が正しくできない
- 詐欺に遭いやすい
- お金に関する被害妄想が激しくなる
- 口座凍結されてしまう
それぞれについて以下で詳しく解説していきます。
金銭管理が正しくできない
認知症になると判断力が低下し、計画性のないお金の使い方をしてしまいます。
また、計画性がなくなるだけでなく欲求をコントロールすることができなくなることがあります。
たとえば、支給された年金をすぐに使いきってしまうケースや、次々に自分の欲しいものを買い込んでしまうケースがあります。
詐欺に遭いやすくなる
認知症になると判断力が低下します。
認知症の方は、相手の言っていることが嘘かどうか判断できなくなってしまいます。
オレオレ詐欺や振り込め詐欺に騙されないよう注意が必要です。
お金を取られたと被害妄想する
被害妄想は認知症の人に見られる周辺症状のひとつです。
被害妄想の症状が出てくると、現実には被害を受けていないのに被害を受けたと錯覚してしまいます。
たとえば、お金を使ったことを忘れてしまい、誰かにお金を盗まれたと思ってしまうようなことが起きています。
口座が凍結される
銀行は口座の名義人が認知症だと分かった場合、口座を凍結させます。
詐欺や意図せぬ支払いを防ぐためです。
口座が凍結されてしまうと介護費用などの支払いまでできなくなってしまいます。
ただし、成年後見制度を活用することで、預金を利用できるようになります。
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認知症患者のお金の管理方法について
ここまで認知症の方にありがちなお金のトラブルを紹介しました。
では、認知症になってしまった場合、お金をどのように管理すればいいのでしょうか。
まずはできる限り本人の意思を尊重することが大切です。
場合によっては、家族が管理するという方法も考えられます。
認知症の方のお金を管理する上で重要となるのが公的制度の活用です。
ここではその事例として、以下の2点を解説します。
- 成年後見制度
- 日常生活自立支援制度
成年後見制度
成年後見制度とは、認知症などによって判断能力が低下してしまい、契約や財産管理が難しくなった人を支援するための制度です。
認知症の方は成年後見制度を利用しないと証券会社の取引や資産の売却ができなくなります。
認知症が発覚した場合、速やかに成年後見制度を利用しましょう。
成年後見制度には「法定後見制度」と「任意後見制度」の2種類があるので、以下で詳しく解説します。
法定後見制度
法定後見制度とは、判断能力が不十分となった人の権利を法的に支援、保護するための制度です。
認知症や知的障害、精神障害などが含まれます。
法定後見制度には後見、保佐、補助の3つの支援方法があります。
以下の内容に沿って、裁判所から選出されます。
- 判断能力がほとんどなくなった場合は後見人
- 判断能力が低下しているものの、日常生活に支障がない場合は補佐人
- 補佐より判断能力の低下が軽い場合は補助人
任意後見制度
任意後見制度とは、判断力が衰えたときのために、自己判断ができるうちから備えておくための制度です。
任意後見制度では、事前に任意後見人を決めておきます。
後見人が必要になったときの支援内容まで決めておくことができます。
日常生活自立支援事業
日常生活自立支援事業とは、判断能力が不十分な方に対してサービスの利用援助をするものです。
認知症高齢者や知的障害者の方が自立した生活を送れることを目的としています。
日常生活自立支援事業の実施主体は、各都道府県や指定都市の福祉協議会です。
窓口業務は市町村の社会福祉協議会等で行われています。
援助の内容は福祉サービスや苦情解決制度、日常生活の消費やサービス利用・契約に関するものです。
他にも、日常的な金銭管理や生活環境の変化を知るための定期的な訪問が行われます。
認知症で成年後見制度を利用するには?
ここまで後見制度の内容について解説してきました。
制度について理解ができた一方で、制度の利用方法がわからないという方もいるかと思います。
ここからは法定後見制度と任意後見制度の利用条件と手続きについて解説していきます。
法定後見制度
まずは、法定後見制度の利用条件と手続きについてみてみましょう。
利用条件
後見人になるための資格は特にないです。
しかし、以下の条件に該当する人は後見人になれません。
- 未成年
- 破産者
- 親族
- 過去に後見人含む代理人を解任されたことがある人
- 行方不明者
- その他後見人に適さないような不正行為の経歴がある人
以上の条件に当てはまらない方は、後見人として申請することが可能です。
手続き
後見人、保佐人、補助人、いずれの場合も選任者は家庭裁判所です。
被後見人や後見人の申し立て、立候補者の意思とは関係なく選任されます。
親族であってもなれない場合があるため注意が必要です。
任意後見制度
次は、任意後見制度の利用条件と手続きについて見てみましょう。
利用条件
利用者の判断力が低下する前に自らの意思であらかじめ後見人を選任しておく制度が任意後見制度となります。
任意後見人になることができない人は以下の条件にあてはまる人です。
- 未成年
- 行方不明者
- 破産者
- 過去に後見人含む代理人を解任されたことがある人
- 本人に対して裁判をしたことがある人及びその配偶者と直系
- その他後見人に適さないような不正行為の経歴がある人
任意後見人は被後見人自身が選ぶため、家庭裁判所による選任はありません。
法定後見人とは違い、上の条件に当てはまらなければ誰でもなることができます。
手続き
任意後見人の指名は被後見人が公正証書によって契約を証明します。
公正証書によって契約が締結すると、家庭裁判所から任意後見監督人が選任されます。
以上の監督を受けながら、契約に基づいた保護・支援を行います。
後見制度以外の認知症患者の財産管理方法
後見制度以外の方法をご存知でしょうか?
家族によるお金の管理は、自尊心を傷つける可能性もあるため最終手段です。
しかし、どうしても家族の助けが必要となることもあるでしょう。
家族の助けが必要となった場合の管理方法として、以下の4つを解説します。
- 家族信託
- 資産継承信託
- 遺言書やエンディングノートの作成
- FPへの相談
家族信託
家族信託とは、財産の管理や処分に必要な権限を家族に与えておく方法です。
家族信託では、親の財産を子が管理するケースが一般的となります。
家族信託は認知症の症状が出始めた財産を守ることができるというメリットがあります。
資産承継信託
資産承継信託は、銀行が代わりに財産を管理・運用する制度です。
資産承継信託では、本人以外の家族もお金を引き出せるようにしておくことが可能です。
遺言書やエンディングノートの作成
遺言書やエンディングノートを作成しておくことも重要です。
エンディングノートには葬式に関する希望や遺言の有無を書き留めておくとよいでしょう。
また、信頼できる人にエンディングノートの保管場所を伝えておくことがおすすめです。
遺言書やエンディングノートは短期間で完成させることが難しいので、不安を感じたら早めに作っておくとよいでしょう。
FPに相談
FPは、お金に関する全般について相談できるプロです。
FPには相続や後見人制度などさまざまなことを相談することができます。
自分や家族だけで限界を感じているのであれば、専門家であるFPの意見を聞くのがおすすめです。
認知症の財産管理のための資産承継信託は口約束では効果がない!
資産承継信託は口約束でも契約することができます。
しかし口約束の場合、具体的な契約の内容を証明することができないため注意が必要です。
本人の死後、遺産相続等で親族がモメてしまうということもあります。
長期的に試算承継信託を進めて行く場合は法的に有効な手段で契約書を作成しておくことが重要です。
認知症お金の管理まとめ
ここまで、認知症になったときのお金の管理方法についてお伝えしてきました。
要点を以下にまとめます。
- 認知症の人は、判断力の低下から計画性のないお金の使い方をしてしまう
- 認知症の人向けのお金の管理方法には、成年後見制度や資産継承信託がある
- 後見制度の他に、資産継承信託や遺言書を活用する方法もある
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。