記憶障害の一つでもある長期記憶障害。
様々な病気から引き起こされるため注意が必要です。
皆さまは長期記憶障害と聞くとどのような症状を思い浮かべるでしょうか?
本記事では、長期記憶障害について以下の点を中心にお伝えします。
- 長期記憶障害の症状
- 長期記憶障害の原因
- 長期記憶障害が起きた場合の周囲の対応
この記事を通して、早期発見に役立てればと考えています。
ぜひ最後までお読みください。
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長期記憶障害とは
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長期記憶障害とは長期的に記憶していた記憶に障害が起こることです。
長期記憶は長期間保存した記憶を指し、近時記憶と遠隔記憶の2種類があります。
近時記憶とは記憶を保持する時間が数分から数日で比較的近い過去に関する情報の記憶です。
一方、遠隔記憶とは何年間にわたり保持された情報に関する記憶です。
長期記憶は何かのきっかけで思い出す過去の記憶で、通常は保たれます。
通った小学校の名前、家族の顔、昔の家族旅行といった記憶を自然と覚えています。
しかし、長期記憶障害ではこういった記憶が徐々に失われていきます。
記憶障害の場合は過去の出来事の記憶自体が失われているので本人に自覚がありません。
具体的な症状としては下記のようなものがあります。
- 自分の通った学校の名前など本人が通常知っていることを思い出せない
- 数年前に家族で旅行に行ったが本人は行った記憶がない
- 自分が結婚していることを思い出せない
記憶が抜け落ちているため本人の話を否定すると怒りや混乱を起こすでしょう。
そして周囲が自分に対して嘘を言っていると考えてしまうため対応には注意が必要です。
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長期記憶障害の原因
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認知症や外傷、強いストレスなどの原因となって記憶に障害が起きます。
中でも数分前から数週間前、数十年前などの記憶が失われるのが長期記憶障害です。
長期記憶障害の要因となる病気を知ることで、誤診や発見の遅れを防ぐことに繋がるでしょう。
認知症
認知症とは、脳の病気や障害などで脳神経細胞が破壊され日常生活に困難が生じる症状です。
脳神経細胞の破壊や萎縮によって記憶障害が起こります。
アルツハイマー型認知症が認知症の中で最も多く、症状は物忘れが徐々に進行します。
他にもレビー小体型認知症、 前頭側頭型認知症、脳血管性認知症などがあります。
認知症には様々な種類がありますが、認知症に共通した症状として記憶障害があります。
加齢による物忘れは出来事の一部を忘れますが、認知症では出来事自体を忘れます。
そして認知症は現在根本的な治療法はなく、発症すると徐々に進行していきます。
高次脳機能障害
高次脳機能障害は外傷や脳卒中などによる脳の損傷で知的機能に複雑な障害がある状態です。
脳に複雑な障害が起こることで記憶障害が起こります。
高次脳機能障害の症状は記憶障害や失語、半側空間無視、注意障害、社会的行動障害などがあります。
記憶障害は、物の置き場所や最近起きたことを覚えていられないなどの症状です。
原因の約8割は脳卒中(脳梗塞、脳出血、 くも膜下出血など)、約1割が頭部外傷です。
残りは脳炎、自己免疫疾患などにより引き起こされます。
パーキンソン病
パーキンソン病は主に50歳以上で発病し、震えや動作緩慢、筋萎縮などの運動症状を起こす病気です。
発症すると、神経伝達物質のドーパミンが減少します。
情報がうまく伝わらなくなり、記憶障害が起こります。
また、もの忘れや計画立って行動できないといった症状もあります。
単純ヘルペス脳炎
単純ヘルペス脳炎は単純ヘルペスウィルスの感染等により引き起こされる急性脳炎です。
母子感染などを除き、ウイルスが鼻の粘膜や口腔内の神経から脳内に入ってきます。
脳内に入ったウイルスが脳の側頭葉や辺縁系などを破壊し、記憶障害が起こります。
単純ヘルペス脳炎の初期症状は、発熱や咳、頭痛などが一般的です。
数日後に意識障害やけいれんを起こします。
そして異常行動や健忘症などの高次脳機能障害を引き起こします。
脳の側頭葉などを破壊するため、回復後も記憶障害や人格変化といった後遺症が残ります。
甲状腺疾患
甲状腺疾患とは甲状腺の異常や障害によって起きる症状の総称です。
甲状腺疾患のうち、甲状腺ホルモンが不足することで代謝が低下するため、全身のさまざまな機能が低下する甲状腺機能低下症には記憶障害がみられます。
また、甲状腺機能低下症が認知症を引き起こすこともあります。
高齢者に発症すると認知症との判別は難しいです。
原因は免疫機能の誤作動と言われていますが明確な結論は出ていません。
脳膿瘍
脳膿瘍とは細菌などによる感染症で炎症が起きることで膿が溜まる状態です。
頭部や他部位の外傷、他の臓器の感染症から血液を通じ菌が脳に感染します。
脳が損傷することで記憶障害が起こります。
症状の初めは発熱や頭痛など特異的な症状はありません。
しかし進行すると意識障害や痙攣などがあり膿瘍の場所によって症状が異なります。
大脳に膿瘍がある場合は言語障害、視野障害があり前頭葉だと記憶障害などが現れます。
通常脳内は無菌状態であり様々な理由で菌が侵入して感染をすると炎症が発生します。
長期記憶障害が起きた時の周囲の対応
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身近な人に長期記憶障害が起きた場合には周囲の方々の対応が重要になります。
本人は自覚がないため、できるだけ安心して日常生活を送れるようにしましょう。
ご家族の皆様などは下記のようなことを心がけてください。
本人を安心させる
周囲の方々は本人の状況を受け入れることを心がけましょう。
本人は記憶が抜け落ちている状態なので自覚がなく、責められてもできることはありません。
時間が経つと、自分は何かがおかしいのだと気づき不安や焦りから怒ったり混乱したりします。
また周囲の方々が否定をすると嘘を言っているのだと認識します。
日常生活を平穏に送るために本人に安心感を与えるようサポートしていきましょう。
環境を整える
金銭に関わる管理体制を整えましょう。
本人が行っていた金銭管理を代行するように手配しましょう。
保険や銀行口座については保険証書や通帳、印鑑の保管場所や暗証番号などの共有が大切です。
また、記憶障害の状況によって本人ができることを判断します。
本人が疎外感を感じることがないよう家事や外出は一緒に行いましょう。
習慣化させる
日常生活に規則性を持たせることによって安心した生活を送ることができます。
鍵や財布などの置き場所は決め、1日のスケジュールはカレンダーに記載しましょう。
日常生活を規則的に行うことは、同じことを繰り返すことになり習慣化できます。
また、大切なことや新しいことは目に見える場所に書き反復的に覚えさせます。
できるだけ突発的な出来事を避けることで本人が余計な混乱を起こさずに済みます。
オウム返しさせる
何か新しいことを覚える時には反復練習をすると良いでしょう。
長期記憶障害では数分前や数十分前の記憶が失われます。
本人にオウム返しで繰り返して言ってもらうことで記憶しやすくなります。
また、言葉以外の覚え方も本人と相談してみましょう。
体を使ったりメモを貼ったりと、さまざまな方法があります。
一方的に押し付けるのではなく、周囲の方々が症状を受け入れることが大切です。
本人の記憶障害と共存することを意識しましょう。
長期記憶障害のリハビリ方法
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記憶障害に対しては下記のようなリハビリを行います。
- 作業療法
- 音楽療法
- 認知刺激療法
- 回想法
適切なリハビリや服薬治療によって、記憶障害の進行の抑制、改善が望めます。
高齢者が記憶障害と聞くと、認知症と思い込む方が多いです。
しかし、上述したように記憶障害の原因は様々です。
原因となっている病気を治療することで、症状が改善する場合もあります。
専門家による検査やご家族による日頃の観察によって、早期治療に繋げることが大切です。
長期記憶障害のまとめ
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ここまで長期記憶障害ついてお伝えしました。
要点を以下にまとめます。
- 長期記憶障害では、数分前から数十年前までの記憶の一部が抜け落ちる
- 原因は主に認知症や単純ヘルペス脳炎、高次脳機能障害、脳膿瘍、貧血など
- 周囲の方々は本人の症状を受け入れ規則的な生活を促すことが大切
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。