認知症は高齢者が発症するイメージを持っている方が多いです。
しかし、認知症は高齢者の方に限った症状ではありません。
若い世代の方でも発症する「若年性認知症」をご存知ですか?
今回は若年性認知症の症状について以下の点を中心にご紹介します。
- 若年性認知症の症状
- 若年性認知症の誤診理由
- 若年性認知症の原因
- 若年性認知症と診断された際の対処法
若年性認知症の理解を深めるためにも、ご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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若年性認知症とは
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若年性認知症は、若年期認知症と初老期認知症の総称です。
上記の2つは発症年齢によって分けられます。
18歳〜39歳までが若年期認知症、40歳〜64歳までが初老期認知症です。
若年性認知症は、働き盛りの若い世代でも発症することが珍しくありません。
周囲の方を含め、本人も気付きにくいという特徴があります。
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若年性認知症の症状
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働き盛りの若い世代でも発症するリスクのある若年性認知症ですが、一体どんな症状がみられるのでしょうか。
若年性認知症の症状を中核症状と周辺症状の2つに分けてご紹介します。
中核症状
中核症状とは、何かしらの脳の障害によって起こる症状です。
症状の程度や時期に個人差はありますが認知症を発症すると必ず現れます。
若年性認知症における代表的な中核症状を4つご紹介します。
記憶障害
若年性認知症でみられる記憶障害は、比較的新しい記憶から薄れていきます。
初期段階では数日前のことが思い出せなくなり、大事な予定や約束などを忘れてしまいます。
次第に数分前のことも忘れるようになり、生活に様々な支障をきたす場面が増えます。
また予定や約束などを忘れた自覚がないので、いくら周囲の方に指摘されても思い出すことができません。
「取引先との約束を忘れる」「何度も同じ内容の電話をかける」など、特に仕事や人間関係などでトラブルが起きやすいです。
見当識障害
私たち人間には時間や場所、人などを正確に認識するための「見当識」という機能があります。
見当識障害が起こると、日付や季節、親しい人の顔などを正確に認識することができなくなります。
以下が具体的な症状の一例です。
- 大事な書類に日付が書けない
- 通勤途中で迷子になる
- 取引先の方の顔を見ても誰か分からない
日常生活の中で様々な失敗が増えるので、仕事上でのトラブルを起こしやすくなります。
理解力・判断力の低下
理解力や判断力が低下するため、今まで当たり前だったことができなくなります。
以下のような状態に陥る方が多いです。
- 物の片付け方が分からなくなる
- 仕事の書類が頭に入らない
- レジの計算ができなくなる
- 運転中の判断が遅くなる
実行機能障害
実行機能障害とは、物事を順序立てて計画的に実行することが困難になる症状です。
たとえば、慣れているはずの料理の順序が分からない、何度も同じものを買ってくるといった状態に陥ります。
また操作手順が分からなくなり、切符の買い方や改札の通り方まで理解できなくなる場合があります。
周辺症状
周辺症状は、中核症状によって引き起こされる二次的症状です。
認知症の方なら誰でもみられる中核症状とは異なり、必ずしも現れる症状ではありません。
若年性認知症における代表的な周辺症状を3つご紹介します。
妄想
妄想にはいくつかの種類があります。
たとえば、配偶者の浮気を疑う「嫉妬妄想」や財布などの置き場所を忘れ盗まれたと思い込む「物盗られ妄想」です。
職場の人に悪口を言われている、いじめられていると主張する「被害妄想」もあります。
幻覚
実際には見えないものが見える「幻覚」や、「幻聴」などを訴えることがあります。
幻覚でみられるのは動物や人物に関するものが多いです。
できないことが増え自尊心が傷ついたことで、妄想や幻覚が生じることもあります。
不安・焦燥・抑うつ
働き盛りの若い年齢での認知症は、本人にとって非常に辛いものです。
認知症の症状によって将来の不安や焦りを感じない方はいません。
怒りっぽくなったり涙もろくなるなど、精神状態が不安定になります。
今までは社交的だった方でも抑うつ状態に陥る場合もあります。
認知症が精神面に影響を及ぼすと、周囲の方は「人が変わってしまった」と驚きます。
認知症と聞いて、自分には関係のないことだと考えていませんか?現在、認知症の方が増加している中、いつ自分や親族が認知症を発症してもおかしくありません。この記事では若年性認知症とは何か若年性認知症になったらど[…]
若年性認知症の症状は誤診されやすい?
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若年性認知症と一般的な認知症の違いは、発症する年齢です。
症状は高齢者の方が発症する認知症と大差はありません。
しかし、日常生活に支障をきたしていても、高齢でないため認知症とは思われにくいです。
そのため「うつ病」や「更年期障害」などと誤診されやすいのが難点です。
本当は若年性認知症であるにも関わらず誤診されるケースもあります。
さらに症状を悪化させる危険もあるため、不安であればセカンドオピニオンを受けましょう。
若年性認知症の症状の原因
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若年性認知症はいくつかの原因によって発症します。
若年性認知症の原因を3つご紹介します。
アルツハイマー病
アルツハイマー病は、「タウ」という異常なタンパク質が脳内に蓄積されることで発症します。
残念ながら、アルツハイマー病を完治する治療法は現在も見つかっていません。
進行速度はゆっくりですが最終的には単純な基本的作業もできなくなります。
全認知症の約半数以上がアルツハイマー型認知症となっています。
脳血管性認知症
脳血管性認知症は、「脳梗塞」や「脳出血」など脳血管障害によって起こります。
脳血管性認知症でみられる症状は、記憶障害や理解力・判断力の低下など他の認知症と大差はありません。
しかし症状が突然現れたり、安定していたと思うと急に悪化したりと症状の現れ方が特徴的です。
特定の分野のことはしっかりできるにも関わらず、他は何もできないといった「まだら認知」といわれる特徴もあります。
前頭側頭型認知症
前頭側頭型認知症は、前頭葉や側頭葉前方に脳の萎縮がみられ、他の認知症にはない症状が現れます。
前頭側頭型認知症を発症すると人格や社会性、言語や聴覚などが正常に機能しなくなります。
万引きなどの軽犯罪や暴力を振るってしまう方も多いです。
感情が鈍くなったり、自発的に言葉を出しにくくなったりすることも起こります。
レビー小体型認知症
レビー小体型認知症は、レビー小体という特殊なタンパク質が脳内に現れることで発症する認知症です。
認知機能の低下や幻視、幻聴などの症状を引き起こします。
歩行障害や姿勢反射障害などを引き起こす、パーキンソン症状も現れる点が特徴的です。
若年性認知症と診断されたら
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では、若年性認知症と診断された場合は一体どうしたら良いのでしょうか。
「若年性認知症と診断された際の対処法」を当事者と介護者に分けてご紹介します。
当事者
若年性認知症という診断は、本人にとって非常に辛いものです。
突然の出来事でどうしたら良いのか分からず戸惑ってしまうでしょう。
以下の対処法を参考にしてください。
勤務先に相談
若年性認知症と診断されたら、まずは勤務先に相談しましょう。
一度退職すると再雇用が困難な場合が多いです。
若年性認知症であると上司や産業医にしっかり相談しましょう。
部署移動や勤務時間の変更などで対応してもらえるかを聞くことが大切です。
仮に今の職場で働き続けることが難しい場合は、障害者雇用枠に入るのも一つの方法です。
その場合は障害者手帳の取得が必要です。
公共サービスの利用
介護保険などの公共サービスの利用は原則65歳以上です。
しかし、認知症と診断された場合は40歳以上であれば利用できます。
最近では若年性認知症の若い方でも受け入れるデイサービスなどが増えています。
また、福祉用具のレンタルや住宅リフォームなども介護保険が適用されるので必要に応じて活用しましょう。
公共サービスを利用する際は要介護や要支援認定を受ける必要があります。
まずは市区町村の役所や地域包括支援センターなどに相談すると良いでしょう。
介護者
若年性認知症と診断された本人は不安や辛さを抱えています。
そのため、本人の話を否定せずしっかり相談に乗りましょう。
認知症を発症するとできないことや失敗が増えるため、家族の支えが必要不可欠です。
余計に不安を感じないためにも、本人が安心できるような声かけをしてあげましょう。
生活の中で認知症の症状がみられても、無理強いや否定をせず受け入れる気持ちを持ちましょう。
若年性認知症の症状がでたら|早期発見・早期治療が大切
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若年性認知症には早期発見・早期治療が非常に大切です。
早期発見ができれば早い段階から認知症を遅らせるための治療ができます。
また、記憶力や理解力・判断力が十分にあるうちに将来や金銭についての話し合いも可能です。
かかりつけの医師がいる場合はすぐに相談しましょう。
脳神経内科や心療内科などでも認知症の診察ができます。
子供に症状が出たら本人は若年性認知症だと伝えるべき?
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年齢問わず、子供に若年性認知症だと伝える際は迷いが生じます。
子供を不安にさせたり、傷つけてしまうのではないかという考えが浮かぶでしょう。
しかし、家族である以上いつかは伝えなければいけない時期がきます。
子供の年齢やそのときの状況により、伝える時期や伝え方は変わるでしょう。
誰しも理解するのには時間がかかりますし、ショックも受けます。
認知症の方の生活に家族のサポートは必要不可欠なので、時間をかけてでも理解してもらうよう努めることが大切です。
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若年性認知症の症状まとめ
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ここまで、若年性認知症の症状についてご紹介しました。
要点を以下にまとめます。
- 若年性認知症の症状は、記憶障害や見当識障害、幻覚など
- 若年性認知症は高齢でないため、うつ病や更年期障害と誤診されやすい
- 若年性認知症の原因は、アルツハイマー病や前頭側頭型認知症など
- 若年性認知症と診断された場合、勤務先に相談することが大切
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。