認知症は、加齢とともに誰でも発症する可能性があります。
「認知症になるのは仕方ない」と諦めるのではなく、徹底した認知症予防が重要です。
様々な認知症予防法がありますが、「運動」が効果的であることを知っていますか?
今回は認知症に対する運動の効果について以下の点を中心にご紹介します。
- 認知症における運動の効果
- 認知症予防に効果的な運動の種類
- 運動を継続するポイント
認知症予防の効果を高めるためにも、ご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
スポンサーリンク
認知症と運動は大きな関係がある?
認知症発症と運動の関係については、各国で研究されており、さまざまなことが明らかになっていきています。
ここからは、認知症と運動の関係性について詳細を解説していきます。
運動する人は認知症発症リスクが低い?
運動する人の認知症発症リスクについては、WHOの「認知機能低下および認知症のリスク低減」のガイドラインに下記のような記述がありました。
この20年間の研究により、学歴や、運動不足、喫煙、不健康な食事およびアルコールの有害な使用などの生活習慣に関連した危険因子が、認知機能障害や認知症の発症と関連していることが示されている。
さらに、高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、肥満やうつ病などの特定の病態は、「認知症発症リスクの増大」と関連している。
つまり、運動や食事など日々の生活習慣が、発症リスクと関わっているのです。
また、2001年に海外で実施された高齢者4,615人を対象にした別の研究でも、運動量の多いグループと、少ないグループでは、認知症の発症リスクが明らかに下がっていると報告されています。
なぜ発症リスクが低い?
運動しないことは、高血圧・肥満・糖尿病などの認知症の危険因子を増やします。
65歳以上のアメリカ住民1,138名を対象とした研究によると、高血圧・糖尿病・心疾患・喫煙の有無により、発症リスクを検証したところ、アルツハイマー型の発症数が増えました。
さらに、3個以上の危険因子を有する人は、3倍以上に跳ね上がったと報告されています。
一方で、定期的な運動をすることは、これらの危険因子を減らすことが期待できます。
そのため、運動により発症リスクを下げられるでしょう。
スポンサーリンク
認知症に対する運動の効果
認知症に運動が効果的である理由は様々です。
運動はときに億劫だと感じますが、心身に良い影響をもたらしてくれます。
「認知症に対する運動の効果」を四つご紹介します。
脳の活性化
私たち人間の体は脳の働きによって動いています。
脳が健康であれば、ストレスを感じることなく心身を健やかに保つことができます。
脳を活性化し健康に保つためのポイントは、五感を刺激することです。
そして、五感を刺激することができるのが運動です。
運動中は五感で捉えたものを判断することで、自分の体の状態を把握します。
把握した状態が体に伝わると的確な動作を行うことができます。
さらに、今の動作がどのような影響を与えるかを把握し、次の動作へと繋げます。
以上の流れにより脳の機能がフル稼働し、脳が活性化されます。
脳の血流の改善
運動によって全身の血流が良くなることで、酸素や栄養が脳にしっかり届きます。
運動不足は体の血行不良を引き起こします。
体が血行不良を起こすということは、脳にも十分な血流が流れなくなります。
運動の効果の一つとして、全身の血流が良くなることが挙げられます。
特に有酸素運動では取り入れた酸素が体中を巡り、筋肉の動きによって血行の流れを改善します。
自信回復
運動を行っていると自然と集中し、心身共にリフレッシュされる効果があります。
認知症の方は不安や孤独感、劣等感などのマイナスな感情を抱きやすいです。
運動は、一時的にマイナスな感情を忘れさせてくれます。
他者との交流を避け自宅に引きこもりがちになると、自信がますますなくなります。
ですが、運動をすることで「以前よりも早く体を動かせるようになった」など成長体験を積み上げることができ、自分に自信をもつことができます。
生活が整う
認知症を発症すると、日常生活に様々な変化が起こります。
たとえば、活動量が減ることで食欲が落ちたり、夜に眠れず不眠となり昼夜逆転の生活になるなどが挙げられます。
生活の乱れが心身の乱れに繋がり、負のループに陥ってしまいます。
運動を行い活動時間と休息時間のメリハリをつけた生活をすれば、認知症の症状悪化を防ぐことができます。
「食事」「運動」「睡眠」の三つは基本的ではありますが、基本的なことこそが認知症予防や改善に効果的です。
認知症予防に効果的な運動
認知症に対する運動の効果をご紹介しました。
最も気になることは「どのような運動をすれば良いのか」です。
「認知症予防に効果的な運動」を四つご紹介します。
自分に合ったものを選んで実践してみてください。
ストレッチ
ストレッチは、介護施設などでも取り入れられています。
ストレッチには、「アキレス腱伸ばし」「首・肩回し」「背伸び」などがあります。
ストレッチを行うことで認知機能向上の効果や老化を防ぐ効果が期待できます。
体が硬い方にとって多少の痛みを伴うかもしれませんので、無理をしすぎないことが大切です。
自分が気持ち良いと感じるところで止めましょう。
コグニサイズ
コグニサイズとは、認知症予防のために国立長寿医療センターが開発した運動です。
コグニサイズでは運動と認知課題を同時に行うため、筋力アップや脳の活性化に繋がります。
コグニサイズの運動には以下のようなものがあります。
- 足踏みをしながら数を数える
- ウォーキングをしながら歌う
- ステップを踏みながらじゃんけんをする
二つの動作を同時に行うのがコグニサイズの特徴です。
一人だけではなく、複数人で行うことも可能です。
無酸素運動
無酸素運動にハードなイメージを持っている方が多いかもしれません。
しかし、無酸素運動は決して激しい運動というわけではなく、筋力アップに重点を置いた運動です。
加齢とともに筋力は衰えてしまいますが、筋力維持は歩行中の転倒予防に効果的です。
認知症はもちろん、足腰の弱さや寝たきりを予防するためにも重要な運動だと言えます。
背中や腰をひねったり、椅子や壁などを支えにスクワットを行うなど、簡単な動作で十分効果があります。
体に負担をかけすぎず、無理のない範囲で行うことが大切です。
有酸素運動
有酸素運動は、一定時間体に軽〜中程度の負担をかけて行う運動です。
そのため、運動が苦手な方や初心者の方でも比較的取り組みやすいです。
先ほどもお伝えした通り、有酸素運動で取り入れた酸素により血流改善効果があります。
脳の血流を良くし、活性化させてくれるのが有酸素運動のメリットです。
では、有酸素運動の中でも何を行えば良いのでしょうか。
以下に代表的な有酸素運動をご紹介します。
ウォーキング
ウォーキングは有酸素運動の中でも特に代表的な運動です。
ポイントは背筋をしっかり伸ばして歩幅広めで少し速く歩くことです。
ダラダラと歩いていては意味がないので、背筋、歩幅、歩くスピードを意識しましょう。
ジョギング
ジョギングは、ウォーキングに比べ少し負荷がかかります。
ある程度筋力や持久力をつけてからがおすすめです。
ジョギングを行う際は全力で走る必要はありません。
会話ができる程度のペースを維持し、30分を目安に継続して走ると効果的です。
水泳
水泳は全身運動であり、手や足で異なる動きを行うため脳の活性化に繋がります。
泳ぎが苦手な方には水中ウォーキングがおすすめです。
水泳や水中ウォーキングを行う際はこまめに休息を取り、30分以上継続すると良いでしょう。
ヨガ
ヨガは、激しく体を動かしたくない方におすすめの有酸素運動です。
ヨガのポイントは、腹式呼吸を意識することです。
腹式呼吸を意識して行うことで血行が促進され、新陳代謝が上がります。
また、メンタルケア効果もあるため、気持ちが落ち着き、心が安定する効果が期待できます。
認知症予防の運動を続けていくためのポイント
運動は、継続して行うからこそ効果を得ることができます。
たとえ週に2〜3回だったとしても続けることが重要です。
「運動を続けていくためのポイント」を二つご紹介します。
無理のない程度の運動を心がける
まず、運動を続けていく上で重要なポイントは無理ない程度の運動を心がけることです。
苦を感じず毎日行える方は問題ありませんが、必ずしも毎日行う必要はありません。
「やらなければ」という気持ちは運動の意欲ややる気を下げてしまいます。
「今日はやろう」という気軽な気持ちが大切です。
毎日であっても週に数回であっても、自分が億劫に感じない頻度で行うことを心がけましょう。
また、運動を続けていく上で頻度だけではなく内容も重要なポイントです。
あまりにも激しい運動を行ってもモチベーションが下がり、すぐに嫌になってしまいます。
自分の体が「気持ち良い」「楽しい」と感じる運動を行いましょう。
慣れてきた場合に少しずつ負荷を加えることもおすすめです。
家族や介護者と楽しむ
運動に楽しさを感じることができれば、自然と続けていくことができるでしょう。
一人で運動を行っていると、モチベーションが下がることもあります。
家族や介護者と一緒に行うことでモチベーションを維持しやすく、楽しんで運動を行えるはずです。
「あと5分!」「もう少し頑張ろう!」などと声を掛け合ってみてください。
運動は認知症に効果がないという声も?
前半では、運動により認知症の発症率を予防できることをお伝えしてきました。
その一方で、限られた効果しかなかったという研究結果も出ています。
「英オックスフォード大学」の研究では、軽中度の認知症を患っている人々向けの運動プログラムに「効果がない」という研究結果を発表しています。
300人以上で70代の男女を対象とした調査で、4カ月間エアロビクスや筋力トレを実施しましたが、認知能力に改善は見られず、体力面のみ向上が見られました。
「英国アルツハイマー病協会」の研究では、運動はもっとも認知症リスクを低減させる手段と主張しています。
ただし、既に認知症の方には、より効果的な運動プログラムの開発が必要という見解です。
これは、あくまで発症後の効果の主張であり、「発症前の日頃の運動は、認知症予防に効果があることは変わらない」ということです。
運動により、高血圧・メタボリックシンドローム・糖尿病などの危険因子を減らすことで、認知症リスクを充分に軽減できるでしょう。
認知症予防を指導する介護予防運動指導員とは
運動中の転倒のリスクを考えると、なかなか運動を行う気になれない高齢者の方も少なくありません。
しかし、介護予防運動指導員という高齢者の方の介護予防運動に特化した専門家がいます。
不安がある方は頼ってみるのも一つの方法です。
専門家の元で運動の指導をしてもらえるので、今まで乗り気ではなかった方も安心して運動に取り組むことができます。
認知症と運動のまとめ
ここまで、認知症と運動についてご紹介しました。
要点を以下にまとめます。
- 認知症に対する運動の効果は、「脳の活性化」や「自信回復」など
- 認知症予防に効果的な運動は、「コグニサイズ」や「有酸素運動」など
- 無理ない程度の運動や家族と一緒に楽しむことが継続のポイント
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。