認知症対策において重要視される早期診断。
発見が遅れれば症状が進行し、日常生活に支障をきたす恐れもあります。
認知症を診断するためには、どのような検査や受診機関があるのでしょうか?
今回、認知症の診断方法について以下の点を中心にご紹介します。
- 認知症の早期診断が大切な理由
- 認知症の診断の流れ
- 認知症の診断に必要な情報
- セカンドオピニオンを受ける際の注意点
認知症を早期発見するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までご覧ください。
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認知症の早期診断が大切な理由
認知症は、様々な要因で脳が障害を受けることによって発症します。
代表的な症状は、記憶力の低下や認知機能の異常です。
日本では、2025年に高齢者の5人に1人が認知症になるといわれています。
残念ながら、現在認知症の根本的な治療法はまだ見つかっていません。
しかし、早期発見によって以下の恩恵を受けることができます。
- 進行を遅らせることができる
- 治療できる可能性が高まる
以下で詳しく解説します。
早めに進行を遅らせることができる
基本的に認知症は完治させることができません。
認知症治療の目的は症状の進行を抑制することです。
簡単な記憶障害から始まり、末期になると家族のことも認識できなくなります。
症状が進行した段階で治療や対策をしても、以前の状態まで回復させることはできません。
しかし、初期段階で治療できた場合、軽度の症状から進行しないよう対策できます。
そのため、できるだけ早期に診断を受けることが推奨されています。
治療可能な場合がある
前述の通り、認知症を完全に治すことはできないとされています。
しかし、軽度認知障害(MCI)の状態であれば改善が見込めます。
軽度認知障害とは、認知症を発症する前段階の状態です。
日常生活には支障のない程度の物忘れを起こしやすくなります。
この段階で適切な治療を行うことができれば、認知症の発症を防ぐことができます。
また、正常圧水頭症は、手術による改善が見込めるため「治せる認知症」と呼ばれています。
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認知症の診断の流れ
認知症を正式に診断できるのは医師のみです。
認知症の診断を受けるためには、医療機関での検査が必要になります。
以下、認知症診断の流れについて説明します。
面談
面談は、認知症診断や治療方法を検討するうえで欠かせないプロセスです。
本人の様子から疑われる認知症の種類を特定し、治療方法の検討をします。
生活状況や病歴、元々の性格から、認知症を疑うようになったきっかけも大切です。
ただし、面談のみでは認知症の種類を特定することはできません。
画像検査などいくつかの検査と面談内容を照らし合わせることで、より正確に種類を特定することができます。
身体検査
身体検査も、認知症診断を行ううえでは重要な検査となります。
血液検査、尿検査、内分泌検査、心電図検査、胸部X線写真が一般的です。
身体に異常がないかを確かめます。
認知症の原因となる病気の有無、認知症以外の症状が発症している可能性を確認できます。
認知症検査
認知症検査では、神経心理学検査と脳画像検査が行われます。
神経心理学検査
神経心理学検査の目的は、記憶力や理解力など認知機能がどれほど保たれているのか確かめることです。
日本で最も行われている検査は、HDS-R(長谷川式簡易知能評価スケール)です。
HDS-Rは口頭による質問形式で行われます。
短時間で行えることから被験者への負担は少ないです。
正解の合計点数から認知機能のレベルを評価します。
30点満点中20点以下になると認知症を疑う状態とされています。
次いで使用されることが多いのが、国際的に広く用いられているMMSE(ミニメンタルステート検査)です。
HDS-R同様に、簡易的な質問の合計点から認知機能のレベルを測ります。
そのほか、脳の機能の一部を検査したい場合には、時計描画検査などが用いられることがあります。
脳画像検査
画像検査の目的は主に、脳の萎縮度合いや血流の状態から認知症の種類を特定することです。
認知症診断のための画像検査でもっとも多いのがCT検査です。
CT検査ではX線を照射することにより、各部位のX線の吸収量を画像化させます。
脳を輪切りにした状態の断面図を確認することができ、各部位の萎縮度合いなどを確かめることが可能です。
また、脳の断面図を見る場合にはMRIが用いられることもあります。
MRIは、電磁波を当てることで生じる電気信号を画像化することができます。
X線と違い、被ばくのリスクがないのが特徴です。
そのほか、脳の血流の状態を確認する際にはSPECT検査が用いられます。
SPECT検査では、放射性医薬品を用いて血流の状態を画像化します。
萎縮が起こっていない段階における、脳の機能異常を確認するのに有効な検査方法です。
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認知症の診断に関するガイドライン
認知症診断ガイドラインとして3つの国際的に有名な3つの基準があります。
具体的には以下の通りです。
ICD-10
制定年:1993年
制定機関:世界保健機関
内容
- 記銘力や認知能力が低下し日常生活動作や遂行機能に支障をきたす
- 意識混濁が十分な期間保たれている
- 情緒易変性、易刺激性、無感情、社会行動の粗雑化など認める
- 記銘力や認知機能力の低下が6カ月以上続いている
NIA-AA
制定年:2011年
制定機関:米国国立老化研究所、Alzheimer病協会ワークグループ
内容
- 仕事や日常生活の障害
- 遂行機能の低下
- せん妄や精神疾患がない
- 精神疾患など他疾患を除外した認知機能障害の存在
- 2領域以上の認知機能や行動の障害
DSM-5
制定年:2013年
制定機関:米国精神医学会
内容
- 遂行機能や記憶など1つ以上の認知領域が以前より有意に低下
- 毎日の行動において、認知欠損が自立を阻害する
- 認知欠損の原因がせん妄の状況でのみ起こるものではない
- 認知欠損の原因がうつ病など他の精神疾患によって説明されない
認知症の診断基準に関わる必要な情報
認知症は種類によって発症原因が異なります。
認知症と類似した症状の病気もあるため、診断には慎重な見極めが必要です。
認知症の診断を行う際は出現する症状のみならず、さまざまな角度から情報収集をします。
以下、認知症診断のために必要な情報について説明します。
症状の発症時期
症状の発症時期を知ることは、認知症診断にとって非常に重要です。
発症時期を知ることで、症状の進行度合いや予後を予測することができます。
同時期に起きた環境の変化などを把握し、発症の原因を探ります。
治療中の病気
治療中の病気からも、認知症の種類を特定できる場合もあります。
例えばアルコール依存症に対しての治療を行っている場合に想定できるのは、アルコール性認知症です。
そのほか、パーキンソン病の治療を行っている方の場合、パーキンソン症状を主症状に持つレビー小体型認知症が疑われる場合もあります。
服用中の薬
服用している薬が原因となって引き起こされる薬剤誘発性認知症があります。
パーキンソン病の治療薬などで処方される、抗コリン作用を持つ薬剤が原因とされています。
抗コリン薬による認知機能の低下では、記憶力低下や注意力低下、せん妄などが起こるのが特徴です。
そのほか、抗精神病薬や睡眠薬でも、薬剤誘発性認知症を引き起こす可能性が指摘されています。
認知症の診断テスト
認知症のことが気になり始めたら自分でチェックする方法があります。
診断テストは以下の項目で行います。
チェック1 | 財布や鍵など、物を置い場所がわからなくなることがありますか |
チェック2 | 5分前に聞いた話を思い出せないことがありますか |
チェック3 | 周りの人から「いつも同じことを聞く」などのもの忘れがあると言われますか |
チェック4 | 今日が何月何日かわからないときがありますか |
チェック5 | 言おうとしている言葉が、すぐに出てこないことがありますか |
チェック6 | 貯金の出し入れや、家賃や公共料金の支払いは1人でできますか |
チェック7 | 1人で買い物に行けますか |
チェック8 | バスや電車、自家用車などを使って1人で外出できますか |
チェック9 | 自分で掃除機やほうきを使って掃除ができますか |
チェック10 | 電話番号を調べて、電話をかけることができますか |
チェック1~10までの診断を以下の表で行って見てください。
チェック項目の行動を以下の点数を参考にして計算してみてください。
問題なくできる場合 | 1点 |
大体できる合 | 2点 |
あまりできない場合 | 3点 |
できない | 4点 |
該当する項目の合計点が20以上の場合は認知機能に支障が出ている場合があります。
ただし、診断テストはあくまでも目安です。
認知症の診断は医療機関の受診が必要です。
診断テストで認知症が疑われる場合は医療機関を受診しましょう。
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認知症の診断で区別すべき病気
認知症を診断する上で他の疾患との鑑別が必要となります。
認知症の診断で区別すべき病気は以下の通りです。
せん妄
せん妄は意識障害を主症状とした様々な精神症状が起こる病気です。
見当識障害や意識レベルの低下、幻覚や興奮などの症状がみられます。
せん妄は脱水など内科的な病気や脳の病気など全身状態の悪化が引き金になります。
また、入院による環境的な変化も要因の1つになります。
認知症との違いは以下の通りです。
- せん妄は急速に発症し、日内変動が強い
- 数日以内に経過することが多い
- 病気の発症に関連した誘因が多い
うつ病
うつ病は精神疾患の内、気分障害の1つに分類されます。
睡眠障害や易疲労性、など身体症状の他、集中力・記銘力低下など精神症状が見られます。
うつ病は原因不明ですが精神的・身体的ストレスが背景にあるといわれています。
結婚や進学など環境変化や悲しい体験など様々です。
認知症との違いは以下の通りです。
- うつ病は急に発症し、記憶や遂行機能障害は永続的ではない
- 病識があり、自己の機能障害を過剰評価してしまう
- 抗うつ薬に反応が良い
出典:厚生労働省「うつ病」
加齢に伴う生理的健忘
加齢により、部分的に認知機能の低下がみられる場合があります。
記憶力や判断力、適応力の低下などが見られます。
物忘れや記憶の想起に時間がかかるなどの症状が見られます。
認知症との違いは以下の通りです。
- 生理的健忘は一般知識の物忘れに対し、認知症は出来事を忘れる
- 症状の進行がほとんどない
- 物忘れの自覚がある
- 新しいことが覚えられる、日時の見当識は保たれている
統合失調症
統合失調症は精神疾患の1つです。
幻覚や被害妄想以外に記憶力や判断力低下など認知機能の障害が見られます。
統合失調症は原因不明ですが脳の神経伝達物質のバランスが影響するといわれています。
また、大きなストレスなど環境要因が関係している可能性があります。
認知症との違いは以下の通りです。
- 発症年齢が若い(10~40歳が好発年齢)
- 抗精神病薬に反応が良い
精神遅滞
精神遅滞は知的発達に障害がある病気です。
思考力や問題解決能力など全般的な精神機能の低下があります。
認知症との違いは以下の通りです。
- 先天性の疾患
- 記憶障害は必須ではない
出典:厚生労働省「知的障害(精神遅滞)」
せん妄によって、急に時間や場所の認識に異常が起こる、または急に無気力になってしまう、高齢者の方がいます。もし、家族や周りの方にせん妄の症状が現れた場合、どのように対処すればよいのでしょう?今回はせん妄について以下の項目を中心に解[…]
認知症の診断は何科の病院を受診すべき?
相談先を知らなければ認知症の発見が遅れてしまうかもしれません。
万が一、認知症が疑われた際に受診すべき機関を知っておくことで、早期発見に繋がる可能性もあります。
以下、認知症の診断でかかるべき機関について説明します。
かかりつけ医
まず、かかりつけ医がいる場合には、専門科を受診する前に一度相談しておくと良いです。
かかりつけ医はこれまでの治療経過や検査データ、内服状況などを把握しているためです。
いきなり専門科で受診しても、これまでの治療内容がわからなければ正しい診断ができないこともあります。
適切な医療機関への紹介状を作成してもらうことができ、医療機関同士で情報共有してもらうことが可能です。
認知症サポート医
認知症サポート医は、厚生労働省の要綱に基づいた研修を受けた、認知症支援を行う医師のことです。
かかりつけ医への助言や協力、地域包括支援センターや専門機関との連携を図ります。
各自治体のホームページなど認知症サポート医のいる医療機関を確認してみてください。
物忘れ外来
加齢による物忘れか認知症による物忘れか、判断が難しい場合があります。
気軽な気持ちで専門医の診断を受けてみましょう。
物忘れ外来への受診は、認知症の早期発見につながります。
加齢による物忘れだったとしても、抱えていた不安を取りのぞくことができます。
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認知症の診断書発行について
次は、認知症の診断書の発行について、その流れや費用、診断書の様式について説明します。
以下で詳しく説明するので、参考にしてください。
発行までの流れ
診断書が発行されるまでの流れとしては、まず初めに、医療機関の専門外来を受診します。
次に、問診の後、神経心理学検査と脳画像検査の2種類の認知症検査を受けます。
最後に、医師は認知症の診断基準に基づき、認知症であるかを判断し、診断書を発行する流れとなります。
診断書発行にかかる費用
認知症の診断書発行にかかる費用は、検査内容により異なりますが、5,000円から2万円を目安に考えておくと良いでしょう。
診断書の様式
高齢ドライバーが運転免許を更新する際に求められる診断書の様式は、警察庁から「モデル診断書様式」が提示されています。
認知症を疑って受診する場合も、基本的に同じ様式になります。
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認知症の診断書はどこで必要?
認知症の診断書が必要になる主な場面や主な役割について解説します。
診断書が必要になる主な場面
認知症の診断書が必要になるのは、おもに75歳以上の高齢ドライバーが運転免許を更新する場合です。
免許更新時の認知機能検査で引っかかった場合、診断書の提出が求められます。
診断書の役割
認知症と診断された場合は、認知症を抱えながらも、できるだけ今後の生活の質を低下させないため、何を優先すべきなのかを、家族で話し合い、明確にする必要があります。
なお、認知症と診断されなかった場合でも、75歳以上の高齢ドライバーが運転免許を更新する際に求められる「診断書」は、都道府県公安委員会に提出する必要があります。
しかし、認知症を疑って受診している場合は、検査方法の異なる別の病院で受診することも一つの方法です。
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認知症の確定診断と臨床診断とは?
認知症の診断には、確定診断と臨床診断の2つの方法があります。
(1)確定診断
目的 | 認知症の原因となっている疾患をはっきりと確定するための診断 |
検査内容 | 脳を解剖し病理診断 |
時期 | 患者が死亡した後 |
(2)臨床診断
目的 | 認知症であるかどうかを判断するための診断 |
検査内容 | 問診や神経心理学検査、脳画像検査など |
時期 | 認知症の疑いがある場合は、できるだけ早期に受診することが望ましい |
認知症と診断されたら
認知症と診断されたときの対応を以下の2点からまとめます。
- 患者本人がとるべき行動
- 家族や周囲の人がとるべき対応
患者本人がとるべき行動
認知症は徐々に進行していく病気です。
まずは、冷静になって今後の生活のために以下の対策を立てることが大切です。
【認知症を正しく理解する】
認知症と上手に付き合っていくためにも認知症を正しく理解することが大切です。
認知症を正しく理解することで、今後の適切な行動をとることができます。
【サポート体制を整える】
国や自治体には認知症をサポートする制度があります。
地域包括センターに相談し介護保険サービスなどのサービスが受けられるようにします。
介護保険サービスでは以下のようなサービスを受けることができます。
ケアプランの作成 | 自宅での訪問介護サービス(家事援助など) |
デイサービス | ショートステイ |
特別養護老人ホームなどへの入居サービス | 介護用品の購入補助・レンタル |
【かかりつけ医を見つける】
認知症診療に知見のあるかかりつけ医の存在は今後の生活に大変重要です。
かかりつけ医は地域包括支援センターと相談するとよいでしょう。
家族や周囲の人がとるべき対応
認知症の介護で家族や周囲の人が取るべき対応で大事なことがあります。
認知症の介護で最も大事なことは本人が安心できる環境を作ることです。
初期の段階で本人の不安を取り除くためにも以下のようなことを話し合うことが大切です。
- 本人と認知症である事実を共有すること
- 将来にわたり本人が安心して生活できる環境について
・家族とのきずな
・家族の介護(誰が世話をするかなど)
・入所できる施設
・施設で受けられるサービス
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認知症診断後のセカンドオピニオンについて
セカンドオピニオンは、主治医とは別の医者に相談することです。
認知症に関する診断に納得ができなかった場合にはセカンドオピニオンが有効です。
ただし、セカンドオピニオンは保険適用外の自費診療となります。
費用が高くなる場合があり注意が必要です。
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認知症と診断のまとめ
ここまで、認知症の診断についてお伝えしました。
要点を以下にまとめます。
- 認知症を早期診断することで、症状を抑制できる場合がある
- 診断の流れは、面談、身体検査、認知症検査
- 診断では、発症時期や症状のきっかけに関する情報が必要
- セカンドオピニオンは、保険適用外の自費診療となる
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
認知症と聞いて、自分には関係のないことだと考えていませんか?現在、認知症の方が増加している中、いつ自分や親族が認知症を発症してもおかしくありません。この記事では若年性認知症とは何か若年性認知症になったらど[…]