超高齢化社会の日本において、年々増加している認知症。
認知症と聞くと、記憶障害を思い浮かべる方が多いと思います。
不安を感じつつも、受診まで踏み出せていない方がほとんどです。
では、記憶障害の診察は何科でできるのでしょうか?
本記事では、記憶障害の受診方法について以下の点を中心にご紹介します。
- 記憶障害の受診方法
- 受診のタイミング
- 記憶障害の診察
- 専門機関に抵抗がある場合
不安を放置しないためにも、ご参考いただけますと幸いです。
是非最後までお読みください。
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そもそも記憶障害とは?
記憶障害とは記憶に関するプロセスが障害されることによって生じる脳機能障害です。
記憶とは物を覚えたり必要な時に思い出すことを言います。
記憶するには以下のプロセスが必要になります。
- 記銘:外から入力される様々な情報から必要な情報を選択して覚える
- 保持:覚えた情報を脳内に保存して維持する
- 想起・再生:必要な時に保存された情報を思い出す
出典:東京都福祉保健局「脳損傷後の記憶障害の理解と支援のために」
記憶障害の症状とは?
記憶に関するプロセスの障害された場所によって記憶障害の症状は異なります。
記憶障害の症状別分類は以下の通りです。
持続時間による分類
短期記憶障害 | 記銘に関する記憶障害です。 |
長期記憶障害 | 保持や想起・再生に関する記憶障害です。 |
内容による分類
エピソード記憶障害 | 体験した出来事に関する障害です。 |
意味記憶障害 | 蓄積された言語や公式などの知識に関する障害です。 |
手続き記憶障害 | 学習など繰り返すことによって身についた技術や技能に関する障害です。 |
出典:船橋市立医療センター「疾患別説明書:記憶障害と健忘(TGA-89)」
記憶障害の原因とは?
記憶障害の原因は脳の器質的疾患によって生じます。
具体的には以下の通りです。
- 脳卒中:脳出血、脳梗塞など
- 脳外傷:脳挫傷、びまん性軸索損傷など
- 低酸素脳症:一酸化炭素中毒、心肺停止蘇生後など
- 感染症:脳炎など
- 脳腫瘍
- 認知症:アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症など
出典:東京都福祉保健局「脳損傷後の記憶障害の理解と支援のために」
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記憶障害の受診は何科?
記憶障害に不安を感じた場合、何科を受診すればいいのでしょうか?
記憶障害に対応可能な診察場所をご紹介します。
心療内科
心療内科は、心理的な要因から現れた身体の症状を治療するための科です。
心理的要因による症状を「心身症」といいます。
心身症を専門としている場合もありますが、心の病気全般に対応可能な心療内科が多いです。
記憶障害が心理的要因だった場合は、心療内科の受診がおすすめです。
精神科
精神科は、精神疾患を専門に扱う診療科です。
妄想や幻覚のような症状など、心の病気を治療します。
認知症による記憶障害も扱っているので、迷ったら精神科受診がおすすめです。
心療内科と精神科は、心理的要因による症状を診察できるという点では似通っています。
ただし、症状の出現箇所に違いがあります。
心療内科は「身体」、精神科は「こころ」に現れる病気が専門です。
脳神経外科
脳神経外科とは、主に外科的治療が必要な神経系疾患の診断・治療を行う科です。
医学の進歩によって、外科的治療が可能な病気が増えてきました。
そのため、脳神経外科の治療対象も確実に増えています。
記憶障害、特に認知症に関しては脳神経外科でも診断が可能です。
認知症の中には、手術によって改善が見込めるものもあります。
慢性硬膜下血腫や正常圧水頭症によるものです。
脳神経外科が得意な分野であり、治療も可能です。
その他の要因で認知症と診断された場合は、他の科へ紹介される流れとなります。
神経内科
神経内科は、脳や脊髄、末梢神経、筋肉、血管まで身体全体の病気を総合的に診療する科です。
神経内科で診察できる症状は多岐にわたります。
物忘れや頭痛、めまいも対象の症状です。
神経内科では、記憶障害の原因が何なのかを診断してもらうことが可能です。
上述した精神科などでは、原因によっては他の科で再受診となることもあります。
原因に見当がつかない場合は神経内科への受診が安心でしょう。
物忘れ外来・認知症疾患医療センター
認知症の増加を受けて、物忘れ外来や認知症疾患医療センターという施設も設置されています。
物忘れ外来は名前の通り、物忘れを訴える方を中心に診ています。
認知症の専門医が在籍していることも多いため、安心して受診できます。
認知症疾患医療センターでは、認知症の専門医による診断・治療方針の決定を行っており、入院も可能です。
都道府県ごとに複数設置されているので、気軽に受診できます。
認知症についての医療福祉相談も行っているので、何も分からないという方にもおすすめです。
各診療科の違い
ここまでに、記憶障害を受診できる科をご紹介しました。
どの科であっても、記憶障害が発症したときに受診できます。
診療科ごとの得意分野が、最も大きな違いとなっています。
心療内科や精神科では、心の病気を専門としています。
認知症の周辺症状であるうつ症状や不安などへの対処も可能です。
脳神経外科は外科治療が得意です。
手術で治る認知症であれば、すぐに治療を進めることが出来ます。
しかし、結局どこを受診すればよいのか分からないという方もいらっしゃるでしょう。
迷いがある場合は、まず「かかりつけ医」を受診してください。
かかりつけ医は普段のあなたの様子を診ています。
いつもとどう違うのか、どう悪化したのかを判断してくれます。
必要であれば、適切な科に紹介してもらうことも可能です。
かかりつけ医がいないという方は、地域の専門家に相談してみましょう。
地域には各自治体に窓口が設置されています。
認知症専門のコールセンターもありますので、利用してみてください。
記憶障害で受診するタイミング
「今まで出来ていたことが出来なくなった」「仕事でミスが重なっている」など、些細なことで大丈夫です。
認知症の人とそうでない人の境はとても曖昧です。
疲れや加齢のせいだと自己判断してしまうと、認知症の症状はどんどん進行していきます。
しかし、認知症治療において早期発見は非常に大切です。
若い方であっても、若年性認知症などから記憶障害は発症します。
まずは身近な医師に相談してみてください。
専門の機関を紹介してもらい、早期治療に臨むことが大切です。
記憶障害の診察
ここまで、記憶障害を受診できる科や受診のタイミングをご紹介しました。
では、実際の診察はどのようになっているのでしょうか?
診察の内容や検査方法、費用についてお伝えします。
何を聞かれる?
問診では一般的に以下のようなことを聞かれます。
- 受診のきっかけ
- 今困っていること
- 変化が気になり始めた時期
- 今までの大きな病気やケガ
- 現在治療中の病気やケガ
- 現在使用している薬
- 現在の生活状況
すぐに思い出すのが困難であれば、予めメモしておきましょう。
変化が気になり始めた時期などは、家族から意見をもらうことも大切です。
周囲の人からの情報も合わさることで、より正確な診断ができます。
検査
検査では、神経心理検査や画像検査、血液検査などを行います。
神経心理検査では、認知機能を細かく確認します。
机をはさんで向き合い、質問に答えたり、書いたり、道具を操作したりします。
画像検査はCTやMRIが一般的です。
脳の萎縮や脳梗塞、脳出血、脳腫瘍などの脳内の病変の有無を検査します。
機能画像検査と言い、脳の血液の流れを測定する検査もあります。
他にも、血液検査や心電図、レントゲンなど病院によって様々な検査が行われます。
認知症などの早期発見や脳の機能チェックを目的とした人間ドックもあります。
慣れない検査を何度も受けると非常に体力を使います。
検査の疲れが、受診後に体調不良として現れる場合もあります。
体調を崩してしまった場合は、しっかり休息の時間を確保してください。
費用
上述した検査の価格は病院によりそれぞれです。
医療費負担3割の場合の価格目安を以下にまとめます。
- 認知機能テスト:220円~850円
- CT検査:4,500円~6,000円
- MRI検査:4,500円~9,000円
検査費用に加えて、診察代や薬代などもかかってきます。
記憶障害で専門機関の受診に抵抗がある場合
ここまで、記憶障害専門の科や受診の流れについてご紹介しました。
中には、いきなり専門機関を受診することに抵抗がある方もいらっしゃるでしょう。
メンタルクリニックやメンタルヘルス科といった近所のクリニックを受診するという方法もあります。
精神科や心療内科を扱っていることも多いです。
お仕事帰りなどにも行きやすくなっています。
ご自身にあった診療機関を選び、ストレスのかからないよう柔軟に対応しましょう。
記憶障害と受診すべき科のまとめ
ここまで、記憶障害の受診方法についてご紹介しました。
要点を以下にまとめます。
- 記憶障害は心療内科や脳神経外科、物忘れ外来などで受診できる
- 「何かがおかしい」と感じたらすぐに受診する
- 記憶障害の診察では、問診のために事前にメモしておくと良い
- 専門機関に抵抗がある場合は、近所のメンタルクリニックもオススメ
これらの情報が少しでもあなたのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。