認知症に関して深い知識を有している認知症サポート医。
本人だけでなく家族も安心して治療に臨める環境を作っています。
一方で、具体的な役割や活動内容までは知らない方が多いのではないでしょうか?
本記事では、認知症サポート医について以下の点を中心に解説します。
- 認知症サポート医の役割
- 認知症サポート医とかかりつけ医の違い
- 認知症サポート医養成研修
安心して認知症治療に臨むためにも、ご参考いただけますと幸いです。
ぜひ本記事を最後までお読みください。
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認知症サポート医の役割
認知症サポート医とは、認知症治療の専門家です。
認知症の方やその家族が早期から治療に取り組むためのサポート役となっています。
認知症の発症数が年々増えつつあることを受け、平成17年度に導入されました。
認知症サポート医の特徴は、認知症に関する知識・技術だけではありません。
ケアに必要な各機関との連携についても深い知識を有しています。
認知症サポート医は、地域の認知症ケアにおいてさまざまな役割を期待されている存在です。
特に、研修の企画立案、相談役・アドバイザー、地域との連携係の3つが重要視されています。
研修の企画立案
認知症サポート医の役割の一つが、「かかりつけ医認知症対応力向上研修」の企画立案、および実施です。
「かかりつけ医認知症対応力向上研修」は、地域のかかりつけ医を対象に認知症ケアの向上を目的とする研修です。
認知症に関する知識・技術の習得、認知症の方と家族のケア・サポート方法を指導します。
「かかりつけ医認知症対応力向上研修」の導入は、地域における認知症支援の向上を目的としています。
日本は高齢者の割合が21%以上を占めている超高齢社会であり、認知症の方は年々増加しています。
認知症は早期に発見できれば、ある程度進行の緩和が期待できます。
しかし、早期発見は、認知症に関する知識・技術がなければ難しいのが現状です。
早期発見の役割を任されたのが、地域のかかりつけ医です。
地域のかかりつけ医には、高齢者と接する機会が多くあります。
認知症を発見しやすい立場であり、認知症に関する知識・技術の習得が必要です。
「かかりつけ医認知症対応力向上研修」では、早期発見~ケア方法まで認知症への対応を一貫して指導します。
研修の企画立案・実施を任されているのが、認知症ケアのスペシャリストである認知症サポート医です。
相談役・アドバイザー
認知症サポート医は、かかりつけ医のアドバイザー役を果たします。
かかりつけ医が認知症の方への対応に困ったとき、相談に乗り、適切にアドバイスをするという役割です。
相談内容は、認知症のタイプ診断や治療方針の決定、心のケア方法などがあります。
また、認知症サポート医は「認知症サポート医フォローアップ研修」に参加し、他の認知症サポート医との連携を深めます。
他の認知症サポート医と連携して地域のかかりつけ医を支援するためです。
地域との連携係
認知症サポート医には、認知症に関わる地域の医療体制の中心人物としての役割が期待されています。
また、地域一丸となって認知症の方を支援する医療体制を築くことも、認知症サポート医の大きな役割です。
各地域の医師会や地域包括支援センター、介護施設やケアマネージャー間の橋渡しを行います。
すなわち認知症サポート医は、認知症の方に関わる、あらゆる職業・機関の連携に協力します。
自身は連携体制の中心として、現場から上がった「声」を素早くキャッチし、適切な機関につなげます。
地域の認知症医療体制を構築し、その中核を担っているのが認知症サポート医です。
より柔軟でスピード感のある認知症の方への支援が期待できます。
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認知症サポート医とかかりつけ医の違い
認知症サポート医の役割は、認知症診療に携わる各機関のサポートです。
一方、かかりつけ医は、実際に認知症の方の治療・サポートをおこなうのが役割です。
両者の違いを端的に言えば、認知症の方に1対1で向き合うかどうかです。
実際の診療の場で、認知症の方と1対1で向き合うのは、かかりつけ医です。
しかし、地域のかかりつけ医の多くは、内科や外科であり、認知症専門の医師ではありません。
認知症対応に迷うことも当然あります。
そこで活躍するのが、認知症サポート医です。
認知症サポート医は、かかりつけ医からの質問・相談を受け、本人に適した治療方針や介護方法を一緒に考えます。
そのため、かかりつけ医を通して、間接的に認知症の方をサポートする立場にあります。
どちらも認知症の方に密接にかかわる立場であることに違いはありません。
ただし、実際の現場に出るかどうかが大きな違いとなっています。
認知症対応におけるかかりつけ医の役割を以下にまとめます。
上述した認知症サポート医の役割とも比較してみてください。
- 認知症の早期発見・気づき
- 健康管理や疾患への対応
- 認知症の専門診療機関への誘導
- 家族の介護負担や不安の理解
認知症サポート医養成研修について
認知症サポート医養成研修は、独立行政法人国立長寿医療研究センターが主催する研修です。
認知症サポート医養成研修を修了した医師が、「認知症サポート医」と呼ばれます。
認知症サポート医養成研修は2日間にわたって実施されます。
研修内容は、以下のような知識・技術の習得です。
- 各機関の連携体制の構築方法
- かかりつけ医を対象とした研修の立案・実施方法
- 認知症の方をケアするための介護分野の知識
対象者
研修の対象者は、募集する自治体によって異なります。
一般的な応募条件は以下の通りです。
- 認知症の診療に携わっている医師
- 認知症サポート医の役割を理解し、適切に担える医師
- 研修修了後、自治体や地域医師会の事業に協力できる医師
- 自治体の公式HPに氏名を公表できる医師
- 地域包括支援センターや医師会に情報提供できる医師
以上のような条件を満たし、かつ地域の医師会の推薦を受けた医師が対象者となります。
受講費用
研修を全課程修了した場合、研修参加者は受講費用を支払います。
- 研修費用…50,000円(税込)
研修費用は原則、受講者の自己負担です。
受講費用負担制度を設けている自治体も一部あります。
研修修了後に国立長寿医療研究センターから送付される請求書にしたがって支払います。
申し込みについて
受講申し込み方法も、各自治体によって異なります。
自治体のHPから受講申込書をダウンロードし、自治体の窓口に提出する流れが一般的です。
認知症サポート医とEーラーニング
認知症サポート養成研修には、E-ラーニングシステムが導入されています。
研修参加者はE-ラーニングを利用し、各講義を視聴します。
その後、同じくE-ラーニング経由で試験を受験します。
試験合格後はビデオチャットツールを利用してグループワークを行うのが一般的な流れです。
認知症サポート医のまとめ
ここまで、認知症サポート医についてお伝えしてきました。
要点を以下にまとめます。
- 認知症サポート医の役割は、地域に根ざした認知症医療体制の構築
- 認知症サポート医とかかりつけ医は、「認知症診療をサポートする・される」関係
- 認知症サポート医は、「認知症サポート医養成研修」受講後、テスト合格で認定される
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。