認知症と一言で言っても、さまざまな種類があります。
認知症の中でも器質性認知症の特徴をご存知でしょうか?
「器質性」という言葉自体に馴染みがない方も多いと思います。
本記事では、器質性認知症について以下の点を中心にご紹介します。
- 器質性の意味
- 器質性認知症の種類と症状
- 器質性認知症の原因
- 器質性認知症の治療法
認知症の誤診を防ぐためにも、ご参考いただけますと幸いです。
是非最後までお読みください。
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器質性とは
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器質性とは、臓器や器官そのものの形態のことです。
臓器や器官が変異して症状が現れた場合、器質性疾患といえます。
器質性疾患では、検査によって原因が明らかになるケースが多いです。
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器質性認知症の定義とは
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認知症は器質性認知症と心因性認知症に分けることができます。
器質性認知症は、脳そのものの形態が変わったことで発症する認知症です。
一方、心因性精神疾患を原因として、認知症と診断されるような症状を発症することもあります。
不安やストレスといった心理的負担がきっかけとなっていることが多いです。
同じような症状が現れたとしても、治療法は大きく異なります。
うつや不安が原因であれば、カウンセリングなどによって症状が改善する場合もあります。
また、器質性認知症も原因次第では手術による回復が見込めます。
認知症の原因を見極め、適切な治療を実施することが大切です。
器質性認知症と機能性認知症の違い
認知症には大きく分けて「器質性認知症」と「機能性認知症」があります。
器質性認知症は、病気などの原因があるのが特徴です。
一方、機能性認知症は単純に加齢によって認知機能が衰える症状です。
加齢が進むと、さまざまな衰えが表面化します。
筋肉の衰え、臓器の衰え、そして脳細胞の衰えです。
機能性認知症は、脳細胞の衰えによって起こる認知症です。
器質性認知症の種類
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器質性認知症といっても種類はさまざまです。
ここでは、器質性認知症のうち代表的な4種類をご紹介します。
以下の認知症は4大認知症ともいわれ、ほとんどの認知症の方が当てはまります。
アルツハイマー型認知症
認知症の方の65%以上は、アルツハイマー型認知症と診断されます。
症状自体は「もの忘れが激しい」といった違和感から始まります。
徐々に記憶障害や見当識障害などの認知症の中核症状が現れる、典型的な認知症です。
血管性認知症
認知症全体の約20%を占めているのが、血管性認知症です。
血管性認知症はその名の通り、脳の血管に異常が起こることで発症します。
原因の1つに生活習慣病が挙げられ、脳で血管障害が起きるたびに症状が進行していきます。
レビー小体型認知症
認知症のうち5%に満たない確率で、レビー小体型認知症が現れます。
幻視や歩行障害が現れるため、異変に気づきやすいのが特徴です。
前頭側頭型認知症
認知症のうち約1%という低い割合で発症するのが前頭側頭型認知症です。
初期段階では、多くの場合記憶障害などの症状が出てきません。
言語障害や人格変化、異常行動が見られることが多く、認知症と診断されづらいときもあります。
器質性認知症の主な症状
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器質性認知症が主に4種類あることは、先ほどご紹介しました。
続いて、器質性認知症の症状を上述した4つの認知症と関連付けてご紹介します。
記憶障害
もの忘れが酷くなったら認知症、というイメージを持っている方が多いでしょう。
厳密には加齢によるもの忘れとは違いますが、記憶障害が現れます。
記憶障害は出来事そのものをすっぽりと忘れてしまう障害です。
記憶が一部分ではなく丸々抜け落ちてしまうので、話が通じない場合もあります。
記憶障害は、アルツハイマー型認知症の初期から顕著に現れます。
血管性認知症では、記憶障害が軽度な場合が多いです。
レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症では、初期症状としてはあまり見受けられません。
見当識障害
日時や場所、人を認識できなくなる障害が、見当識障害です。
今日が何月何日なのか、カレンダーを見てもわからない、というような症状が現れます。
見当識障害は、どの認知症でもよく見られる症状です。
アルツハイマー型認知症と血管性認知症では、記憶障害に続いて見当識障害が現れます。
レビー小体型認知症では、記憶障害よりも見当識障害のほうが目立つこともあります。
前頭側頭型認知症は中等度になってくると、日時の見当識障害が見られ始めます。
理解力・判断力の低下
記憶障害や見当識障害などが現れると、理解力や判断力が低下します。
特にアルツハイマー型認知症で顕著な症状です。
真冬なのに半袖を着てしまったり、約束の時間までに身支度を終わらせることができなくなったりします。
記憶障害や見当識障害によって、理解力・判断力が低下してしまうため、自分の置かれている状況を理解・判断するのが難しくなってしまうのです。
暴言・暴力
4つの認知症全てにおいて、暴言・暴力といった症状が出てしまうことがあります。
暴言・暴力の症状は、脳の抑制機能が正常に働いていないことに起因しています。
特に、記憶障害や見当識障害によって不安になってしまったり、プライドが傷つけられたりすることで暴言・暴力の症状が現れます。
レビー小体型認知症では、幻視の恐怖から精神的なストレスに陥り、暴言・暴力に繋がることが多くあります。
そして前頭側頭型認知症は、よく「人が変わった」と表現され、興奮しやすく怒りっぽくなることが代表的な症状です。
無気力
認知症初期から、無気力になってしまう方が多くいらっしゃいます。
何をするにも無気力になってしまい、趣味が急に楽しくなくなったり、買い物が面倒になったりします。
レビー小体型認知症では、幻視や歩行障害があるために無気力がより顕著に現れることがあります。
症状が進むにつれて無気力がより顕著になるのは、4つの認知症で共通しています。
無気力状態になると徘徊や暴力も減りますが、ご飯を食べることすら面倒になってしまいます。
最終的には生きる気力がなくなってしまうため、危険な症状の1つといえます。
妄想
認知症の方による妄想は、被害妄想であることがほとんどです。
物盗られ妄想や嫉妬妄想などがあり、対象は認知症の方の介護者であることがほとんどです。
介護が辛くなる原因の1つです。
アルツハイマー型認知症や血管性認知症では、記憶障害に起因する被害妄想が多く見られます。
認知症の方は自分が財布を置き忘れたことを認識できず、「誰かに盗られた!」と思ってしまいます。
レビー小体型認知症でも幻視や見間違いが多く見られます。
「壁にたくさんのハエがとまっている」「夫が知らない女性と歩いていた」といった幻視や見間違いが起こります。
器質性認知症の原因
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脳の神経細胞が壊されてしまうことで脳に損傷が起き、器質性認知症が発症します。
上述した4つの認知症は、脳に損傷が起きるまでの過程が異なっています。
アルツハイマー型認知症は、脳に異常なタンパク質が蓄積されることが原因です。
異常なタンパク質によって脳の神経細胞が壊され、脳が萎縮してしまいます。
血管性認知症は、脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)などが原因となります。
脳の神経細胞に血液が送られないことで細胞が壊れていきます。
レビー小体型認知症は、レビー小体というタンパク質が脳の神経細胞を壊してしまうことが原因です。
前頭側頭型認知症は、脳の前頭と側頭の神経細胞が壊れ、脳が萎縮することで発症します。
認知症ごとに、何が原因で脳に損傷が起きているのかが違っています。
原因を見極め、適切な治療を実施しましょう。
器質性認知症は治療できる?
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器質性認知症は基本的な原因が、脳の形態異常にあります。
器質性認知症の治療には、認知症の原因となる脳の部位の確認が必要です。
「なぜ脳に異常が起きてしまったのか」を突き詰めていきます。
わかりやすい例でいえば、脳卒中からの血管性認知症です。
血管性認知症の改善には、脳卒中を再発しないようにする治療が大事です。
食生活の改善や適度な運動が治療法になります。
器質性認知症の場合、症状を直接的に改善させようとするのではなく、根本原因を治療することが症状改善に繋がります。
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器質性認知症と診断された|保険は適用される?
高齢化社会を迎え、認知症患者も増加傾向にあります。
そこで認知症保険が注目されています。
認知症保険とは
認知症保険とは、認知症で介護状態になったときに給付金が受け取れる保険です。
認知症は介護が必要となる病気の中でも、とくに長時間の付き添いが必要となります。
そのため投薬などの医療費よりも、介護サービスに費用がかかります。
介護期間が長くなればなるほど、介護費用は高額になります。
認知症保険は、こうした介護費用をカバーするための保険です。
認知症保険の種類|給付内容や加入条件を比較
認知症保険には、大きく分けて2種類あります。
- 認知症と診断され、保険金が支払われるタイプ(生命保険会社)
- 認知症が原因で何らかの損害が生じ、補償が受けられるタイプ(損害保険会社)
認知症保険にはさまざまな種類があり、保険商品によって大きく異なります。
以下のポイントを比較して、ニーズに合った商品を選ぶことが大切です。
- 保障となる条件
- 加入条件
- 保障期間
- 給付金の受け取り方・金額
- 保障内容
- 付帯サービス内容
認知症保険の利用手順
認知症保険を利用するためには、認知症と診断されることです。
保険によっては、医師の診断だけでなく、公的介護保険の認定も必要な場合もあります。
認知症保険の利用にあたっては、まずは市区町村の介護認定を優先するべきでしょう。
認知症を発症してしまうと、本人が認知症保険の加入を忘れてしまうかもしれません。
自分では保険の給金請求ができないという事態になりかねません。
そこで、指定代理請求人を元気なうちに指定しておくことです。
指定代理請求人は、配偶者、3親等以内の親族を指定することができます。
この場合、必ず指定代理請求人に保険の内容などの情報を共有しておくことです。
事前に保険の内容を把握していないと、給付金請求ができない可能性もあります。
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器質性認知症のまとめ
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ここまで器質性認知症の症状や原因についてお伝えしました。
要点を以下にまとめます。
- 器質性とは臓器や器官そのものの形態のこと
- 器質性認知症の種類はいくつもあり、記憶障害等の症状が現れる
- 器質性認知症は、脳の形態に異常が生じたことによって起こる
- 脳の形態異常の原因を治療することで症状改善が見込める
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。