皆様の身近に、認知症の方はいらっしゃいますでしょうか?
認知症の症状は多岐に渡るため、身近な人が認知症になると戸惑ってしまう方が多いです。
そんな認知症の症状の一つである、傾眠という症状をご存知ですか?
本記事では、認知症の方に起こりやすい傾眠について以下の点を中心にご紹介します。
- 傾眠とは何か
- 認知症の方の傾眠リスク
- 傾眠の対処法
- 傾眠が進行するとどうなるのか
認知症の症状を理解するためにも、ご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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傾眠とは?
※画像はイメージです
傾眠(けいみん)とは、いわゆる「うつらうつら」している状態のことで、軽度の意識障害の一種です。
声をかける、肩を叩くなどの軽い刺激で起きることが特徴です。
ただ、起きた後にまたうとうとし、そのまま眠ってしまうこともあります。
ただ単に寝ぼけているように見えることから、傾眠の症状が現れているのかどうか判断することは難しいです。
また、傾眠傾向をそのまま放置してしまうと、脱水症状や栄養不足に繋がる危険性もあるため、注意が必要です。
傾眠傾向は高齢者によく見られ、病気の兆候である場合もあります。
意識障害の分類
傾眠は、意識障害の中の一つです。
意識障害には段階があり、主に意識清明・傾眠・昏迷(こんめい)・半昏睡(はんこんすい)・昏睡(こんすい)に分かれます。
それぞれの違いを説明します。
意識清明
意識清明とは、意識がはっきりしている状態です。
こちらから声をかければ正しく反応し、状況の判断や意思の疎通も問題なく行えます。
一般的には「起きている状態」です。
傾眠
傾眠は、先ほど説明した通りうつらうつらしている状態です。
声をかけることで起きたり、身体に触れることで目を覚ますため、深い眠りに落ちているわけではありません。
しかし、一度起きてもまた眠ってしまうことも多くあります。
昏迷
昏迷は、身体を叩くなどの強い刺激を与えて一瞬意識が戻る状態です。
刺激に対して手足を動かすなどの反応を見せることがあります。
半昏睡
半昏睡は、大きな声で呼び掛けても反応はしませんが、身体をつねるなどの痛みを与えると身体の一部が反応します。
昏睡
昏睡は、どのような刺激を与えても起きることがない非常に深い眠りについている状態です。
眠りというには深すぎることから、意識障害の中でも最も程度が重いものです。
「昏睡状態」など、言葉としてはよく認知されています。
睡眠障害との違い
傾眠は、うつらうつらしている状態なので寝不足で起こりがちな症状とよく似ています。
しかし傾眠は単なる寝不足とは異なり、起こされた時に何時なのか、今自分がどこにいるのか分からなくなることがあります。
また、起きる前の記憶がない場合もあります。
一方で睡眠障害は、過眠症や不眠など、睡眠に関する症状すべての総称です。
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傾眠傾向の原因
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傾眠傾向の要因にはどのようなものがあるのか、要因についてご紹介します。
認知症
認知症の初期症状のひとつである無気力状態になると、意欲を失って脳が興奮状態になりにくく、傾眠傾向が強くなります。
加齢
加齢とともに神経伝達の機能が低下するため、自然と傾眠が起こることもあります。
脱水症状
意識が朦朧として傾眠状態になる場合もあります。高齢になると、のどの渇きを感じにくい上に、体内に水分を蓄える機能が低下してしまうため脱水症状を引き起こしやすいので注意が必要です。
内科的疾患
臓器に何かしらの異常が起きている場合も、傾眠が起きやすくなります。体内で炎症が起きていることが原因の場合や、発熱など風邪のような症状で身体が休みたがっていて、傾眠を引き起こしている場合も考えられます。
慢性硬膜下血腫
慢性硬膜下血腫とは、頭を打ったときに血管に傷がつき、硬膜と脳の間に血腫ができてしまう脳疾患です。この血腫が大きくなると傾眠傾向が見られます。
薬の副作用
薬の副作用が要因となり、傾眠傾向が見られることもあります。普段服薬している薬が原因かもしれませんので、気になることがあれば医師に相談してみましょう。
低血圧
食事を摂取した後、急激に血圧が下がる食事性低血圧が傾眠の要因になっていることもあります。
過眠症
傾眠傾向の原因に過眠症があります。
過眠症とは、睡眠の質が低下してしまうことです。
日中の眠気や居眠りなどが生じたり、長時間の睡眠時間が必要になってしまったりすることを指します。
うつ
傾眠傾向になる原因はさまざまですが、うつ病もその一つです。
うつ病は、気分が落ち込んだり、やる気がなくなったりする精神的な病気です。
うつ病の人は、睡眠の質が低下したり、睡眠時間が長くなったりすることがあります。
認知症の方は傾眠を起こしやすい?
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一般的に、認知症の方は傾眠を起こしやすいです。
認知症によって無気力状態になると、起きているときに脳が興奮状態になることが少なくなります。
無気力状態が続くと、傾眠傾向が強くなっていきます。
無気力状態になるのは、年を重なると共に神経伝達物質が減少していき、体内時計が狂うことが原因です。
体内時計が狂うと、当然睡眠時間も狂っていきます。
また、高齢になると次第に眠りが浅くなっていくことから、昼夜逆転が起こってしまうことがあります。
夜に十分な睡眠が取れないことで、日中の傾眠傾向を引き起こす原因になります。
傾眠傾向は誤嚥のリスクを高める?
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傾眠傾向の方は誤嚥のリスクを高めます。
あまり噛まずに飲み込もうとして上手に飲み込めなかったり、汁物などで噎せ返ってしまうことがあるためです。
このように、食事中に誤嚥が起きてしまうリスクが高まるので、食事介助のときには注意しましょう。
傾眠が起きたときの対処法
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では傾眠症状が現れた場合、どのように対処していけば良いのでしょうか?
以下で説明します。
医師に相談する
まずは医師に状態を説明し、意見を仰いでみましょう。
認知症の疑いや病気の可能性がある場合もあるため、早い段階で医師に診察してもらうことが大切です。
対処法といってもその人によって適切な方法は異なってきます。
できればかかりつけ医に相談し、そこから必要があれば専門の病院やクリニックを紹介してもらうようにしましょう。
こまめに水分補給をする
高齢者は日中にうとうとすることが多くなると、どうしても水分補給を忘れてしまいます。
水分をとることで日中の覚醒時間を保つ効果があるので、こまめに水分をとるよう促しましょう。
高齢者の様子を近くで見られる場合は、一時間に一度ほど、一口で良いから飲みましょうと手を貸して差し上げるのも一つの対策法です。
処方された薬の量や内容を見直す
もし既に薬を処方されている場合、その量や内容は適切か見直してみましょう。
病院へ行くとしっかりしないとという意識が働き、医師の前ではいつもより元気な状態になることも珍しくありません。
また、本人は現状維持が良いと言うこともあります。
いつもの様子を家族から医師に正しく伝え、適切な薬の量と内容に変更することも大事です。
明らかに今までと違った傾向が見られる場合、医師だけでなく薬剤師にも相談してセカンドオピニオンを仰ぎましょう。
見守りつつ適切なケアを行う
傾眠の症状が見られる場合、加齢によるものだと捉え、自分たちでできる適切なケアを行いながら見守るのも良い対処法です。
高齢者自身は、傾眠という認識がなく、ただうとうとと眠いだけだから大げさだと考えることがあります。
病院へ行くことを拒否するようなら、見守りを強化して自宅でのケアを行ってみましょう。
水分補給を促すこと、夜にしっかり眠ること、湯船に浸かってリラックスできるように促すことなど、できるところから始めてみてください。
これらの対策を早いうちから始めることで、傾眠予防にもなります。
傾眠が進行するとどうなる?
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傾眠症状を放置していると、重大な健康被害に及ぶ可能性があります。
以下は、傾眠が進行することによっておこる症状の一例です。
傾眠のもたらす周辺症状
傾眠が進行すると、その周辺症状に錯覚や妄想、せん妄などが現れることがあります。
傾眠状態が長く続けば続くほど、活発な生活から遠ざかるため筋力低下のリスクも出てきます。
筋力が下がれば歩行困難になったり、手先が思うように使えなくなることがあるため、介護が必要になる場合もあります。
傾眠による間接的な健康被害
傾眠によって起こりうる間接的な健康被害は、以下のようなものがあります。
- 食事中にうとうとすることでの誤嚥:誤嚥は、肺炎や窒息の原因になります。
- 食欲の低下:食事を摂らないと、栄養不足や脱水症状になります。
- 車いすなどからの転落:転落すると、骨折や打撲などの外傷を負います。
傾眠は、高齢者や認知症の方に多く見られる症状です。
しかし、内科的な疾患や服用している薬にも関係している場合があります。
傾眠に悩んでいる方は、医師に相談することをおすすめします。
若年性認知症の方も傾眠を発症するの?
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認知症と聞くと、高齢者が発症するイメージが強いかもしれません。
一方で、最近は若年性認知症という言葉も認知されてきました。
若年性認知症というのは、18歳以上、65歳未満で発症する認知症のことを言います。
今回ご紹介した傾眠という症状は、若年性認知症の方でも発症する可能性があります。
ただ、若年性認知症であること自体を疑われ、睡眠障害や統合失調症、単なる食事や睡眠などの生活リズムの乱れによる昼夜逆転が原因だと判断されることもあります。
上記の通り、傾眠は睡眠障害と似ていますが、起きたときに自分の居場所や時間が分からないといった症状が現れることが特徴です。
この違いを意識していれば、若年性認知症なのか、それとも別の理由で眠たいという症状が出ているのかがわかります。
傾眠のような症状が現れた時には、悪化する前に一度医師の元へ行ってみることをおすすめします。
若年性認知症についても解説していますので、こちらの記事も合わせてお読みください。
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傾眠傾向の方の介護の際に気を付けることとは?
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- 誤嚥のリスクが高いため、食事介助のときに注意する
- 覚醒時の転落に注意する
傾眠傾向は誤嚥のリスクを高める
傾眠傾向の方は誤嚥のリスクを高めます。
あまり噛まずに飲み込もうとして上手に飲み込めなかったり、汁物などで噎せ返ってしまうことがあるためです。
このように、食事中に誤嚥が起きてしまうリスクが高まるので、食事介助のときには注意しましょう。
傾眠から覚醒時の車いすからの転落、ズリ落ちを防止する
車いす上で傾眠状態になっている方は転倒や転落の注意が必要です。
傾眠が続くと姿勢が徐々に崩れ、車いすからずり落ち、ケガをする可能性があります。
また突然の覚醒で急に姿勢を変えたときにバランスを崩し、転落する場合があります。
車いすで座っている方に対し、できるだけ目を離さないように心がけましょう。
また傾眠が疑われる場合は声をかけるなど覚醒を促すよう働きかけましょう。
体勢が崩れた場合は体の向きを変えて姿勢を正すことも大切です。
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認知症の方に起こりやすい傾眠のまとめ
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ここまで、認知症の方に起こりやすい傾眠についてお伝えしました。
要点を以下にまとめます。
- 傾眠はうつらうつらしている状態で、意識障害の一種
- 認知症の方は、無気力状態が傾眠に発展することがある
- 傾眠が起きたら、医師への相談や見守ることが大切
- 傾眠が進行すると、錯覚や妄想、せん妄などが現れる
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。