認知症の初期症状の一つでもある、抑うつ。
認知症によるものなのか、うつ病なのかの見分けは難しいです。
違いが分からないという方も多いのではないでしょうか?
本記事では、認知症による抑うつとうつ病について以下の点を中心にご紹介します。
- 認知症による抑うつとうつ病の違い
- 抑うつ症状の対応方法
- 受診すべき医療機関
見分け方を正しく理解するためにも、ご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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認知症の初期症状でよく見られる抑うつとは
抑うつはさまざまな認知症でみられる症状の一つです。
認知症の中でも、特にレビー小体型認知症の方に多くなっています。
レビー小体型認知症は、脳神経細胞の中にレビー小体という異常な物質が溜まり、大脳に広く現れるようになることで発症します。
具体的な抑うつの症状は意欲・関心の低下や不眠、食欲低下などです。
何事にも興味を示さなくなるため、以前好きだったことや趣味などにさえも無関心になります。
また、意欲・関心が低下することで自宅に閉じこもるようになり、人や社会との交流を避けるようになりがちです。
思うように体が動かせなかったり、強い不安感を抱いたりすることが抑うつの原因になることがあります。
認知症による抑うつはうつ病の症状と似ているため、誤診されることも珍しくありません。
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認知症の初期症状の抑うつとうつ病の違いとは
認知症による抑うつとうつ病の症状には違いがあります。
しかし、似ている部分も多くあるため、見分けることは非常に困難です。
では、認知症による抑うつとうつ病にはどのような違いがあるのでしょうか。
二つの主な違いは以下の通りです。
記憶障害や判断力の低下の有無
認知症による記憶障害はただの物忘れとは異なり、自分が体験した出来事そのものを忘れてしまうことが特徴です。
ただの物忘れでは夕食のメニューを忘れるのに対し、認知症による記憶障害は夕食を食べたことを忘れるといった具合です。
そして、忘れたこと自体も忘れてしまいます。
うつ病にも記憶障害がみられますが、突発的に最近の出来事を忘れます。
また、認知症による記憶障害とは異なり、忘れたこと自体は覚えています。
認知症は記憶障害以外にも判断力の低下がみられ、質問に対して的外れな回答が返ってくることがあります。
うつ病でも判断力の低下がみられますが、考えてはいても分からず答えられないことが多いです。
妄想の種類
認知症とうつ病には妄想がみられることがありますが、妄想の種類が異なります。
認知症の妄想には、ものを盗まれたと疑う物盗られ妄想や、知らない人が自宅に入ってきたと訴える侵入妄想などがあります。
対してうつ病の妄想には、少しの体調変化を重病だと思い込む心気妄想がみられることがあります。
また、お金が無くなって生活できなくなるのではないかと強い不安を感じる貧乏妄想も、うつ病特有の妄想です。
ショックを受けるような出来事の有無
認知症は脳内の病変が生じることによりゆっくりと症状が進行し、意欲低下や食欲不振などの抑うつが現れます。
また、認知症により自分でできないことが増え、不安感や孤独感を抱くことも原因の一つと考えられます。
対してうつ病は、配偶者との死別や離婚などショックを受けるような出来事によって発症するケースが多くみられます。
症状の自覚の有無
認知症の初期ではある程度の判断力が保たれています。
そのため、以前よりも認知機能が低下していることに不安を感じて抑うつ状態になることがあります。
しかし、症状の進行に伴い無関心になっていくため、ほとんど自覚が持てない状態になります。
うつ病の場合は症状の自覚があり、強い不安や焦りを感じたり悲観的になったりします。
そのため、「死にたい」「自分には価値がない」と自分自身を追い詰めることが多いです。
抑うつ症状の対応方法
抑うつ症状が現れた際、どのように対応すれば良いのか分からない方は多いでしょう。
まず本人と接する上で大切なことは、話にしっかり耳を傾け、受け入れることです。
また、本人が不安や孤独を感じるような状態にせず、安心して穏やかに過ごせる環境を作ることも重要です。
体調を考慮した上で趣味や外出に誘ったり、植物の水やりや食事の準備などをお願いしたりすることも一つの方法になります。
しかし、本人が嫌がる場合は強制したり怒ったりするなどの対応はしないようにしましょう。
また、「頑張れ」「元気を出して」など励ましの言葉をかけることも抑うつの対応には好ましくありません。
本人の考えや思いを尊重して向き合っていくことを心がけた上で、介護に取り組んでいきましょう。
かかるべき医療機関
認知症やうつ病の可能性があると感じた際、まずは医療機関を受診する必要があります。
うつ病は精神科や精神神経科、心療内科などで対応しています。
また、内科でも診察は可能です。
うつ病は、心理症状が原因となり体に症状が現れることもあるので、うつ病以外の病気ではないかを検査してくれます。
その結果うつ病と診断されれば、そのまま治療を始める他、精神科を紹介してくれる場合もあります。
認知症も精神科で診察可能ですが、その他に脳神経内科や老年科などで対応しています。
どこを受診するか迷った場合は、まずはかかりつけ医への相談がおすすめです。
その際はかかりつけ医の判断の元、そのまま治療をしたり他の医療機関を紹介したりしてもらえる場合もあります。
レビー小体型認知症の抑うつ以外の症状
レビー小体型認知症は抑うつ以外にも、みられる症状はさまざまです。
ここからは、レビー小体型認知症の抑うつ以外の症状をご紹介します。
幻視
幻視は実際には見えないものが見える症状であり、レビー小体型認知症の特徴的な症状の一つです。
見えるものは個人差がありますが、人や動物など動きを伴うものが多いです。
たとえば、「知らない男が二階から覗いている」「猫が部屋の隅にうずくまっている」などです。
また、実際には聞こえない音が聞こえたり人の気配を感じたりすることもあります。
パーキンソン症状
パーキンソン症状もレビー小体型認知症の特徴的な症状です。
主な症状には筋肉のこわばりや手足の震え、小刻みな歩行などが挙げられます。
また、身体のバランスを取ることが難しくなるため、転倒による怪我のリスクが高くなります。
認知機能障害
記憶障害を始め、理解力や判断力の低下などの認知機能障害がみられることもあります。
さらに、それらの症状が一日や一週間、一ヶ月などの期間内で変動することが特徴です。
認知機能の変動が回復すると、自分は何をやっていたのだと本人が気づくこともあります。
まとめ:認知症の初期症状とうつ病の違い
今回は、認知症による抑うつとうつ病の違いについてご紹介しました。
要点を以下にまとめます。
- 認知症による抑うつとうつ病の違いは、認知機能の低下の有無や妄想の種類など
- 本人の考えや思いを尊重した上で、意思決定を促すことが大切
- 認知症やうつ病はいくつかの医療機関で対応しているが、まずはかかりつけ医を受診することも一つの方法
これらの情報が皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。