高齢化が進む中、年々増加している認知症の方。
認知症は、種類によって症状や進行過程がさまざまです。
その中でも、脳梗塞が引き起こす血管性認知症の進行過程をご存知でしょうか?
本記事では、脳梗塞が引き起こす認知症の進行過程について以下の点を中心にご紹介します。
- 脳梗塞による認知症の進行過程の特徴
- 脳梗塞による認知症の症状
- 脳梗塞による認知症の治療法
脳梗塞による認知症の進行を把握するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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脳梗塞とは
脳梗塞は、血管内に血栓ができ、脳内の血流が止まってしまうことで発症します。
生活習慣や加齢による動脈硬化が主な原因です。
脳の血流が止まれば脳細胞が死滅するため、さまざまな症状や後遺症をきたすこととなります。
脳梗塞の程度にもよりますが、最悪死にいたるほど危険な病気です。
代表的な後遺症としては、四肢の麻痺などがありますが今回のテーマでもある認知症も引き起こすこともあります。
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脳梗塞による認知症の進行の特徴
脳梗塞を原因として引き起こされる認知症を血管性認知症といいます。
進行初期には記憶障害の出現は少なく、歩行障害や意欲低下などからはじまっていくのが血管性認知症の特徴です。
特に認知機能に関していえば、アルツハイマー型認知症では認知機能全般に低下がみられます。
脳梗塞による認知症の場合は認知機能低下の出現がまだらです。
そのためまだら認知症と呼ばれることもあります。
脳梗塞による認知症の進行ですが、脳梗塞により脳が受けたダメージしだいで現れる症状や症状の重さが異なります。
また、脳梗塞を繰り返すことで段階的に認知機能が低下していくのが特徴です。
脳梗塞による認知症の初期症状
以下では、脳梗塞による認知症における初期症状について説明します。
失行
失行は、脳梗塞の影響により行動の指令や認識をする脳の部位が障害を受けることで発症します。
脳梗塞による認知症に代表される症状の一つです。
進行初期からみられるようになります。
身体に麻痺が生じていなくても、簡単な日常生活動作ができなくなってしまうのが失行の特徴です。
脳梗塞によって影響を受ける脳の部位により、現れる失行の症状はさまざまです。
失行の代表的な例としては、右頭頂葉が障害されることで服の着衣方法がわからずズボンに首や腕を通して着ようとする着衣失行がみられるようになります。
そのほか、脳の縁上回(えんじょうかい)が障害を受けると道具の使い方がわからないといった失行がみられるようになります。
失認
失認は、脳梗塞の影響により視覚を認識する機能が障害を受けることで発症します。
失認もまた脳梗塞による認知症に代表される症状で、初期段階から症状がみられます。
人やもの、文字や模様をハッキリと視覚にとらえることができるのですが、それが誰なのか何なのか、何を意味しているのかがわからなくなる症状です。
たとえば視覚失認と呼ばれる失認では、もの自体の認識や、ものの形などの認識ができなくなります。
鉛筆をみてもそれ自体はみえていますが、鉛筆だということが認識できません。
また、相貌失認では人物をみても誰なのか判断できません。
ただし、声を認識する能力は保たれているため、声を聴くことで誰なのかを判断することがあります。
失語
失語は脳の言語をつかさどる部位が障害を受けることで出現する症状です。
こちらも脳梗塞による認知症によって引き起こされる症状の一つです。
失語にはいくつか種類があり大別すると、発話に障害がみられるものと言葉の理解に関する障害がみられるものがあります。
主な失語の種類は以下の通りです。
- 感覚性失語:発話は流暢でも発する言葉の内容に乏しい
- 運動性失語:語彙力が著しく低下する
- 健忘失語:単語や言葉が浮かんでこない
- 語義失語:言葉の意味を理解できない
脳梗塞による認知症の中期以降の症状
脳梗塞による認知症の中期以降の症状では、進行の初期過程でみられなかった記憶障害も出現するようになります。
ただし、血管性認知症は脳梗塞や脳出血を繰り返すたびに症状の悪化、または新たな症状の出現がありますので個人差が大きくなります。
根本原因である脳梗塞や脳出血を再発させないことが非常に大切です。
脳梗塞や脳出血を発症させないためにも、医師の指示のもと薬物療法などによる専門的治療は欠かせません。
そのほか、アルツハイマー型認知症などほかの認知症を合併させないためにも、リハビリによって日常生活動作の向上を図ることが大切です。
脳梗塞による認知症の治療法
脳梗塞による認知症の進行を抑制するためには適切な治療が必要になります。
以下、治療方法について説明します。
薬物療法
薬物療法は認知症の治療としては代表的な手段の一つです。
認知症治療薬といえば、コリンエステラーゼ阻害薬としてアリセプトという薬が代表的です。
脳梗塞による認知症においても有効性が示されています。
脳の虚血性病変によりアセチルコリン神経系が障害されてしまうため、アセチルコリンの分解を抑える目的でアリセプトが使用されます。
また、脳梗塞の再発が認知症の進行を進めるため、血栓を防ぐための抗血小板薬や、脳の酸化を防止する脳保護薬などが用いられます。
運動機能のリハビリ
運動機能のリハビリでは主に理学療法や作業療法が取り入れられます。
脳梗塞による認知症の場合、四肢の麻痺や失行などもみられることもあり、継続的なリハビリが必要な場合もあります。
特に麻痺の部位を動かさずにいると拘縮が進み、さらに手足が動かせなくなることもあるため気を付けなければなりません。
また、作業療法により日常生活動作の作業手順などを繰り返し行うことで、着替えなどの動作を行なえるよう訓練します。
言語機能のリハビリ
失語に対しては言語機能のリハビリが有効です。
主に言語聴覚士による訓練が一般的であり、失語の症状に合わせて発話訓練を行います。
日常生活場面でのコミュニケーションが行えることを目的とし、聞く、話す、読む、書くなどの訓練をします。
嚥下のリハビリ
脳梗塞の後遺症から嚥下機能が低下してしまう場合もあります。
嚥下とは食事を飲み込む機能のことです。
嚥下機能が低下すると食事を食道に運べず気管に送り込んでしまうことがあります。
そうなると、最悪誤嚥性肺炎を引き起こしてしまう危険性があります。
嚥下のリハビリも言語聴覚士によって行われるのが一般的です。
舌の動きや飲み込みに関する能力を評価しながら、舌や口腔以外にも首や肩などの動きにも焦点をあてながら、咀嚼や飲み込みの訓練が行われます。
症状がまだらにあらわれる?
脳梗塞による認知症は症状の出現がまだらであることから、まだら認知症と呼ばれることもあります。
まだら認知症における「まだら」とは、昨日できなかったことが今日できているといったように、できるできないの差が日によって異なることから名づけられました。
まだらに症状がみられるようになると、認知症であるという判断を簡単にはできません。
たとえば、数日前からあきらかな記憶障害がみられ認知症を疑ったが、今日になると記憶力も理解力も問題ないということが起こり得ます。
そうなれば家族としても認知症だという判断が難しくなり、認知症であることを発見できず見過ごされてしまうケースも少なくありません。
まだら症状の原因
では、なぜまだら症状は起こるのでしょうか。
その原因の一つとして脳が受けるダメージの度合いがあります。
脳の部位によりそれぞれ機能が異なります。
脳梗塞を引き起こした脳の部位や範囲によって、機能が低下する部位もあれば無事な部位もあります。
そのため、できることとできないことがはっきりとしており、一見認知症だという判断がしにくくなるのです。
そのほか、脳の血流の変化による原因も考えられます。
認知症の有無に限らず、起床後などは頭がぼーっとしてしまうことがありますが、脳の血流が関係しているのです。
特に起床時や食後、入浴後や水分摂取の有無などでも変化があります。
認知症の方の場合はこういったシーンで覚醒状態が悪くなり、認知症の症状が悪化したようにみえる場合もあります。
かといって時間帯によっては症状が軽度だったり、出現しなかったりすることもあるわけです。
家族にできる対応
まだら症状に対して家族ができる対応として、症状や行動の経過を記録することが推奨されています。
症状が現れた時間やタイミング、症状の度合いを記録しておくことで、認知症による影響かどうかの判断材料とすることが可能です。
また、症状の現れ方がわかれば認知症治療の方針についての判断材料ともなります。
医師が処方薬や治療法を検討する際にも大切です。
脳梗塞による認知症の進行のまとめ
ここまで、脳梗塞による認知症の進行についてお伝えしました。
要点を以下にまとめます。
- 脳梗塞による認知症は、脳梗塞が再発するごとに段階的に症状が進行する
- 脳梗塞による認知症では、失行や失認、失語がみられる
- 脳梗塞は、薬物療法だけでなく、運動機能や認知機能のリハビリを通して治療される
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。