肥満はさまざまな健康問題の原因となることが知られています。
肥満が認知症の発症リスクにも関係していることはご存知でしょうか。
WHOが公表しているガイドラインでも、認知症のリスクを低減するための対策として体重の管理が推奨されています。
そこで本記事では、WHOの体重の管理について以下の点を中心にお伝えします。
- 体重の管理をすることで認知症の発症リスクは抑えられるのか
- 体重の管理をするためには何を行えばよいのか
- 認知症のリスクを低減するための体重管理で注意すべき点とは
WHOでの体重の管理と認知症発症について理解するためにも、参考にしていただければ幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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WHOでの体重の管理と認知症発症について
世界保健機構(WHO)が2019年に公表した「認知機能低下および認知症のリスク低減のためのガイドライン」では12の対策がまとめられていますが、その1つが体重管理です。
中年期の肥満が認知症のリスクを高めることが示された研究や、体重を減らすことで認知症の発生リスクを減らすことができると示唆する研究が背景としてあります。
「認知機能低下および認知症のリスク低減のためのガイドライン」では、体重管理に関する対策として以下の点が推奨されています。
- 推奨:中年期の過体重または肥満に対する介入は認知機能の低下や認知症のリスクを低減するために行ってもよい
- エビデンスの質:低い~中
- 推奨の強さ:条件による
過体重または肥満で、かつ認知機能正常の人を対象にしたシステマティックレビューからエビデンスが抽出されています。
軽度認知症の人に関するエビデンスは得られませんでした。
しかし減量を目的としたライフスタイル介入が、注意、記憶、そして言語の領域における認知機能を改善できるというエビデンスがあります。
観察研究から得られた過体重や肥満と、認知症の発症リスク上昇の関係は老年期よりも中年期でより強く一貫しています。
そのため条件付きで体重管理の介入が推奨されています。
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体重を管理するためにすべきこと
過体重と肥満に関するWHOのガイダンスでは、以下の点が推奨されています。
- バランスの取れた食事をする
- 食事中の炭水化物として、低グリセミック指数の食品を優先する
- 座位行動を減らし、身体能力に適した定期的な身体活動を毎日実践する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
バランスの取れた食事をとる
肥満の原因には食生活の乱れが大きく関係しています。
ですから3食バランスの取れた食事をしっかりとることが体重管理の基本的な対策です。
身体に必要な栄養素には、
- 炭水化物
- タンパク質
- 脂質
- ビタミン
- ミネラル
があります。
これらの栄養素を主食、主菜、副菜からバランスよく取り入れるようにしましょう。
体重管理のために食事を極端に減らすと、栄養が不足したり偏ったりしてしまうので注意が必要です。
炭水化物としてグリセミックの指数の低いまめ類やオーツ麦を取る
グリセミック指数とは、食品ごとの血糖値の上昇度合いを表す数値のことです。
食後に血糖値が急激に上昇すると、インスリンが多く分泌され肥満の原因になります。
主に主食となる炭水化物には、ご飯やパンなどグリセミック指数の高い食品が含まれています。
炭水化物も身体に必要な栄養素なので、WHOのガイドラインではグリセミック指数の低い炭水化物を優先してとることが薦められています。
体重の管理をするためには、豆類やオーツ麦、糖質の少ない果物などの低グリセミック指数の食品で、炭水化物を摂取するようにしましょう。
座りっぱなしの生活ではなく、毎日の運動等を取り入れた生活をする
体重の管理をするためには、適度な運動を毎日行うことも必要です。
普段座っている時間が多く、身体を動かしている時間が少ないとエネルギーを消費しないので肥満につながります。
また座りっぱなしで筋肉を動かさないでいると、肥満以外にも健康問題が発生する可能性があります。
ウォーキングなど軽い運動で身体を動かす習慣をつけるようにしましょう。
家や職場でも座っている時間をできるだけ減らすように、こまめに立ち上がるように心がけてください。
WHOの体重管理で認知症発症対策の注意点
WHOの推奨する体重の管理で認知症発症を下げる対策を行う際に、考えておくべき点があります。
体重管理をする前に以下の点に注意してください。
体重減量をする際には食事と身体活動の両方を行う
WHOのガイドラインでは、食事と身体活動の両方の要素を含むライフスタイルへの介入は最高の結果をもたらすと考察されています。
体重の管理を行う際は、食事も運動もバランスよく改善していくようにしましょう。
病気等が原因で痩せても認知症の発症リスクの減少にはならない
意図しない体重の減少や栄養失調は、健康状態の悪化に関連しています。
体重の管理を行ったわけではなく、病気等で体重が減ってしまったという場合は、認知症の発症リスクの減少効果は期待できません。
体重が軽い人の体重管理では発症リスクの関係が薄い
WHOのガイドラインでは、過体重または肥満の人を対象にした研究結果から認知症の発症リスクを減少するための対策として体重の管理を挙げています。
ですから肥満状態でない人が体重を減らしても、認知症発症リスクが減らせるとは限りません。
また中年期または中年期以降の世代における低体重者に対して体重増加を促すような介入を行っても、認知症または認知障害のリスクを減少できるとは考えにくいとされています。
WHOの体重の管理と併せやすい効果のもの
WHOのガイドラインで推奨されている認知症発症を減少させる対策で、体重の管理と合わせて取り組むと効果的なものをご紹介します。
身体活動
有酸素運動や筋力トレーニングなどの身体活動を行っている人は、認知症の発症リスクが低いという観察研究の結果があります。
軽度認知症外の人でも、身体活動による介入が認知機能にポジティブな効果を与えることが示唆されています。
WHOは65歳以上の成人に対して、
- 週あたり150分の中強度有酸素運動
- 週あたり75分の高強度有酸素運動
- 同等の中~高強度の運動を組み合わせた身体活動
を行うことを推奨しています。
栄養的管理
WHOのガイドラインでは、認知機能低下や認知症のリスクを低減するために地中海食が推奨されています。
しかし日本では食文化が大きく異なり、地中海食を取り入れることは難しいかもしれません。
主食(米)に偏らず主菜や副菜をしっかりとってバランスのよい食事が、認知症の発症リスク軽減につながるという観察研究の報告があります。
食生活の改善は体重の管理にも大切なので、バランスのよい食事を心がけましょう。
脂質異常症の管理
中年期の脂質異常症の管理が、認知機能低下や認知症の発症リスクを低減することを示唆するエビデンスがあります。
脂質異常症の発症には、肥満が関係していると考えられています。
体重の管理と合わせて脂質異常症の管理も行うことで、認知症の発症リスクを下げることが期待できます。
WHOの体重の管理で認知症の早期発見
体重を管理することによって認知症発症のリスクを下げるだけでなく、認知症の早期発見にもつながります。
定期的な体重測定を行う
急激な体重変化で認知症が発見されるということがあります。
意図せずに体重が減少しているのは、認知症が発症しているためかもしれません。
定期的に体重測定を行って、体重の変化に注意するようにしましょう。
中年期に肥満と判断された場合は特に注意
中年期の肥満は、認知症の発症リスクが高くなります。
中年期に体重の管理を行って適正な体重を維持すれば、年齢が上がった時に認知症の発症リスクを減少させることができます。
認知症以外の疾患の発症も抑えることができるので、中年期にしっかり体重の管理を行うようにしましょう。
肥満と関連した病気がないか疑う
肥満は高血圧や脂質異常症、糖尿病などのさまざまな病気を引き起こします。
特に生活習慣病は認知症の発症につながるとされています。
体重の管理を行わずに肥満のままでいると、間接的にも認知症の発症リスクが上昇してしまいます。
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WHOの体重の管理では痩せすぎもよくない
認知症発症リスクを減少するためにWHOの体重の管理が推奨されているのは、過体重または肥満の人です。
老年期の体重減少(痩せ)は認知症発症の危険因子であるという研究の結果もあります。
痩せすぎると認知症のリスクが高くなってしまうので、適切な体重管理を行うことが重要です。
まずは適切な体重を認識して、体重の管理が必要なのかどうかを判断するようにしましょう。
減量に取り組む場合も極端な食事制限や運動は行わないようにしてください。
出典:厚生労働省「健康的なダイエット」
WHOの体重の管理のまとめ
ここまでWHOの体重の管理についてお伝えしてきました。
WHOが推奨する体重の管理についての要点を以下にまとめます。
- 体重を減らすことで認知症の発生リスクを減らすことが期待できる
- 体重を管理するために、バランスの取れた食事、炭水化物として低グリセミック指数の食品をとる、座位行動を減らし、身体能力に適した定期的な身体活動を毎日実践する
- 体重を管理するためには食事と身体活動の両方を行うこと、病気等で痩せたり、肥満ではない人が体重管理をしても認知症のリスクを低減することにはつながらないことに注意する
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。