認知症における服薬は、症状の緩和や進行を遅らせるうえで非常に大切です。
しかし、認知症の進行に伴い服薬がスムーズに行えなくなる場合もあります。
心配や不安の元になっている家族も多いのではないでしょうか?
本記事では、認知症の方の服薬管理について以下の点を中心にご紹介します。
- 認知症の方の服薬トラブル
- 認知症の方の服薬管理をするうえでのポイント
- 認知症の方の服薬管理を支えるグッズ
今後の服薬管理のためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
スポンサーリンク
認知症の方の服薬トラブル
服薬管理とは、処方された薬の飲む時間や回数、量などを守ったうえで、飲み忘れや間違いがないように管理することです。
認知症の方は症状の進行に伴い、一日一回の服薬でも難しくなることがあります。
また、自己管理も難しく、服薬においてさまざまな問題が生じます。
本人だけでなく、家族が悩まされることも珍しくありません。
ここからは、認知症の方にみられる服薬トラブルをご紹介します。
医師の指示通りに飲めない
そもそも私たちは体調不良があるから病院へ行き、医師から薬を処方してもらうというのがごく自然な流れです。
そして、症状を改善・完治するために薬が必要だと理解しているからこそ飲むことができます。
反対に、理由や必要性がなければ薬を飲むことはないはずです。
認知症の方は「自分はどこも悪くない」と思っていたり、薬の必要性が理解できなかったりするなどの理由で医師の指示通りに飲めないことがあります。
認知症による理解力や判断力の低下が原因となっていることが多いです。
そのため、いくら家族が「薬を飲もう」「飲まないと良くならないよ」と伝えても飲むことが難しくなる場合があります。
服薬を拒否する
「症状を悪化させたくない」「指示通りに飲んでほしい」などの家族の思いとは裏腹に、認知症の方が服薬を拒否することがあります。
服薬を拒否する理由はさまざまです。
認知症の方は不安を感じやすく、薬に不安な思いや不信感を抱いてしまう可能性があります。
服薬に対してそのような思いを抱いているうえに、無理やり飲ませられると、ネガティブな記憶として残ります。
その結果、服薬に対する不安感や猜疑心、家族に対する不信感などが強まり、服薬拒否に繋がるのです。
認知症の方は記憶障害により最近のことを忘れてしまうことがありますが、感情が結びつく記憶は残りやすいとされています。
服薬に対する負の感情が積み重なると、いくら家族が試みても薬を飲んでもらうことが難しくなります。
その他にも、薬の形状によっては苦みや嫌な味を感じ、吐き出してしまうことで服薬を拒否するケースもあります。
また、食べものを上手く飲み込むことができなくなる嚥下(えんげ)障害が服薬拒否に繋がることも少なくありません。
服薬したことを忘れる
服薬したことを忘れると「飲んでいない」と再要求したり、反対に飲んでいなくても「飲んだ」と訴えることがあります。
家族が「もう飲んだ」「まだ飲んでない」と伝えても、本人に納得してもらうことは非常に困難です。
なぜなら、薬を飲んだこと、または飲んでいないことが認知症の方にとっての事実だからです。
また、家族が薬について説明をしたうえで理解しても、記憶障害により長時間覚えておくことが難しくなることがあります。
スポンサーリンク
認知症の方の服薬管理のポイント
ここまで、認知症の方の服薬トラブルをご紹介しました。
介護をしている家族からすると、医師の指示通りにしっかり飲んでほしいと思うのは当たり前のことですよね。
しかし、服薬のトラブルが起こるとどうしたら良いのか分からなくなる方も多くいるはずです。
ここからは、認知症の方の服薬管理のポイントをご紹介します。
生活のタイミングに合わせる
服薬を拒否されると、何としてでも飲ませようと無理やり試みる方がいるかもしれません。
しかし、先ほどもお伝えした通り、無理やり飲ませることで服薬がネガティブな記憶として残りやすくなります。
服薬に対する不安感のみならず、家族に対する不信感が募ると今後の服薬がさらに難しくなってしまいます。
家族としては「医師の指示通りに飲ませないといけない」と、使命感や責任感を持って服薬に対応しているでしょう。
しかし、無理やり飲ませることで状況を悪化させる可能性があるため、認知症の方のタイミングに合わせることも重要です。
医師に状況を説明したうえで服薬時間をずらして良いか確認し、タイミングを見て服薬を行いましょう。
薬を一包化する
飲む薬の種類が増えると、服用時間ごとに準備して間違えず飲むのは決して簡単なことではありません。
種類が多ければ多いほど、飲み間違いや飲み忘れなどのトラブルが起こりやすいです。
しかし、全ての薬をまとめてくれる一包化にすれば、そういったトラブルが起きにくくなります。
医師に相談すれば調剤薬局などで服用時間を刻印し、一包化にして処方してもらえます。
薬の種類が増えて飲み間違いや飲み忘れなどが増えた場合は、薬を一包化してもらいましょう。
薬と食事を混ぜない
服薬を拒否した際、食事に混ぜて飲んでもらうことを考える方がいるかもしれません。
しかし、薬と食事を混ぜると味が悪くなり、違和感を抱く可能性があります。
そこで「毒を盛られている」と思い込み食事拒否にも繋がるリスクもあります。
食事に混ぜず薬のみで服薬を行いましょう。
服薬できたか確認する
認知症の方に服薬できたかを確認することも、服薬管理における重要なポイントです。
その際は言葉だけで確認するのではなく、薬を飲むよう紙に書いて目につきやすい場所に置いておくと良いです。
認知症の方は耳で聞いたことよりも、目で繰り返し見たことの方が覚えやすいとされています。
紙に書いて置いておくと自ら服薬を確認することがあるので、分かりやすく見やすい字で示しましょう。
薬を飲みやすくする
薬に飲みにくさを感じると、服薬を拒否することに繋がります。
そのため、認知症の方が飲みやすい形状の薬に変えることも一つの方法です。
たとえば、唾液や少量の水などで溶ける口腔内破壊錠やゼリー状などの薬があります。
また、口から服薬することが難しい場合は、貼るタイプや坐剤などに変えることも可能です。
薬の不快感を訴えたり飲みにくそうにしている場合は、薬の形状を変えることも検討しましょう。
認知症の方の服薬管理を支えるグッズ
認知症の方の服薬管理は決して簡単なことではなく、家族の悩みにも繋がります。
そこで、取り入れると効果的なものが服薬管理を支えるグッズです。
ここからは、認知症の方の服薬管理を支えるグッズをご紹介します。
お薬カレンダー
お薬カレンダーは、処方された薬を正しく服用するための収納グッズの一つです。
壁掛けタイプやシートタイプなど、いくつかの種類があります。
時間や曜日などが記載されているため、いつどの薬を飲めば良いかが分かりやすいことがメリットの一つです。
しかし、薬の量が多いと一つのポケットに入りきらなかったり、入れ間違いが起こったりする可能性があるなどのデメリットもあります。
お薬カレンダーはAmazonや楽天市場などの通販サイトで購入することができます。
また、100円ショップや薬局などで販売されているところもあります。
購入場所や種類によっても異なりますが、一般価格は約2千~3千円です。
服薬時計
服薬時計は、服薬時間を音声アラームで教えてくれる置時計です。
アラームを止めたり服薬したことを知らせたりするなどのボタンがついています。
事前にセットした時間になると音声アラームで教えてくれるため、飲み忘れ防止に繋がるというメリットがあります。
また、音声アラームによって認知症の方だけではなく家族も気づきやすいため、安心して服薬管理ができます。
しかし、音声アラームが鳴るということもあり、持ち歩くことは難しいというデメリットもあります。
服薬時計は通販サイトや家電量販店などで購入することができ、一般価格は約3千~4千円です。
用法別配薬袋
用法別配薬袋は、朝や昼などと記載された袋に薬をまとめることができるものです。
薬の量が多くてもひとまとめにできる上、何度も使用できることがメリットの一つです。
しかし、「今日から〇〇の薬をやめましょう」と医師に言われた場合、どの薬なのかが分かりづらくなるというデメリットもあります。
用法別配薬袋は一袋に50~100枚入っているものがあり、一般価格は約2千円前後です。
通販サイトで購入することができます。
訪問薬剤師ってなに?
認知症の方の服薬管理を支えてくれる「訪問薬剤師」という薬剤師がいます。
では、訪問薬剤師とはどのようなものなのでしょうか。
ここからは、訪問薬剤師の仕事内容とメリットをご紹介します。
訪問薬剤師の仕事内容
訪問薬剤師とは、介護保険における居宅療養管理指導という役割を担う薬剤師です。
実際に認知症の方の自宅を訪問し、処方箋を元に薬のセットや服薬管理を行います。
また、服薬に関する相談に応じたり副作用の有無を確認したりして、薬物療法のサポートを行います。
訪問薬剤師を希望する場合は、まずはかかりつけ医に相談をして薬剤師による在宅訪問の同意を得ます。
その後医師が薬剤師に指示をし、認知症の方やその家族と訪問日時を話し合って決めます。
認知症の方が施設に入居している場合は、施設のスタッフと話し合いをします。
訪問日時が決定したのち、処方箋に基づいた薬を薬剤師が届けるというのが訪問薬剤師を利用する際の一連の流れです。
病院などの薬剤師であれば月に二回、薬局の薬剤師であれば月に四回までの利用が可能です。
また、訪問後に薬剤師は医師やケアマネジャーなどに報告をし、医療や介護関係者と情報を共有します。
訪問薬剤師の利用対象者となる方は以下の通りです。
- 歩行困難などで一人で薬局に行けない方
- 薬の使い方や副作用、管理などに不安や悩みがある方
- 医師が訪問薬剤師の必要性を認めている方
- 訪問薬剤師の利用を家族が同意している方
家族や本人へのメリット
訪問薬剤師を利用する方の中には認知症だけに限らず、複数の疾患を抱えている人もいます。
複数の疾患を抱えていると飲む薬が増え、飲み合わせの悪さや副作用などが生じるケースも少なくありません。
しかし、訪問薬剤師が直接自宅に訪れることで服薬の状況を確認し、最適な薬物療法をサポートしてくれます。
服薬に関する相談にも応じてくれるため、本人や家族が抱える不安や悩みなどを解決に導くことができます。
また、本人に歩行の問題があったり家族が忙しかったりして通院・来局ができない場合があります。
そのようなときでも薬剤師が直接自宅に訪問してくれるため、移動や時間、精神的な負担などが軽減されます。
まとめ:認知症の方の服薬管理
今回は、認知症における服薬管理についてご紹介しました。
要点を以下にまとめます。
- 認知症の方は、服薬拒否や服薬したことを忘れる場合がある
- 生活のタイミングに合わせ、服薬できたか確認することが大切
- お薬カレンダーや服薬時計などの服薬管理グッズも有効
これらの情報が皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。