高齢化が進む中、認知症の方は年々増加しています。
不安要素として、認知症の方による交通事故が挙げられます。
認知症と診断されたご本人やご家族の方の中には、運転に不安を持っている方もいらっしゃるのではないしょうか?
ご自身や家族だけでなく、誰にとっても交通事故は避けたいものです。
しかし、認知症になれば必ず免許を返納しなければならないのでしょうか?
本記事では、認知症の方の運転の特徴と免許返納について以下の点を中心にご紹介します。
- 認知症の方による運転の特徴
- 交通事故につながる認知症の症状
- 認知症と免許返納について
知識を付けて、安全な運転を続けるためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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認知症とは
認知症とは、タンパク質が異常に溜まることなどによって、脳が萎縮し正常に機能しなくなるという状態です。
タンパク質が溜まる原因は様々で、高齢者にも若年層にも認知症になる可能性はあります。
脳が正常に機能しなくなると、記憶障害や判断力低下、性格の変化などが起こります。
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認知症種類別の運転の特徴
認知症の症状や原因について記載しました。
しかし、認知症と一言で表しても様々な種類があります。
それぞれの認知症によって、運転に現れる特徴も異なりますので、以下で詳しく説明していきます。
アルツハイマー型認知症
アルツハイマー型認知症とは、脳内にタンパク質が溜まり、脳がダメージを受けている状態です。
それによって神経伝達物質の減少や脳萎縮が引き起こされ、記憶障害や見当識障害となって現れます。
アルツハイマー型認知症の方の運転は、以下のような特徴が挙げられます。
- 記憶障害、見当識障害により行き先を忘れ道に迷ってしまう
- いつも行き慣れた場所に出かけても全く違う方向に運転していく
- 注意障害、視空間認知障害による接触事故によって車や車庫の破損が増える
- マイペースなノロノロ運転がみられる
- 駐車時に車の助手席側をこする
血管性認知症
血管性認知症とは、脳梗塞や脳出血による血管へのダメージが原因で起こる認知症です。
脳の場所や程度によって、できることとできないことがはっきりしています。
また、判断力や記憶が比較的保たれることも血管性認知症の特徴です。
血管性認知症の方の運転は、以下のような特徴が挙げられます。
- 手足の麻痺による運転機能の低下(操作ミス)がみられる
- 半側空間無視などによる視野欠損による運転能力(左折時の歩行者確認、自転車巻き込み確認)の低下がみられる
レビー小体型認知症
レビー小体型認知症とは、レビー小体というタンパク質が脳内に溜まり、脳を萎縮させることで起こる認知症です。
記憶障害や、動作が遅くなり転びやすくなるパーキンソン病、幻視などの症状が現れることが多いです。
レビー小体型認知症の方の運転は、以下のような特徴が挙げられます。
- 注意力や集中力に波があるため運転技術にむらがでる
- 幻視の症状からセンターラインが歪んで見える
前頭側頭型認知症
前頭側頭型認知症とは、神経変性により、脳の一部である前頭葉や側頭葉前方が萎縮することで起こる認知症です。
前頭葉は「人格・社会性・言語」を、側頭葉は「記憶・聴覚・言語」をつかさどっています。
この部分にダメージを負うと、感情の抑制ができない、同じことを繰り返すといった行動をとるようになります。
前頭側頭型認知症の方の運転は、以下のような特徴が挙げられます。
- 注意障害によるわき見運転、注意散漫運転、接触事故
- 車間距離の調整困難によって前の車へ接近してしまう
- 常同行動により同じ時刻に同じコースを走り続ける
- 時に同じ速度にこだわって前の車への異常接近や赤信号の見落としがみられる
交通事故につながる認知症の症状
認知症の種類によって、運転の特徴も異なるということを記載しました。
認知症の症状全てが交通事故につながるというわけではなく、一部の症状が危険であるということです。
交通事故につながりやすい認知症の症状について、以下で説明していきます。
脱抑制
正常な感情や理性のコントロールが効かなくなった状態のことです。
認知症の他にアルコールや薬物の摂取が原因の場合もあります。
脱抑制状態で車の運転をすると、「赤信号で止まらなければならない」「自分が待って相手を優先させる」という考えをしづらくなり、交通事故につながる可能性があります。
常同行動
毎日同じ時間に同じ場所に行く、同じ服を着るといった常に同じ行動をとる症状です。
前頭葉のダメージによって「人格・社会性・言語」機能が低下していることが原因です。
「自分がいつも通る道を邪魔されることが許せない」という理性の低下が、交通事故につながると考えられています。
幻視
幻視とは、文字通りに「見えないものが見える」という状態です。
レビー小体型認知症に多い症状です。
視覚に異常があることに自覚がなく、例えば道の変更線が歪んで見えていることにも気づかないために交通事故に繋がると考えられています。
パニック
今自分がどこにいて何をしているか判断ができなくなり、パニックになることがあります。
そのため、隣りにナビ役の人がいる状態で運転するといいですが、ナビの情報量が多いことでかえってパニックになる可能性があります。
事故の可能性を最大限に抑えるためには、認知症の方への指示は最小限にとどめるといいでしょう。
認知症と免許返納について
上記のような認知症の一部の症状が、交通事故につながる可能性があると説明しました。
認知症になれば必ず交通事故を引き起こすとは限らなくても、認知症の診断があれば免許返納をした方がいいのでしょうか?
認知症になると強制的に免許返納というわけではありませんが、運転を控えることや自主返納を勧められることはあります。
一方で、認知症のご本人にとって、車の運転は生きがいや重要な生活手段というケースも考えられます。
自分の運転技術に自信を持っていることもあるので、自主返納はなかなか難しいですよね。
しかし、認知症の方の交通事故は増えているのも事実です。
万が一ご自身が事故の加害者になってしまっては取り返しのつかないことになります。
免許返納が義務ではありませんが、交通事故を未然に防ぐためにも、家族間で話し合って「運転から撤退する」時期を決めておくといいでしょう。
認知機能検査
認知症の方が免許返納するかを調べるために、認知機能検査というものがあります。
警察庁が行っている認知機能検査にはどのような項目があるのでしょうか?
それぞれの内容やチェックできることについて記載していきます。
この認知機能検査は合格不合格を決めるものではなく、認知症の可能性があるかどうかをチェックする指標のようなものです。
ここ数年間で高齢者や認知症の方の交通事故が増え、高齢者や認知症の方の運転に対する世間の目が厳しくなっているという現状があります。
認知症の診断をされていない方でも、運転免許の更新期間が満了する日の年齢が75歳以上のドライバーは、高齢者講習の前に認知機能検査を受けなければいけません。
認知症でない方や若い方だと簡単に覚えて回答できそうな問題ですが、高齢者になると難しい場合があります。
点数が低いほど、認知症の可能性が高くなり、場合によっては免許を返納する必要があります。
定期的に自分の状態を知るためのテストとして、脳機能を把握しておくことは重要です。
具体的には、以下の3つのパターンのテスト項目があります。
時間の見当識
検査時における年月日、曜日及び時間を回答します。
見当識が正常かどうか判断します。
手がかり再生
一定のイラストを記憶し、採点には関係しない課題を行います。
その後、記憶してもらったイラストをヒントなしに回答し、さらにヒントをもとに回答します。
記憶力が正常かどうか判断します。
時計描写
時計の文字盤を描き、さらに、その文字盤に指定された時刻をあらわす針を描きます。
バランスよく数字を書けているか、針の長さは正確かという記憶力や判断力をチェックします。
まとめ:認知症の方による運転の特徴
ここまで認知症の方による運転の特徴と免許返納についてお伝えしました。
要点を以下にまとめます。
- アルツハイマー型認知症の方は、運転中に道先を忘れてしまう可能性がある
- レビー小体型認知症の方は、運転中にセンターラインが歪んで見える可能性がある
- 認知症の方は、感情が抑えられない、幻視状態などの症状によって交通事故のリスクが高い
- 認知症の診断後、自身や家族で運転の引き際を決めることが大切
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。