脳全体が徐々に萎縮していくアルツハイマー病。
残念ながら、根本的な治療法はまだ見つかっていません。
発症を予防するためにも、危険因子を取り除くことが重要です。
原因を把握しておきたいという人も多いのではないでしょうか?
本記事では、アルツハイマー病の発症原因について以下の点を中心に解説します。
- アルツハイマー病の主な発症原因
- アルツハイマー病のマイナーな原因
- アルツハイマー病の原因予防に効果的な食材
アルツハイマー病の発症を防ぐためにも、ご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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アルツハイマー病とは
アルツハイマー病の発症年齢は、主に65歳以降の高齢者です。
若い年齢で発症する可能性もあり、若年性アルツハイマー病と呼ばれています。
病状は、記憶障害や言語障害、認知機能や運動機能の低下などが代表的です。
アルツハイマー病の発症過程では、脳内に老人斑というシミが広がり、神経原線維変化と呼ばれる線維のもつれがみられます。
これらが、脳細胞を機能停止させ、脳を萎縮させる原因とされています。
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アルツハイマー病の主な原因
アルツハイマー病の発症因子には、どんなものがあるのでしょうか?
遺伝因子、環境因子、生活習慣因子について解説します。
遺伝因子
アルツハイマー病には、遺伝と関係のある家族性アルツハイマー病と遺伝とは関係のない孤発性アルツハイマー病があります。
家族性アルツハイマー病の場合は、血縁にアルツハイマー病の遺伝因子をもつ人がいると遺伝します。
家族性アルツハイマー病は、若い頃の発症が多いことが特徴です。
血縁のなかに何人もアルツハイマー病の方がいる場合には、家族性アルツハイマー病が疑われます。
ただ、アルツハイマー病全体から見ると、家族性アルツハイマー病は全体の1%以下と、少数派です。
孤発性アルツハイマー病でも、ある種の遺伝子を持っている場合、アルツハイマー病を発症するリスクが高まります。
なかでも、ApoE4遺伝子が最も危険とされています。
両親のうちどちらかがこの遺伝子を持っていると、子どもは50%の確率で受け継ぎます。
しかし、この遺伝子をもつ人全員が発症するわけではなく、さまざまな要因が重なって発症します。
環境因子
疫学調査によると、頭に大きな傷を負った人や生活習慣病をもっている人がアルツハイマー病になりやすいです。
また、生活習慣病のなかでも、糖尿病や高脂血症の持病を持つ人は要注意です。
それぞれの生活習慣病について、項目を設けて詳しく解説いたします。
糖尿病
糖尿病によって血管が傷つくことで血管性認知症を引き起こす可能性があることはよく知られています。
しかし、アルツハイマー病にも深い関係があります。
糖尿病は老人斑を脳に出現させます。
食後の血糖値が高い状態が続くと、アミロイド斑形成のリスクは通常の1.5倍になるという研究結果もあります。
また、血糖値が高いと神経原線維変化も起きやすくなります。
高い血糖値により、タウたんぱく質が化学反応を起こして脳神経が神経原線維変化を形成すると考えられています。
高脂血症
高脂血症も老人斑を形成する要因であると考えられています。
高脂血症は血液中のコレステロールや中性脂肪が増えてしまう病気です。
高脂血症は動脈硬化の原因になり、脳にダメージを与えます。
生活習慣因子
前項にあげたような生活習慣病を発症するような生活習慣には、どのような生活習慣が関係しているのでしょうか?
ここでは、アルツハイマー病に関わる生活習慣について詳しく解説します。
食事
野菜不足でバランスの良くない食事や、赤身肉やソーセージのような加工食品の食べすぎは注意が必要です。
また、ファーストフードの食べ過ぎも生活習慣病の原因になります。
たとえば、ファーストフードによく使われる飽和脂肪酸の摂りすぎは危険です。
運動不足
運動不足もアルツハイマー病の原因になります。
しかし、激しすぎる運動も活性酸素が発生して血管や細胞を傷つけてしまいます。
解毒作用の衰えた高齢者にとっては、適度な運動が大切です。
具体的には、ウォーキングなどの軽めの有酸素運動が最適です。
高齢者やアルツハイマー病の方の脳は、記憶をつかさどる海馬という脳の部位で血流の低下がみられます。
血流が少なければ酸素が十分に供給されず、脳の働きも低下します。
睡眠不足
老人斑は、アミロイドβが老廃物となって集積したものですが、通常であれば老廃物は睡眠時に排出されます。
しかし、睡眠が浅かったり睡眠が不足していたりすると十分に排出されず、脳に蓄積されます。
睡眠不足により老廃物が排出されないことも、アルツハイマー病発症の原因になります。
その他のアルツハイマー病の原因
上記にあげた原因のほかにも、アルツハイマー病を発症させるものがあります。
カビ
黒カビの毒素は、アルツハイマー病の原因となります。
黒カビの毒素は活性酸素を増やします。
活性酸素は血管を傷つける酵素で、脳の血管も傷つけます。
アミロイドβは、こういった炎症や毒物から脳を守るという働きがあり、黒カビ毒素を攻撃して老廃物を残します。
その老廃物が適切に排出されないと脳に付着して老人斑となります。
歯周病
歯周病菌がアミロイドβの生産を促進し、アルツハイマー病の発症原因になっているという研究結果もあります。
歯周病菌に感染したマウスのアミロイドβの蓄積量が、正常のマウスの約10倍あったという実験結果もありました。
また、歯周病菌に感染したマウスには記憶の低下も見られました。
ストレス
ストレスが溜まると、うつ病や高血圧が発症するということが知られていますが、アルツハイマー病の原因にもなります。
ストレスの溜まった状態が続くと、うつ状態になったり身体の機能が衰えたりとさまざまな不都合が起こります。
さらに、記憶力や認知機能が衰えることもあります。
脳はすべての栄養素が十分にいきわたらないと能力を発揮できないものです。
しかし、ストレスが溜まることで十分な栄養が脳に行かなくなります。
ストレスが溜まると身体は防衛反応を起こします。
栄養素はそのために使われ、脳にまで十分に行き渡らないのです。
実際、ストレスホルモンの値が高い人ほど、物忘れが激しいというデータもあります。
喫煙
アルツハイマー病の原因においては、タバコも危険因子とされています。
タバコは、動脈硬化の原因にもなります。
また、血管がダメージを受け、脳への酸素供給量が減ってしまいます。
さらに、タバコが原因とされる糖尿病、脳卒中、心房細動といった病気は、アルツハイマー病に関係があるとされています。
アルツハイマー病の原因予防に効果的な食べ物
アルツハイマー病を予防するには、食事が大切だということは先述しました。
では、アルツハイマーを予防するのに効果的な食べ物には、どんなものがあるのでしょうか?
魚
魚の中でも、アジ、イワシ、サバといった青魚にはアルツハイマー病を防ぐ効果があります。
青魚にはDHAが多く含まれ、記憶力や判断力の向上を促進します。
また、EPAも多く含まれているのですが、これはDHAとともに中性脂肪を抑え、動脈硬化を予防します。
魚を食べる人ほど、アルツハイマー病を発症する確率が低いのは、これらの成分によるものです。
青魚以外にも、ウナギやマグロのトロ、真鯛といったものにもDHAやEPAが多く含まれています。
緑黄色野菜
ホウレン草や小松菜、豆などに含まれる葉酸はアルツハイマー病の予防に役立ちます。
アルツハイマー病の危険因子として、肝臓から排出される悪玉アミノ酸が挙げられます。
葉酸は、悪玉アミノ酸を減らすことができます。
ニンジンに多く含まれているβカロテンにも、予防効果が期待されています。
果物
ブルーベリーやストロベリーなど、ベリー類にはポリフェノールが多く含まれており、アルツハイマー病の予防に効果的です。
ブドウにもポリフェノールが多く含まれています。
緑茶
緑茶に含まれる緑茶カテキンの抗酸化作用が、アルツハイマー病の予防に効果的といわれています。
赤ワイン
赤ワインに含まれるポリフェノールも強力な抗酸化作用があります。
そのため、アルツハイマー病の予防に効果的です。
目安としては、一日に250mlから500mlの飲用が適量です。
アルミニウムはアルツハイマー病の原因になる?
アルツハイマー病にはアルミニウムの摂取が原因だとする説があり、対する懐疑派との論争が長く続いてきました。
人はアルミニウムを取り込んでもその99%を排出します。
また、吸収されたとしても腎臓の働きにより尿として排出され、細胞に取り込まれる量はおよそ0.1%以下とされています。
吸収された分は脳にも移行されるということが知られているので、これが脳に影響を与えるのかどうかが議論になっています。
しかし、それぞれの説には一長一短があり、どちらが正しいともいえないのが現状です。
アルミニウムがアルツハイマー病の原因とする説
アルミニウムが原因だとするグループは、次のような研究結果をもとにしています。
- アルツハイマー病を発症した人の脳にアルミニウムが蓄積されていた
- 飲料水にアルミニウムが多く含まれている地域で発症数が多い
- アルミニウムを吸い込む可能性のある仕事に就いている人の発症数が多い
この事例により、アルミニウムが原因とする説を唱えているのです。
しかし、アルミニウム以外の発症要因や他の飲料物を考慮していない点で、正しいと確定するには難があります。
アルミニウムはアルツハイマー病と関連性がないとする説
医薬品や食品、飲料水などからアルミニウム摂取することと、アルツハイマー病とは関係ないとしています。
この説にはアルツハイマー病のリスクについての考え方が一貫しておらず、正確性に欠けるという批判があります。
WHOの環境保健規準によると、アルツハイマー病とアルミニウムの関連性はあるともないといえないとされています。
教育のレベルは認知症の原因となる
教育のレベルが認知症の発症に影響を及ぼすという研究結果が、近年の科学的な調査から明らかになってきました。これは、教育のレベルが高いほど認知機能を維持する能力が強く、認知症のリスクが低下するという結論を示しています。
具体的には、教育のレベルが高いと、脳の神経回路が豊かになり、認知機能を維持するための「脳の予備力」が増すと考えられています。これは、教育を通じて得た知識や経験が、脳の構造や機能に良い影響を与え、認知症の発症を遅らせる可能性があるということを示しています。
また、教育のレベルが認知症の発症に影響を及ぼすという研究結果は、地域や年齢、性別による差異によっても変わります。例えば、開発途上国では、教育の機会が限られているため、認知症の発症率が高くなる傾向があります。一方、先進国では、教育の機会が広く、高い教育レベルを達成する人々が多いため、認知症の発症率は低くなる傾向があります。
このように、教育のレベルは認知症の原因となる重要な要素であり、認知症の予防策を考える上で無視できない要素となっています。今後も研究が進めば、より具体的な予防策や対策が見つかることでしょう。
アルツハイマー病原因のまとめ
ここまでアルツハイマー病の原因についてお伝えしました。
要点を以下にまとめます。
- アルツハイマー病の主な原因は、遺伝因子、環境因子、生活習慣因子
- カビ、歯周病、ストレス、喫煙もアルツハイマー病の危険因子
- 青魚のもつDHAやEPAは、アルツハイマー病予防に効果的
万が一アルツハイマー病を発症してしまったら、早めに気づき、主治医に相談しましょう。
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。