認知症は、種類によって症状がさまざまです。
記憶障害のほか、見当識障害や幻覚なども挙げられます。
その中でも、手が震え出すという症状をご存知でしょうか?
日常生活に支障が出ることも多く、不安の種となる症状の一つです。
本記事では、認知症による手の震えについて以下の点を中心にご紹介します。
- 認知症によって手が震える原因
- レビー小体型認知症とパーキンソン病
- 認知症以外で手が震える原因
手が震え出したときのためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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認知症とは
認知症とは、脳細胞が減少したり死滅したりすることで日常生活に支障をきたす状態をいいます。
認知症の初期では物忘れなどの記憶障害が現れ、最近の出来事を思い出すことが困難になり、新しい出来事を記憶しにくくなります。
認知症の記憶障害は通常の物忘れとは異なり、自分が体験した出来事そのものも忘れます。
さらには、忘れたこと自体も忘れてしまいます。
そのほかにも、時間や場所を認識できなくなる見当識障害や、物事を効率的に進めることができなくなる実行機能障害などが現れます。
症状の進行速度や現れ方に個人差はありますが、末期では寝たきり状態になるケースも少なくありません。
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認知症によって手が震える原因
認知症では記憶障害や見当識障害などだけではなく、脳の異常によって身体に障害が現れることがあります。
手が震える症状は、認知症の中でもレビー小体型認知症との関係が最も深いです。
レビー小体型認知症は、脳神経細胞の中にレビー小体という異常なたんぱく質が溜まることで発症します。
レビー小体型認知症でみられる手の震えは、パーキンソン症状とも呼ばれています。
その名の通り、パーキンソン病に似た運動障害です。
パーキンソン病は中脳にある黒質と呼ばれる部位の神経細胞が破壊され、ドパミンの生成量が減少することで発症します。
ドパミンは人間の身体をスムーズに動かす役割を担っており、生成量が減少することで運動障害が起こります。
パーキンソン病もレビー小体型認知症と同様、脳神経細胞の中にレビー小体が溜まることが分かっています。
レビー小体型認知症とパーキンソン病の違い
レビー小体型認知症とパーキンソン病は異なる病気ではあるものの、どちらも神経細胞が破壊されることで発症します。
では、どのような違いがあり、どういった症状が現れるのでしょうか?
最も大きな違いは症状の現れ方です。
パーキンソン病では運動障害のみならず、記憶障害などの認知機能の低下もみられることがあります。
パーキンソン病を発症してから一年以上経過後に認知症を発症した場合は、認知症を伴うパーキンソン病です。
レビー小体型認知症は物忘れなどの記憶障害から始まり、進行に伴い手の震えなどのパーキンソン症状が現れます。
認知症を発症してからパーキンソン病が一年以内に併発した場合は、レビー小体型認知症と呼ばれます。
レビー小体型認知症とパーキンソン病は異なる病気ではありますが、密接した関係にあると考えられています。
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パーキンソン病の症状
パーキンソン病の症状にはいくつか種類があります。
以下に、パーキンソン病の症状をご紹介します。
無動
素早い動きができなくなるため、歩くスピードが遅くなったり歩幅が狭くなったりします。
また、腕の振りも小さくなります。
さらには話し方の抑揚が失われ声が小さくなるほか、文字が小さくなるといった症状も現れます。
静止時振戦
何もしていないときに手や足などに震えが生じます。
一方で、何かしようと動いたときや睡眠時には震えが治まることが多いです。
震えは片方の手や足から発生するケースが多く、一秒間で4~6回ほどの震えがみられることが特徴です。
筋固縮
膝や肩、指などの筋肉が硬くなり、スムーズに動かすことが困難になります。
顔の筋肉もこわばるため無表情に感じられたり、ときには痛みを伴うこともあります。
腕や足などを他者が動かそうとすると関節がカクカクし、抵抗を感じられることが特徴です。
姿勢反射障害
身体のバランスをとることが難しく転びやすくなるため、転倒による骨折などのリスクがあります。
また、歩行中に止まることや、方向転換が困難になります。
症状の進行に伴い、首が下がったり身体が斜めに傾いたりするなどの症状が現れる場合もあります。
「パーキンソン病」という病名を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。実はパーキンソン病と認知症には深い関係性があります。今回はパーキンソン病と認知症の発症の関係をご紹介した上で、パーキンソン病認知症の原因や症状をご紹介し[…]
認知症以外で手が震える原因
手の震えは認知症に限らず、そのほかの原因も考えられます。
ここからは、認知症以外で手が震える原因をご紹介します。
ストレス
ストレスが溜まると自律神経の乱れから手の震えが起こることがあります。
また、ストレスは自律神経失調症やうつ病などを誘発するリスクがあるため、非常に危険です。
手の震えのほかに便秘や不眠、頭痛などの身体症状が現れることがあります。
また、気分が落ち込みやすくなったり、強い不安感を抱いたりするなど精神状態が不安定になりやすいです。
低血糖
低血糖とは、血糖値が正常の範囲を下回った状態をいいます。
食事量が少なかったり、空腹時に激しい運動をしたりするなどのタイミングで起こりやすいです。
手の震えのほか、強い倦怠感や動悸、冷や汗などの症状が現れます。
重度になると意識がもうろうとしたり、痙攣を起こしたりする場合があります。
低血糖の症状は個人差があるうえ、繰り返すことで症状を自覚しづらくなるため注意が必要です。
アルコール依存症
長期的にアルコールを摂取し続け、自身で飲酒をコントロールできなくなる状態をアルコール依存症といいます。
体内のアルコール濃度が低下することで手の震えが起こります。
手の震えは一種の離脱症状であり、飲酒をしないと精神状態が不安定になることから飲酒を続けることになります。
飲酒している状態が習慣化すると、手の震えのほかに幻覚・幻聴、不眠などの症状も現れることがあります。
脳梗塞
運動機能の調節を行う部位である小脳に脳梗塞を生じると、手の震えが起こることがあります。
手の震えのほかに麻痺や筋力低下なども起こるため、日常生活におけるあらゆる動作がしづらくなります。
高齢者の手の震えは認知症?
高齢者の方の手の震えは必ずしも認知症が原因ではありません。
手の震えには4つの原因があります。
はじめの3つは以下の通りです。
【生理的な震え】
周囲の環境や心理的要因で起こる震えで、一時的で誰にも起こる震えです。
【薬の副作用による震え】
持病の治療薬として服用している薬の副作用として震えが起こることがあります。
【病気の症状としての震え】
今まで紹介してきたような認知症やその他の病気を原因として起こる震えです。
以上3つの原因をご紹介しましたが、4つ目に「原因がはっきりしない震え」があります。
実は、手の震えは「本能振戦」の場合が多く、必ずしも認知症が原因とはいえません。
原因のはっきりしない震えは「本能性振戦」といわれる病気です。
「本能性振戦」の特徴は以下の通りです。
- 手の震えを起こすような病的要因が見当たらない
- 原因がはっきりしない
- 手の震え以外の症状がない
- 病状の悪化や麻痺を起こすことがない
特徴からも、あまり心配することのない症状といえます。
高齢者の手の震えがあっても、原因がどこから来ているのかによって対処が異なります。
「本能性振戦」の場合の対処法は以下のようなものがあります。
- 睡眠やリラックスで交感神経の高ぶりをコントロールする
- 手の震えを必要以上に気にしすぎない
- 水などを飲むとき、コップに注ぐ量を少なくしたり、ストローを使うなど工夫する
- 周りの方に」事前に手の震えがあることを伝えておく
手の震えがあったら何科にかかるべき?
手の震えが起こると文字が書きづらくなったり、食べものや飲みものをこぼしたりするなど非常に不便な状態となります。
しかし、どの科を受診すべきか分からない方もいるでしょう。
すぐに治まる手の震えもありますが、日常的に続くのであれば何らかの病気のサインかもしれません。
そのため、手の震えが長期間みられる場合は医療機関の受診が必要です。
手の震えは脳や神経系に何らかの異常をきたしているときに起こりやすいため、まずは脳神経内科を受診すると良いです。
特に手の震えが悪化したりその他の症状がみられる場合は、早めの受診と治療が必要になります。
手の震えが継続する場合はさまざまな原因が考えられます。
自己判断で放っておくことだけは避けましょう。
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まとめ:認知症による手の震え
今回は、認知症による手の震えについてご紹介しました。
要点を以下にまとめます。
- ドパミンの生成量が減少すると、手の震えが起こり出す
- レビー小体型認知症とパーキンソン病は、先に発症した病態によって診断される
- 認知症以外にも、ストレスや低血糖によって手が震える場合もある
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。