地方の高齢者にとって自動車は、移動手段として欠かせない存在です。
そのため、多少の不安を感じても乗り続けてしまう方が多いのではないでしょうか?
しかし、認知機能が低下した状態であれば、交通事故のリスクは非常に高いです。
本記事では、認知症発症後の免許の保持について以下の点を中心にご紹介します。
- 認知症検査の内容
- 免許の自主返納について考えるときの相談先
- 自主返納をしたときの特典
ご本人やご家族の認知症検査、免許の自主返納のためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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認知症の方の免許はどうなる?
認知症と診断された場合、免許はどうすればよいのでしょうか?
道路交通法103条1項によると、運転免許に関して後見類型、補佐類型に関係なく認知症であると判明した方は免許を取り消し、停止されます。
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免許更新時の認知機能検査の対象者
平成29年3月12日から、75歳以上の高齢者が運転免許を更新する際は認知機能検査を受けることが義務付けられました。
3年に1度は必ず認知症検査を受ける必要があります。
また75歳以上の運転者が信号無視や一時不停止、横断歩道における横断歩行者等妨害など、対象となる18項目のいずれかの違反をすると、必ず認知症検査を受ける必要があります。
この場合、通知書を受け取ってから1ケ月以内に認知症検査を受けないと、免許停止や免許取り消しの対象となってしまうので注意が必要です。
免許更新の認知機能検査ではどのようなテストをするの?
前述した認知機能検査はどのように行われるのでしょうか?
認知機能検査で行われる内容について以下でご紹介します。
時間の見当識の検査
時間の見当識の検査では、検査時における年月日、曜日、時間を回答します。
例えば、以下のような質問があります。
- 今年は何年ですか?
- 今月は何月ですか?
- 今日は何日ですか?
- 今日は何曜日ですか?
- 今は何時何分ですか?
手がかり再生
手がかり再生では、まず一定のイラストを記憶してもらいます。
採点には関係しない課題を行った後、記憶しているイラストをヒントなしに回答し、ヒントをもとにもう一度回答します。
手がかり描写は、少し前に覚えたことを思い出す短期記憶が正常に働いているかを確認するものです。
時計描写
時計の文字盤を描き、さらに、その文字盤に指定された時刻を表す針を描きます。
時計の文字盤や針を描くことによって脳のさまざまな働きに問題がないかを確認できます。
主に、以下の三つの能力を把握できます。
- 視空間認知:目に入った情報から物の位置や向きを認識する
- 構成能力:ある部分が全体の中でどうなっているかを理解する
- 認知能力:数の概念を理解する
これらの検査が終了したのち、以下の分類に判定されます。
- 第1分類:記憶力・判断力が低くなっている(認知症のおそれ)
- 第2分類:記憶力・判断力が少し低くなっている(認知機能の低下のおそれあり)
- 第3分類:記憶力・判断力に心配がない(認知機能の低下のおそれがない)
第1分類の「記憶力・判断力が低くなっている」という判定結果が出た場合には、専門医の診断を受け、診断書を提出します。
認知症検査、そして専門医の診断の結果、認知症と診断されると免許は取り消しまたは停止となります。
認知症検査は簡易的なものなので、早めに医療機関で受診するよう心掛けましょう。
日頃から家族が健康状態や身体状況を確認することが大切です。
認知症検査受検後の免許保持の流れ
認知症検査受検後の流れについてご紹介します。
認知症検査終了後に採点の結果に応じて、認知症のおそれのありなしが判定されます。
結果が36点未満の場合は「認知症のおそれあり」の判定で認知症検査不合格となります。
尚、認知症検査に落ちても認知症検査の再検査の受検は可能です。
ただし、受検ごとに手数料は必要になります。
認知症検査の結果は認知機能検査結果通知書として書面で通知されます。
認知症検査不合格の方は、以下のどちらかが必要となります。
- 臨時適性検査(専門医の診断)の受検
- 診断書の提出
臨時適性検査又は診断書の提出で認知症でない場合は認知症のおそれなしとなります。
認知症であるとなった場合は聴聞等の手続きを経たうえで運転免許取り消し等になります。
また、臨時の認知機能検査は75歳以上のドライバーの特定の交通違反(信号無視など)でも行われます。
特定の交通違反で行われる臨時の認知機能検査も実施要領は同じになります。
認知症機能検査に落ちたら免許の返納は強制?
認知症機能検査に落ちてしまうと免許は強制的に返納しなければならないのでしょうか。
検査に落ちたとしても、運転免許を強制的に返納したり、取り消されたりしません。
運転に対して不安を感じている場合は、医師や運転適性相談窓口で相談しましょう。
認知機能検査で認知症の疑いが出た場合、必ず医師の診断書を提出する義務があります。
医師によって認知症という診断が下された場合は、運転免許の取り消しや停止となります。
認知症で免許取り消し後の再取得は可能?
認知症と診断され、運転免許の取り消し処分を受けた場合、再取得は可能なのでしょうか。
認知症の病状が医師の診断によって「回復」したことがわかれば再取得が可能です。
運転免許の再取得するためには、運転免許センターでの安全運転相談が必要です。
取り消し後3年以内であれば、適正検査と講習のみで取得できます。
取り消し後3年以上経ってしまうと、最初から取り直しということになります。
免許の自主返納はどこでできる?
基本的に、免許の返納先は運転免許センターや最寄りの警察署の窓口です。
基本的に免許証を持っている本人が直接、返納しに行かないといけません。
家族が代行できる自治体はごく一部です。
したがって、本人が納得して免許を返納するように、家族が詳しく説明する必要があります。
また、都道府県警察では専門知識をもつ相談受付員がいらっしゃる場合があります。
安全運転を続けるために必要なアドバイスや指導、運転免許証の自主返納制度や自主返納者に対する種々の支援について教えてくれます。
また、電話でも相談できるように全国統一専用相談ダイヤル(#8080)を整備しているので、ぜひ活用してみましょう。
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免許の自主返納で得られるサービス
認知症検査を受けて好きな運転を辞めて免許を自主返納することは、大きな決断です。
しかし、そうした決断に対して様々なサービスを受けられるという特典があります。
サービス内容は各地域によって異なりますので、詳細は各都道府県のWEBサイトや警察署のHPなどから確認できます。
また、高齢運転者支援サイトでも各種特典の案内をしています。
ここでは代表的なものをご紹介いたします。
公共交通機関の割引
自動車の運転を辞めることにより、不便を感じるのが病院や買い物などに出かける際の移動です。
移動手段に困らないように多くの場所で公共交通機関の割引が特典として用意されています。
市営・県営バス、電車、指定のタクシー業者の運賃の割引などです。
デパート・スーパーなどの配送料の割引
商品を大量に買った際は、公共交通機関を利用して行くと簡単には持ち帰れません。
そのため、配送サービスの配送料を割り引いたり、無料にしたりするサービスを提供している企業もあります。
レジャー施設や宿泊施設の割引
県内にあるレジャー施設や美術館、ホテルの宿泊料金の割引を設けている地域もあります。
車を売却する際の特典
認知症検査等で免許の自主返納を決断し車を売却することになった場合、売却成約時に現金や商品券をプレゼントする企業もあります。
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認知症患者の免許返納は義務なの?
認知症患者の免許返納は義務とはなっていないのが現状です。
しかし、返納義務化に対しては賛成とする人が76.1%と大多数を占めています。
一方で核家族化が進み、地方に住む高齢者は、移動の手段として車は欠かせません。
運転に多少の不安を抱えていても、免許の自主返納まで至らないのが現実です。
しかし、認知症では交通事故のリスクは非常に高くなります。
人の命に関わることでもあり、早期に免許の自主返納をしたほうがよいでしょう。
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まとめ:認知症を発症したあとの免許について
本記事では、認知症発症後の免許の扱い方についてご紹介しました。
要点を以下にまとめます。
- 認知症検査の内容は、時間の見当識・手がかり再生・時間描写など
- 免許の自主返納を考えるときの相談先は、最寄りの警察署や専用相談ダイヤル(#8080)
- 免許を自主返納すると、特典として公共交通機関の割引や配送料の割引を受けられることがある
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。