記憶力や判断力が徐々に低下していくアルツハイマー病。
アルツハイマー病ではさまざま症状が現れますが、睡眠障害もその中の一つです。
また、日々の睡眠には、アルツハイマー病を予防する効果も期待できます。
アルツハイマー病と睡眠の関係性について理解を深めたいという方も多いのではないでしょうか?
本記事では、アルツハイマー病と睡眠の関係性を、対策法と併せてご紹介します。
- アルツハイマー病と睡眠不足の関係
- アルツハイマー病による睡眠障害
- アルツハイマー病による睡眠障害の対策
- アルツハイマー病予防に最適な睡眠時間
アルツハイマー病の予防や現在アルツハイマー病で睡眠にお悩みの方の参考になれば幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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アルツハイマー病と睡眠不足の関係
アルツハイマー病と睡眠不足には大きな関係があります。
2021年4月20日に「Nature Communications」に発表された研究ではイギリスで8千人近い人を50歳の時から約25年間追跡調査したそうです。
平日の睡眠時間が6時間以下とした人は、通常7時間の睡眠をとる人達よりも約30年後に認知症と診断される割合が30%程度高いことが判明しました。
別の研究では、アルツハイマー病の原因となるアミロイドβは睡眠不足によって濃度が上昇するということがわかっています。
また、同じくアルツハイマー病の原因となるタウたんぱく質は睡眠によって取り除かれることもわかってきました。
アルツハイマー病と因果関係が高い物質が、どちらも睡眠不足によって影響を受けるということです。
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高齢者が睡眠障害になりやすい理由
高齢者の眠りは浅くなりがちです。
眠りにはレム睡眠とノンレム睡眠があることは知られていますが、高齢者においては眠りの浅いレム睡眠が大半を占め、尿意や少しの物音で目覚めてしまうことが増えます。
また眠りには体内時計、覚醒機構、ホメオスタシスの3つのメカニズムが関係しています。
しかしこのメカニズムも加齢によって変化していきます。
まずは3つのメカニズムの加齢による変化をご紹介します。
体内時計
体内時計は、夜眠くなり、朝目覚めるというリズムを作っています。
体内時計の周期は25時間で、1日24時間との時間のずれをリセットするために朝の陽の光を浴びることが必要です。
また、体内時計は深部体温とメラトニンというホルモンによって働きます。
体温は朝早くから上がり始め午後2時~3時頃に一番上昇します。
その後下がり始め、午前2時~3時に最も低くなります。
この体温の下降に関わりが深いのがメラトニンです。
メラトニンは午後9時ごろから分泌をはじめ午前2時ごろに最も多くなります。
人は体温が下がると眠気を感じ始めるので健康な人は午後10:00頃から0時頃に眠気を感じ始めます。
高齢者はメラトニンの分泌が減り、深部体温の高低差も小さくなるため、体内時計の働きが弱まってくるのです。
覚醒機構
覚醒機構とは必要な時に目が覚める機能です。
人は身体や命の危険に晒されているとき、睡眠を妨げる機能が備わっています。
ストレスや不安によって眠れなくなるのはこのためです。
高齢者は不安やストレスが大きくなり、眠りが浅くなると考えられています。
ホメオスタシス
ホメオスタシスとは、体温などの身体の状態を一定に保つ機能のことです。
日中の活動量や起きている時間によって脳内ホルモンである睡眠物質がたまり、睡眠中に排泄されます。
しかし、昼間はホメオスタシスによって睡眠物質は一定量以下に保たれています。
夜になると、睡眠物質の量が増えることで眠りやすくなるのです。
一方で、高齢者は日中の活動量が低く睡眠物質が溜まりにくいです。
短い睡眠時間でも睡眠物質が処理されてしまうと考えられています。
アルツハイマー病の睡眠障害
ここまで、睡眠不足がアルツハイマー病の発症リスクを高めるという研究結果についてご紹介しました。
しかし、アルツハイマー病と睡眠の関係はこれだけではなく、アルツハイマー病が睡眠障害を引き起こすこともあるのです。
アルツハイマー病が睡眠パターンに異常をもたらすこともあります。
主な睡眠障害について以下でご紹介します。
入眠障害
入眠障害は、夜中々寝付けない方にみられます。
眠るまでに30分~1時間以上かかり、さらにその時間を苦痛に感じる状態です。
また、アルツハイマー病の方は、中核症状である見当識障害などによって、不安を感じ寝付けなくなるケースも多いです。
中途覚醒
途中で何度も目が覚めてしまう状態です。
アルツハイマー病では、トイレの失敗による不安感から深く眠れず、何度も起きてしまうことが原因の一つとされています。
早期覚醒
朝の希望起床時間より2時間以上早く目が覚めてしまう状態です。
アルツハイマー病では昼間の活動力低下などが原因とされています。
昼夜逆転
昼間と夜が逆転し、昼に寝て夜に起きている状態です。
アルツハイマー病になると、睡眠と覚醒のリズムが乱れていき昼夜逆転を起こしやすくなります。
体内時計をつかさどる脳の一部に変化が生じることが原因です。
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アルツハイマー病の睡眠障害の対策
アルツハイマー病がさまざまな睡眠障害を引き起こす可能性があることをご紹介しました。
以下で、具体的な対策について紹介します。
日光を浴びる
睡眠障害の発症は、体内時計が整っていないことが原因の一つです。
体内時計を整えるには朝、太陽の光を十分浴びることが重要です。
午前中に太陽の光を浴びることは、日中の意識の明確さを十分に保つことにつながります。
しっかりとカーテンを開け、朝の光を体中に浴びてください。
できればお散歩などをするとより効果的です。
就寝環境の整備
就寝時には部屋を暗くしたり、寝具を整えたりして眠りやすい環境を作ることも大切です。
枕などは本人の使いやすい物に変えるなどの工夫も必要です。
足が冷えていると眠りにくいので、眠る前の足浴や、蒸しタオル等で温めるのもよいでしょう。
低温やけどに注意して湯たんぽを使用することもおすすめです。
就寝環境を整備することで、入眠障害の改善が期待できます。
活動量を増やす
日中の活動が活発になるとスムーズに眠れるようになります。
一方で、アルツハイマー病の方は日中の活動量が低下している方が多いです。
そのため、生活リズムを整える、活動量を増やすといった必要があります。
デイサービスやデイケアに参加することは、活動量を増やすうえでとても効果的です。
活動量を増やすことで、入眠障害や昼夜逆転の改善が期待できます。
寝る前のトイレ
高齢になると腎臓や膀胱の機能が低下し、夜間に行くトイレの回数が多くなります。
また、トイレの失敗という経験があると、不安感が強くなり眠りが浅くなって、何度も目を覚ましてしまうことがあります。
就寝前には必ずトイレに行ってもらうようにしましょう。
トイレに行ったということで安心して眠ることができるかもしれません。
入眠障害・中途覚醒の改善が期待できます。
不安感の解消
これまでの解説の通り、アルツハイマー病の方は常に大きな不安感に襲われている可能性が高いです。
夜の暗さや、見当識障害による自分のいる場所がわからなくなるといった不安、失敗の不安も持っているかもしれません。
不安のないことを丁寧に説明し、不安の原因を取り除くことが最も重要な対策です。
不安を解消することで、入眠障害や中途覚醒の改善が期待できます。
アルツハイマー病予防に最適な睡眠時間
前述の通り、高齢者の方が睡眠不足になると脳内のアミロイドβが増え、アルツハイマー病になりやすくなります。
睡眠不足によるアルツハイマー病のリスクは、高齢者だけに限らず若い方も同様です。
アルツハイマー病予防に最適な睡眠時間は色々な説がありますが、6時間半~7時間といわれています。
規則正しい生活と必要な睡眠時間で、アルツハイマー病を予防しましょう。
睡眠不足はアミロイドβを増加させる?
2013年アメリカのワシントン大学の研究班が「JAMA Neurology」誌に発表した論文によると、睡眠が不安定で入眠困難・早期覚醒・中途覚醒などがある人は、睡眠が安定している人に比べ脳内のアミロイドβの蓄積が5.6倍だったということがわかりました。
さらにNIH(アメリカ国立衛生研究所)の研究では20人を対象に通常の睡眠後と徹夜後を比較したところ、たった一晩徹夜するだけで、ほぼ全員にアルツハイマー病の病変部である海馬、海馬傍回、視床でアミロイドβの蓄積が認められたそうです。
たった一晩の睡眠不足がアミロイドβの蓄積を招いてしまうということは、若い頃から睡眠習慣も注意しなければ、アルツハイマー病の大きな要因になってしまうということです。
アミロイドβを増加させないためには、正しい就寝習慣を持続させることが最も重要なことといえるでしょう。
アルツハイマー病と睡眠のまとめ
ここまでアルツハイマー病と睡眠との関係や睡眠障害の対策法などを解説してきました。
以下に要点をまとめます。
- アルツハイマー病の原因となるアミロイドβとタウたんぱく質は、睡眠不足によって増加する
- アルツハイマー病の睡眠障害には入眠障害、中途覚醒、早期覚醒、昼夜逆転等がある
- アルツハイマー病の睡眠障害の対策は、日光を浴びる、就寝環境の整備、活動量を増やす、寝る前のトイレ、不安の解消など
- アルツハイマー病予防に最適な就寝時間は6時間半から7時間
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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