日本では認知症の方が年々増加しています。
ご家族や身近な方が、認知症という方も多いのではないでしょうか。
また、認知症の問題行動に悩まされ、ケアの方法が分からず困っている方も多くいると思います。
そこで今回の記事では、認知症の問題行動について網羅的に解説します。
- 認知症の問題行動の種類
- 効果的なケアの方法
- 認知症の問題行動の治療
認知症の問題行動やそのケアについて知ることで、認知症の方と過ごす際の参考にしていただければ幸いです。
問題行動の治療についても紹介していますので、ぜひ最後までお読みください。
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問題行動とは
そもそも問題行動とは、社会の常識やマナーなどに反するような好ましくない行動を指します。
若者の場合は、周囲への反発などから自発的に行うことがほとんどです。
しかし、高齢者の問題行動は、老化や認知力の低下などが原因で発生することが多いのが特徴的です。
高齢者の問題行動は、徘徊や排泄の失敗など、本人やご家族などが日常生活を行ううえでマイナスな影響を与えるものを指します。
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認知症の問題行動の種類
認知症の問題行動は認知症の進み具合や種類、個人によっても異なりますが、主に以下のような症状がみられます。
暴言・暴力
健常な脳の状態であれば、怒りやストレスを抑えることができます。
しかし、認知症の方は脳の機能が低下している状態のため、怒りやストレスを抑えることができなくなります。
その結果、家族に急に暴言を浴びせたり、叩くなどの暴力を振るったりすることがあります。
暴言や暴力の要因はさまざまです。
認知症の症状が進行して、不安やストレスがたまり、過去の嫌な体験や怒りを思い出すことで暴言や暴力を引き起こすこともあります。
多動
部屋の中を動き回ったり、ずっと膝をさすり続けたりという多動の症状が現れることがあります。
原因や理由などは、個々に応じて違います。
うまく言葉に表せない時や、何か不安や緊張があるときに、行動となって現れていることが確認されています。
また、記憶障害などにより自分がしたことを忘れ、何度も繰り返しているという可能性もあります。
介護・服薬の拒否
認知症の方は、自分の症状を客観的に判断できないことも多くあります。
まだまだ元気なつもりでいて手伝われるのを拒否することや、薬を飲んでもすぐに吐き出してしまうことがあります。
特に薬を嫌がる方は多いといわれ、無理に飲ませようとしても逆効果になる場合が多々あります。
性的異常行為
介護者や家族などへ、卑猥なことを言う、性器を露出するといった性的異常行動を行うことがあります。
性的欲求があるのは自然なことですが、判断力が低下し抑制が効かないために起きると考えられています。
排泄の失敗
認知症の症状である、実行機能障害や見当識障害によって排泄の失敗が起きることがよくあります。
トイレへの移動が間に合わないことやトイレの場所がわからないことが原因で失敗するなど、排泄の失敗にも個人差があります。
食事トラブル
認知症による脳機能の低下で、食べ物を認識できない、食べ方がわからないことが原因で食事を拒否することがあります。
反対に、食べたことを忘れて食べ過ぎてしまうケースもあります。
認知症の問題行動のケア
認知症の問題行動を力づくで止めさせたり、怒鳴ったりすることは症状を悪化させてしまう可能性があります。
そこで正しいケアの仕方についてご紹介します。
本人の心の理解
認知症の方の問題行動には必ず理由があります。
認知症を発症することで、今まで通りに行動できないことやわからないことが増えることは、本人にとってとても不安で辛いことです。
行動の原因となる心の理解に努め、解決するようなケアをすることが大切です。
環境の変化をつくらない
環境が変化することは、認知症の有無や年齢に関係なく不安やストレスを感じるものです。
環境が変わった不安やストレスで、認知症の問題行動を発症したり、深刻化したりすることがあります。
家族と同居するための引っ越しや施設入居など、やむを得ない環境の変化があるときは、不安な気持ちに寄り添い、しっかり話を聞いて共感することが大切です。
部屋の雰囲気を認知症の方が長年住みなれた家の雰囲気に近づけることや、馴染みの音楽を流すことなど、新しい環境への不安を解消するケアを心がけると良いです。
接し方の工夫
認知症の方の問題行動が気になる場合は、接し方を工夫してみることも大切です。
例えば、認知症の方に任せる、声かけの回数を増やすなど、少しの工夫でも本人には自信や安心につながることがあります。
問題行動のある認知症の方に接するのは、負担に思うこともあるかもしれません。
しかし、周囲の方が笑顔で接することで、認知症の方の不安やストレスが解消され症状の改善がみられる場合もあります。
認知症の問題行動の治療
認知症の問題行動への治療は、薬物療法と非薬物療法に分かれます。
薬物療法
問題行動を軽減し、日常生活の質を保つために薬物を用います。
睡眠薬やイライラを抑える抑肝散、抗不安薬など一人一人の症状に合わせた薬物が処方されます。
人によって薬物の作用に差があるので、薬物の種類や量は医師や薬剤師と慎重に決める必要があります。
非薬物療法
非薬物療法は、薬物を使わないリハビリや音楽療法などを指します。
パズルや塗り絵など認知機能向上のトレーニングや、回想法、園芸療法などさまざまな治療法があります。
本人が興味を持ち、楽しく取り組めるものを取り入れることが大切です。
問題行動は人それぞれ違う?
認知症の問題行動が起きる原因は、認知症の方本人の心理環境が大きいといわれますが、どのようなことが心理環境に影響するのかは個人差があります。
入居や引っ越しなどが心理環境に悪影響を及ぼす要因となる人もいれば、自尊心の失墜が要因となる人もいます。
そのため、認知症の問題行動は必ず現れる症状ではありませんし、同じ認知症の方でも症状が落ち着いたり再発したりと程度が違うこともあります。
認知症の方が過度のストレスや不安を抱えていることで周囲が困るほどの問題行動となって現れることもあります。
しかし、目立つほどの問題行動が見られないこともあります。
認知症の問題行動は、その方によって差があるため、一人一人に合わせた治療や関わり方が必要です。
認知症と問題行動のまとめ
ここまで認知症と問題行動の関係や、問題行動の種類などを中心に書いてきました。
この記事のポイントをおさらいすると、以下の通りです。
- 認知症の問題行動の種類は、暴言や暴力、多動、介護・服薬拒否、性的異常行為、排泄失敗や食事トラブルなど
- 認知症の問題行動のケアは、認知症の方本人に寄り添い理解することが大切
- 認知症の問題行動の治療は、薬物治療と非薬物治療
- 認知症の問題行動は心理環境が大きく関係し、現れる問題行動は人によって違う
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。