アルツハイマー病の兆候があった場合、早期発見のためにさまざまな検査があります。
従来のMRI検査の他に、血液検査で診断することができるようになりました。
なぜ血液検査でアルツハイマー病の診断ができるのでしょうか。
また、従来の検査とはどのような違いがあるのでしょうか。
そこでアルツハイマー病と血液検査について、本記事では以下の内容を網羅的に解説します。
- アルツハイマー病の血液検査はどのようなものがあるか
- 従来の検査方法の種類について
- 血液検査と従来の検査の費用はどちらが高いか
- 血液検査で診断できる病気は何か
ぜひ最後までお読みください。
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アルツハイマー病を診断できる血液検査とは
アルツハイマー病の原因とされる物質は「アミロイドβ」と「タウタンパク」というタンパク質です。
どちらもアルツハイマー病の原因物質とされ、体内に蓄積されることでアルツハイマー病が発症します。
これらの原因物質を検査することで、アルツハイマー病の診断が可能です。
各種血液検査方法についてご紹介します。
p-tau血液検査
p-tauとは「タウタンパク」の一種で、アルツハイマー病の血液検査で測定するタンパク質です。
以前までは血液検査ではなく脳脊髄液からでしかp-tauの検査ができませんでした。
しかし現在では、血中のp-tauの蓄積量の測定が血液検査でできるようになりました。
IP-MS法
血中からアルツハイマー病の原因物質であるアミロイドβを識別、検出できる方法です。
IP(Immunoprecipitation)は免疫沈降(めんえきちんこう)という特定の物質を分析する方法です。
MS(Mass Spectrometer)は質量分析という測定方法です。
IP-MS法はIPとMS両方を組み合わせた血液検査で、アミロイドβの蓄積を測定することを可能にした検査方法です。
MCIスクリーニング検査
MCI(Mild Cognitive Impairment)とは軽度認知障害を指し、アルツハイマー病などの一歩手前の状態です。
MCIスクリーニング検査では、原因物質アミロイドβの蓄積状況を血液検査で分析することでMCIを判定します。
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従来の検査方法は?
血液検査以外の従来のアルツハイマー病の検査方法についてご紹介します。
MRI検査
MRI(Magnetic Resonance Imaging)は、人体に電磁波を当てることでガン発見や治療効果を判断するために行われる精密検査です。
アルツハイマー病の方は、脳内の海馬近辺が萎縮しています。
MRI検査では、そういった脳の萎縮を確認することができます。
また、ペースメーカーなどを入れている方は、MRI検査を受けることができません。
SPECT検査
SPECT検査は、脳内の血の流れを画像で確認する検査です。
脳の血流が正常かどうか、診断することができます。
血流の画像を肉眼で診察し、アルツハイマー病を判断するのは困難といわれていますが、近年では技術の進歩により、コンピュータが脳内血流状況を識別解析できるようになりました。
SPECT検査はアルツハイマー病をはじめ、レビー小体型認知症や前頭側頭型認知症の確認に用いられます。
PET検査
PET検査(Positron Emission Tomography)はFDGを使った精密検査です。
FDGとは放射性フッ素を付加したブドウ糖のことで、検査の際は、静脈から体内に注入します。
PET検査は、陽電子放出断層撮影ともいわれ、人体の細胞の状態を撮影した画像から診断する検査です。
体内に入ったFDGは脳機能の低下に作用して、PET検査で確認されます。
髄液検査
髄液検査は背骨の間から針を刺し、5cc〜10cc程度の脳髄液を採取して検査に回します。
脳髄液からは、アルツハイマー病の原因物質アミロイドβの蓄積を確認することができます。
髄液検査は、血液検査に比べ局所麻酔といった負担が大きくかかるので、採取後は2時間程度の安静が必要です。
血液検査と従来の検査はどっちが高い?
血液検査と従来の検査では、検査内容によりますが従来の検査の方が高くなるケースがあります。
受診する医療機関や保険適用額によって変わるので、以下の金額は目安です。
受診する医療機関に問い合わせてみることをお勧めします。
血液検査
アルツハイマー病の血液検査の費用は目安として数千円から2万円程度です。
血液検査に加えて医師の診断や認知機能テスト、画像診断も合わせた費用です。
これに薬が処方されることも考慮して1万円〜3万円程度を見込んでおきましょう。
従来の検査
従来の検査は保険適用額によって異なりますが、1万円〜10万円近くになる検査もあります。
- MRI検査:1万円前後(3割負担)
- SPECT検査:2万4,000円〜3万円前後(3割負担)
- PET検査:3万円前後(3割負担)
- 髄液検査:1万円〜1万5,000円前後(3割負担)
検査はどこで受けられる?
アルツハイマー病の検査を受ける場合、まずはかかりつけのクリニックに相談することが推奨されています。
お住まいの市区町村の役所で、認知症の診療を受けられる病院を紹介してくれます。
また、MCIスクリーニング血液検査が受けられる医療機関をお住まいの地域から検索できるサイトがあります。
血液検査で分かるのはアルツハイマー病だけじゃない?
血液検査ではさまざまな病気のリスクが検査結果としてわかり、肝臓腎臓の異常、貧血、脂質異常症、糖尿病などの病気の診断に役立ちます。
肝機能・腎機能の異常
- 肝機能障害
- 急性肝炎
- 慢性肝炎
- 脂肪肝
- アルコール性肝炎
- 腎機能障害
貧血
- 多血症
- 鉄欠乏性貧血
脂質異常症
- 動脈硬化
- 低βリポタンパク血症
- 甲状腺機能低下
- 肝硬変
糖尿病
- 膵臓癌
- ホルモン異常
アルツハイマー病と血液検査のまとめ
ここまでアルツハイマー病の情報や、血液検査などを中心にお伝えしてきました。
内容をまとめると以下のようになります。
- アルツハイマー病の血液検査はp-tau血液検査やIP-MS法、MCIスクリーニング検査がある
- 従来の検査にはMRI検査、SPECT検査、PET検査、髄液検査がある
- 医療機関や内容によるが従来の検査の方が、費用は高くなりやすい
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。