飲酒が認知症を誘発することはよく知られています。
しかし、飲酒量によっては認知症のリスクが下がるという結果も出ています。
本記事では、飲酒と認知症の関係について解説します。
- 飲酒量と認知症の関係
- アルコールが脳に与える影響
- 適切な飲酒量
認知症になりたくないけどお酒が好きという方の参考になるかと思います。
ぜひ最後までお読みください。
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認知症と飲酒の関係
どのくらいの飲酒量で認知症になるリスクが高くなるのか低くなるのか気になりますよね。
ここでは、飲酒量別に認知症との関係を解説します。
大量飲酒
大量の飲酒は、認知症のリスクを上昇させます。
ある調査では、認知症施設の入居者のうち約3割に認知症と大量飲酒の関連性が見られました。
別の調査では、過去に5年間以上の飲酒経験がある男性と、非飲酒者の男性で認知症の発症リスクが比較されました。
結果、飲酒経験がある男性は、非飲酒者の方と比べて認知症のリスクが4.6倍高いことが分かりました。
フランスで行われた調査では、大量飲酒はとくに若年性認知症のリスクを高めるという結果が出ています。
実際に65歳未満の男性の認知症の方のうち、約半数に大量飲酒の経験がありました。
以上の3つの調査結果から、大量飲酒は認知症を誘発する可能性が高いことが分かります。
適度な飲酒
一説では、適度な飲酒は認知症の発症率を下げると言われています。
ある調査では、適度に飲酒する方とまったく飲酒しない方で認知症の発症リスクが比較されました。
その結果、一週間のうち350mlのビールを1~6本消費する方は、まったく飲酒しない方に比べて認知症の発症リスクが低くなりました。
フィンランドでは、中年の飲酒経験の有無と高齢時の認知症発症リスクの関連について調査が行われています。
中年時代にまったく飲酒しなかった方は、適度に飲酒した方に比べ認知症の発症リスクが約2倍高くなりました。
さらに、イギリスの医学雑誌には、長期間にわたる断酒がアルツハイマーのリスクを50%高めるという論文が発表されました。
つまり各調査で、適度な飲酒が認知症のリスクを下げることが示唆されています。
ただし、認知症予防のために飲酒が推奨されているわけではありません。
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アルコールの脳への影響
アルコールは脳を萎縮させます。
最近の調査で、アルコールの飲酒量と脳の萎縮の度合いは正比例すると指摘されています。
脳が委縮すると、萎縮した部分の機能は失われます。
認知機能や運動機能が低下するため、認知症を発症してしまいます。
アルコールは、間接的に脳の萎縮に関わることもあります。
たとえば、アルコール性ウェルニッケ脳症です。
ウェルニッケ脳症は、ビタミンB1の欠乏によって、脳が萎縮する疾患です。
ビタミンB1が欠乏する原因の一つが、大量飲酒です。
その他にも、大量飲酒は、ナトリウムなどの各種栄養の欠乏にも関わります。
もう一つ、アルコールが脳に与える悪影響に、生活習慣病があります。
アルコールの過剰摂取は、動脈硬化のリスクを高めます。
動脈硬化は、脳の血流悪化を引き起こします。
脳の血流が悪化すると、脳細胞に酸素や栄養が行き渡らなくなります。
酸素不足になった脳細胞は死滅し、やがて認知症に至ります。
動脈硬化は、脳卒中とも関わりがあります。
脳卒中によって、脳血管がダメージを受けると脳の血流が悪くなるため、認知症を発症しやすくなります。
アルコール性認知症
認知症は、原因疾患によってさまざまなタイプに分けられます。
アルコールを原因とする認知症は、アルコール性認知症と呼ばれます。
原因
アルコール性認知症の原因は、大量飲酒です。
大量飲酒を慢性的に続けると、脳細胞が次第に萎縮していきます。
脳細胞の萎縮により認知機能が著しく低下すると、アルコール性認知症という状態に至ります。
アルコール性認知症は高齢者だけが発症するわけではありません。
大量飲酒の習慣がある方なら若い方であっても発症します。
アルコール性認知症では、長期間断酒すると脳の萎縮が回復することがあります。
症状
アルコール性認知症の主な症状は、以下の通りです。
- 思考力や注意力の低下
- 記憶力の低下
- 感情の制御ができない
- 歩行障害
- 手足の震え
- 言語障害
一日の適切な飲酒の量
日本では、適度な飲酒量は以下のように定義づけられています。
なお、以下のg数は、一日あたりの純アルコール量をあらわします。
【一日の純アルコール量の適正目安】
・男性:20g
・女性:男性の1/3~1/2
【一日の純アルコール量の過剰摂取目安】
・男性:40g以上
・女性:20g以上
純アルコール量20g程度の飲酒量の目安は、以下の通りです。
【純アルコール量20gの目安】
・日本酒1合(180ml)
・ビール500ml
・ワイン240ml
・焼酎(25度)110ml
・ワイン180ml
酒類の中でも、赤ワインは認知症の予防効果があると指摘されています。
理由は、赤ワインに含まれるポリフェノールが、脳の老化防止に役立つからです。
認知症と飲酒のまとめ
ここまで、飲酒と認知症に関係についてお伝えしてきました。
以下に要点をおさらいします。
- 飲酒量と認知症のリスクは、原則として正比例の関係にある
- アルコールが脳に与える影響は、「脳の萎縮」や「動脈硬化」「脳卒中」など
- 適切な飲酒量は、1日あたりの純アルコール量が10g~20g
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。