認知症の中でも、血管性認知症は発症原因に特徴があります。
血管性認知症では、発症原因を予防することで、発症や症状の進行をある程度食い止められます。
この記事では、血管性認知症の原因から予防まで詳しく解説します。
- 血管性認知症の原因
- 血管性認知症の予防
- 血管性認知症の進行
ぜひ本記事を最後までお読みください。
スポンサーリンク
血管性認知症とは
※画像はイメージです
血管性認知症は、脳血管障害を原因とする認知症です。
血管性認知症の主な症状は、他の認知症の症状とほとんど変わりません。
ただし、血管性認知症では、症状のあらわれ方に大きな特徴があります。
脳血管障害が起こる部位によって、症状に大きな偏りが見られます。
短時間で体調や認知機能が大きく変動するのも、血管性認知症の特徴です。
症状に波があるのは、脳の血流状態に左右されるからです。
症状のあらわれ方が「まだら」であることから、血管性認知症は「まだら認知症」とも呼ばれます。
【血管性認知症の主な症状】
- 認知症状(記憶障害・思考力の低下・見当識障害 など)
- 歩行障害
- 手足のまひ
- 排尿障害
- 抑うつ
- 感情失禁・情緒不安定
スポンサーリンク
血管性認知症の原因
※画像はイメージです
血管性認知症の主な原因について解説します。
脳血管障害
脳血管障害は、脳の血管に問題が起こり、血流が止まってしまう障害です。
脳血管障害によって脳の血流が止まると、脳細胞に血液や酸素が届かなくなります。
酸素不足になった脳細胞はやがて壊死するため、壊死した部位が担っていた機能は低下します。
脳細胞の壊死により、認知機能が著しく低下した状態が血管性認知症です。
なお、脳血管障害は大きく分けて「血管が詰まるもの」と「血管が破れるもの」に分類できます。
脳梗塞
脳梗塞は、脳の血管が詰まる疾患です。
詰まった部位の先には血液が届かなくなるため、脳細胞が壊死し、血管性認知症に至ります。
脳の血管が詰まる原因は、主に二つあります。
一つ目は、血管が細くなることで詰まってしまうタイプです。
ラクナ梗塞と呼ばれ、日本人の脳梗塞の割合の大半を占めます。
一つ一つの脳梗塞自体は小さいものの、何度も繰り返しやすいため重大な血行障害に発展します。
二つ目は、血栓が血管に詰まり血流が滞るタイプです。
脳の太い動脈が詰まるアテローム血栓性梗塞と、心臓でできた血栓が脳で詰まる心原性脳塞栓症に分けられます。
脳出血
脳出血は、脳の血管が破れる疾患です。
脳の中で内出血が起こるため、脳細胞に十分な血液が行き渡らなくなります。
血液が届かなくなった脳細胞は壊死するため、認知機能が著しく低下します。
脳出血の代表的な疾患は、くも膜下出血や脳出血などです。
くも膜下出血は、脳にあるくも膜の下の動脈が破れ、内出血を起こす疾患です。
くも膜の下の動脈が破れる原因は、多くの場合脳動脈瘤という瘤が破裂することです。
発症すると激しい頭痛や嘔吐、意識障害などを伴います。
脳出血は、脳の血管が脆くなり自然と破れてしまう疾患です。
血管が脆くなる原因は、高血圧や動脈硬化がほとんどです。
脳血管障害の危険因子
ここからは、脳血管障害のリスクを高める原因について解説します。
高血圧
高血圧は、血圧が慢性的に高い状態です。
脳血管障害の原因の中でも、代表的な危険因子とされています。
高血圧によって血圧が高くなると、血管が傷つきやすくなります。
傷ついた血管は硬化し、動脈硬化の状態になります。
動脈硬化によって柔軟性を失った血管は脆くなり、破れやすくなります。
血管の壁が分厚くなるため、血管の内部が狭まり血液が通りにくくなります。
血管が破れやすくなると脳出血のリスクが高まります。
また、血管が細くなると脳梗塞のおそれがあります。
血栓は血管の損傷によって生じるため、同じく脳梗塞のリスクが上昇します。
糖尿病
糖尿病は、脳梗塞のリスクを高めることが分かっています。
理由は、糖尿病が動脈硬化の進行を早めるからです。
血糖値が高くなると血液がドロドロになります。
血流が悪化すると血管が傷つけられるため、動脈硬化を引き起こします。
また、糖尿病になると血管の内側にコレステロールが溜まりやすくなります。
蓄積したコレステロールは、血管内部を狭めるため血液が通りにくくなります。
つまり、糖尿病になると血流が悪化するため、動脈硬化の危険性が高まるのです。
心疾患
心臓の病気が、脳梗塞を引き起こすこともあります。
心疾患によって発症する脳梗塞は、心原性脳梗塞と呼ばれます。
心源性脳梗塞の主な原因は、心房細動という不整脈です。
不整脈によって拍動が乱れると、血液が澱み血栓が生じます。
心臓でできた血栓が脳に運ばれ、血管を詰まらせると脳梗塞が起こります。
心房細動によって生じる血栓は、動脈硬化を原因とする血栓よりサイズが大きい傾向があります。
そのため、太い動脈を詰まらせやすく、脳梗塞が重症化しやすくなります。
血管性認知症の予防
※画像はイメージです
血管性認知症を予防するには、原因である脳血管障害を予防する必要があります。
脳血管障害の予防に役立つ3つのポイントを解説します。
生活習慣病の予防
生活習慣病として代表的なのは、高血圧や糖尿病、高脂血症などです。
血行不良や動脈硬化につながるため、脳血管障害のリスクを高めます。
生活習慣病を予防するためのポイントは、以下の5つです。
- バランスのよい食事
- 適度な運動
- 禁酒
- 禁煙
- 十分な睡眠
食事と禁酒・禁煙については、後ほど解説します。
まず、適度な運動と十分な睡眠について見ていきましょう。
適度な運動は、肥満を防ぎます。
また、血流が促進されることから動脈硬化や高血圧の予防にも役立ちます。
生活習慣病の予防には、十分な睡眠も必要です。
慢性的な睡眠不足は自律神経の乱れなどを招くため、生活習慣病のリスクが上がります。
生活習慣病の予防のためには、1日7時間程度の睡眠が推奨されています。
バランスのいい食事
脳血管障害や生活習慣病を予防するには、バランスに優れた食事を心がけましょう。
以下の食品は、脳血管障害のリスクを下げるため、積極的な摂取がおすすめです。
【脳血管障害予防に役立つ食べ物】
- 青魚
- 野菜・果物
- 海草
- 大豆・大豆製品
- オリーブオイル
反対に、以下の食品は、脳血管障害のリスクを高めます。
【脳血管障害になりやすい食べ物】
- 飽和脂肪酸の多い食品(マーガリン・ショートニング・肉の脂身・菓子パン など)
- 塩分の高いもの
- 糖分の高いもの
禁煙・節酒
喫煙・飲酒が、脳血管障害や生活習慣病のリスクを上昇させることは有名です。
血管性認知症予防のためには、酒やタバコを控えましょう。
慢性的な飲酒の習慣は、高血圧を引き起こします。
さらに、お酒には血を固まりにくくする作用があります。
そのため、脳内で出血した際に血が固まりにくくなり、脳血管障害を重症化させるおそれがあります。
飲酒量が増えれば増えるほど、脳血管障害のリスクは高まります。
一方、適度な飲酒は脳卒中や認知症のリスクを下げるというデータもあります。
しかし、飲酒が推奨されているわけではありません。
なお、適度な飲酒量とは日本酒なら一日一合未満程度です。
続いて、喫煙と脳血管障害の関連性について解説します。
喫煙は動脈硬化を引き起こします。
理由は、たばこに含まれるニコチンが血管を傷つけるためです。
ニコチンは、交感神経を刺激することで血圧を上げる作用もあります。
動脈硬化や高血圧は、脳卒中の代表的な原因です。
なお、自身ではタバコを吸わない方でも、受動喫煙の頻度が高い場合は脳血管障害のリスクが上昇します。
血管性認知症はどのように進んでいく?
※画像はイメージです
血管性認知症は、進行の仕方に大きな特徴があります。
血管性認知症は、段階的に進行します。
血管性認知症が進行するタイミングは、脳血管障害の発作や再発が起こったときです。
脳血管障害の発作ごとに脳細胞の死滅範囲が広がるからです。
脳血管障害の発作や再発によって脳細胞の死滅範囲が広がると、死滅した部位の脳機能が新たに失われます。
そのため、脳血管性認知症では、発作ごとに症状が一気に悪化するのが特徴です。
発作や再発後は症状がしばらく安定します。
脳血管障害の発作を防ぐことができれば、症状の進行はある程度食い止められます。
進行の仕方が段階的と表されるのは、急激な悪化と安定状態が繰り返されるためです。
血管性認知症と原因のまとめ
※画像はイメージです
ここまで、血管性認知症の原因に関する事柄についてお伝えしてきました。
- 血管性認知症は、脳血管障害を原因とする認知症
- 血管性認知症の原因は脳梗塞や脳出血などの脳血管障害
- 血管性認知症の危険因子は高血圧や糖尿病、心疾患など
- 血管性認知症の予防法は、生活習慣病の予防やバランスの良い食事、節酒・禁煙など
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。