認知症によって見当識が衰えると、日常生活に支障をきたす恐れもあります。
見当識とは、自分がいる場所や今の時間などの「状況」を把握する機能です。
「見当識障害はリハビリで治るの?」「リハビリではどんなことをするの?」といった悩みを抱えている方もいるのではないでしょうか。
今回は、見当識障害のリハビリの目的に触れたうえで、どのような方法があるか解説します。
- 見当識障害のリハビリの目的
- 見当識障害のリハビリ方法
- リアリティ・オリエンテーションとは
見当識障害のリハビリについて知ることで、認知症の方へ接する際の参考になれば幸いです。
ぜひ、最後までお読みください。
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見当識障害とは
見当識障害になると、時間、場所、人がわからなくなっていきます。
以下、見当識障害をその3つに分類して説明します。
時間の見当識
時間の見当識が衰えると、日付や時間、季節がわからなくなります。
時間に遅刻をする、長時間待てなくなるといった症状が現れます。
症状が進行すると、季節に合わせた服装が選べない、過去の自分に戻ったような態度をとることもあります。
場所の見当識
場所の見当識が衰えると、現在地や道順などがわからなくなります。
道に迷う、病院を病院だと判断できないなどの症状が出てきます。
場所の見当識障害が見られるときは、当人から目を離さないことが大切です。
名前や連絡先が分かるものを持たせる、警察やご近所の方に伝えるなどして、対応するのも良いでしょう。
人の見当識
人の見当識が衰えると、人の名前や自分との関係がわからなくなります。
顔を見ても名前を思い出せないことや、息子を夫と間違えてしまうことがあります。
自分が誰なのかわからなくなることもあり、大きな不安を感じる要因になり得ます。
名前を間違われる、他人のように扱われることを責めることはせず、優しく訂正することを心がけましょう。
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見当識障害のリハビリの目的
見当識障害のリハビリの目的は、現在の状況を理解させ、不安を解消することで、安心した気持ちで過ごせるようにすることです。
リハビリの効果が現れると、家族の不安も解消することができるため、リハビリは欠かせないものだといえます。
見当識障害のリハビリ方法
見当識障害のリハビリは、日常生活で取り入れられるものも多いです。
以下では、具体的な方法について紹介します。
時間の見当識へのリハビリ
時間の見当識障害には、カレンダーや時計を有効に使うことが効果的です。
カレンダーや時計を見やすい場所に置き、毎日日付を確認したり、予定を確認することで、記憶に残りやすくなります。
お昼や散歩の時間に合わせて声かけすることは、時間感覚を維持することに効果的です。
季節を強く意識してもらうためには、園芸がおすすめです。
季節によって旬が異なる野菜や花を育てることで、季節感を取り戻すことが期待できます。
定期的に外に出ることで、日光や風など外界の刺激を受け、昼夜の区別をしっかりつけることも効果的です。
園芸は時間だけでなく、場所の見当識へのリハビリにもなります。
場所の見当識へのリハビリ
場所の見当識へのリハビリには、散歩が効果的です。
場所の見当識障害があるからと、家にこもっていては、脳への刺激も減り症状が悪化する可能性があります。
散歩は気分転換にもなりますし、さまざまな場所を把握するのには最適です。
散歩の際には認知症の方から目を離さず、しっかりと見守っておくことが必要です。
人の見当識へのリハビリ
写真を見ながら、その人の話をすることが、人間関係の見当識へのリハビリになります。
家族や友人など、親しい人について話を聞くことが見当識を刺激します。
本人も一緒に写っている写真であれば、より効果的です。
思い出してもらおうと必死になり、質問攻めにならないように注意が必要です。
見当識障害に効果的なリアリティ・オリエンテーション
見当識障害のリハビリとして、リアリティ・オリエンテーション(現実見当識訓練)が注目されています。
名前や年齢、日時などを繰り返し質問することで、見当識障害の改善を図ります。
以下では、リアリティ・オリエンテーションの2つをご紹介します。
24時間リアリティ・オリエンテーション
24時間リアリティ・オリエンテーションは、日常生活の会話内で行います。
会話内には、以下のような内容を取り入れます。
- 時間
- 季節や気候
- 興味・関心を促す など
「9時なので、散歩に行きましょう。」や「風が涼しくなりましたね、秋ですね。」など会話の中に時間や季節、天候などを取り入れることが大切です。
時計やカレンダーなどを見ながら会話するとより効果的です。
旬の野菜や花なども取り入れることで、時間の見当識の改善が見込めるかもしれません。
普段の会話を工夫することで取り組めるので、家庭でも実践しやすいリハビリ方法です。
クラスルームリアリティ・オリエンテーション
クラスルームリアリティ・オリエンテーションは、見当識障害の方が少人数で集まり、グループで実施します。
スタッフ司会のもと、メンバーの名前や現在の日時、今日の予定などを皆で確認します。
グループでコミュニケーションをとることで、他者との関わりが増え、お互いの刺激になります。
見当識障害のリハビリのまとめ
ここまで見当識障害のリハビリの目的やリアリティ・オリエンテーションのことなどを中心に解説してきました。
記事の要点は、以下の通りです。
- 見当識障害のリハビリ目的は、不安が解消され、安心して日常を送ること
- 見当識障害のリハビリ方法は、散歩や園芸、写真を見ながら話すこと
- リアリティ・オリエンテーションとは、時間や季節などの認識を深めること
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。