三大認知症の一つであるレビー小体型認知症。
認知症と一括りにされていても、原因や症状の特徴などに違いがあります。
では、レビー小体型認知症とは一体どのような認知症なのでしょうか。
今回はレビー小体型認知症の症状を経過ごとにご紹介します。
その上で、症状の特徴やその他の認知症の症状をご紹介します。
- レビー小体型認知症の症状と特徴
- 他の認知症の症状
この記事をご覧いただき、レビー小体型認知症についての理解を深めるための参考にしてください。
ぜひ最後までお読みください。
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レビー小体型認知症とは
レビー小体型認知症は、レビー小体という異常なたんぱく質が大脳皮質に蓄積されることによって発症します。
レビー小体が蓄積されている場所では、神経細胞の破壊や減少が起こり認知症の症状が現れます。
全認知症の中でも約4%を占めており、女性よりも男性に多い傾向があります。
一般的には60歳以上の方に発症することが多いですが、中には40代で発症する方も見受けられます。
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レビー小体型認知症の症状の経過
では、レビー小体型認知症にはどのような症状がみられるのでしょうか。
初期・中期・末期の三段階に分けてご紹介致します。
初期
レビー小体型認知症の初期では、記憶力や理解力といった認知機能の低下がみられることは少ないです。
一方で、以下のような症状がみられます。
パーキンソン症状
- 振戦
・何もしていないときに1秒間で約4~6回の震えが手足に生じる
・睡眠中は震えが止まり、目が覚めると震えが始まる - 筋固縮
・肩や指、膝などの筋肉が硬くなり、スムーズに動かせない
・顔の筋肉がこわばり、表情が乏しくなる - 無動
・スムーズな動作ができない
・歩行速度が遅くなり、歩幅や腕の振りが小さくなる
・話し方の抑揚がなくなる
・書く文字が小さくなる - 姿勢反射障害
・身体のバランスが取りづらくなり、転倒しやすい
・歩行中に止まることや方向転換ができない
これらの症状はパーキンソン病にもみられることから、パーキンソン症状と呼ばれています。
パーキンソン症状は歩行障害が多く現れるため、転倒による骨折のリスクが高いことが注意点の一つです。
幻視
その他にも実際には存在しないものが見える幻視が特徴的です。
幻視で見えるものには個人差がありますが、人物や動物の動きを伴うものが多いとされています。
本人にははっきりと見えているため「知らない男の人がいる」と訴え、警察に通報してしまうこともあります。
レム睡眠行動障害
また、睡眠時に大声を上げたり暴れたりするレム睡眠行動障害も特徴的な症状の一つです。
レム睡眠行動障害では、レム睡眠時に夢の通りに体が動くため自身や一緒に寝ている家族が怪我をするリスクを伴います。
また、自律神経の乱れから便秘や立ちくらみ、動悸といった自律神経症状が現れることで身体の不調が増えます。
レム睡眠行動障害に加え自律神経が乱れると、抑うつ状態になることも珍しくありません。
中期
中期では初期症状の変動が大きくなることに加え、記憶障害や見当識障害といった認知機能の低下もみられるようになります。
また、頭がはっきりしているときと、そうでないときを繰り返すため、認知機能に変動が起こります。
初期症状が強まり、進行の早さが目立つようになるのが、レビー小体型認知症の中期です。
後期
後期ではパーキンソン症状が強くなり、初期に比べて転倒や転落のリスクが高くなります。
自律神経症状によるふらつきなどにもさらに注意が必要になり、身体介護を要する場面が増えます。
また、上手く食べものを飲み込むことができなくなる嚥下(えんげ)障害を生じやすくなります。
そのため、むせることで食道ではなく気管に入り、誤嚥性肺炎を引き起こす可能性が高まります。
他の認知症では記憶力が低下する一方ですが、レビー小体型認知症には波があることが特徴です。
日や時間帯によっては記憶力がはっきりしていますが、良いときと悪いときを何度も繰り返します。
他の認知症の症状とは
ここまで、レビー小体型認知症の症状をご紹介しました。
では、他の認知症にはどのような症状がみられるのでしょうか。
ここからは、その他三つの認知症の症状をご紹介します。
アルツハイマー型認知症の症状
アルツハイマー型認知症は物忘れから始まることが多く、日常生活における基本的なことが少しずつできなくなります。
記憶障害では、最近の出来事を忘れたり思い出すことができなくなり、自分が体験した出来事そのものを忘れてしまいます。
また、時間や場所、人を認識できなくなる見当識障害が現れると、日付や今いる場所などが分からなくなります。
そのため、夏なのに厚着をしたり見慣れた場所で道が分からなくなったりするといった状態に陥ります。
その他にも、「ものを盗まれた」「いじめられている」と思い込む被害妄想が現れることも特徴です。
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血管性認知症の症状
血管性認知症は記憶障害や見当識障害など、他の認知症と同様の症状が多くみられます。
一方で脳の障害を受けていない部位の機能は保たれるため、できることとできないことがはっきりしていることが特徴です。
また、脳が障害を受けている部位によっては、運動や知覚麻痺といった様々な症状を併発することもあります。
その他にも感情のコントロールがしづらいため、突然怒り出したり泣き出したりする症状がみられます。
そのため、抑うつ状態になることも少なくありません。
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前頭側頭型認知症の症状
前頭側頭型認知症は、他の認知症ではみられにくい特徴的な症状が現れます。
初期では、物忘れなどの記憶障害は目立ちにくいです。
一方で人格の変化が強く現れるようになるため、攻撃的になったり興奮状態に陥りやすくなったりします。
また、自分に対して抑制ができなくなるため、万引きなどの軽犯罪を起こすというように、社会性が欠如します。
その他にも同じ行動を何度も繰り返したり、身だしなみに無頓着になったりするなどの症状が現れます。
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レビー小体型認知症の症状を緩和するには
レビー小体型認知症の治療には薬物療法だけではなく、他の認知症と同様に非薬物療法が積極的に行われています。
では、どのような治療法があるのでしょうか。
ここからは、レビー小体型認知症の症状を緩和するための治療法をご紹介します。
回想法
回想法とは、昔の写真や馴染みのあるものを用いて思い出を語り合う心理療法の一つです。
これまで歩んできた人生を振り返ることで再度自信を取り戻し、心の安定や記憶力の向上を図ります。
また、自分の話をしたり相手の話を聞いたりしながら思い出を共有し合い、安心感を得ることにも繋がります。
回想法は記憶力や自発性を向上するだけではなく、認知症の方が抱える不安や孤独感など負の感情の解消に効果が期待できます。
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認知機能訓練
計算やパズルゲーム、トランプを通して脳を使うことで認知機能の維持や向上の効果が期待できます。
楽しみながらできることはもちろん、問題が解けたときに達成感を得ることにも繋がります。
また、参加者と盛り上がりながら行うことで楽しさややりがいを感じ、心に豊かさをもたらします。
運動
運動療法が行われる目的は、認知機能や運動機能の改善や社交性の向上など多岐にわたります。
人それぞれ身体能力に個人差があるため、一人一人に適した運動を行います。
身体を動かすことで血流が促進され、脳の活性化に効果的です。
車椅子に座ったままでもできるストレッチやウォーキングなど、無理をせず楽しくできる運動を行うことが大切です。
レビー小体型認知症の方との接し方
認知症の人にとっては、接し方が状態の安定や向上に向けたケアとなります。
症状が見られる方と接する際は、以下の7つに注意しましょう。
- ①放っておくのではなく見守る
- 危険なことがないか常に見守りましょう。
- ②プライドは傷つけない
- 誤った言動を叱ることや、無理に訂正はしない
- ③わかる言葉で簡潔に話す
- 1度に多くのことを伝えるのではなく、一つずつ伝える
- ④スキンシップを頻繁にする
- 手を握る、温かい眼差しを送る
- ⑤相手のペースを守る
- 相手を興奮させないように、急がずゆっくりと待つ
- ⑥孤独にさせない
- できるだけ声かけを行い、行動を共にする
- ⑦身だしなみを整える
出典:厚生労働省【認知症ケア法―認知症の理解】
レビー小体型認知症の症状まとめ
今回は、レビー小体型認知症の症状についてご紹介しました。
要点を以下にまとめます。
- レビー小体型認知症はパーキンソン症状や幻覚、レム睡眠行動障害などの症状が特徴的
- 記憶障害などの認知機能の低下はどの認知症にも共通しているが、症状の現れ方にそれぞれ特徴がある
- レビー小体型認知症の症状を緩和するためには、脳を活性化させたり運動機能の向上を図ることが重要
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。