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健達ねっと>認知症を学ぶ>血管性認知症はどのように経過する?症状や向き合い方を徹底解説!

血管性認知症はどのように経過する?症状や向き合い方を徹底解説!

認知症といえば、次第に記憶力や思考力が失われるというイメージが強いでしょう。
しかし、種類によって経過の仕方はさまざまです。

その中でも、特徴的に症状が経過する「血管性認知症」をご存知でしょうか?

本記事では、血管性認知症の経過や症状のあらわれ方について、以下の点を中心に解説します。

  • 血管性認知症の経過
  • 血管性認知症の症状
  • 血管性認知症の治療
  • 血管性認知症との向き合い方

血管性認知症と向き合うためにも、ご参考いただけますと幸いです。
ぜひ本記事を最後までお読みください。

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血管性認知症はどのように経過する?


血管性認知症の経過は、段階的です。
具体的には、脳血管障害の発作が起こるごとに症状が悪化していきます。

そもそも血管性認知症は、脳卒中などにより、脳血管が損傷することが原因です
脳血管が損傷すると、脳神経細胞が酸素不足になり壊死することで発症します。

脳卒中は、しばしば再発や発作を繰り返します。
発作の度に脳血管が傷つくため、脳神経細胞の損傷範囲も拡大していきます。

よって、血管性認知症は、再発が起こるたびに、段階的に悪化するという経過をたどります。

裏を返せば、再発や発作がなければ、症状が安定した状態が続きます。
つまり、脳血管障害の再発を予防できれば、急激な症状の悪化を防げるのが、血管性認知症の経過の特徴です。

一方、血管性認知症以外の認知症の経過は事情が異なります。

たとえば「アルツハイマー型認知症」や「レビー小体型認知症」の経過をみてみましょう。

アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症の経過は、「下り坂」です。
進行をある程度ゆるやかにはできても、進行自体は食い止められません。

認知機能は全体的にゆっくり低下していき、やがて末期を迎えます。

血管性認知症も、進行自体を食い止めることは難しいです。
しかし、脳血管障害などの再発を予防できれば、経過をある程度コントロールできる点が、他の認知症とは異なります。

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血管性認知症の特徴


血管性認知症では、症状のあらわれ方に、2つの大きな特徴があります。

「できること」と「できないこと」の差が大きい

血管性認知症では、血管障害によって壊死した脳神経細胞の機能は失われます。
一方、損傷していない部位の機能は健常に保たれます。

よって、記憶力に異常はないが、判断力だけが著しく低下するなどのケースが見られます。

つまり、症状が「まだら」にあらわれるのが、血管性認知症の大きな特徴です。

症状に波がある

血管性認知症では、健常な脳神経細胞が、壊死した部位の認知機能をサポートします。

そのため、先ほどまで不調だったのに、急に体調や症状が改善することがあります。

症状に波があるために、発見が遅れてしまうケースも多いです。

血管性認知症の代表的な症状


ここまで血管性認知症の経過や特徴を紹介しました。

あらわれる症状は脳の損傷部位によって異なりますし、どの症状がどの順番であらわれるかも決まっていません。
ただし、多くの方に共通する症状はあります。

ここでは、血管性認知症の主な症状を4つ紹介します。

歩行障害

血管性認知症では、しばしば歩行障害があらわれます。
脳血管障害によって下肢の運動機能に支障が出ることが原因です。

具体的には、「小刻み歩行」や「幅広歩行」が見られます。

小刻み歩行は、狭い歩幅でしか歩けない症状であり、前かがみや、手の振りが小さいことも特徴です。

反対に「幅広歩行」は、大きく膝を開いて歩く症状です。
身体の均衡を保てないせいで足を大きく開き、歩幅は小刻みになります。

意欲低下

一般的にうつやアパシーと呼ばれる状態です。

何事にも意欲・関心がわかず、感情が乏しくなります。
趣味や好きだったことにも関心を示さなくなり、一日中ボンヤリ過ごすことも少なくありません。

精神的に不安定になりやすく、強い不安や憂鬱を抱えていることもあります。

記憶障害

新しいことを覚えるのが困難になったり、過去の記憶が失われたりする障害です。

とくに血管性認知症では、他の認知症より、新しい情報の記憶が困難になることが多いです。
たとえば、数分前の出来事を覚えておらず、同じ話を繰り返すケースがあります。

また、血管性認知症は他の認知症と異なり、記憶障害について自覚がある点も大きな特徴です。

失禁

血管性認知症では、失禁などの排尿障害があらわれます。
すなわち、トイレ以外のところで排尿・排便してしまう障害です。

たとえば歩行困難のために、尿意を感じてもトイレに間にあわないケースがあります。

あるいは、脳血管障害のために、膀胱の収縮が異常になり、突然強い尿意を感じてこらえきれなくなる「尿意切迫」などのケースもあります。

血管性認知症の終末期について

血管性認知症の終末期には、認知機能と運動機能の両方が著しく低下します。
記憶力や判断力はほとんどなくなり、家族の顔が分からないこともあります。

また、嚥下(えんげ)障害が起こりやすくなるほか、食欲そのものを感じないため、食が細くなり、体力がみるみる低下します。

意欲の低下も著しくなるため、感情や表情にほとんど変化があらわれなくなります。
自力で体を動かすことが難しくなることから寝たきり状態になり、意識が混濁していることも少なくありません。

つまり認知症末期に至ると、意思決定能力や意思決定を伝えるための力は、本人にほとんど残されていません。

よって、本人に意思決定能力があるうちに、今後のことを決めておく必要があります。
具体的には、医療方針や金銭面の手続きです。

治療をどこで受けるのか、どんな治療を受けたいのか、なるべく本人の意思を尊重して決めましょう。
判断力がなくなった時に備えて、自分の代わりに医療方針を決定する「医療代理人」を選出するのも大切です。

金銭面においては、主に医療・介護サービスの費用の工面方法を話し合います。
認知症の方の銀行口座は凍結されるため、資金繰りをどのように行うのかも決めておく必要があります。

自分や家族の「死に方」を決めることを、ネガティブに感じる方は多いでしょう。
しかし、本人の判断能力があるうちに、本人の意思を尊重した方針を決めておくことで、結果として、悔いのない予後を実現できます。

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血管性認知症の治療法


血管性認知症の治療法について解説します。

原因疾患の再発防止

血管性認知症は、脳卒中などの発作ごとに症状が段階的に悪化する認知症です

つまり、「症状を段階的に悪化させる原因」を取り除けば、ある程度進行をコントロールできます。
すなわち、まずは原因疾患である脳卒中の治療をすることが重要です。

ちなみに脳卒中とは、脳血管障害が起こる疾患の総称です。
具体的には、「脳梗塞」「くも膜下出血」「脳出血」などが含まれます。

脳卒中の治療法は、投薬や手術など、ケースに応じて異なります。

また、規則正しい生活を心がけることも大切です。
脳卒中の原因の多くは、運動不足・飲酒・喫煙などの生活習慣の乱れだからです。

薬物療法

精神的な症状の治療には、向精神薬が用いられます。
向精神薬は中枢神経系に作用し、精神機能に影響を及ぼす薬物の総称です。

向精神薬には、大きく分けて気分を落ち着かせる薬気分を高揚させる薬の2種類があります。

気分を落ち着かせる薬には、抗精神病薬や抗不安薬があります。
興奮や不安感がやわらぐため、徘徊、暴力・暴言、イライラなどを軽減できます。

一方、気分を高揚させる薬には、抗うつ薬などがあります。
意欲や自発性の低下を防ぎ、明るい気分で生活を送る手助けをしてくれます。

非薬物療法

リハビリや心理療法を通じて、症状の改善に取り組む方法です。

自宅でできる非薬物療法を紹介します。

回想法

昔の思い出を語ってもらう方法です。
昔のことを思い出すことは、単純に楽しく、自然と気分が落ち着きます。

また、「語る」という行為は頭を使うため、認知機能の改善に役立ちます。

アロマ療法

植物から抽出した精油(アロマオイル)を使う方法です。

アロマオイルはリラックス効果が高いため、においをかぐことで、興奮やイライラが収まりやすくなります。

作業療法

掃除や料理などの簡単な作業を通して、認知機能や身体機能を向上させる方法です。
身近な日動動作ならば、抵抗なく取り組みやすいほか、日常生活のリハビリにもなります。

また、達成感を味わえることから、認知症によって失われた自尊心を取り戻すことができます。

薬の使い方

血管性認知症との向き合い方


血管性認知症は、治療次第である程度の改善や進行の緩和を期待できます。
しかし、失われた脳神経細胞は元に戻らないため、劇的な回復や完治は見込めません。

つまり、血管性認知症を発症した方やその家族は、生涯かけて病気と向き合う必要があります。

血管性認知症と向き合うためのポイントを紹介します。

環境を整備する

認知機能が低下しても、本人がなるべく主体的に生活できる環境を整えましょう。
なにもかも周囲が手を出してしまうと、本人のプライドが傷つくだけでなく、認知症の進行に拍車をかけることがあるからです。

気を付けるべきなのは、環境を大きく変えることです。

認知症の方は、新しい状況に適応するのが困難です。
部屋の模様替えや引っ越しなどは、本人を混乱させることがあるため、注意しましょう。

【具体例】

  • バリアフリー工事
  • 手順を一つずつリスト化し、目につく場所に貼る

介護サービスを利用する

家族だけの介護にこだわるのではなく、介護サービスを上手に取り入れることが大切です。
とくに入浴や排泄などの介護は難しいため、プロに任せるのも一つの方法です。

プロに任せると、介護される方もストレスが溜まりにくいです。
同時に、家族の介護負担を減らし、自分の時間を持つ余裕も生まれます。

多くの場合、介護は長期的に続きます。

ゴールが見えないため、介護者は介護サービスを利用して上手に手を抜くことも大切です。

【介護サービスの例】

  • 訪問介護(ホームヘルプ)
  • 訪問入浴介護
  • 通所介護(デイサービス)
  • 通所リハビリテーション
  • 短期入所生活介護(ショートステイ)
  • 特別養護老人ホーム
  • 介護老人保健施設

※利用できる介護保険サービスは、要介護度・要支援度に応じて異なります。

血管性認知症の経過のまとめ

まとめ
ここまで、血管性認知症の経過についてお伝えしてきました。
要点は以下の通りです。

  • 血管性認知症は、症状が段階的に悪化しながら経過していく
  • 血管性認知症の症状は歩行障害、記憶障害、意欲の低下など
  • 血管性認知症の治療は、原因疾患の治療や薬物療法など
  • 血管性認知症と長期的に向き合うためには、バリアフリー工事などの環境整備や、介護サービスの利用が大切

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

監修者 メディカル・ケア・サービス

  • 認知症高齢者対応のグループホーム運営
  • 自立支援ケア
  • 学研グループと融合したメディア
  • 出版事業
  • 社名: メディカル・ケア・サービス株式会社
  • 設立: 1999年11月24日
  • 代表取締役社長: 山本 教雄
  • 本社: 〒330-6029埼玉県さいたま市中央区新都心11-2ランド·アクシス·タワー29F
  • グループホーム展開
  • 介護付有料老人ホーム展開
  • 小規模多機能型居宅介護
  • その他介護事業所運営
  • 食事管理
  • 栄養提供
  • 福祉用具販売
  • 障がい者雇用

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