認知症には中核症状と周辺症状があることをご存じでしょうか?
注意障害は中核症状に分類されますが、症状やリハビリの方法などについての情報が少ないと感じている方も多くいるでしょう。
注意障害は他の中核症状とも深くかかわっているため、注意障害に特化した情報が少ないのです。
この記事では、注意障害について網羅的に解説します。
- 注意障害の種類
- 注意障害のリハビリ
- 注意障害への対応
認知症の注意障害について知識を深め、ご家族のためにも備えておきましょう。
ぜひ最後までお読みください。
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注意障害とは
注意障害とはいったいどのような症状なのでしょうか?
注意障害は「気をつける」という機能の低下が著しく現れることを指しています。
注意が散漫になったり、落ちついて物事に取り組むことができなかったりするのが特徴です。
しかし、注意力の欠如は認知症でなくてもあるため、他の症状に隠れてしまいがちです。
そのため注意障害は、「見えない障害」といわれ気づけないことが多いです。
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認知症と注意障害の関係
65歳以上では6人に1人の割合で認知症になります。
歳をとるにつれて認知症になりやすくなります。
注意障害だけで認知症と判断することは難しいでしょう。
しかし、認知症における中核症状のどれをとっても、注意障害との深い関わりがあることが分かります。
中核症状の代表ともいえる記憶障害は、注意障害により、一度に意識できる範囲や容量が狭くなることも関係します。
また、注意障害により他の物に気を取られることは、中核症状である理解力・判断力の低下につながります。
このように、注意障害は認知症のそれぞれの中核症状と深い関係を持っているのです。
注意力の低下によって認知症の中核症状がみられるようであれば認知症のチェックを受けてみることをおすすめします。
注意力が低下しているだけだと思わずに他に何かが起きていないかと気をつけてみることが重要になります。
認知症の注意障害の症状
認知症における注意障害は、全般性意識障害と方向性注意障害の2つに分けられます。
全般性意識障害とは、注意が散漫してしまうことです。
対して方向性注意障害とは、視界の一部や集中していること以外を見落としてしまうことです。
ここからは主な注意障害の症状について解説します。
選択性注意障害
選択性注意障害では、必要な刺激や情報に注意をすることが難しくなります。
多くの中から適切なものを探し出すことや、物音に気を取られて行っていたことを継続することができなくなる症状などが当てはまります。
選択性注意障害の方には、余計なものをなくし容易に選択することができるような環境作りが必要になります。
持続性注意障害
持続性注意障害では、一定時間注意を持続させることが難しくなります。
注意力が変動しているので、活動全体に一貫性がありません。
持続性注意障害の方には、集中力を高める訓練やリハビリなどを行うと良いでしょう。
転導性注意障害
転導性注意障害では、本来注意を向けなくてはいけないものへ切り替えることが出来なくなります。
異なる情報の影響を受けやすく、取捨選択を行うことが難しくなってしまうのです。
選択性注意障害とも似た部分がありますが、選択肢を減らすなどの対応をすると良いかもしれません。
分配性注意障害
分配性注意障害では、様々な方向に注意を向けることが難しくなります。
そのため、2つの作業を同時進行することができません。
同時に作業を行わないようにして、1つ1つの作業をきちんとこなせるようにすることが大切です。
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認知症の注意障害のリハビリ
注意障害の症状がわかっても、どんなリハビリをしたら効果的なのか気になりますよね。
ここからは注意障害のリハビリについて解説します。
非特異的介入
全体的に注意力の継続が困難な方に対して、注意力が続くための反復練習を行います。
- 間違い探し
- かるたやトランプ
- 辞書調べ
- 集計作業
- 入力作業 など
これらの課題を一定時間内で解く練習を繰り返すことで、注意力を持続させる時間を延ばします。
特異的介入
こちらはある部分の注意力が続かない人へ、その分野の注意力が増すようなトレーニングになります。
- 選択的注意→選択抹消課題
- 持続性注意→目標刺激の持続的課題
- 転導性注意→交代制課題
- 分配性注意→二重課題
複数の選択肢から内容に合ったものを選ぶための注意力を磨くトレーニングや、同じことを繰り返すことが難しい方への反復練習を行います。
段階的介入
段階的介入とは、初めから目標を立ててその目標をクリアしようとする訓練やトレーニングです。
確実にクリアできる数や時間などから始めるようにして、少しずつ延ばしていくようにしましょう。
訓練やトレーニング前には周囲の環境を整えることも大切です。
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認知症の注意障害のアプローチ方法
注意障害の方へのアプローチを行う場合には、まず環境を整えることが必要です。
どのような環境が必要であるか紹介します。
気が散る原因をなくす
注意力に問題がない人でも気が散りやすい環境では、注意力が低下してしまうこともあります。
気が散る原因は人それぞれなので、気が散る原因をなくしていくようにします。
気が散る原因を見つけるのは難しいですが、原因と思わしきものを少しずつ排除していくことで集中力を高め、注意力へと繋げることが可能です。
こまめに休憩をとる
本人のやる気があれば長く続くことでも、注意障害の場合には短時間であっても集中することが難しいです。
こまめに休憩を取り、改めて注意力を持続できる環境で訓練やリハビリを行うようにしましょう。
注意力を持続できない状態が続く場合であれば、他の日や違う時間に改めて行うようにしてください。
無理に続けても嫌になってしまい、訓練やリハビリなどを行わなくなってしまっては意味がありません。
アプローチしすぎないことが大切です。
環境をつくる
リハビリや訓練を行う環境を整えてからアプローチしましょう。
注意力が続かない理由として、周囲に気が向いてしまい集中するべきことに注意を向けることができない場合もあります。
最初のうちは気が散って進まないことが多いので、気が散らないような環境作りが必要です。
慣れてくれば徐々に環境の調節をして周囲の刺激を取り入れつつ慣れていくようにします。
作業は一つずつ行う
注意力の欠如によって、いくつもの作業ができない方もいます。
訓練やリハビリの導入直後は作業を一つに絞って行うようにしましょう。
慣れていくことでいくつかの作業を行えるようになるので、焦らずに進めていきましょう。
出典:厚生労働省「認知症ケア法-認知症の理解」
食事拒否は注意障害が原因?
認知症の周辺症状の一つに食事拒否があります。
食事に注意を向けることができないのが原因の一つです。
食事に注意を向けられない原因には、食事前にしたいことがある場合や、たくさん用意された食事それぞれに気が向いてしまう場合などがあります。
注意障害のみの原因とはいえませんが、他の症状に注意障害が加わることで食事拒否を起こしてしまうのです。
家族としては、健康維持のためにも食事はきちんと食べてほしいと思うでしょう。
しかし、無理矢理食べてもらおうとして、食事と共に相手に対して嫌悪感をもったり、拒否されたりしてしまっては意味がありません。
食事を提供する相手との関係を良好に保ちながら、食事ができるような工夫をすることが必要です。
認知症と注意障害のまとめ
ここまで認知症と注意障害についての情報を中心にお伝えしてきました。
以下にこの記事の内容をまとめます。
- 認知症の注意障害は他の症状に隠れてしまい気づきにくい
- 注意障害のリハビリには、非特異的介入や特異的介入、段階的介入などがある
- 注意障害の対応では環境を整えることが必要
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。