認知症と聞くと、「物忘れ」のイメージを抱く方が多いでしょう。
しかし、認知症の症状は物忘れ以外にもたくさんあります。
また、認知症の種類によって症状の現れ方もさまざまです。
「認知症の症状が現れているけど気付いていない」という人も多いのではないでしょうか?
本記事では、認知症の症状について以下の点を中心に解説します。
- アルツハイマー型認知症の症状
- 血管性認知症の症状
- レビー小体型認知症の症状
- 前頭側頭型認知症の症状
認知症の種類ごとの症状を把握するためにも、ご参考いただけますと幸いです。
ぜひ本記事を最後までお読みください。
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認知症とは
認知症には、代表的な種類が4つあります。
アルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症です。
上記の認知症をまとめて、四大認知症ともいわれます。
なお、認知症の方のうち、種類別の割合は以下の通りです。
- アルツハイマー型認知症:67.6%
- 血管性認知症:19.5%
- レビー小体型認知症:4.3%
- 前頭側頭型認知症:1.0%
参考:認知症施策の総合的な推進について(厚生労働省)
「両親ともに認知症と診断されたが、症状がぜんぜん違う気がする…」「認知症の母が手足をうまく動かせないと言い出したが、これも認知症の症状?」認知症の症状は、認知症の原因となる疾患により異なってきます。今回の記事では、認知症の原因と[…]
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認知症の症状とは
認知症の症状は、中核症状と周辺症状に分けられます。
中核症状は、認知症の進行に伴って現れる症状であり、ほとんどの方が経験します。
一方、周辺症状は、本人の性格や周囲の環境に誘発される症状です。
中核症状の進行に伴って発症しますが、認知症の方が全員経験するわけではありません。
中核症状と周辺症状には、それぞれ以下のような症状がみられます。
【中核症状の症例】
- 記憶障害
- 理解力・判断力の低下
- 見当識障害
- 実行機能障害
- 失行・失語・失認
【周辺症状の症例】
- 不安・イライラ
- 妄想
- 幻覚
- 徘徊
- 不眠
認知症では、「中核症状」と中核症状によって引き起こされる「周辺症状」があります。周辺症状と呼ばれる症状がどのようなものか知っていますか?今回は、中核症状と周辺症状の違いをご紹介した上で、周辺症状の治療方法や治療薬についてご紹介し[…]
アルツハイマー型認知症の段階的な症状
アルツハイマー型認知症は、認知症の中でも、発症数が最も多い認知症です。
記憶をつかさどる海馬が大きく萎縮するのが特徴です。
初期
初期症状といってもさまざまな症状が現れます。
ここからは、アルツハイマー型認知症の初期症状を解説します。
記憶障害
新しい情報や最近の出来事を覚えられなくなります。
一部ではなく、丸ごと体験が抜け落ちるのが特徴です。
- 同じ話や質問を何度も繰り返す
- 物の置忘れが増える
- 忘れたことを忘れる
時間の見当識
日にち、時間、季節などの感覚がなくなる障害です。
季節に合った服装ができなくなり、風邪や脱水症状を起こすこともあります。
- ヒントをもらっても、今日が何月何日か分からない
- 季節にあった服装ができない
- 真夜中に仕事に出かけようとする
実行機能障害
物事の計画を立て、効率よく実行できなくなる障害です。
複数の作業の同時進行や、予想外のハプニングへの対応も難しくなります。
- 料理の手順が分からない
- 洗濯しながら掃除ができない
- 買い物で売り切れがあるときに、代用品を思いつかない
中期
中期になるとどのような症状が見られるのでしょうか?
ここからは、アルツハイマー型認知症の中期症状について解説します。
場所の見当識障害
場所の感覚がなくなる障害です。
徘徊や行方不明の大きな原因でもあります。
- 近所で道に迷う
- 自宅のトイレにたどり着けない
失行
身体機能に問題はないものの、目的をもって動かせなくなる症状です。
失行が現れると、自立した生活が困難になります。
- 手は動くが、シャツのボタンの留め方が分からない
- テレビのつけ方が分からない
末期
末期になると、認知機能・運動機能がともに著しく低下します。
自力で動くことはほぼ不可能で、寝たきりになることも少なくありません。
そのため、食事・入浴・排泄などの日常生活全般において介護が必要となります。
- 言語障害のために会話ができない
- 意識が混濁している
- 食べ物を飲み込めない(嚥下障害)
アルツハイマー病と認知症の明確な違いがわかりますか?恐らく混同して考えている方も少なくないと思います。そこで今回の記事ではアルツハイマー病と認知症の違いアルツハイマー病以外の認知症アルツハイマー病とその他の認[…]
血管性認知症の段階的な症状
血管性認知症は、脳卒中などの脳血管障害を原因とする認知症です。
脳卒中が起こる部位によって、現れる症状に偏りがある点が特徴です。
初期
ここでは、血管性認知症の初期症状について解説します。
失行
身体的な問題はないものの、目的をもって動かせなくなる症状です。
認知症の比較的初期から現れやすいです。
- 着替えたいが、ズボンのおろし方が分からない
- 食事のとき、箸の持ち方が分からない
失認
視覚・聴覚に異常はないものの、対象物を認識できなくなる症状です。
具体的には、対象物の意味を理解できなくなります。
- 食事を目の前にしても、食べ物と認識できない
- 視界の半分が欠けてしまう(半側空間無視)
失語
意味のある言葉を話せなくなる症状です。
聴覚や発声自体に問題はありません。
- 流暢に話せるが、言葉の意味を理解できないため支離滅裂な内容になる
- 言葉の意味は分かるが流暢に話せず、どもってしまう
中期以降
中期以降の血管性認知症では、初期に現れた症状が重症化します。
また、記憶障害、感情失禁・情緒不安定、抑うつなどの症状が現れることもあります。
血管性認知症は、脳血管障害の再発・発作ごとに進行します。
そのため、脳血管障害の発作を予防できれば、進行をある程度食い止められます。
脳梗塞や脳出血など、脳の血管に障害が起こることで発症する脳血管性認知症。脳血管性認知症はどのような症状があるのかを知っていますか?今回は脳血管性認知症の原因や症状についてご紹介した上で、診断方法や治療法をご紹介します。[…]
レビー小体型認知症の段階的な症状
レビー小体型認知症は、大脳にレビー小体という異常物質が蓄積して発症します。
大きな特徴は、一日のうちで症状に波がある点です。
初期
レビー小体型認知症の初期症状を解説します。
パーキンソン症状
全身の筋肉が硬直する症状です。
身体が動かしづらくなり、転倒やケガの危険性が高まります。
- 筋肉がこわばる
- 手足が震える
- 小刻み歩行
- 動作の緩慢化
幻視
現実には存在しないものが、あたかも存在するように見える症状です。
恐怖のために、暴れたり大声を出したりすることが多くなります。
- 「枕元に子供がいる」と訴える
- なにもいない空間に「あっちへ行って!」と叫ぶ
- 「不審者がいる」と警察に通報する
レム睡眠障害
睡眠中に、異常言動をする障害です。
眠ったまま徘徊することもあります。
- 睡眠中に大声で叫ぶ
- 異常な寝言が増える
- 睡眠中に暴れて、ベッドパートナーにケガをさせる
- 眠ったまま徘徊する
自律神経症状
自律神経のバランスが崩れ、心身にさまざまな不調をきたします。
ときには、抑うつや無気力に発展することもあります。
- 動悸・発汗
- 不眠
- 不安感
- めまい・立ちくらみ
- 便秘・頻尿
中期
レビー小体型認知症の中期以降では、認知機能障害が目立つようになります。
認知機能の低下
記憶力や思考力などが低下します。
レビー小体型認知症では、認知機能障害そのものより、症状の現れ方に特徴があります。
レビー小体型認知機能では、認知機能が良いときと悪いときを波状に繰り返します。
一日の中でも変動は大きく、特に夕方は悪化しやすいです。
抗精神病薬薬剤への過敏性
レビー小体型認知症の方は、薬が効きすぎる傾向があります。
とくに、周辺症状を抑える抗精神病薬への過敏性が高いです。
薬が効きすぎると、さまざまな副作用が現れるため注意が必要です。
末期
パーキンソン症状や自律神経症状が重症化します。
転倒のほか、嚥下障害による誤嚥の危険性が高まるため、24時間見守りが必要になります。
三大認知症の一つとされているレビー小体型認知症。発症すれば幻視や妄想をともなう可能性のあるレビー小体型認知症ですが、どのような対策や予防があるのでしょうか?今回は、レビー小体型認知症について以下の点を中心にご紹介します。[…]
前頭側頭型認知症の症状
前頭葉と側頭葉が著しく萎縮します。
前頭葉は理性・感情、側頭葉は言語をつかさどる分野です。
初期
前頭側頭型認知症を発症すると、さまざまな症状が現れます。
ここでは、前頭側頭型認知症の初期症状を解説します。
愛情・親近感の低下
周囲への愛情や親近感が低下します。
前頭葉の萎縮により、感情の起伏や共感力が低下するのが原因です。
- 病気の家族を気遣えない
- 他人に関心がなくなる
人格変化
性格に大きな変化が見られるため、周囲の方は人が変わったように感じます。
理性の低下によって、他人への遠慮や犯罪への抑止力が失われるのが特徴です。
- 情緒不安定になりやすい
- 他人への言動に遠慮がなくなる
- 我慢ができず、万引きや痴漢などの軽犯罪を犯す
中期
中期以降は、精神的な症状が顕著になるほか、認知機能障害も現れます。
落ち着きのない行動をとる
落ち着きがなくなり、イライラしやすくなります。
前頭葉の萎縮によって感情の制御ができなくなることが原因です。
- 些細なことですぐ怒る
- 一度起こると手が付けられない
- じっとしていられない
嗜好の変化
食べ物の好みが変化することが多いです。
特に、甘いものを好む傾向がみられます。
日時の見当識障害
時間の感覚が失われます。
昼と夜の区別がつきにくくなり、徘徊が起きやすくなります。
末期
前頭側頭型認知症の末期症状を解説します。
尿失禁
トイレ以外の場所で用を足すことが多くなります。
尿意を感じても、身体が動かしづらくトイレに間に合わないことが原因です。
また、失認によりトイレをトイレと認識できない場合もあります。
箸やスプーンをうまく使えない
箸やスプーンをうまく使えなくなります。
原因として、失認が挙げられます。
食器や箸などを食べるための道具と認識できなくなることで、現れるケースが多いです。
急速に加速する超高齢社会の中、前頭側頭型認知症の発症者数は1万2000人を超えています。 そうした前頭側頭型認知症は、指定難病の一つでありまだ解明されていない点が多数存在しています。そこで、今回の記事では、[…]
認知症チェックリスト
気になり始めたら以下を参考に自分でチェックしてみましょう。
財布や鍵など、物を置いた場所がわからなくなることがありますか |
5分前に聞いた話を思い出せないことがありますか |
周りの人から「いつも同じ事を聞く」などのもの忘れがあると言われますか |
今日が何月何日かわからないときがありますか |
言おうとしている言葉が、すぐに出てこないことがありますか |
貯金の出し入れや、家賃や公共料金の支払いは一人でできますか |
一人で買い物に行けますか |
バスや電車、自家用車などを使って一人で外出できますか |
自分で掃除機やほうきを使って掃除ができますか |
電話番号を調べて、電話をかけることができますか |
認知症は、治療が早いほど進行を緩和できるため、初期症状を見逃さないことが大切です。しかし、どんな症状が「認知症の初期症状なの?」と思う方も多いでしょう。本記事では、認知症の初期症状のチェック方法について解説します。 認知症の初期[…]
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認知症っぽい症状が現れたら?
実際に認知症が疑われる場合、どのような対策を取ればよいのか紹介します。
物忘れ外来の受診
物忘れがひどくなってきたと感じたら、「物忘れ外来」の受診がおすすめです。
物忘れ外来は、物忘れの原因を特定するための診療科です。
物忘れの原因が「認知症」か「その他の疾患」なのかを調べ、適切な治療法を検討します。
近くに物忘れ外来がない場合は、以下の診療科の受診が適当です。
- 脳神経科
- 精神科
- 心療内科
- 老年科
進行を遅らせるリハビリ
認知症だと診断されたら、進行を遅らせるためのリハビリや治療を行います。
治療やリハビリは、開始が早いほどその後の認知機能や生活の質を高く維持できます。
特に、リハビリは家庭でできるものも多いため、積極的に取り組みましょう。
代表的な種類は以下の通りです。
- 回想法
- 音楽療法
- 作業療法
- リアリティオリエンテーション
「認知症疾患医療センター」とは、認知症疾患における識別診断や医療機関の紹介などを行う機関です。家族や身近な方に認知症と思しき症状が現れたときのため、認知症疾患医療センターについて知ることはとても重要です。今回は認知症疾患医療セン[…]
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軽度認知障害MCIの症状
年齢相応以上の記憶力の低下があるものの、生活するための全般的な認知機能は保たれている状態を軽度認知障害:MCI(Mild Cognitive Impairment)と言います。
認知症の手前の状態で、MICの方の約半数はアルツハイマー型認知症に移行するといわれています。
MICの症状は
- 大切な約束を忘れてしまう
- 少し前にした話を繰り返す
- 物忘れを自覚している
- トイレや着替えなど日常生活にはほとんど影響なし
など、著しい物忘れはあるものの基本的な生活動作は保たれているのが特徴です。
症状に気づいたら認知症への移行を遅らせるために早めに医師に相談しましょう。
認知症発症の前段階ともいわれる軽度認知障害(MCI)。早期に対応することで改善が見込めるといわれている軽度認知障害(MCI)ですが、どのような特徴や対策方法があるのでしょうか?今回、軽度認知障害(MCI)にどのような症状がみられ[…]
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加齢と認知症による物忘れの違い
認知症は、脳の病気や障害など様々な原因により、認知機能が低下し、日常生活全般に支障が出てくる状態をいいます。初期は、加齢による単なる物忘れに見えることが多いでしょう。以下、表にして違いを比較してみましょう。
認知症 | 加齢による物忘れ | |
物忘れの内容 | 自分が経験した出来事 | 一般的な知識、人の名前や地名など |
物忘れの範囲 | 体験した全体 食事、買い物、作業をしたこと自体を忘れる | 体験した一部 食事はしたが何を食べたか忘れるなど |
進行 | 進行していく | 進行・悪化しない |
日常生活 | 支障あり | 支障なし支障なし |
学習能力 | 新しいことを覚えられない | 判断力や理解力には問題ない |
日時の認識 | 今日の日付・曜日がわからない | 今日の日付などがわかる |
感情・意欲 | 怒りっぽくなる 無気力に見える | 保たれている |
出典:認知症|こころの病気を知る|メンタルヘルス|厚生労働省
年齢が上がるにつれ物忘れが多くなり不安になるでしょう。老人の物忘れと聞くと認知症や病気を疑います。しかし老化での物忘れは認知症とは違います。ここでは以下の内容を紹介します。物忘れの症状物忘れが初期症状[…]
認知症の症状まとめ
ここまで、認知症の症状についてお伝えしました。
要点は以下の通りです。
- アルツハイマー型認知症の主な症状は、記憶障害や見当識障害、実行機能障害など
- 血管性認知症の主な症状は、失行や失語、失認など
- レビー小体型認知症の症状は、パーキンソン症状や幻視、レム睡眠行動異常症など
- 前頭側頭型認知症の症状は、人格の変化や親近感の低下、興奮・怒りっぽさなど
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
認知症による攻撃的言動はご家族を非常に苦しめ、体調不良を引き起こす原因にもなります。しかし攻撃的言動への対応を知ることで、ご家族の負担を軽減することができます。今回は認知症による攻撃的言動への対応について、以下の点をご紹介します[…]