認知症の方と関わるうえで知っておきたい認知症の進行段階や進行スピード。
初期から末期までその症状はさまざまですが、どのように進行し症状が現れるのでしょうか?
今回、認知症がどのように進行するのかご紹介した上で、その特徴や対策方法についてもご紹介します。
- 認知症の進行過程
- 認知症の症状の特徴
- 家族に求められる対応
ぜひ最後までご覧いただき、認知症介護を行う際の参考にしてください。
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認知症はどのように進行する?
認知症の進行は、認知症の種類によって異なります。
アルツハイマー型認知症・レビー小体型認知症・血管性認知症の3つの進行状況について解説していきます。
アルツハイマー型認知症
アルツハイマー型認知症は、加齢にともないアミロイドβとタウというたんぱく質が脳に蓄積されることで発症します。
アルツハイマー病を発症する20~25年前には、すでにアミロイドβの蓄積が始まっているといわれています。
初期段階では、物忘れなどの認知機能障害や集中力が低下する注意障害が見られるようになり、経過とともに緩やかに症状が進行していきます。
簡単な物忘れ程度の症状だったのが、進行により数分前の出来事を忘れてしまうような状態になってしまったり、重度になると人や物の認識ができなくなる場合もあります。
レビー小体型認知症
レビー小体型認知症は、レビー小体というたんぱく質が大脳皮質や脳幹に蓄積されることで発症します。
このレビー小体が脳のどの部位に蓄積されるかで症状の現れ方が異なります。
初期では主にパーキンソン症状、幻視、レム睡眠障害、自律神経症状がみられるようになります。
特にパーキンソン症状の出現は、レビー小体型認知症特有の症状です。
パーキンソン症状では、小刻み歩行や動作の緩慢さ、姿勢バランスが悪くなる姿勢反射障害がみられるようになり、進行とともに悪化し、日常生活動作に大きな支障をきたすことになります。
また、アルツハイマー型認知症とは違い、初期では物忘れなどの認知機能障害は現れづらくなっています。
血管性認知症
脳血管性認知症の発症要因は、脳梗塞や脳出血などの脳血管疾患です。
血管性認知症は脳血管疾患の発症部位や範囲によって症状が異なるため、「まだら認知症」とも言われています。
小さな梗塞の場合には、自覚のないまま発症していることもあるようです。
血管性認知症の特徴としては、認知機能障害、抑うつ症状、感情が抑えられなくなる感情失禁などがあげられます。
アルツハイマー型認知症のように、じわじわと認知機能が低下していくのではなく(、脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血など)を繰り返すことにより、段階的に認知機能が低下していきます。
また、認知症とは別に、発症要因である脳卒中自体の影響を受けますので、身体に麻痺が出たり、言語障害などの後遺症をともなえば、日常生活に大きく支障をきたすこととなります。
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認知症の進行段階
認知症はどのように進行していくのでしょうか。
前兆、初期、中期、末期の進行段階にわけて症状を解説していきます。
前兆
日常生活に支障はないももの、物忘れをするようになります。
「歳のせいだろう」と見過ごされがちですが、既に認知症の前兆である可能性があります。
初期
直前まで話していたことを忘れてしまったり、勘違いが目立つようになります。
また曜日や日付がわからなくなることもあります。
さらに無気力になることが増え、趣味をやらなくなったり、ものごとを面倒くさがるようになります。
中期
認識力や記憶力に著しい低下がみられるようになります。
言われたことを理解できなくなったり、自分が今いる場所がわからないなど、場所に関する認識力の低下がみられるようになります。
そして認知症中期では、自立した生活を送ることが困難になってきます。
独居をしていたり、家族や周囲の協力を得られない場合には、老人保健施設やグループホームなどといった介護施設への入所が必要になるかもしれません。
末期
認知症末期ではコミュニケーションを取ることが困難になります。
言葉の理解が全くできなくなることもあります。
物に対する認識力も著しく低下し、食事を食事だと思わなくなったり、おむついじりなどの不潔行動も起こりえます。
また注意力も集中力も散漫なため、食事中に誤嚥(ごえん)してしまい肺炎になるリスクも高まります。
この段階に入る前にできるだけ早く病院に行き、治療を受けてもらうようにしましょう。
認知症の症状の種類
認知症の症状には、中核症状と周辺症状の二つの種類が存在します。
それぞれの症状がどのようなものなのか解説していきます。
中核症状
中核症状とは認知機能の低下によって引き起こされる症状を意味します。
記憶障害
一般的にいわれる物忘れは、記憶障害にあたります。
人間には、比較的新しい記憶を保存しておく短期記憶と、過去や古い記憶を保存しておく長期記憶があります。
認知症の記憶障害では短期記憶の方が失われやすいとされています。
具体的には、ついさっき話をしていた内容を忘れ、何度も聞きなおしたり、食事を食べたことを忘れてしまうといったことがみられるようになります。
見当識障害
見当識障害とは時間、場所、人物といった情報を認識する能力(見当識)が障害を受けている状態をいいます。
時間に対する見当識障害では、時間や季節の認識ができなくなり、深夜に出かけようとしたり、夏なのに厚着をするようなことがあります。
場所に対する見当識障害では、目的地や現在地に関する見当識が欠如してしまいます。
そのため、自分の家であってもトイレや寝室の場所がわからなくなってしまうことがあります。
また、屋外では散歩に出かけたものの自宅の場所がわからなくなり、警察に保護されるといったケースもあるようです。
人物に対する見当識障害では、家族や知人の名前、また、自分との関係性がわからなくなってしまう場合があります。
見当識障害は進行の過程で、時間、場所、人物の順に見当識が低下していくといわれています。
実行機能障害
実行機能障害とは、ものごとの計画をたてて実行することができなくなったり、混乱をまねく障害をいいます。
例えば、衣類を洗濯したあと洗濯物を干し、乾いたら畳んでしまうといった一連のプロセスへの理解ができなくなります。
症状が進めば、簡単な服の着替えの順序がわからなくなったりすることもあります。
判断力低下
認知症では、ものごとの理解や判断力低下が顕著にみられます。
例えば、足腰が弱っているため他者の介助がないと歩けない状態なのに、自分は問題なく歩けると思ってしまい転倒するなど、認知症介護の場面ではよくあるケースです。
判断力の低下は、大きな事故に結びつく危険性があるため注意が必要です。
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周辺症状
周辺症状とは、中核症状に加え、周囲の環境や自身の性格などが合わさることで生じる二次的症状のことです。
拒絶
実行機能障害や判断力低下などから、本来必要な介護や行為を「無理やりやらされる」「嫌なことをされる」と思い込んでしまい、介護を拒絶する場合があります。
本人としては、なぜやらなければいけないのか、何のための行為なのかを理解出来ていない場合もあります。
介護者は、本人が拒絶したことに対して、叱ったり怒ったりしてはいけません。
余計嫌なことをされたと思い込み、益々拒絶してしまう可能性があります。
介護を拒絶する場合は必ず本人なりの理由があります。
なぜ拒否をするのかに焦点をあて、本人の気持ちに寄り添った対応が求められます。
徘徊
徘徊とは落ち着きなく周囲をうろうろと動き回る行為を意味します。
見当識障害により起こり得る周辺症状のひとつです。
例えば、今いる場所は自分の家ではないと勘違いして屋外へ出ようとしたり、行動の途中で目的を忘れ、あてもなくうろうろしてしまうような行動がみられます。
暴言・暴力
認知機能低下により、理性の欠如や感情をうまくコントロールができなくなり、暴言や暴力につながる場合があります。
コミュニケーションが上手く取れないことがストレスとなり、暴言・暴力に発展している可能性も考えられます。
家族同士なら介助者が暴言を受けると、言い返してしまうこともあると思いますが、余計に本人の気持ちを荒立ててしまうこともあります。
本人の表出したい気持ちの理解や、落ち着いた傾聴の姿勢が求められます。
あまりにも酷い暴力行動がみられる場合には、入院治療の対象になることもあります。
幻覚・妄想
幻覚・妄想は特に、幻視を主症状にもつレビー小体認知症で多くみられます。
誰もいないはずの部屋で人が立っているように見えたり、動物が動き回っているように見えたりする症状です。
たとえそれが実在しないものでも、本人には確かに見えているのが幻視です。
そこから思い込みが強くなり、妄想に発展してしまう場合があります。
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進行を遅らせるには
現在、認知症自体を完治させる治療方法はありません。
認知症治療では、進行の抑制や症状の緩和が目的とされています。
主な治療方法としてはリハビリ治療と投薬治療があります。
リハビリ治療
リハビリ治療では、脳や筋肉への刺激をあたえることで脳の活性化につながるといわれています。
リハビリ療法では脳トレ、回想法、適度な運動が有効であるとされています。
それぞれ紹介していきます。
脳トレ
脳トレでは、簡単なゲームやパズルを行うことで脳を活性化させ認知機能の低下を防止します。
回想法
過去の出来事を思い出し話し合うことで、脳を活性化させる治療法です。
当時の出来事を思い出すことで、喜びなどの感情を引き出し、自信を取り戻すことができる可能性があります。
適度な運動
身体機能が低下し、椅子に座っている時間や、寝てばかりいる時間が増えることで刺激が無くなり認知症が進行してしまうこともあります。
定期的に運動により、身体の活性化を図りましょう。
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投薬治療
投薬治療では症状に応じて薬が処方されます。
認知症の方の場合、理解力の低下から自己で内服管理できない場合もあります。
正しく内服管理できるよう対策する必要があります。
進行が早まる原因
認知症の方はものごとの理解や他者とのコミュニケーションが億劫になり、引きこもりがちになる傾向があります。
自宅に引きこもりがちになってしまうと頭を使うことも少なくなり、さらに身体機能も低下するため、ますます認知機能が低下してしまう恐れがあります。
定期的な運動や他者との交流の機会を設けることが望ましいでしょう。
その他、脳血管疾患では脳卒中を繰り返すことで段階的に認知機能が低下します。
脳卒中を発症しないためにも、適切な栄養管理と運動が必要になります。
認知症患者が必要とする平均的な介護期間
認知症介護の平均期間は6~7年というデータもあるようですが、症状の進行度合い、家族環境、持病の有無なども関係するため個人差が大きいというのが現状です。
認知症を早期発見するには
認知症の進行を食い止めるには、早期発見と早期対処がとても重要です。
明らかな認知症の症状は現れていないものの、ちょっとした物忘れが出始める軽度認知症状の状態をMCIといいます。
現在、65歳以上の高齢者の約400万人がMCIの状態にあるといわれてます。
MCIの状態になれば5年で認知症になる可能性が約40%になります。
したがって認知症にならないためにも、この段階で適切な対処をする必要があります。
現在はインターネット上にさまざまな認知症チェック項目などがありますので、物忘れが気になってきたら、当てはまる項目はないか試してみると良いでしょう。
また少しでも気になる場合には専門医へ受診しましょう。
検査の結果異常がなければ不安も解消されます。
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家族にできることはある?
家族の関わりや協力が認知症の進行を左右させる場合もあります。
認知症により突然ものごとがわからなくなり、生活の中で大きな不安感を抱えてしまうこともあります。
家族が寄り添ってくれることの安心感は何事にも代えがたい大切な要素です。
認知症の症状により、行動や発言がゆっくりになってしまう場合がありますが、焦らせたり怒ったりせず、本人のペースに合わせることが大切です。
また、症状の変化を日々観察しておくことで、専門医が処方する薬や治療方針を検討する際に役立ちます。
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認知症の進行についてのまとめ
いかがでしたか?
以下が記事のまとめになります。
- 認知症の進行過程は、前兆である物忘れから始まり、最終的にはものごとの理解や認識ができなくなってしまう
- 認知症の症状の特徴として、中核症状や周辺症状が徐々に現れてくる。
- 家族に求められる対応は、本人の不安に対する寄り添いや症状の変化を観察しておくこと。
ここまで認知症の進行に関する情報や、その特徴、対策方法などを中心にお伝えしてきました。
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。