日本では少子高齢化が社会問題となっており、高齢者の割合が年々増加しています。
そんな中、認知症の高齢者を専門にケアする施設も増えてきました。
その施設の一つが「グループホーム」です。
今回の記事では、
「家族が認知症になって自宅で介護を続けるのは難しい」
「認知症の親を介護施設に預けたいけれど、どんな施設が良いの?」
と悩んでいるあなたに、
- グループホームと有料老人ホームの違い
- グループホームで受けられるサービス
- グループホームの入居条件
- グループホームの費用、助成制度
- グループホームのメリット、デメリット
について詳しくご紹介していきます。
ぜひ最後までご覧いただき、ご家族の施設入居の検討の参考にしてください。
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グループホームとは
グループホームとは、高齢者や障害をもっている方、様々な理由で親と一緒に住むことが難しい子供などの生活に困っている方が少人数で支援を受けながら生活する場のことです。
一般的には「認知症グループホーム」を意味していることが多いです。
今回は、この認知症グループホームについて解説していきます。
グループホームでは、認知症の高齢者が5人~9人を一つのグループ(ユニット)として、料理や掃除などの役割を分担しながら暮らしています。
1つのグループホームには最高で3ユニットあり、それぞれに認知症専門の知識や支援技術を持ったスタッフが支援しています。
グループホームは「認知症対応型共同生活介護」とも言われ、高齢者が認知症になり、自宅で過ごすことが難しくなっても、住みなれた地域で暮らし続けることが出来るように支援する「地域密着型サービス」の一つです。
認知症の高齢者は新しい環境に合わせることが難しく、刺激にも敏感なので、住みなれた地域で静かな環境を作り出すことは、認知症の悪化を防ぐ効果があります。
また、少人数での生活によって、同居している高齢者やスタッフと顔なじみになりやすく、利用者の混乱を防ぐことに繋がっています。
さらに、日常の家事などを自分たちの力で行うことで、適度な刺激となり、認知症の進行を防ぐ効果があるとも言われています。
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グループホームのユニットとは
ユニットケアとは、入居者一個人を尊重する介護手法のことをいいます。
10人以下の人数で1つのユニットを構成し、入居者はそれぞれ個室において、自宅に近い環境で介護生活を送ることができます。
介護スタッフはユニットごとに配属されており、入居者も少ないため、より行き届いたケアを受けられます。
以前は集団ケアが主流であり、多床室の介護施設が多くありました。
集団ケアは、スタッフ側が効率良く業務を行えるメリットがあります。
しかし、どうしても「入居者のプライバシーが守られない」というデメリットもあります。
近年では個人の尊重、充実したケアの提供を目的にユニットケア方式の施設が増えてきているのです。
グループホームと有料老人ホームの違いについて
グループホームと有料老人ホームではどのような違いがあるのでしょうか?
最も大きな違いは、施設の目的です。
目的の違いから、利用者の制限や費用なども大きく変わります。
グループホーム
グループホームの目的は認知症を患っている高齢者が専門のスタッフによる支援を受けながら、住みなれた地域で生活を送ることです。
グループホームでは、認知症と診断された要支援2または要介護1以上の高齢者が利用することができ、費用も比較的安く設定されています。
グループホームは地域の認知症高齢者限定で、少人数しか入居することができないため、数か月単位での待機期間が発生することがあります。
有料老人ホーム
一方、有料老人ホームの目的は、高齢者が食事や清掃、身体介護、リハビリなど、施設スタッフから幅広いサービスを受け、老後の生活を快適に過ごすことにあります。
有料老人ホームは、施設によって完全に自立している高齢者から日常生活に介護が必要な高齢者まで幅広く利用することができます。
その分、費用も高額な施設が多い現状です。
有料老人ホームは施設数も多く、入居制限も少ないため、待機期間はほとんどありません。
このように、グループホームと有料老人ホームでは、目的や施設の形態が全く違うため、入居の際には、利用者に合った施設を調査し、目的に合った施設を検討する必要があります。
自力で調べることが難しい場合は、お住まいの自治体への相談をオススメします。
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グループホームの人員配置基準
グループホームでは、以下のような人員配置が義務づけられています。
- 介護職員
- 計画作成担当者
- 管理者
- 代表者
介護職員は、入居者のお世話を行うスタッフです。
介護職員は利用者3人に対して1人以上の割合で配置されます。
計画作成者とは、利用者のケアプランを担当する職員です。
いわゆるケアマネージャーに該当します。
計画作成者の配置基準は、1つのユニットにつき1人です。
つまり複数のユニットを持つ事業所であれば、ユニットと同数の計画作成者が配置されます。
管理者は、ユニットごとのスタッフの労務・人事管理のほか、経営や運営を担当します。
現場に入って利用者の介護を行うこともあります。
管理者はユニットにつき1人以上配置されます。
対して代表者は、原則として1つの施設につき1人の配置です。
代表者の主な役割は、グループホーム全体の管理・運営です。
グループホームで受けられるサービスとは?
グループホームで受けられるサービスは大きく分けて以下の4点です。
- 地域交流
- 看取りサービス
- 日常生活の介助・見守り
- 機能訓練
それぞれについて以下で解説します。
地域交流
地域交流は、地域のイベントへの参加や地域の小学生の登下校の見守りなどがあります。
これは、グループホームを利用する認知症高齢者が地域と関わることで、認知症高齢者が住み慣れた地域に貢献出来ていると実感を持つことに繋がります。
利用者が活発に活動することで、自立する能力の維持・増進も期待できます。
また、積極的に地域イベントに参加することで、地域の活性化にも一役買っています。
看取りサービス
グループホームには看護師の配置基準はないのですが、最近では、施設側が積極的に看護師を配置しています。
看護師の配置があるグループホームでは、看取りが可能です。
グループホームで最後まで暮らしたいと考えている方は、看護師の配置がある施設を探す必要があります。
日常生活の介助・見守り
グループホームに入居する利用者は、運動機能には問題が無いことが多く、日常生活は正常に送ることができます。
グループホームでは、利用者の出来る範囲で日常生活を見守り、難しいところを介助する方針を取っています。
そうすることで、利用者の日常生活の能力を落とすことがないことに加え、認知症のリハビリにも繋がっています。
機能訓練
前述したように、グループホームの入居者は、運動機能に問題が無いことが多いのですが、高齢のため、日に日に運動機能は衰えてきます。
したがって、運動機能の維持・増進を目的として、専門家により、日常的に機能訓練を行っています。
医療サービスは受けられる?
原則として、グループホームでは医療サービスの提供は行っていません。
グループホームには、看護師の配置基準が存在しないためです。
ただし、施設によって看護師を配置している場合もあります。
あるいは、訪問看護サービスを利用して、きめの細かい医療サービスを受けられる施設も存在します。
つまり医療サービスの範囲・質は、施設によって大きく差があります。
手厚い医療サービスを希望している場合は、入居前に確認・相談しておきましょう。
グループホームの入居条件とは?
ここまで、グループホームの特徴やサービスについてご紹介してきました。
しかし、グループホームには、入居するための条件がいくつかあります。
1点目は認知症と診断されていること。
グループホームは認知症の高齢者を対象とした施設なので、認知症と診断されてからの入居となります。
2点目は要支援2または要介護1以上の介護保険認定を受けていること。
要介護度は施設により、多少の違いはありますが、要介護認定を受けれない場合はグループホームを利用することができません。
もし、認知症を患っていて、グループホームを検討しているけれど上記の基準を満たしていない場合は、お住まいの自治体に相談する必要があります。
3点目はグループホームがある市区町村に住民票があること。
グループホームは地域密着型サービスなので、地域の高齢者へのサービスが目的となっています。
そのため、たとえ隣の地区に住んでいたとしても、入居することはできません。
以上3点のように、グループホームには、入居条件があります。
しかし、この入居条件によって、地域の認知症高齢者が効果的に支援を受けることができているのです。
グループホームの入居条件について詳しく知りたい方は下記の記事も併せてお読み下さい。
グループホームへの入居を検討している場合でも、実際のところ入居条件については知らないという方も多いと思います。また、グループホームには認知症向けのものと、障がい者向けのものがあるため、それぞれの入居条件の違いについて知りたい方も多いのでは[…]
グループホームはどんな部屋なの?
グループホームは原則個室となっています。
一部屋7.43㎡以上(和室の場合4.5畳以上)と定められています。
備え付けの家具はほとんどなく、自宅で使用してきた使い慣れた家具を持ち込むのが一般的です。
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グループホームの費用について
グループホームの費用は初期経費と月額で月々かかってくる経費があります。
初期費用
初期経費は施設によって入居一時金や保証金などが設定されています。
入居一時金は、一定期間内に退居した場合に、施設が定めた償却期間・償却率に基づいて計算され、返金されることがあります。
保証金は、賃貸住宅の敷金に当たる部分で、退居時の補修や清掃に当てられます。
月額費用
月々かかってくる費用は、利用者自身の生活費となります。
住居費や食費や介護に必要な雑費などが主となります。
施設によっては、退居時の相談援助費用や看取り介護加算などがある場合もあります。
グループホームの料金表
グループホームで月々にかかる費用の内訳の一例をご紹介します。
(1か月30日換算、要介護3、介護保険1割負担の場合)
費用の種類 | 費用 |
家賃 | 8万円 |
食費 | 4万9000円 |
その他費用 | 2万2000円 |
基本サービス費 | 2万4000円 |
サービス加算費 | 1000円 |
合計 | 17万6000円 |
このうち、基本サービス費、サービス加算は介護保険の適用で1割負担となっています。
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グループホームと老人ホームの料金表比較
まず、初期費用や月額費用については、施設により差はありますが下記の表の金額を目安にしていただければと思います。
グループホーム | 有料老人ホーム | |
初期費用 | 0円~百万程度 | 0円~数百万 |
月額費用 | 5万~25万 | 15万~50万 |
次にグループホームと有料老人ホームの月利用での料金プラン例も表で比較してみます。
月額料金 | 内訳(家賃) | 内訳(食費) | 内訳 | 内訳(水道光熱費) | |
グループホーム | ¥180,000 | ¥85,000 | ¥50,000 | ¥25,000 | ¥20,000 |
有料老人ホーム | ¥345,000 | ¥130,000 | ¥65,000 | ¥150,000 | ¥0 |
施設や料金プランにもよるので、あくまで参考までになりますが、上記表のような比較になります。
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グループホームで助成制度は使えるの?
介護保険には、特定入所者介護サービス費という、所得や資産が一定以下の方に対して、負担額を超えた居住費や食費の負担額が介護保険から支給される制度があります。
しかし、グループホームでは、この特定入所者介護サービス費を使うことが出来ないため、注意が必要です。
一方で、月々または年間の自己負担額が上限額を超えた場合には、その超えた額を介護保険から支払われる、高額介護サービスを利用することが出来ます。
自治体によっては、助成金が支給されることもあるので、グループホームのご利用を考えている方は、お住まいの自治体にご相談ください。
グループホームの入居の流れ
グループホームに入居するまでの大まかな流れをご紹介します。
グループホームへの入居を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
条件に合った施設を調べる
まずは、入居を希望する施設を探しましょう。
入居施設を探すときは、自分の条件にあっているかどうかを基準にしてください。
たとえば、以下のようなポイントに着目するのがおすすめです。
- 立地
- 利用料金
- 介護・医療サービスの内容
- 施設の運営方針
詳しい情報をチェックする場合は、希望施設からパンフレットを取り寄せましょう。
あるいは、HPなどで情報をチェックしたり、地域包括ケアセンターに相談したりするのも良い方法です。
見学
希望条件に合う施設が見つかったら、必ず見学にいきましょう。
施設の実際の雰囲気などは、自分の目で見て確かめないと分からないためです。
見学を行うときは必ず、前もって該当の施設に見学申請を出してください。
いきなり見学にいくと、断られたり、十分な案内を受けられなかったりする可能性があります。
また、見学は1カ所ではなく、2~3カ所行うのがおすすめです。
複数施設を比較することで、より自分にあった施設を絞り込みやすくなります。
提出書類の準備・提出
見学で納得のいく施設が見つかったら、入居手続きを始めましょう。
具体的には、提出書類の準備を行います。
提出すべき書類は、施設によって異なります。
どのような書類が必要なのかは、必ず施設に確認してください。
審査
入居希望書類を提出したら、入居審査を受けます。
審査の判断材料となるのは、提出した書類や、事前の面会での内容です。
もし希望施設での生活が難しいと判断された場合は、入居を断られる可能性もあります。
入居
審査に通過すると、入居となります。
具体的な入居時期は施設によって異なります。
また、自宅から施設に持ち込める荷物についても、施設によって対応が異なります。
入居手続きについては、事前に施設としっかり話し合ってください。
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グループホームを選ぶ際の注意点とは
グループホームには、看護師の配置が義務付けられていません。
施設によっては自主的に看護師を配置しているところもありますが、看護師がいない施設もまだまだ多くあります。
看護師の配置が無い施設には、日常的に医療ケアが必要な方の入所は難しいです。
また、認知症以外の病気やケガが原因で、日常的な医療ケアが必要となってしまった場合、グループホームを退所しなければいけないこともあります。
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グループホームのメリットとデメリットについて
グループホームにはメリットとデメリットがあります。
ここではグループホームのメリットとデメリットについて解説します。
グループホームのメリット
グループホームのメリットは以下の6点です。
- 利用者もスタッフも少人数でアットホーム
- 認知症の専門知識や技術を持ったスタッフがいるため、適切なケアを受けることが出来る
- 認知症の高齢者に合わせたレクリエーションが充実している
- 日常的な家事などを利用者自身がすることで、リハビリにも繋がる
- 他の介護施設に比べて比較的安く利用することができる
- 長年過ごしてきた地域でくらしつづけることができる
このように、グループホームは認知症の高齢者にとっては非常に過ごしやすい環境となっており、自宅で過ごすことが難しくなってきた方は一度検討してみる価値がある施設です。
グループホームのデメリット
反対に、グループホームのデメリットは以下の5点です。
- 住民票がある市区町村の施設しか利用できない
- 要支援2または要介護1以上の認定が必要
- 看護師がいない場合がある
- 少人数のため、相性が悪い利用者がいても調整が難しい
- 少人数制のため、即入居が難しい
地域の認知症の高齢者に寄り添った施設にするため、入居条件が整えられています。
また、まだグループホームの施設数も多くないため、入居までに時間がかかってしまうことも多いです。
認知症以外にも持病を抱えている方の入居も難しいので、そういった方は他の介護施設も合わせて検討したほうが良いでしょう。
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グループホームのまとめ
ここまで、グループホームの詳細をお伝えしてきました。
グループホームのまとめは以下になります。
- グループホームと有料老人ホームは施設の目的が違う
- 受けられるサービスは介護の介助・見守り・機能訓練
- 要支援2または要介護1以上の介護保険認定を受けていること、認知症と診断されていること、施設のある市区町村に住民票があること
- メリットは過ごしやすいこと、デメリットは入居までに時間がかかること
これらの情報が皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。