「パーキンソン病」という病名を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。
実はパーキンソン病と認知症には深い関係性があります。
今回はパーキンソン病と認知症の発症の関係をご紹介した上で、パーキンソン病認知症の原因や症状をご紹介します。
- パーキンソン病とはどんな病気?
- パーキンソン病と認知症の発症の関係は?
- レビー小体型認知症とパーキンソン病型認知症の違いは?
- パーキンソン病の治療法は?
- パーキンソン病型認知症の予防法は何か?
- 周りにパーキンソン病認知症の方がいる場合のケアは?
ぜひ最後までご覧ください。
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パーキンソン病とは?
パーキンソン病とは、脳に異常をきたすことで体の動きに障害が現われる病気です。
高齢者が発症することが多いですが、若者が発症することも珍しくありません。
具体的な症状は以下の症状です。
- 運動緩慢:素早い動きができなくなる(歩くのが遅くなる、腕の振りが狭くなるなど)
- 振戦:何もしていないときに手や足が震える
- 筋強剛:肩や膝などの筋肉が固くなり、スムーズに動かすことができなくなる
- 姿勢反射障害:身体のバランスが取れなくなり、よく転ぶようになる
パーキンソン病の進行速度はゆっくりです。
またパーキンソン病の初期では多少の震えや筋肉のこわばりがあっても、日常生活への影響はわずかです。
しかし、症状が進行していくと最終的には1人で立つことが困難になり、全面的に介護が必要になります。
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パーキンソン病と認知症の発症の関係
パーキンソン病の方とそうでない方を比べると、パーキンソン病の方の方が認知症になりやすいです。
素早い動作ができないことで動きが遅くなり、何もせず家に引きこもることが多くなることで認知症の合併が生じる場合があります。
そして、パーキンソン病に伴う認知症のことを、パーキンソン病認知症といいます。
パーキンソン病を発症してから認知症の症状が出るまでの期間が1年以上である場合は、パーキンソン病に伴う認知症と考えられます。
一方、パーキンソン症状が発現する前、または発現してから一年以内である場合はレビー小体型認知症である可能性が高いです。
パーキンソン病に伴う認知症は、パーキンソン病の運動症状が多くみられるのが特徴です。
また、他の認知症と同様に記憶力や理解力が低下し、物事を自分で処理することが困難になります。
しかし、認知症の症状でよくみられる幻覚や妄想などは軽度であることがほとんどです。
レビー小体型認知症とパーキンソン病認知症の違いは?
パーキンソン病認知症と似ている認知症として、「レビー小体型認知症」があります。
ここからは、レビー小体型認知症とパーキンソン病認知症の類似点と異なる点をご紹介します。
類似点
レビー小体型認知症はパーキンソン病に伴う認知症と同様に、筋肉が固くなり素早い動作が困難になります。
その他にも歩くときに足を引きずるようになったり、バランスが取れず転倒しやすくなります。
また、記憶力や判断力、理解力などが低下し、注意を払ったり物事を順序立てて効率的にこなすことが困難になります。
異なる点
まず、レビー小体型認知症とパーキンソン病認知症では診断基準に違いがあります。
パーキンソン病を発症してから認知症の発症が1年以内であれば、レビー小体型認知症と診断されます。
対してパーキンソン病を発症してから認知症の発症が1年以上であれば、パーキンソン病認知症と診断されます。
また、レビー小体型認知症では幻覚や妄想がよくみられます。
しかし、パーキンソン病認知症では幻覚や妄想がレビー小体型認知症より少ない、またはより軽度です。
レビー小体型認知症は、脳の外側全体に特殊なたんぱく質であるレビー小体が形成されます。
対してパーキンソン病認知症は、パーキンソン病の病変がみられる黒質という脳の部位にレビー小体が形成されます。
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パーキンソン病認知症について
ここからは、パーキンソン病認知症の原因や症状、治療法などパーキンソン病認知症についてご説明していきます。
パーキンソン病認知症の原因
私たち人間の体の動きをスムーズにしてくれるものが「ドパミン」です。
パーキンソン病は、ドパミン神経細胞が壊れ、ドパミンの生成量が減ることで発症します。
その結果、スムーズに体を動かすことが困難になります。
パーキンソン病によって体を思うように動かせないことで、何もしない時間が増え、寝たきりのような状態になります。
活動時間が減ることで記憶障害や、理解力・判断力の低下などに繋がり、パーキンソン病認知症を引き起こします。
パーキンソン病認知症の症状
パーキンソン病認知症では、パーキンソン病の症状と認知症の症状の両方が現れます。
まず、パーキンソン病の症状である手足の震えや、筋肉のこわばりから、運動機能が低下します。
運動機能が低下することで歩くスピードが遅くなり、歩幅が狭くなります。
そして、バランスを崩して転倒しやすくなります。
また、物忘れなどの記憶障害をはじめ、物事の順序立てをして実行することができなくなる遂行機能障害が現われます。
そして、パーキンソン病認知症では社会的認知機能の低下もみられ、人との関係を築くことにも影響が出ます。
相手の表情を見て感情や状況を読み取ることができず、人間関係が円滑にいかなくなる傾向があります。
パーキンソン病認知症の治療法
パーキンソン病と認知症、それぞれに現れる症状を改善させる治療が必要になります。
歩行訓練や簡単な作業などのリハビリを繰り返し行い、日常生活に必要な動作の維持に努めることが大切です。
また、食事や入浴、睡眠などのスケジュールを一定に保つことで、パーキンソン病認知症の方の記憶の手助けになります。
アルツハイマー病に使用される「リバスチグミン」という薬剤は、パーキンソン病認知症の治療薬として使われることがあります。
パーキンソン病の治療薬は、認知症を発症していてもパーキンソン病の症状を軽減することに役立ちます。
パーキンソン病認知症の予防策
パーキンソン病認知症では、脳にアプローチをかけることが予防になります。
脳に良い刺激を与えることができる動きを、パーキンソン病認知症の方が負担にならない程度で続けることが大切です。
たとえば、計算やパズルは考えながら行うので、脳のトレーニングになります。
その他にも、新聞や本などを実際に声にして読むことも脳への良い刺激となります。
また、どんな些細なことでも良いので毎日日記をつけることも予防策の1つです。
スラスラと早く書く必要はなく、ゆっくりでも良いので考えながら書くことに意味があります。
パーキンソン病認知症の方が興味のあることや、新しく挑戦してみたいと思うことがあれば日常生活に取り入れてあげましょう。
パーキンソン病認知症の方にとって負担になり過ぎず、毎日楽しく継続できるようなことが効果を期待できます。
パーキンソン病治療薬の副作用によって認知症になる?
パーキンソン病の治療は、薬物治療が中心となります。
使用される主な治療薬と副作用について、いくつか解説していきます。
<L-DOPA>
パーキンソン病による運動障害の改善に役立ちます。
長期間服用していると、薬の効果が弱くなったり、ジスキネジア(不随意運動)が見られるようになったりなど、副作用が出現することがあります。
<ドパミンアゴニスト>
L-DOPAの次に有効とされている治療薬で、パーキンソン病の様々な症状に対して用いられます。
副作用として、幻覚・妄想などの精神症状、吐き気や眠気が挙げられます。
<抗コリン剤>
脳内のドパミンを増やし、アセチルコリンとのバランスを整える働きがあります。
副作用に認知症、精神症状があり、最近の研究では認知症の高齢者の方は、使用を控えた方が良いという報告もあります。
いずれの治療薬も副作用がありますが、自己の判断で使用を中止することはやめましょう。
いきなり中止してしまうと、パーキンソン症状の悪化、意識障害などが起こる可能性があります。
薬の効果が弱くなった、副作用がつらいと感じた場合は、必ず主治医と相談するようにしてください。
周りにパーキンソン病に伴う認知症の方がいるとき
もしも周りにパーキンソン病認知症の方がいたら、一体何をするべきなのでしょうか。
ここからは、周りにパーキンソン病認知症の方がいるときにするべきことをご紹介します。
家族介護
パーキンソン病認知症の方の症状が進行することで、より1人での生活が困難になります。
たとえ軽度であったとしても、家族の支えが必要です。
家族で話し合いパーキンソン病認知症と向き合いながら、家族介護に努めることが大切です。
人と関わりを持つことが脳に刺激を与えるため、介護を通してたくさんコミュニケーションを取りましょう。
分からないことや悩みがあれば担当医に相談し、家族で協力し合いながら介護をしましょう。
介護サービス
たとえ家族が一生懸命介護を行っていたとしても、パーキンソン病認知症が進行することで家族介護に限界がくる場合もあります。
そのときは無理をせず、外部の介護サービスを利用しながら適切な介護に努めることが大切です。
まずは地域の役所へ行き、介護認定の相談をしましょう。
介護認定が下りれば訪問介護や訪問看護、デイサービスなどの介護サービスを受けることができます。
家族が負担を感じ体調不良を起こしては元も子もないので、万が一限界を感じた際は介護サービスを利用することを視野に入れてください。
パーキンソン病の認知症のまとめ
今回は、パーキンソン病認知症と認知症についてご紹介しました。
パーキンソン病と認知症についての要点を以下にまとめます。
- パーキンソン病とは、脳に異常をきたすことで体の動きに障害が起こる病気
- パーキンソン病により運動機能が低下することで活動時間が減り、結果的に認知症を合併する場合がある
- パーキンソン病認知症とレビー小体型認知症の症状は類似点がいくつかあるが、診断基準や脳の変化に違いがある
- パーキンソン病認知症の治療法にはリハビリや薬物療法がある
- 脳を刺激しアプローチをかけることがパーキンソン病認知症の予防に繋がる
- 周りにパーキンソン病認知症の方がいる場合は家族介護、または介護サービスを利用することが必要
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。