日常生活では買い物や睡眠など様々な動作が伴います。
近年、日常生活動作(ADL)の低下による身体機能や認知機能の低下など様々な問題が起きています。
そもそもADLとはどういうものなのでしょうか?
またADLが低下した際どのように対処すれば良いのでしょうか?
本記事ではADLの低下について以下の点を中心にご紹介します。
- そもそもADLとは
- ADL低下の対処方法
- ADLの評価方法
ADL低下について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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ADLとは
そもそもADLとはどのようなものなのでしょうか?
ADLの概要や種類について解説していきます。
ADLの概要
「ADL」とはActivities of Daily Livingの略称であり、日本語では「日常生活動作」といいます。
日常生活動作とは以下のような動作のことです。
- 食事
- 排せつ
- 入浴
- 更衣
- 家事
- 社会活動
- コミュニケーション
この動作がどの程度できているか、介護スタッフなどが判定する作業を「ADL評価」といい、リハビリの重要項目となっています。
二種類のADL
ADLには「BADL」「IADL」の2種類あります。
BADL
基本的日常生活動作を意味します。
「食事」「排せつ」「入浴」などの日常生活動作が該当します。
IADL
手段的日常生活動作を意味します。
「家事動作」「趣味活動」「社会活動」「コミュニケーション」などが該当します。
基本的な動作であるBADLと比べ、IADLは複雑な動作となります。
生きていくで中でIADLは重要な役割を果たしています。
質の高い生活を送るためにIADLの評価は重要となります。
ADLについて詳しく知りたい方は下記の記事も合わせてお読みください。
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ADLの低下について
ADLが低下する原因は様々です。
また、ADLの低下によって引き起こされる症状もあります。
ADLが低下する原因や、ADL低下による症状はどのようなものがあるのでしょうか?
それぞれ解説していきます。
ADLの低下の原因
ADL低下の原因は必ずしも病気だけではありません。
ADLが低下する主な原因を紹介します。
老化
老化による筋力低下によって、1日の活動量が減ることはADLを低下させる要因の1つになります。
老化による全身の筋力低下などによって、1日の活動量が減ります。
1日の活動量が減った結果、筋力低下を招くという悪循環が生まれ、ADLを低下させます。
生活習慣病
生活習慣病の重症化によって運動能力が低下することもADLの低下を招く1つの要因です。
偏った食事、喫煙、飲酒、ストレスが原因となり、高血圧、脂質異常症、糖尿病など生活習慣病になることがあります。
特に糖尿病の症状である歩行障害は、ADL低下の大きな原因となります。
神経疾患
パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経疾患も、大きくADLを低下させます。
神経疾患は完治が困難であり、医療介護の現場ではいかにADL能力を維持するかが課題となっています。
薬の副作用
強い薬の副作用でADLが低下する人もいます。
この場合は主治医に相談し、服薬内容・方法を見直すことでADL改善が期待出来ます。
認知症
認知症の様々な症状によってADLが低下します。
歩行障害や記憶障害などの症状によって日常生活が制限され、ADLが低下してしまいます。
関節疾患
関節疾患の頸部痛や腰痛症もADLを低下させます。
関節の痛みによって活動量が減少してしまうのが原因です。
ADLの低下による症状
ADLの各項目は互いに影響しあっています。
1つの動作ができなくなると、連鎖的に他のADL動作も低下していきます。
例えば、病気でご飯が食べられない場合、栄養不足で全身の筋力が低下してしまうと次第に1人で立ち上がれなくなります。
1人で立てなくなるとトイレに行くとき、お風呂に入るとき介助が必要になります。
はじめは「食事」項目1つだけのADL低下でも、「排せつ動作」「入浴動作」など他のADL低下につながり、日常生活全体に支障が出ます。
ADL低下の対処法
ADLが低下した際の対処方法にはどのようなものがあるのでしょうか?
具体的な対処方法を紹介します。
介護し過ぎない
介護のしすぎには注意しましょう。
要介護者の能力以上の動作の場合のみ、介護をするようにしましょう。
過度な介護は、その人自身の活動の機会を奪います。
「自分でできることは、自分でやってもらう」という心構えを持つことが重要です。
福祉用具の活用
ケアマネージャーに相談するなどして、福祉用具を活用することでADLの症状に対処できます。
歩行困難な場合に使われるものとして、車いすや杖が一般的ですが、他にも様々な歩行補助具があります。
手が思うように動かせず、食事や着替えが難しい人に向けた補助具も存在します。
自宅のリフォーム
住宅環境の見直しも、ADL低下予防に大きな効果があります。
段差の解消・手すりの設置・玄関先にスロープを作るなど、運動機能に合わせた環境を提供することで、ADLの維持・改善ができます。
ADLを高めるための方法
ADLが低下した際に高める方法としてどのようなものがあるのでしょうか?
ADLを高めるための方法をご紹介します。
運動
運動によって1日の活動量を増やすことでADLを高めることができます。
運動の習慣をつけることで、身体機能維持・生活習慣病予防などの効果があります。
バランスの良い食事
健康を維持するためには、バランスの取れた食事も欠かせません。
栄養に偏りのない、健康的な食習慣を維持することが大切です。
趣味を楽しむ
趣味は人それぞれですが、ADLを高めることに効果的です。
例えば読書は認知機能改善、近所の散歩は運動機能維持などの効果が期待できます。
リハビリテーション
理学療法士などが行うリハビリテーションの機能訓練によってADLを維持することができます。
専門職の方による機能訓練は身体機能を維持する上で非常に重要な役割を担っています。
ADLの評価方法
ADLの低下はどのように評価するのでしょうか?
ADLの具体的な評価方法をご紹介します。
Barthel Index
Barthel Indexでは、食事・移動・整容・トイレなどの全10項目で評価します。
それぞれの項目に0点、5点、10点などの段階があり、点数によってADLを評価する仕組みです。
FIM
FIMは運動項目と認知項目に分けられており、全18項目になります。
Barthel Indexと同じようにそれぞれの項目に1点〜7点などの段階があり、点数によってADLを評価する仕組みです。
Barthel Indexと比較すると評価にかかる時間は長いのも特徴です。
Lawtonの尺度
女性は家事・買い物・洗濯・金銭管理など全8項目に回答してもらいます。
男性は電話の使用・買い物など全5項目について回答してもらう形式です。
対象者は高齢者となっています。
老研式活動能力指標
手段的自立・知的能動性・社会的役割を評価する形式です。
バスを利用できるか、本を読めるか、友達の家を訪ねることがあるかなどの具体的な評価項目が多いです。
要支援度・要介護度とは
ADLの低下によって支援や介護が必要になる場合があります。
要支援・要介護の定義についてそれぞれご紹介します。
要支援
要支援とは入浴、排せつ、食事等の日常生活における基本的な動作について、悪化の防止に対する支援を要すると見込まれる状態です。
つまり、基本的な日常生活の動作を1人で行うことが可能であるが、部分的なサポートが必要である方を意味します。
要介護
要介護とは入浴、排せつ、食事等の日常生活における基本的な動作について、常時介護を要すると見込まれる状態です。
1人では生活困難な方を意味します。
健康診断とADL評価の違い
ADL評価は「どのくらい生活動作ができるか、しているか」を判定します。
一方、健康診断では血圧測定や内臓機能の検査、レントゲン撮影など「病気の早期発見、予防」を目的に行われます。
どちらも定期的な評価・診断が必要なものですが、そもそもの目的や内容に違いがあります。
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ADL低下まとめ
今回はADLの低下についてご紹介しました。
ADLの低下についての要点を以下にまとめます。
- ADLとは日常生活動作のこと
- ADLは老化や認知症などが原因で低下する
- ADLの対処法として、過度な介護をしないように注意する
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。