マグネシウムはさまざまな体内機能にかかわる重要なミネラルです。
積極的に摂取したい栄養素ではありますが、果たして取りすぎの心配はないのでしょうか。
本記事では、マグネシウムの取りすぎによる症状について、以下の点を中心にご紹介します。
- マグネシウムは体内でどのような働きをするのか
- マグネシウムの取りすぎによる健康被害
- 高マグネシウム血症の原因と症状
マグネシウムの取りすぎによる症状について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
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マグネシウムとは?
マグネシウムはミネラルの1種です。
ヒトの体内に存在するマグネシウムの約6割は骨に含まれます。
残りの4割を含むのは筋肉・脳・神経などです。
マグネシウムの主な働きは、骨や歯を丈夫にすることです。
その他、血圧のコントロールや筋肉の収縮、血栓を防止する作用などもあります。
さらにマグネシウムには、体内に存在する300以上の酵素の働きをサポートする作用もあります。
多くの体内機能にかかわる栄養素であるため、マグネシウムが不足すると身体にはさまざまな不調があらわれます。
代表的なのは骨粗しょう症などの骨トラブルの他、動脈硬化・高血圧・心筋梗塞・糖尿病などです。
あるいは筋肉・心臓のけいれんなどを引き起こすこともあります。
ただし、マグネシウムは取りすぎるのもよくありません。
厚生労働省は、1日あたりの摂取目安量を以下のように定めています。
【マグネシウムの食事摂取基準】
男性(mg) | 女性(mg) | |||
推定平均必要量 | 推奨量 | 推定平均必要量 | 推奨量 | |
1~2(歳) | 60 | 70 | 60 | 70 |
3~5(歳) | 80 | 100 | 80 | 100 |
6~7(歳) | 110 | 130 | 110 | 130 |
8~9(歳) | 140 | 170 | 140 | 160 |
10~11(歳) | 180 | 210 | 180 | 220 |
12~14(歳) | 250 | 290 | 240 | 290 |
15~17(歳) | 300 | 360 | 260 | 310 |
18~29(歳) | 280 | 340 | 230 | 270 |
30~49(歳) | 310 | 370 | 240 | 290 |
50~64(歳) | 310 | 370 | 240 | 290 |
65~74(歳) | 290 | 350 | 230 | 280 |
75以上(歳) | 270 | 320 | 220 | 260 |
妊婦(付加量) | – | – | +30 | +40 |
授乳婦(付加量) | – | – | +0 | +0 |
出典:厚生労働省【1―7 ミネラル】
推定平均必要量は、各年代のうち約半数の方が必要量を満たせる量です。
対して目安量は、各年代のほぼすべての方が必要量を満たせる量です。
マグネシウムの実際の摂取目安量は、体重・運動量などによって個人差があります。
成人・高齢者の推定平均必要量は、4.5mg/kg 体重/日です。
つまり体重1kgにつき1日4.5mgのマグネシウムが必要です。
なお、厚生労働省が発表している数値は、4.5mg/kg 体重/日に特殊な係数をかけて計算されています。
マグネシウムが豊富に含まれる食材について、以下の記事で詳しく解説しているので、興味のある方は併せてお読みください。
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マグネシウムを取りすぎるとどうなる?
マグネシウムの取りすぎは下痢・軟便・腹痛などの健康被害を招くことがあります。
便秘薬を常用している方や腎臓に障害を抱えている方は注意が必要です。
高マグネシウム血症では、吐き気・嘔吐・食欲不振、めまい・ふらつき、低血圧、不整脈、呼吸障害、意識障害といった症状が現れます。
下痢が起きる理由は、マグネシウムに水分を抱える性質があるためです。さらにマグネシウムには腸を刺激する作用があるのも、下痢・軟便の原因の1つです。
下記の種類のマグネシウムは、下痢などの症状を引き起こしやすいです。
- 炭酸マグネシウム
- 塩化マグネシウム
- グルコン酸マグネシウムおよび酸化マグネシウム
思わぬ下痢などを予防するためにも、マグネシウムの取りすぎには十分に注意しましょう。
しかし実際のところ、マグネシウムを取りすぎることは稀です。
特に食事からの摂取であれば、マグネシウムを取りすぎることはほとんどありません。
理由は、体内で余ったマグネシウムは尿・便として体外に排出されるためです。
実際に、食品からのマグネシウムの取りすぎによる健康被害は特に報告されていません。
そのため厚生労働省のマグネシウムの食事摂取基準でも、1日の摂取量の上限値は定められていません。
ただし、医薬品やサプリメントはマグネシウムの取りすぎにつながる場合があります。
医薬品やサプリメントは、食品と比べると一度に大量のマグネシウムを摂取できるためです。
医薬品では酸化マグネシウム剤が代表的です。
便秘薬として広く利用されており、高齢者や便秘症患者に処方されることもしばしばです。
たまに服用すれば問題ありませんが、慢性的な服用は取りすぎのリスクを上昇させます。
サプリメントや便秘薬によるマグネシウムの取りすぎが気になる場合は、医師や薬剤師に相談してください。
腎臓に障害を抱えている方も、マグネシウムの取りすぎに注意が必要です。
腎機能が低下している方は、マグネシウムの体外への排出がうまく行われないためです。
結果、体内に過剰なマグネシウムが蓄積されるため、重大な健康被害があらわれることがあります。
マグネシウムの取りすぎによる重大な健康被害は、高マグネシウム血症が代表的です。
具体的な特徴・症状などは、次の項目でご紹介します。
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高マグネシウム血症の症状
高マグネシウム血症は、血中のマグネシウム濃度が異常に高い状態です。
具体的な症状には以下があります。
【高マグネシウム血症の主な症状】
- 吐き気・嘔吐・食欲不振
- めまい・ふらつき
- 低血圧
- 不整脈・脈が遅くなる
- 呼吸障害
- 意識障害
高マグネシウム血症の初期症状は、吐き気・嘔吐・倦怠感などです。
ただし、軽度であれば初期症状があらわれない場合もしばしばです。
症状が重症化すると、次に吐き気・めまい・不整脈などが起こります。
また、血圧が極端に低くなることで意識障害や失神などが起こるケースもあります。
さらに症状を放置すると、呼吸障害などに発展し、最悪の場合は死に至ります。
高マグネシウム血症を起こしやすい方
高マグネシウム血症を起こしやすいのは腎不全などの腎臓障害のある方です。
マグネシウムは通常であれば、余剰分は尿・便と一緒に排出されます。
しかし腎臓障害のある方は、毒素を尿として排出する仕組みが弱まっています。
そのため、余分なマグネシウムを体外に排出できずに、体内に過剰に蓄積されるおそれがあります。
高マグネシウム血症を防ぐためにも、腎臓障害がある方はマグネシウムが豊富な食品やマグネシウム製剤の服用は控えましょう。
高マグネシウム血症の原因
もう1つ、高マグネシウム血症の原因になるものがあります。
便秘薬として広く利用されている酸化マグネシウム製剤です。
健康な方がたまに便秘薬を服用する程度であれば、高マグネシウム血症になることはほとんどありません。
しかし服用期間が長くなるにつれ、体内にはマグネシウムが少しずつ蓄積されます。
結果、健康な方でも高マグネシウム血症を発症するおそれがあります。
高齢者や腎臓障害のある方は、健常者よりも酸化マグネシウム製剤による高マグネシウム血症のリスクは高くなります。
理由は、腎臓機能の低下によって、マグネシウムを排出する力が弱まっているためです。
なお、以下のような方も高マグネシウム血症のリスクが高まります。
- 心臓疾患がある方
- 消化器官の疾患や寄生虫疾患がある方
- 糖尿病の方
- 甲状腺機能低下症の方
心当たりのある方は、酸化マグネシウム製剤の服用は避けましょう。
服用を希望する場合は、まず医師や薬剤師への相談が望まれます。
同じく健常者の方であっても、便秘薬によってなんらかの不調を感じた場合はすぐに医療機関を受診してください。
なお、やむを得ず便秘薬を長期服用する場合は、定期的に血液検査を受けましょう。
こまめに血清マグネシウム濃度を図ることで、高マグネシウム血症の発症を予防できます。
マグネシウムと医薬品の相互作用
マグネシウムの過剰摂取による副作用・健康被害のリスクは極めて低いです。
しかし、健康被害がまったくないわけではないため、取りすぎにはくれぐれも注意しましょう。
また、マグネシウムは特定の医薬品に大きな影響を受けることがあります。
影響とは、たとえば、副作用や吸収阻害などがあります。
マグネシウムが悪影響を与えやすい医薬品や、マグネシウムが不足しやすくなる医薬品について解説します。
ビスホスホネート
ビスホスホネートは骨粗しょう症の治療薬です。
マグネシウムを一緒に摂取すると、ビスホスホネートの成分の吸収率が低下します。
理由は、成分がマグネシウムなどのミネラル類と結合しやすいためです。
マグネシウムと結合した薬成分は、身体に吸収されることなく尿や便として排出されてしまいます。
ビスホスホネートが処方されている方は、マグネシウムが豊富な食品やサプリメントの摂取は控えましょう。
また、薬を飲むときの水にも注意してください。
硬水などはミネラル分が豊富なため、薬成分の吸収を阻害することがあります。
骨粗しょう症の薬を飲むときは、ミネラルウォーターなどは避けましょう。
抗菌薬
抗菌薬は感染症治療に用いられます。
たとえば中耳炎や膀胱炎などの治療薬が代表的です。
抗菌薬とマグネシウムのサプリメントなどを同時に服用すると、薬成分の吸収が妨げられます。
なお、服用時間をずらせば、薬の吸収に支障はでません。
マグネシウムのサプリメントなどは、抗菌薬の服用後1~2時間ほど経ってから服用してください。
ミネラルウォーターでの抗菌薬の服用は控えましょう。
利尿剤
利尿剤は、排尿を促す医薬品です。
心不全患者などのむくみ症状の改善に用いられることもあります。
一部の利尿剤には、尿中のマグネシウム量を増やす作用があります。
つまり体内のマグネシウムを過剰に排出するため、低マグネシウム血症を引き起こすことがあります。
低マグネシウム血症は血中のマグネシウム濃度が極端に低い状態です。
主な症状には吐き気・けいれん・眠気・人格の変化などがあります。
消化器系の治療薬
消化器系の治療薬はマグネシウムの吸収を阻害するため、低マグネシウム血症を引き起こすことがあります。
代表的な医薬品には、消化性潰瘍や逆流性食道炎の治療薬があります。
亜鉛サプリメント
亜鉛はマグネシウムの吸収を阻害することがあります。
少量ならば問題はありませんが、サプリメントなどを服用する場合は、マグネシウム不足にならないよう注意しましょう。
マグネシウム不足について、以下の記事でさらに詳しく解説しているので、興味のある方は併せてお読みください。
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マグネシウムの取りすぎによる症状のまとめ
ここまでマグネシウムの取りすぎによる症状についてお伝えしてきました。
マグネシウムの取りすぎによる症状の要点を以下にまとめます。
- マグネシウムは丈夫な骨作りや血圧・筋肉のコントロールなどに欠かせない栄養素
- マグネシウムの取りすぎによる症状は下痢・軟便が一般的だが、起こる確率は低い
- 高マグネシウム血症は便秘薬の服用によって起こることがあり、主な症状には吐き気・めまいのほか、不整脈や意識障害などがある
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。