難病として知られているalsですが、どのような病気なのか、一般の方々には浸透しているとはいえないのが現状です。
alsは何が原因で発症し、どういった経過をたどるのでしょうか。
そして現在の医療による治療法にはどのようなものがあるのでしょうか。
今回はalsについて、以下の点を中心に解説していきます。
- 症状の特徴、初期症状について
- als発症原因について
- 行われている治療について
alsについて理解するためにも、ご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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alsとは?
alsとは筋委縮性側索硬化症のことを指します。
身体を動かすための脳の運動神経(運動ニューロン)の障害によって、身体の運動機能に影響を及ぼす進行性の神経疾患です。
10万人に1〜2.5人が発症し、男女比1.2~1.3:1で男性に多いといわれています。
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alsの症状と特徴
alsの症状にはどのような特徴があるのか解説していきます。
alsの主な症状
alsは上位運動ニューロン障害と下位運動ニューロン障害が、選択的にかつ進行性に変性・消失していきます。
そのため経過は多様ですが、主な症状として以下が挙げられます。
- 筋力低下
- 筋萎縮
- 嚥下障害
- 呼吸障害
- 舌運動麻痺
- 構音障害など
- 筋委縮による鷲手・猿手
- 筋力低下による下垂足・鶏歩
上位運動ニューロンの障害では、意思に反して泣いたり笑ったりする症状(強制号泣・強制失笑)も出現することがあります。
alsの特徴
体の一部に違和感を感じることから始まり、時間の経過によって次第に体全体に広がっていくのが特徴です。
症状の進行は止まらず、最終的には自分の意思で体を動かすことができなくなります。
そして呼吸筋の機能低下から呼吸不全を引き起こします。
また、初期の症状をみると他の病気の可能性もあり、なかなか早期には判断できない場合もあります。
【鑑別診断】
- 末梢神経疾患(多巣性運動ニューロパチーなど)
- 筋疾患(筋ジストロフィーなど)
- 上位運動ニューロン障害のみを示す変性疾患(脊髄性進行性筋萎縮症など)
- 下肢運動ニューロン障害のみを示す変性疾患(脊髄性進行性筋萎縮症など)
※画像はイメージです。PR ※CLINICFORの情報提供元CLINICFORAGAは疾患であるため、必要な治療を施さなければ治すことはできません。さらに、AGAは進行性の脱毛症のため、できるだけ早く治療を始めないと手遅れになっ[…]
alsの初期症状
alsは初期症状が出る部位によって、3つに分類されます。
- 普通型
- 進行性球麻痺型
- 偽多発神経炎型
普通型
上肢の筋力低下・筋委縮から発症し、下肢は痙縮を示します。
「上肢型」とも呼ばれ、初期症状による病型分類では最も多いタイプです。
進行性球麻痺型
- 舌の萎縮や運動麻痺
- 構音障害
- 嚥下障害
など、球麻痺症状を初期症状とする型のことをいいます。
偽多発神経炎型
偽多発神経炎型は、下肢の筋力低下・筋委縮から発症するものであり「下肢型」とも呼ばれています。
早期から下位運動ニューロンが障害され、歩行障害が見られるのが特徴です。
他にも、
- 呼吸筋麻痺が初期に現れるもの
- 体幹の筋力低下が初期症状として出現するケース
- 複数の型が合わさったケース
などもあります。
alsのあらわれにくい4つの症状
alsは眼球運動や膀胱直腸機能、感覚機能、視力や聴覚などは障害されずに、末期まで保たれる場合が多いです。
理由として、alsで障害されるのは運動神経です。
脳や脊髄などの中枢神経系の機能は損なわれないことが挙げられます。
この現れにくい症状をalsの4大陰性徴候といいます。
眼球運動障害
眼球運動障害は起こりにくいとされます。
末期でも視線や眼球の動きを使ったコミュニケーションを取り入れることが可能です。
しかし人工呼吸器による延命では、末期には眼球運動もできなくなり意思疎通が困難になります。
膀胱直腸障害
肛門括約筋の機能は維持されるため、失禁状態にはなりにくく、尿意・便意も感じられます。
感覚障害
感覚と知能は保たれるため、今自分がどのような状況なのかを理解することができます。
ベッド上で寝たきりの状態でも、音楽を聞いたり映画鑑賞をしたりするals患者の人達もいます。
床ずれ
alsには、寝たきりになっても床ずれ(褥瘡(じょくそう))が作られにくい、という特徴もあります。
理由としては、
- 皮下組織の変化によるもの
- 感覚が保たれているので体位変換をお願いすることが多いため
など様々考えられています。
alsの原因は不明
alsは1869年に神経病学者によって発見されました。
しかし、発症の原因やメカニズムはいまだに詳しく解明されていません。
- 神経の老化との関連
- 興奮性アミノ酸の代謝異常
- フリーラジカルとの関係性
などを指摘する声もありますが、決定的な証拠がないのが実情です。
alsのほとんどは遺伝性のないものですが、約5%は家族歴に関連したものです。
関連したものは家族性筋萎縮性側索硬化症(家族als)と呼ばれています。
家族alsでは、スーパーオキシド・ジスムターゼ(SOD1)という酵素の遺伝子に、異常が起こっていることが分かっています。
ほかにも原因となる遺伝子が見つかっており研究が進んでいます。 alsはかつて、原因も治療法も分からない難病といわれていました。ハッキリした原因はまだ特定されていませんが、有力な仮説がいくつか発見されています。果たしてalsの原因とはどのようなものなのでしょうか。本記事ではalsの原因について[…]
alsの治療法
現在の医療では根本的な治療はできないため、症状に応じた対症療法を行います。
主に薬物療法とリハビリテーションを行いalsの症状進行を遅らせます。
どちらのアプローチも、病期や重症度をしっかり把握することが重要です。
薬剤治療
薬物療法では、病気の進行を遅らせる作用のある、リルゾールという内服薬を昔から用いていました。
2015年にはエダラボンという点滴薬も承認され、少しずつですが治療の選択肢が広がってきています。
不安症状や抑うつが見られた時には安定剤を使用したり、痛みに対して鎮痛剤を使用することもあります。
リハビリ
alsにおけるリハビリは、機能改善よりも機能の維持を目的に行われます。
ほかにも筋肉や関節の痛みに対する対症療法を行い、症状を軽くしていくことが重要です。
必要に応じて補助具やロボットスーツを使ったリハビリも保険診療で認められています。
過度なリハビリは症状の悪化につながり、逆に負荷が少なすぎると廃用症状を引き起こしてしまいます。
従って負荷バランスを考えたリハビリテーションが必要です。
運動療法だけではなく、ADL(日常生活活動)にも配慮したものです。
alsは進行が早い難病
alsは症状進行が早い病気であり、発症から死亡までの平均期間は3.5年といわれています。
球麻痺型は特に症状進行のスピードが早く、発症から3か月以内に死亡する例もあります。
しかし正確な調査はなく、症状には個人差があるため一様ではありません。
人工呼吸器をつけず10年以上生存した例もあります。
海外では地域医療など充実したサポート体制により、合併症が改善しQOLが向上したケースも報告されています。
一人ひとりに合わせた医療・介護の提供が、alsの予後に大きく関わってくるのです。
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alsの症状のまとめ
ここまでalsについて、症状や特徴、原因、治療方法などについてご紹介してきました。
本記事のポイントをおさらいすると以下の通りです。
- alsは筋力低下・筋萎縮を主症状とする、進行性の神経疾患である
- 原因は不明だが、影響する遺伝子については研究が進んできている
- 進行を遅らせることを目的として、薬物療法・リハビリテーションが行われる
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。