ALSを発症すると力が入らなくなり、思うように体が動かなくなります。
また症状が進行すると、食べ物を飲み込むことも難しくなっていきます。
そもそもALSとはどのような病気なのでしょうか?
ALSが進行していくと、どのような症状が発症するのでしょう?
本記事ではALSの原因と食べ物への影響について、以下の点を中心にご紹介します。
- ALSの症状について
- ALSの原因について
- ALSの症状の進行について
- ALS患者の食事について
後半には、ALSと診断されるまでに時間がかかる理由も紹介しています。
ぜひ最後までお読みください。
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ALSとは
ALS(筋萎縮性側索硬化症)とは、筋肉を動かす神経(運動ニューロン)が原因で力が入らなくなる難病です。
運動ニューロンに障害を受けることで、手足やのど、舌の筋肉、呼吸に関わる筋肉など、全身の筋肉が萎縮し、だんだんと力が弱くなっていきます。
最初の症状は人によって異なりますが、いずれにしても最後には以下のような状態になります。
- 食べ物を飲み込めなくなる
- 歩けなくなる
- 呼吸不全になる
- 全身の筋肉が動かなくなる
一方で、視力や聴力などの感覚機能や消化器官などに関わる内臓機能などは、基本的に正常に動くことが特徴です。
ALSを発症する方は人口10万人に1.1~2.5人の比率です。
男性のほうが女性より1.3~1.4倍多くみられます。
なお平均寿命が伸びるに伴い、ALSを発症する方は増加傾向にあるようです。
ALSを発症する年齢は中年以降の方に多く、最も多い年代は60代~70代です。
また、まれに若年層での発症も見られます。
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ALS発症の原因はあるの?
ALSの発症の原因はわかっていません。
しかし、これまでの研究でいくつかの説が提唱されています。
ここでは4つの説について紹介します。
- 遺伝子異常
- 環境要因
- 神経伝達物質の過剰放出
- 神経栄養因子の不足
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
遺伝子異常
ALSの多くは遺伝しません。
ただしALS全体の5%は、家族内で発症する家族性ALSです。
家族性ALSの一部は、スーパーオキシド・ジスムターゼ(SOD1)という酵素の遺伝子異常が原因といわれています。
環境要因
食生活やライフスタイルなどの環境が原因であるとする説です。
代表的な例としてグアム島のALS患者の減少があります。
第二次世界大戦後のグアム島は、食生活やライフスタイルが西欧風に変化しました。
その同時期からALSを発症する方は激減しています。
神経伝達物質の過剰放出
ALS患者は、グルタミン酸(神経伝達物質)が過剰になることで、運動ニューロンが死滅するという説です。
グルタミン酸が過剰になると、運動ニューロンの中にあるシナプス(神経情報を伝達する構造)が機能しなくなります。
シナプスが機能しないことにより、脳からの指示が運動ニューロンで停止します。
機能停止した運動ニューロンは、そのまま死滅してしまうのです。
神経栄養因子の不足
神経を成長させるための栄養成分や、細胞を回復させるために必要な栄養成分の不足が原因となる説です。
運動ニューロンが破壊されてALSにつながると考えられています。
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ALSは初めにどんな症状が出るの?
ALSの初期症状はさまざまで、人によって異なります。
初期症状のケースは、大きく次の3つに分かれます。
- 手や足に力が入りにくい
- 口や舌が動かしにくい
- 呼吸がしづらい
各症状について具体的に解説します。
手や足に力が入りにくい
手や足を使う作業や生活を行っているときに、以下のような違和感を感じることがあります。
- 細かい作業がしづらい
- 物が重たく感じる
- 物をつかみづらい
- 立ち上がりにくい
- 何もないところでつまずく
手足が動かしづらくなるのはALSの典型的な症状です。
ALS患者の約73%が手足の筋力低下で受診しています。
口や舌が動かしづらい
人と話すときや食事をしているときに、以下のような違和感を感じることがあります。
- ろれつが回りにくい
- ラ行やパ行が発音しにくい
- 食べ物や水を飲み込みづらい
声が出しづらくなる構音障害、食べ物がのみ込みづらい摂食嚥下障害などの症状がでてきます。
話しづらさや飲み込みづらさなど、口が動かしづらいことで受診する方は、ALS患者の約25%です。
呼吸がしづらい
呼吸に必要な筋肉が弱っていくことで発症します。
初期症状としてはまれですが、気管切開を行ったり人工呼吸器が必要になったりすることがあります。
食事にどう影響してくるの?
摂食嚥下障害を発症すると、食べ物を噛み砕いたり飲み込んだりすることが難しくなります。
基本的に摂食嚥下障害の症状は、
- 口が動かしにくくなる
- 食べ物を飲み込みにくくなる
- ムセて食べ物を飲み込めなくなる
の順で進行します。
ALSによる食道の障害は、比較的起こりにくいとされています。
食べ物を飲み込めて食道まで送り出せれば、胃まで送り出すことが可能です。
症状が進行して飲み込めなくなってきたら、食事を工夫したりサポートしたりすることで、改善できることがあります。
食べ方の工夫
料理する際に工夫をすることで、食べ物が飲み込みやすくなります。
また食べ方を工夫することでも、飲み込みやすくなることがあります。
以下に工夫できる例を列挙しました。
【料理の工夫】
- ミンチ肉をまとめて揚げた唐揚げ風にすることで、口の中で刻みやすくする
- あんかけ炒飯にすることで喉を通りやすくする
- 市販品の刻み食、ゼリー食、ペースト食などの既製品を利用する
- 食べ物のすべりをよくする「とろみあん」を利用する
【食事の工夫】
- 飲み込むときに少し上を向くことで、食べ物を喉に送りやすくする
- 飲み込む瞬間にあごを出す動作をすることで、喉の通りを良くする
リハビリテーションも有効
リハビリテーションに取り組むことで、摂食嚥下障害の進行を抑えることもできます。
食前にリハビリテーションを行うことで、食べ物を飲み込みやすくなります。
また、アイスマッサージで嚥下反射を促すことができたという報告もあるようです。
リハビリテーションの種類や効果は、患者の状態やALSの進行度合によって変わります。
医師のアドバイスのもとで行うようにしましょう。
ALSと診断されるまで
ALSと診断されるまでの基本的な流れは、発症→症状の自覚→受診→検査→診断結果です。
ALSの診断の際は、検査を通して運動ニューロンの障害があることを確認します。
そして、似たような症状を持つ病気も検討して判断します。
ALSの診断には以下のような検査が必要です。
- MRIやレントゲンなどの画像診断
- 筋電図検査や神経伝導検査などの電気生理学的検査
- 血液検査、髄液検査など
ALSなどの神経難病は、診断されるまでに時間を要することが多いです。
日本では、ALSを発症してから受診するまでに平均7ヶ月かかります。
また、発症から診断までは平均13ヶ月かかっています。
受診が遅れている主な理由は、症状を自覚してもALSと気づく方が少ないためです。
さらに症状を自覚しても、ALSだと疑う方はそう多くありません。
そのため複数の診療科を転々として、神経内科に辿り着く方が多いことも理由です。
ALSは発症してから進行が早いため、早期発見が大切です。
早期発見のためには体調の違和感に敏感になり、些細なことも医師に伝えるようにすることをおすすめします。
ALSの原因と食べ物への影響まとめ
ここまでALSの原因と食べ物への影響についてお伝えしてきました。
ALSの原因と食べ物への影響についてまとめると以下の通りです。
- ALSの症状は、運動ニューロンの障害により力が入らなくなる
- ALSの原因は遺伝子異常、環境要因などの説があるが、解明されていない
- ALSの初期症状はさまざまだが、いずれ手足に力が入らなくなり、さらに進行すると摂食嚥下障害や呼吸不全が起きる
- 摂食嚥下障害を発症したら、調理・食べ方の工夫やリハビリテーションが有効
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。