生活習慣病には糖尿病、高血圧、脂質異常症などがあります。
その中でも高血圧の治療をしている高齢者は多いのではないでしょうか?
高齢者の高血圧の食事療法には、どのようなものがあるのでしょう?
本記事では高血圧の高齢者の食事について以下の点を中心にご紹介します。
- 高血圧の高齢者の食事で気をつけることとは
- 高血圧の高齢者の外食や総菜を選ぶ際のポイント
- 高血圧の高齢者における食生活の重要性
高齢者の高血圧の食事について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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高血圧に悩む高齢者には食事療法がおすすめ
高齢者では、75歳以上の8割の方が高血圧を罹患しています。
その原因は、塩分の摂りすぎにあります。
日本食は、昔からみそ汁や漬物、煮物など塩分が多い食事です。
また、高齢になると味覚が衰えるため、味の濃いものを好む傾向にあります。
さらに調理することが面倒になり、総菜や外食が増えると自然に塩分の摂取量が多くなってしまいます。
ここで血圧の基本について確認しましょう。
収縮期血圧
心臓は収縮と拡張を繰り返し、体に血液を送っています。
血液を送り出すときに、心臓が縮んで血管に圧力がかかります。
これが最高血圧といわれる収縮期血圧です。
拡張期血圧
心臓が拡張したときに血管にかかる圧力が低下します。
これが最低血圧といわれる拡張期血圧です。
血圧の判定
日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン」の診断基準を以下の表にあらわします。
分類 | 診察室血圧 | 家庭血圧 | ||||
収縮期血圧(最高血圧) | 拡張期血圧(最低血圧) | 収縮期血圧(最高血圧) | 拡張期血圧(最低血圧) | |||
正常血圧 | <120 | かつ | <80 | <115 | かつ | <75 |
正常高値血圧 | 120~129 | かつ | <80 | 115~124 | かつ | <75 |
高値血圧 | 130~139 | かつ/または | 80~89 | 125~134 | かつ/または | 75~84 |
Ⅰ度高血圧 | 140~159 | かつ ⁄ または | 90~99 | 135~144 | かつ ⁄ または | 85~89 |
Ⅱ度高血圧 | 160~179 | かつ ⁄ または | 100~109 | 145~159 | かつ ⁄ または | 90~99 |
Ⅲ度高血圧 | ≧180 | かつ ⁄ または | ≧110 | ≧160 | かつ ⁄ または | ≧100 |
(孤立性)収縮期高血圧 | ≧140 | かつ | <90 | ≧135 | かつ | <85 |
出典:日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」
クリニックや病院で測る血圧を診察室血圧、自宅で測る血圧を家庭血圧といいます。家庭血圧の方が信頼性や再現性が高く、家庭血圧を優先して用いることが多いです。
ガイドラインによると、高血圧の段階をⅠ度・Ⅱ度・Ⅲ度に分けています。
段階を分けることで医師が治療内容を決定します。
正常高値血圧や高値血圧は正常よりやや高い数値で、高血圧の予備軍の段階です。
高血圧の手前で、日常の生活に注意する必要があります。
また(孤立性)収縮期高血圧は、収縮期血圧だけが高い状態です。
動脈硬化の症状が進んだ高齢者に多くみられます。
正常高値血圧や高値血圧のように正常値の範囲でも、脳卒中や心筋梗塞などを罹患するリスクはあります。
脳卒中を例に挙げると、降圧薬を服用していない正常血圧(収縮期血圧<120かつ拡張期血圧<80)の方が、一番発症率が低いです。
そのため、血圧は「収縮期血圧<120、拡張期血圧<80」までがよいとされています。
血圧が高い人は、どこまで血圧を下げるべきなのでしょうか。
以下で、降圧目標を表にあらわしています。
診療室血圧(mmHg) | 家庭血圧(mmHg) | |
75歳未満の成人 | < 130/80 | < 125/75 |
脳血管障害患者(両側頚動脈狭窄や脳主幹動脈閉塞なし) | ||
冠動脈疾患患者 | ||
抗血栓薬服用中 | ||
CKD患者(蛋白尿陽性)糖尿病患者 | ||
75歳以上の高齢者 | < 140/90 | < 135/85 |
脳血管障害患者(両側頚動脈狭窄や脳主幹動脈閉塞あり、または未評価) | ||
CKD患者(蛋白尿陰性) |
降圧目標の数値をしっかり確認したうえで、食習慣の乱れや食事のバランスを見直すことが大切です。
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高齢者向けの食事療法
高齢者向けの食事療法には、
- 塩分制限
- 適切なエネルギー摂取量を把握
- 食物繊維、ミネラルを摂る
などがあります。それぞれについて詳しく見ていきましょう。
塩分制限
国民健康・栄養調査報告の調べでは、1日の平均食塩摂取量は10.1gです。
また、厚生労働省が推奨している1日の食塩摂取目標量は、
男性8g以下
女性7g以下
としています。
高血圧症の方は、1日6g未満の摂取を目標にしましょう。
塩分量を少なくするために気を付けたいポイントは以下の通りです。
- 漬物・佃煮・干物・練り製品・ハムやベーコンなどの加工肉などは控える
- 汁物やめん類は1日1杯までとして、つゆは飲まない
- しょうゆやソースより酢やレモン、こしょう、ごまなどで味付けを工夫する
- 天然だしをしっかりとり、うま味成分を引き出す
- 寿司につけるしょうゆの量を少なくする
- 薄味に慣れるようにする
出典:厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要,P.23」
適切なエネルギー摂取量を把握
1日のエネルギー摂取量は、年齢や性別、基礎疾患などによって異なります。
基本は標準体重を計算し、1日の活動量に合わせてエネルギー摂取量を決めます。
高齢者の場合は、低栄養予防のためにもエネルギーをしっかりと補うことが大切です。
高齢者に必要な摂取カロリーを表にしてあります。
性別 | 男性に必要な摂取カロリー(kcal/日) | 女性に必要な摂取カロリー(kcal/日) | ||||
身体活動レベル | Ⅰ(低い) | Ⅱ(普通) | Ⅲ(高い) | Ⅰ(低い) | Ⅱ(普通) | Ⅲ(高い) |
65~74歳 | 2,050 | 2,400 | 2,750 | 1,550 | 1,850 | 2,100 |
75歳以上 | 1,800 | 2,100 | ― | 1,400 | 1,650 | ― |
出典:厚生労働省【日本における食塩摂取量の現状と減塩推進への課題】
身体活動レベルの基準は以下の通りです。
- Ⅰ(低い):自宅にいてあまり外出しない方、または高齢者施設で自立に近い状態で過ごしている方
- Ⅱ(普通):主に自立して生活している高齢者
- Ⅲ(高い):日頃から活発な運動習慣を行っている高齢者
食物繊維、ミネラルを摂る
野菜、海草、果物には、水溶性食物繊維やカリウムが多く含まれています。
食物繊維は塩分を排出する効果、カリウム・マグネシウム・カルシウムなどのミネラル類は血圧を下げる効果があります。
高血圧の方は、降圧効果が期待できるので積極的に摂るようにしましょう。
ただし果物には果糖も含まれているので、食べ過ぎには要注意です。
カルシウムは、ヨーグルトなどの乳製品に含まれています。
マグネシウムは、玄米やライ麦パンなどに含まれているので、摂取する習慣をつけましょう。
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外食・市販弁当・惣菜で気を付けるポイント
高齢者は、調理や食材の買い出しなどが面倒になりやすい傾向にあります。
そのため、食事は外食や惣菜で済ませる高齢者も多くなります。
しかし、外食や総菜は塩分過多になりやすく、味付けが濃いものが多いです。
高血圧の高齢者は、選び方や食べ方を工夫しましょう。
外食や総菜で気を付けるポイントは以下の通りです。
- タレや下味の濃いものは選ばない
- 減塩の調味料を使用する
- ハム、ソーセージなど加工肉はやめる
- 麺類は汁を飲まないようにする
- 付け合わせの漬物や佃煮など味の濃いものは残す
- 高血圧の方に考慮した宅配弁当を利用する
- しょうゆやソースなどのたれは、小皿に取って少量をつける
最近では、健康を意識して塩分を抑えた総菜や弁当もあります。
適切なものを選び、食事の塩分量には気をつけましょう。
高血圧の予防や治療には食生活が大切
高齢者の高血圧の予防には、食生活が大きく関わってきます。
高血圧は放置しているとさまざまな疾患リスクが上がりますが、健康診断で簡単に見つけられる病気ともいえます。
日頃の食事のバランスを見直し、できることから改めることが大切です。
その結果、高血圧の治療や予防につながります。
血圧が高めの高齢者は早めに受診して、治療を必要とする高血圧なのか医師に判断してもらいましょう。
また、高血圧の原因について知ることも大切です。
出典:厚生労働省e-ヘルスネット
高血圧のある高齢者の食事療法まとめ
今回は高齢者の食事の塩分についてや、高齢者向けの食事療法の情報を中心にお伝えしました。
要点を以下にまとめます。
- 高血圧の高齢者の食事では塩分を控える、ミネラル・食物繊維を摂るなど
- 高血圧の高齢者の外食や総菜を選ぶ際は、加工肉は避け汁物の汁は全て飲まないなど
- 高血圧の高齢者の食生活は、食事のバランスを整えることで高血圧の予防効果がある
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。