カルシウムは骨や歯の材料として知られています。
骨や歯が脆くなっていないかは外見だけではわかりません。
そのため、骨粗鬆症になっていないか不安になる方もいるでしょう。
では、健康で丈夫な骨や歯を保つために必要なカルシウム摂取量はどのくらいなのでしょうか。
本記事ではカルシウム摂取量の目安について以下の点を中心にご紹介します。
- 1日のカルシウム摂取量の目安は
- カルシウム不足が影響するのは骨や歯だけなのか
- カルシウムを無駄なく摂るために必要なこととは
カルシウム摂取量を把握して健康で丈夫な骨や歯で過ごすためにも参考にしていただけますと幸いです。
ぜひ、最後までお読みください。
栄養素について詳しく知りたい方は下記の記事を参考にしてください。
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カルシウムとは
カルシウムはミネラルの一種で体の中に一番多く存在します。
約99%が骨や歯に存在しており、残りの約1%は血液中や細胞に存在します。
骨や歯の材料となる以外にも神経伝達や筋肉を動かすためにも重要な働きをしています。
カルシウムの働きについて詳しく知りたい方は下記の記事を参考にしてください。
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カルシウム摂取量の目安
カルシウムは小腸で吸収されます。
しかし、食材に含まれるカルシウムが全て吸収されるわけではありません。
また、カルシウムは尿として排出されたりします。
日本人の平均的な吸収率や排泄量を考慮した上での推定平均必要量と推奨量は下記の表1を参照してください。
年齢や性別で推奨量は異なります。
12〜14歳は骨形成が最も盛んに起こる時期です。
そのため、必要量や推奨量が一番多くなっています。
お子様の成長にも重要な栄養素であるため6歳以降を表記しています。
過剰に摂取することによる健康への障害を防ぐための耐容上限量は18歳以上の全世代で2,500mg/日と定められています。
〈表1:カルシウム摂取量〉
年齢(歳) | 男性:推定平均必要量(mg/日) | 男性:推奨量(mg/日) | 女性:推定平均必要量(mg/日) | 女性:推奨量(mg/日) |
6~7 | 487 | 585 | 448 | 538 |
8~9 | 538 | 645 | 625 | 750 |
10~11 | 590 | 708 | 610 | 732 |
12~14 | 826 | 991 | 677 | 812 |
15~17 | 670 | 804 | 561 | 673 |
18~29 | 658 | 789 | 551 | 661 |
30~49 | 615 | 738 | 550 | 660 |
50~64 | 614 | 737 | 556 | 667 |
65~74 | 641 | 769 | 543 | 652 |
75以上 | 600 | 720 | 517 | 620 |
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カルシウムの不足・過剰摂取
カルシウムは体の中で一番多いミネラルです。
カルシウムは、以下のようなさまざまな働きをしています。
- 骨や歯の材料
- 細胞の分裂・分化
- 筋肉の収縮
- 神経興奮の抑制
- 血液凝固作用の促進
不足しても過剰に摂取しても体に影響を及ぼします。
カルシウムが不足すると骨や歯が脆くなることがよく知られています。
では、なぜ脆くなるのでしょうか。
また、カルシウム摂取を意識しすぎて摂りすぎるとどのような影響があるのでしょうか。
詳しくみていきましょう。
カルシウムが不足すると骨が弱くなる
カルシウム不足による症状や病気には以下のものがあります。
- 骨粗鬆症
- くる病・骨軟化症
- 心疾患
- 動脈硬化
- 高血圧症
- 認知障害
- テタニー症状(筋肉の痙攣)
- 骨の発育障害により成長に影響(小児)
カルシウムの99%が骨に存在しており、いわゆるカルシウムの貯蔵庫の役割をしています。
残りの1%は血液や細胞に分布して神経伝達や筋肉の収縮に関係しています。
血液や細胞のカルシウム濃度は一定範囲(8.5〜10.4mg/dl)に保たれています。
カルシウム濃度が低下すると、それを補おうとして骨吸収を行います。
また、骨は約3ヶ月の周期でつくり替えられています。
カルシウムが骨として沈着することを骨形成といい、骨が血液中に溶け出すことを骨吸収といいます。
骨粗鬆症
骨粗鬆症は骨形成より骨吸収が上回った状態によって、骨がスカスカになります。
成長期では骨形成が骨吸収を上回るため、カルシウム摂取量が不足していなければ骨量は増えます。
しかし、カルシウム摂取量が不足していると骨や歯の発育が障害されて成長が悪くなります。
子供の成長にカルシウムはとても重要になります。
女性は閉経後にエストロゲンという女性ホルモンの分泌が低下します。
エストロゲンには骨が溶け出すのを防ぐ働きがあります。
エストロゲンが低下することでカルシウムがどんどん溶け出してしまいます。
骨量が減少して骨粗鬆症になりやすくなります。
男性でも50歳頃から骨の形成より骨が溶け出す量が上回ります。
そのため、骨量が減少しやすくなります。
成人以降では骨量を増やすことは難しいです。
しかし、減ることを少しでも遅らせることはできるといわれています。
くる病・骨軟化症
骨粗鬆症以外に骨が弱くなる病気として、くる病・骨軟化症があります。
カルシウムが不足することで骨形成での石灰化がうまくできず、強度の低い骨ができてしまいます。
骨が成長しきってしまう前の小児で発症する場合を「くる病」といいます。
骨の成長が終わった成人以降で発症する場合を「骨軟化症」といいます。
くる病・骨軟化症はカルシウム以外にもビタミンDやリンも関係しています。
サプリなどを飲む場合は過剰摂取に注意
普段の食生活ではカルシウム摂取量が過剰になることは稀です。
栄養を意識するあまり、サプリメントなどで摂りすぎてしまわないように注意が必要です。
カルシウムを摂りすぎると高カルシウム血症を引き起こします。
高カルシウム血症の初期症状としては、
- 便秘
- 吐き気
- 嘔吐
- 腹痛
- 食欲不振
などがあります。
重度になると意識障害などを引き起こしてしまう可能性があります。
他にもカルシウム摂取量が過剰になると、
- 泌尿器系結石
- 前立腺がん
- 心血管障害
- 鉄や亜鉛の吸収障害
などの症状・病気を引き起こしてしまいます。
特にサプリメントを服用している方は、
- 腎結石
- 心血管障害
などのリスクが高くなるので注意が必要です。
18歳以上は過剰摂取にならないように耐容上限量が定められています。
17歳以下は十分な報告がないため定められてはいません。
しかし、成長期のお子様は他の栄養素のことも考えるとサプリメントではなく、バランスのよい食生活を心がけるようにしましょう。
不足しがちなカルシウムですが、摂りすぎてもいけないことがわかります。
サプリメントやカルシウムがプラスされている食品もあります。
しかし、1日のカルシウム摂取量を大幅に上回らないよう適度に摂っていく必要があります。
カルシウム不足について詳しく知りたい方は下記の記事を参考にしてください。
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カルシウムが豊富な食材は?
カルシウムが豊富に含まれる食材は以下の食材です。
- 牛乳・チーズ・ヨーグルトなどの乳製品
- しらすなどの骨ごと食べられる小魚
- 豆腐や納豆などの大豆製品
- モロヘイヤ
- 小松菜
- 昆布
- ひじき
特に乳製品は吸収率が他の食品と比べて高いです。
カルシウムを多く含む食品について詳しく知りたい方は下記の記事を参考にしてください。
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カルシウムを効率よく摂取するには
カルシウムは胃酸で溶かされ、ビタミンDの働きによって主に小腸で吸収されます。
そして、副甲状腺ホルモンや甲状腺ホルモンによって骨形成や骨吸収されます。
カルシウムは吸収率が悪く、単独で摂取するだけでは効率よく吸収されません。
吸収されなかった残りは排出されてしまいます。
カルシウム摂取量を十分満たしているのに、無駄にはしたくありませんよね。
効率よく吸収するために気をつけるべきことを説明します。
カルシウムは吸収率の悪い栄養素
カルシウムは吸収されにくい栄養素です。
成人では摂取した20〜30%しか吸収されないといわれています。
カルシウムの吸収を阻害する栄養素は以下の通りです。
- 過剰なリン
- カフェイン
- シュウ酸(ほうれん草などのあくに含まれる)
- フィチン酸(米ぬかや玄米に多く含まれる)
食品によっても吸収率は異なります。
カルシウム摂取量のうち牛乳などの乳製品は約40%、小魚は約30%、緑黄色野菜は約20%といわれています。
吸収率だけ見ると乳製品がトップです。
しかし、カルシウムが骨として利用されるまでにさまざまな栄養素の助けが必要です。
例えば小魚などに含まれるビタミンDや、緑黄色野菜に含まれるビタミンKも必要となります。
乳製品だけでなく、バランスよくいろいろな食品を摂取することが重要です。
また運動などをして骨にある程度の負荷をかけないと、骨をつくる細胞が働かず骨形成が活発になりません。
適度に運動を取り入れるようにしましょう。
ビタミンDと一緒に摂って吸収率UP
カルシウム摂取量が十分であっても、ビタミンDが不足していると吸収される量も少なくなります。
ビタミンDは小腸でカルシウムの吸収を促進します。
さらに、骨や歯への沈着を促進するため骨量を高める働きがあります。
ビタミンDを多く含む食品と一緒に摂ることでカルシウムの吸収率はよくなります。
また、ビタミンDは紫外線に当たることで体の中でつくることができます。
適度に屋外に出て日光を浴びることをおすすめします。
ビタミンDについて詳しく知りたい方は下記の記事を参考にしてください。
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カルシウムの吸収率を下げる「リン」に注意
リンはカルシウムとともに骨や歯を形成します。
しかし、過剰なリンは小腸でカルシウムとくっつくと吸収を阻害し体外に排泄させてしまいます。
理想的な比率(カルシウム:リン=1:1~1:2)であれば吸収が高まります。
リンは卵や肉、大豆製品に多く含まれています。
タンパク質などの栄養素のことも考えると肉や卵は摂取しないわけにもいきません。
気をつけたいのは、
- スナック菓子
- 冷凍食品
- インスタント食品
- 加工品に含まれる「リン酸」
です。
リン酸は食品添加物として使われることが多いです。
過剰なリンを摂取しないことが必要です。
スナック菓子や加工品を食べすぎないようにしたり、添加物フリーの食品を選ぶことを意識してみてください。
牛乳などの乳製品に含まれる、乳糖やカゼインホスホペプチド(CPP)はリンとカルシウムがくっついてしまうのを防いでくれます。
また、牛乳はカルシウムとリンのバランスが1:1であり吸収に理想的な食品といえます。
日本人はカルシウムが不足しがち
日本人のカルシウム摂取量は不足しがちであるといわれています。
国民栄養調査によるとカルシウム摂取量はどの世代をみても推奨量には足りていません。
〈カルシウム摂取量:年齢別平均値(mg/日)2019年〉
年齢(歳) | 男性摂取量 | 男性推奨量 | 女性摂取量 | 女性推奨量 |
7~14 | 676 | 600~1,000 | 594 | 550~800 |
15~19 | 504 | 800 | 454 | 650 |
20~29 | 462 | 800 | 408 | 650 |
30~39 | 395 | 750 | 406 | 650 |
40~49 | 442 | 750 | 441 | 650 |
50~59 | 471 | 750 | 472 | 650 |
60~69 | 533 | 750 | 539 | 650 |
70以上 | 572 | 700 | 544 | 600 |
出典:国立健康・栄養研究所【国民健康・栄養調査健康日本21】
その理由として以下のことが挙げられます。
- 食の欧米化により魚料理が減っている
- 和食には乳製品が少ない
- 日本の国土にカルシウム含有量が少なく飲料水や野菜に含まれるカルシウムが少ない
小児の時期は学校給食に牛乳が出てバランスのよい食事が提供されるためカルシウム摂取量が多くなっています。
しかし、働いている年代ではカルシウム摂取量が少ないことがわかります。
仕事が忙しく食生活が乱れやすいことが要因の1つであると考えられます。
インスタント麺や即席の食事ばかりでは栄養素は偏ってしまいます。
忙しくても、時間を見つけてバランスのよい食事を取り入れるようにしましょう。
毎朝、牛乳を飲む習慣をつけたり、間食にチーズや小魚などの簡単に摂取できるものをとりいれることも工夫の1つです。
少しでもカルシウム摂取量を増やしましょう。
男性より女性がカルシウム不足?
カルシウム摂取量の年代別の平均値(平成7年、平成27年)の記録です。
それぞれの性別で摂取量の少ない年齢層の1番と2番目に少ない年齢層の数値を赤字にしています
平成7年
年齢層(歳) | 男性(㎎) | 女性(㎎) |
20~29 | 532 | 509 |
30~39 | 558 | 528 |
40~49 | 568 | 558 |
50~59 | 635 | 624 |
60~69 | 634 | 606 |
70~79 | 585 | 539 |
平成27年
年齢層(歳) | 男性(㎎) | 女性(㎎) |
20~29 | 473 | 427 |
30~39 | 443 | 430 |
40~49 | 558 | 454 |
50~59 | 493 | 499 |
60~69 | 550 | 568 |
70~79 | 570 | 546 |
表を見比べると全体的に男性よりも女性のカルシウム摂取量が少ないです。
そして、男女共に若い年代になるほどカルシウム摂取量が少なくなります。
カルシウムの摂取量まとめ
ここまで、カルシウムの摂取量を中心にお伝えしてきました。
カルシウムの摂取量についての要点を以下にまとめます。
- カルシウム摂取量は650~800mg/日を目標に摂取する
- カルシウムは不足しがちな栄養素である
- カルシウム不足は筋肉の動きや神経伝達にも影響する
- カルシウムは吸収されにくく、ビタミンDなど他のミネラルやビタミンも一緒に摂る必要がある
これらの情報が少しでも皆様のお役にたてれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。