カリウムの過不足が起こることにより、体の機能に影響が出てきます。
特に腎臓の機能が落ちてカリウムが体に溜まると、命に関わることもあるので注意が必要です。
では、カリウムは体の中でどのような働きがあるのでしょうか?
また、なぜ腎臓が悪くなるとカリウムが溜まり体の機能に影響を与えるのでしょう?
今回は、カリウムと腎臓の関係について以下の点を中心に解説していきます。
- カリウムと腎臓の関係について
- カリウムの過不足により出てくる症状について
- 腎機能の低下の原因について
カリウムと腎臓の関係について学び、今後の健康維持の参考になれば幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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カリウムに関する腎臓の働き
カリウムは、ミネラルの一種で浸透圧を調節しています。
また、カリウムは神経の興奮や筋肉の収縮にも関わっています。
カリウムをたくさん体に入れても、特別なことがない限り体調に変化は起こりません。
なぜなら、体に不必要なカリウムは腎臓で排泄されるからです。
腎臓の機能が低下すると、尿が出なくなったりカリウムを体の外に出せなくなったりします。
そのため、カリウムを制限する必要があります。
また、カリウムが溜まってしまうと、浸透圧の調節がうまくできなくなってしまいます。
筋肉の収縮にも関わっているため、最悪の場合は心停止で急死してしまう可能性も否めません。
腎臓の機能が悪くなってしまったら、カリウムが含まれる食べ物をより慎重に食べる必要が出てきます。
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1日のカリウム摂取量
カリウムの摂取量は、その時々の時期に応じて目安量が変わります。
今回は乳児、成人、妊婦の3つの時期で見ていきましょう。
カリウムの必要摂取量は、厚生労働省で以下のように算出されています。
- 乳児:0~5カ月で400mg/日、6~11カ月で700mg/日
- 成人:男性2,500mg/日、女性2,000mg/日
- 妊婦:2,200mg/日
成人の場合は、高温環境ではカリウムの失われる量が増えると報告されています。
したがって、摂取量を増やす必要があります。
しかし、カリウムは通常の食事をしていれば、不足することはほとんどありません。
また、腎臓に疾患がなくサプリメントなどで追加していなければ、腎臓で十分に排泄できるため過剰摂取になることもないです。
腎臓の機能が十分にある人は、カリウム摂取に厳密になる必要はありません。
出典:厚生労働省【02_各論_1-7_ミネラル】
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カリウム過不足による症状
カリウムは普通に食事をしていれば、過不足することはありません。
しかし、まれに体内に過剰に溜まってしまったり、不足してしまったりすることがあります。
カリウムが過不足になった状況では、腎臓にどのような影響を与えるかを解説していきます。
低カリウム血症
カリウムの基準値は3.5〜5.0Eq/L以下となっています。
したがって低カリウム血症は、血液中のカリウムが3.5mEq/L以下になった状態です。
低カリウム血症の症状を以下にまとめました。
筋力低下 | 筋肉痛 |
悪心(おしん) | 嘔吐(おうと) |
便秘 | 痙攣(けいれん) |
四肢麻痺(まひ) | 自律神経失調 |
筋肉痙攣 | 呼吸筋麻痺 |
不整脈 | 麻痺性腸閉塞 |
低カリウム血症の原因としては以下の3つがあります。
- もともとのカリウム摂取量が少ない
- 下痢や多量の発汗でカリウムが外に出すぎてしまっている
- 血液中から細胞内にカリウムが取り込まれてしまっている
健康な状態であれば、めったに低カリウム血症になることはありません。
夏場で多量に汗をかいたり下痢で水分が奪われたりしたときは、カリウムなどのミネラルも摂ることで、低カリウム血症を防ぐことができます。
高カリウム血症
カリウムの基準値は3.5〜5.0Eq/Lです。
高カリウム血症の場合は5.5Eq/L以上となっています。
カリウムの値が7〜8Eq/L以上になると、心機能にも影響が出てきます。
高カリウム血症の症状は以下の通りです。
悪心 | 嘔吐 |
しびれ感 | 知覚過敏 |
脱力感 | 不整脈 |
高カリウム血症の原因としては、以下のようなものがあります。
- カリウムの摂りすぎ
- カリウムが細胞内から血液中に出ている
- 腎機能の低下によりカリウムの排出ができない
カリウムが体に多いと高カリウム血症になってしまいます。
適切な食事管理で、カリウムが過不足することのないようにしていくことが大切です。
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腎臓機能の低下原因
腎臓の機能の低下には、急性のものと慢性のものがあります。
急性腎不全と慢性腎不全が起きる原因と、それぞれの特徴は次の通りです。
低下原因 | 特徴 | |
急性腎不全 |
| 治ることもある |
慢性腎不全 | 糖尿病や高血圧の合併症など |
|
加齢によって腎機能が落ちてくることもあります。
腎臓の機能が低下する原因はいろいろとありますが、一度機能が低下すると治らないものがほとんどです。
しかも、腎臓は症状がなく機能が低下していきます。
浮腫や尿の出が悪くなったときには、すでにかなり悪化していることが多いです。
機能が低下しても、治療して良くなる方法が今の医療ではありません。
腎機能が低下した場合は、透析で腎臓の代わりに老廃物を取り除くか、悪性腫瘍などの病気の場合は腎移植するしかありません。
透析について
血液透析の場合は週3回、太い針を指し、半日以上かけて血液の中の老廃物を取り除きます。
かなり太い針なので、透析前に麻酔効果のあるテープを貼っておくくらいです。
仕事をしている人などは週に3日透析に通うことは難しいです。
そこで、腹膜を介して老廃物をろ過していく腹膜透析という方法もあります。
腹膜透析には、「CAPD」と「APD」の2種類があります。
腹膜透析は、CAPDでは1日4回透析液を入れ替えなくてはなりません。
APDでは自動腹膜灌流装置(サイクラー)を使って、夜寝ている間に透析液を自動的に交換します。
しかも、透析を始めたら体重管理にも気を付ける必要があります。
尿が出ないので、心臓に負担をかけないために、喉が渇いても十分な水分摂取ができません。
夏場であれば、氷を舐めてしのいでいくことを強いられることもあります。
食事について
腎不全になってしまうと、日常生活にもかなり不便をかけることになります。
ストレス環境のうえに、食事も低たんぱくで減塩のものを食べなければなりません。
あまりおいしくない食事を、ずっと食べ続けなければいけなくなるということです。
よって、今から食事などに気を付けて生活していく必要があります。
糖尿病や高血圧の方は、さらに食事制限がかかるので、今のうちにしっかり管理することが大切です。
腎臓の機能が低下してきたら、低タンパク質、高エネルギー食にすることをおすすめします。
塩分も控えて現在の腎臓の機能を維持していきましょう。
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カリウムが少ない料理を作る
カリウムは、水に流れ出る性質があります。
野菜を食べるときには、ゆでこぼした野菜を食べるのがおすすめです。
また生で食べる場合は5分ほど水にさらすことで、カリウムの摂取量を抑えることができます。
野菜のほとんどにカリウムが含まれています。
カリウムを体の中に取り入れないためには、調理前や調理中の工程で、いかに野菜の中から出すことができるかがポイントです。
以下に注意点をまとめます。
【調理する際の注意点】
- イモ類やカボチャは煮込んで食べることが多く、調理してもあまり減らすことができない。
炒めたりしても葉物野菜ほど水分が出ないため、野菜の中にカリウムが残ってしまう。 - キャベツやホウレンソウなどの葉物野菜は水分が出やすい。
汁物などに入れると野菜からカリウムが出て、その汁にカリウムが豊富に含まれる。
腎臓の機能が落ちてカリウムを摂りたくないときには、汁は残したほうがよい。 - 野菜から出た汁にはカリウムがたくさん含まれている。
野菜から出た汁は必ず捨てて、体に取り入れるカリウムを減らしたほうがよい。
腎臓病の現状
腎臓は「沈黙の臓器」といわれ、症状なく病気が進行していく臓器です。
症状が出たときには、すでにかなり進行しているというケースも少なくありません。
現在、慢性腎臓病は成人の8人に1人にあたる約1,300万人が患っているといわれています。
しかし医療現場では、慢性腎臓病を担うメディカルスタッフが不足しているのが現状です。また地域の医療機関との連携も十分とはいえません。
今後は、慢性腎臓病の基本的知識を持つメディカルスタッフを、一人でも多く増やすための人材育成が急がれます。
また、かかりつけ医や腎臓病療養指導士などと関連する療養指導士との連携が課題となってきます。
出典:厚生労働省【腎疾患対策検討会報告書 ~腎疾患対策の更なる推進を目指して~】
カリウムと腎臓まとめ
ここまで、カリウムと腎臓の関係についてお伝えしてきました。
カリウムと腎臓の関係の要点をまとめると以下のようになります。
- 血液内にあるカリウムは腎臓によって尿と一緒に外に出され、過不足なく調節される
- カリウムの過不足により出てくる症状には悪心・嘔吐、不整脈などがある
- 腎機能低下の原因は、下痢や出血などによる体液量の減少、糖尿病・高血圧による合併症など
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。