ストレスがたまると血便が出やすくなります。
しかし実は、ストレスが直接血便を引き起こすわけではありません。
それでは、ストレスと血便はどのようなかかわりがあるのでしょうか。
また、ストレスによって血便が出た場合はどのように対処すべきなのでしょうか。
本記事では、ストレスと血便について、以下の点を中心にご紹介します。
- 血便の原因はストレス?
- 血便や便潜血検査で陽性反応が出た場合に疑われる病気
- ストレスによる血便の改善方法
ストレスと血便について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
社会で生活していく上で、ストレスを完全に避けることは困難です。従って、正しくストレスと向き合っていくことが、人が健康的に暮らしていくためには大切です。今回はストレスについて、以下の点を中心に解説していきます。 ストレス症状[…]
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血便の原因はストレス?
血便とは便に血が混じることです。
一般的に、ストレスが多い方は血便が出やすいというイメージがあります。
しかし実際のところ、ストレスが直接血便を引き起こすことはありません。
ただしストレスが原因で何らかの疾患を発症した結果、血便に至ることはあります。
疾患とはたとえば、過敏性腸症候群や消化器官系の疾患があります。
それぞれの特徴などをみていきましょう。
過敏性腸症候群による血便
過敏性腸症候群は、腸に異常がないにもかかわらず、便通にトラブルがある状態です。
大きく分けて以下の4タイプがあります。
便秘型 | 慢性的に便秘状態 |
下痢型 | 慢性的に下痢 |
混合型 | 便秘と下痢を交互に繰り返す |
分泌型 | 強い腹痛後に粘液が出る |
過敏性腸症候群の原因は解明されていません。
しかし一説では、ストレスが原因と指摘されています。
より具体的にいえば、ストレスによって自律神経が乱れることが原因です。
自律神経は、消化器官をはじめ全身の器官をコントロールする神経系です。
そのため自律神経に異常が生じると、腸にも問題が起こりやすくなります。
結果、病変がないにもかかわらず、便通が乱れてしまいます。
過敏性腸症候群が血便を招くのは、痔のリスクが高まるためです。
たとえば下痢型の方は排便回数が増えるため、切れ痔になりやすいです。
便秘型の方は排便の際にいきむことが多いため、いぼ痔のリスクが高めです。
あるいは硬くなった便が肛門を傷つけることも少なくありません。
結果、肛門の傷口からの出血が便に交じり、血便になってしまうのです。
消化器系の異常による血便
血便を起こしやすい消化器系の疾患とは、たとえば以下があります。
- 胃潰瘍
- 潰瘍性大腸炎
- 大腸がん
- 大腸ポリープ
- 直腸がん
いずれも病変から出血することがあるため、血便が出る可能性があります。
消化器系疾患の原因は様々ですが、1つとしてストレスが指摘されています。
なお、各疾患の特徴・血便が出る詳しい仕組みについては、後程改めて解説いたします。
血便の原因は便の色で判断できる
血便はタイプが様々です。
たとえば鮮血が混じった便もあれば、黒っぽい便もあります。
同じ血便でも色が異なるのは、発症原因や出血部位が異なるためです。
一般的に病変が肛門に近いほど血便は赤っぽく、体内の奥深い場合ほど黒っぽくなります。
病変が遠いほど血便が黒くなるのは、時間の経過とともに血が酸化するためです。
それでは血便の色・出血部位・原因について、さらに具体的にみていきましょう。
鮮血便
赤い血液が便と一緒に排出されることです。
肛門を拭いたティッシュに血が付着する場合もあります。
血が鮮やかということは、出血から時間がさほど経過していないと判断できます。
つまり出血部位は肛門付近の可能性が高いです。
具体的には肛門・直腸から出血している可能性があります。
考えられる疾患は以下の通りです。
- 痔
- 直腸がん
- 直腸ポリープ
- 直腸潰瘍
- 潰瘍性大腸炎
暗赤色便
便が黒みがかった赤色をしている状態です。
レンガ色などとも表現されます。
血が黒っぽく変色していることから、出血から少し時間が経過していることが分かります。
つまり出血部位は身体のやや奥です。
具体的には大腸・小腸からの出血が疑われます。
疾患としては以下のようなものがあります。
- 大腸がん
- 大腸ポリープ
- 潰瘍性大腸炎
- 大腸憩室出血
- 小腸潰瘍
黒色便
タール便とも呼ばれ、黒っぽい・ドロッとしているのが特徴です。
海苔の佃煮のようなイメージでかまいません。
便が真っ黒になっていることから、出血からかなり時間が経過していると推測できます。
具体的な出血部位は胃・食道・十二指腸です。
疑われる疾患は以下の通りです。
- 胃潰瘍
- 胃がん
- 十二指腸潰瘍
- 食道がん
- 逆流性食道炎
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血便や便潜血検査で陽性反応が出た場合に疑われる病気
血便の原因は様々です。
具体的な原因疾患・症状などをみていきましょう。
肛門の症状
血便の中でも多いのが、肛門の症状です。
肛門の症状はまとめて「痔」と呼ばれます。
血便になりやすいのはいぼ痔と切れ痔です。
なお、痔に伴う血便は鮮血便であることが多いです。
いぼ痔
肛門にいぼのような突起物ができます。
いぼの正体は、内痔核静脈叢という毛細血管の塊です。
いぼ痔は痔核とも呼ばれます。
肛門の内側にできる内痔核と、外側にできる外痔核に分けられます。
血便になりやすいのは内痔核です。
排便時のいきみが刺激となり、いぼから出血が起こります。
大量出血が起こりやすいため、そのぶん血便も鮮やかな赤色をしていることが多いです。
なお、ほとんどの場合、痛みはありません。
切れ痔
肛門の皮膚が裂けて起こります。
裂肛とも呼ばれます。
皮膚が裂けるのは、硬い便が肛門を傷つけるためです。
あるいは下痢によって排便回数が増えた結果、肛門への刺激が増えて皮膚が裂けることがあります。
血便が起こるのは、傷口から出血するためです。
なお、出血量はいぼ痔に比べると少なめです。
肛門をぬぐったティッシュに血が付着する程度で済むこともあります。
ただし皮膚が裂けているため、痛みを伴うことがしばしばです。
腸の症状
血便が起こりやすいのは大腸の症状です。
大腸からの出血は、便として排出されるまでにやや時間がかかります。
そのため、大腸症状が原因の血便は暗めの赤色をしているのが特徴です。
血液の塊が排出されることもあります。
大腸ポリープ
大腸ポリープは、腸管の粘膜が飛び出していぼを作ることです。
ポリープ自体は良性ですが、放置するとがん化することも少なくありません。
血便が起こるのは、便が大腸内を通過するときにポリープがこすれるためです。
ポリープが大きいほど、排便時に出血しやすくなります。
潰瘍性大腸炎
大腸の粘膜に潰瘍やただれが起きる疾患です。
厚生労働省によって難病に指定されています。
潰瘍性大腸炎では、血便・下痢などが初期症状としてあらわれます。
また、激しい腹痛を伴うことがしばしばです。
潰瘍性大腸炎は症状が治まる寛解期と、症状があらわれる再燃期を繰り返すのが特徴です。
放置すると大腸がんに移行することもあります。
大腸憩室症
大腸の壁が外側に飛び出して、憩室という小さな部屋を作る疾患です。
多くの場合は無症状ですが、まれに血便を伴うことがあります。
たとえば憩室が細菌感染して炎症が起こると、血便が出やすくなります。
あるいは憩室の血管が破れて出血したために、便に血が混じるケースもあります。
大腸がん
大腸内に悪性の腫瘍ができます。
血便ができるのは、便が通過するときに腫瘍を傷つけて出血が起こるためです。
血便以外の症状としては、便が細くなることや、腸からの出血が代表的です。
ただし初期は自覚症状があらわれにくいため、発見が遅れることが少なくありません。
心当たりの症状がある場合は、早めに検査を受けましょう。
虚血性大腸炎
一時的に大腸の血流が悪くなることで、腸内にただれや潰瘍が起こる疾患です。
血便のほか、強い腹痛があらわれることがしばしばです。
虚血性大腸炎は急激に症状があらわれるのが特徴です。
また、多くの場合、左の下腹部に痛みがあらわれます。
胃の症状
胃の異変で血便が起こることもあります。
胃の症状による血便は、黒っぽいタール状である点が特徴です。
理由は、胃からの出血が便として排出されるのには時間がかかるためです。
具体的には、出血が胃酸と交じることで酸化し、黒く変色します。
胃潰瘍
胃の粘膜がただれる状態です。
具体的には、胃酸が過剰に分泌されることで胃壁が溶けてしまいます。
胃潰瘍の症状は血便のほか、みぞおちの痛みや胸やけなどです。
血便は重症化のサインでもあるため、早めに医療機関を受診しましょう。
胃がん
胃に悪性腫瘍が生じます。
胃がんによる血便は多くの場合、症状が進行してから起こります。
初期症状としては胃痛・胃もたれ・食欲不振などが挙げられます。
胃に不調がある場合は、念のため検査を受けるのがおすすめです。
胃炎
胃炎とは胃の粘膜に炎症が起きている状態です。
大きく分けて慢性胃炎と急性胃炎の2種類があります。
下血が起こりやすいのは急性胃炎です。
暴飲暴食・喫煙・ストレスなどによって急激に起こる胃炎を指します。
血便を疑う症状
血便は必ずしも便が真っ赤になるわけではありません。
たとえば以下のような症状が当てはまる場合は、血便が疑われます。
- 便が赤い・黒っぽい
- 肛門から出血している
- 肛門をぬぐったティッシュに血が付着している
- 下着が血で汚れている
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血便の病院での検査方法
血便が出たら、まずは医療機関を受診しましょう。
特に出血量が多い場合や、数日血便が続く場合は、できる限り早めの受診がおすすめです。
血便は消化器官トラブルのサインです。
軽度ならば自然治癒することもありますが、重症化を避けるためにもなるべく病院で診てもらいましょう。
できれば、受診前に血便の色を確認してください。
色によって異常部位をある程度把握することで、スムーズな診断につなげられるためです。
なお、診療科は消化器内科・内科が適当です。
以下は、病院での血便の検査方法を表でまとめたものです。
検査方法 | 検査内容説明 |
便潜血検査 | 便中に微量の血液が混じっているかを調べる非侵襲的な検査 |
胃内視鏡検査 | 長い柔軟なチューブによるカメラを使って胃や十二指腸の内部を直接観察する検査 |
大腸内視鏡検査 | 内視鏡を肛門から挿入して大腸の内壁を詳細に調べる検査 |
カプセル内視鏡検査 | 小さなカプセル型のカメラを飲み込むことで消化器系の画像を取得する非侵襲的な検査 |
血便が観察された場合は、早急に病院を受診しましょう。
ストレスによる血便の治療方法
ストレスによって血便が出る場合、直接的な原因は過敏性腸症候群にあることが多いです。
そのため血便を改善するには、根本原因である過敏性腸症候群を治す必要があります。
過敏性腸症候群の主な治療方法をご紹介します。
薬物療法
下痢・便秘などが原因で痔になっている場合は、肛門用の塗り薬が処方されます。
飲み薬としては、便の硬さ・水分量を調節する薬が出されることが多いです。
あるいは、脳の神経伝達物質をサポートする医薬品が用いられることもあります。
過敏性腸症候群の原因は、神経伝達物質がうまく働かなくなり、脳と腸の連携がうまくいかなくなることです。
そこで、医薬品を使って神経伝達物質の働きを補うわけです。
腸の正常化が期待できるため、便通も改善されやすくなります。
うつなどの精神症状がある場合は、気持ちをやわらげる薬が処方されることもあります。
例えば抗うつ薬や向精神薬などが代表的です。
食物繊維を摂取する
食物繊維は腸内環境の改善に役立ちます。
理由は便通を改善するためです。
なお、食物繊維の摂り方は便秘型・下痢型でそれぞれ異なります。
便秘型の方は、水溶性食物繊維・不溶性食物繊維の摂取がおすすめです。
水溶性食物繊維は、便をやわらかくする作用があります。
一方、不溶性食物繊維は、便のカサを増やすとともに腸を刺激して便通を促す作用があります。
どちらも、便が詰まりがちな方の便通改善に適した成分です。
一方、下痢型の方には不溶性食物繊維の摂取はあまり向いていません。
理由は、腸が刺激されることで下痢が悪化するおそれがあるためです。
よって下痢型の方は、不溶性食物繊維が豊富な食品の摂取はほどほどにしましょう。
具体的には根菜類・キノコ類・野菜の摂取に注意してください。
なお、水溶性食物繊維が豊富な食品は、わかめ・寒天などの海藻類が代表的です。
適度な運動を取り入れる
運動すると腸が適度に刺激されるため、便通改善が期待できます。
また、運動は心身のストレスを発散させる効果もあります。
理由は、筋肉の硬直を緩めることで、脳の緊張も解けやすくなるためです。
脳がリラックスすると腸の動きが活発化するため、便通が整いやすくなります。
ストレスを発散させる
過敏性腸症候群の主な原因はストレスと指摘されています。
よって、根本原因であるストレスを発散させることが大切です。
ストレス発散法としては、買い物・旅行・趣味などが代表的です。
あるいは、体をゆっくり休めるのもよいストレス発散方法です。
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ストレスによる血便の解決・予防方法
ストレスが過敏性腸症候群を引き起こすのは、自律神経のバランスが崩れるためです。
つまり過敏性腸症候群による血便を予防・解決するには、自律神経を乱さないことが大切です。
自律神経を正常に保つには、生活習慣を見直す必要があります。
具体的なポイントをみていきましょう。
食生活の改善
自律神経を整えるには食習慣を整えることが大切です。
具体的には以下のポイントを心がけてください。
- 1日3食規則正しく食べる
- 栄養バランスの良い食事をとる
- 食べ過ぎに気をつける
- 刺激物(アルコール・タバコ・香辛料)の摂取はほどほどにする
- 水分をとる
生活習慣の改善
生活リズムを規則正しく整えましょう。
生活リズムの乱れは体内時計を狂わせるため、ひいては自律神経のバランスが崩れやすくなります。
注意すべきポイントは以下の通りです。
- 休日を含めて就寝・起床時間を一定に保つ
- 夜更かししない
- 昼夜逆転生活をしない
十分な睡眠をとる
睡眠不足は脳の働きを低下させるため、ひいては自律神経の乱れにつながります。
理想の睡眠時間は8時間です。
最低でも6時間の睡眠時間は確保しましょう。
なお、睡眠の質自体を上げることも大切です。
快眠を得るには以下のような方法があります。
- 就寝1時間以内のスマホ・PC使用は控える
- 寝酒はほどほどにする
- 就寝2~3時間前に入浴して身体を温める
- 起床後は朝日を浴びて身体をしっかり目覚めさせる
ストレスを溜めない
ストレスは自律神経を乱す大きな要因です。
そもそも溜めないことが大切ですが、すでに溜まっているという方は適度に発散させましょう。
ストレス解消法としては、趣味・運動・入浴・休息などが代表的です。
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血便と痔の関係
血便の直接的な原因は、「痔」であることが多いです。
軽度な痔は自然治癒することもありますが、重症化した場合は医療機関での治療が必要です。
しかし、痔で医療機関を受診する方は決して多くありません。
一説では、痔の治療のために受診した方は全体で3割弱とも指摘されています。
医療機関の受診率が低い原因として、羞恥心が挙げられます。
診察で患部をみられたり、痔そのものを知られたりするのが恥ずかしいと思う方がとても多いのです。
特に女性は男性と比べると恥ずかしいと感じる傾向が強いです。
痔は放置すると強烈な痛みが出ることがあります。
あるいは、重症化すると手術が必要になるケースもあります。
痛みが強い場合などは我慢せず、医療機関を受診しましょう。
ストレスの血便まとめ
ここまでストレスと血便についてお伝えしてきました。
ストレスと血便の要点を以下にまとめます。
- 血便はストレスが直接引き起こすものではないが、ストレスが原因で自律神経が乱れることで過敏性腸症候群や消化器疾患を発症し、その結果、血便が出ることがある
- 血便や便潜血検査で陽性反応が出た場合に疑われる病気には、痔(いぼ痔や切れ痔)、大腸ポリープ、潰瘍性大腸炎、大腸がん、胃潰瘍、胃がんなどがある
- ストレスによる血便を改善するには、バランスの良い食事・適当な運動・十分な睡眠・ストレスの発散が大切
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。