うつ病はストレスが原因で発症するこころの病気です。
一口にうつ病といっても、実は種類・症状は様々です。
うつ病にはどのような種類があるのでしょうか?
またうつ病はどのように治療していくのでしょうか?
本記事では、うつ病の種類について、以下の点を中心にご紹介します。
- うつ病の主な種類とは
- うつ病以外のこころの病気の種類
- うつ病の治療の種類
- うつ病のチェック方法
うつ病の種類について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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うつ病とは
うつ病は精神疾患の1種です。
うつ病には、以下のような症状があらわれます。
- 気分が落ち込む
- 意欲・集中力の低下
- 不眠
- 頭痛
- 疲れやすい
うつ病の発症メカニズムはハッキリ解明されていません。
一説では、ストレスや脳内の変化によって起こると指摘されています。
うつ病の原因として代表的なのは、仕事・対人関係の悩み、介護などです。
うつ病は種類によって、病名・特徴・症状が異なります。
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うつ病の種類
うつ病の代表的な種類をご紹介します。
あわせて、それぞれの特徴・症状も解説します。
単極性うつ病
単極性うつ病は、うつ症状のみがあらわれます。
うつ病性障害と呼ばれることもあります。
単純にうつ病という場合は、単極性うつ病を指すことが一般的です。
より具体的にいえば、うつ病性障害の中の「大うつ病性障害」がうつ病に該当します。
単極性うつ病は、うつ病の中でも発症者が多い種類です。
単極性うつ病の症状
単極性うつ病は、気分がひどく落ち込むのが特徴です。
具体的な症状には以下があります。
- 気分が晴れない
- 不安
- やる気がでない
- 集中力・注意力の低下
- 不眠・起きられない
- 食欲不振
健常な方であっても気がふさぎ込むことはあります。
しかし、落ち込みっぱなしになることはほとんどありません。
どれほど悲しいことがあっても、時間の経過とともに、精神はニュートラルな状態に戻るものです。
一方、単極性うつ病の場合は、感情の波がなくなります。
より厳密には、ネガティブな感情ばかりに支配されるようになります。
多くの場合、原因はこれといって特定できません。
あるいは原因が解決されても、気分が沈んだままであることもしばしばです。
非定形うつ病
非定型うつ病は、従来のうつ病とは症状・特徴が異なる種類です。
新型うつ病とも呼ばれています。
非定型うつ病は、従来のうつ病と比べると、周囲に気づかれにくいのが特徴です。
そのため、うつ病によってコンディションを崩していても、「甘えている」「怠けている」と誤解されやすい傾向があります。
なお、20~30代の若い女性がかかりやすいと指摘されています。
非定形うつ病の症状
非定型うつ病の代表的な症状は気分反応性です。
気分反応性とは、日常の出来事に対して気分が浮き沈みすることです。
たとえば非定型うつ病の方は、なにか良いことがあると楽しい気分になれます。
一方で、精神的ストレスを受けるような出来事があると、極端なほど落ち込みます。
たとえば出勤日は気分が塞ぎ込んで体調が優れないものの、休日は気分が晴れやかになるといったケースが代表的です。
簡単にいえば、自分にとって都合の悪いことに関しては、極端なほどの拒否反応が出るのが非定型うつ病の特徴です。
そのため、周囲からすると仮病や怠慢のように見えることもあります。
なお、非定型うつ病は、気分反応性に加えて以下のような症状があらわれます。
- 極端な体重増加
- 極端な過食
- 過眠
- 手足が鉛のように重くなる
- 夕方から悪化しやすい
- 周囲の反応に過敏になる
気分反応性に加え、上記の症状が少なくとも2つ以上あらわれると、非定型うつ病の可能性があります。
双極性障害
双極性障害は、躁(そう)状態とうつ状態を繰り返すものです。
かつては躁うつ病とも呼ばれていました。
双極性障害はうつ病の1種と思われがちですが、実は異なります。
しかし躁うつ病と呼ばれていたことから、うつ病の種類として一般認識されています。
双極性障害の症状
双極性障害は、両極端なコンディションが交互にあらわれます。
具体的には、極端にハイテンションになったり、極端に気分が落ち込んだりします。
気分が高揚しているときは、行動が積極的になります。
おそれを感じにくくなるため、高額な買い物をしたり、攻撃的な言動をとったりすることも少なくありません。
対してうつ症状があらわれると、従来のうつ病同様に気分がひどく塞ぎ込みます。
躁状態だった自分に対する嫌悪感も強く、自殺願望にとりつかれるケースもあります。
また、躁状態が軽度な方もおられます。
軽躁と呼ばれる状態で、通常の躁状態と比べると見逃されることが多い症状です。
軽躁の方は、双極性障害であっても、うつ状態のみが目立ちやすくなります。
結果、単極性うつ病と誤診されるケースも少なくありません。
躁状態とうつ状態は数ヶ月~数年単位で入れ替わります。
一般的には、うつ状態の期間の方が長くあらわれます。
出典:厚生労働省「双極性障害(躁うつ病)|こころの病気を知る|メンタルヘルス|厚生労働省」
その他こころの病気種類一覧
うつ病以外にも様々なこころの病気があります。
代表的な種類と症状をご紹介します。
不安障害 | 突然強い不安感に襲われ、動悸・息切れ・めまいなどの発作を起こす |
統合失調症 | 思考・行動・感情などがまとまりづらくなり、支離滅裂な言動や幻覚・妄想症状があらわれる |
依存症 | アルコール・ギャンブルなどに依存し、止めると禁断症状があらわれる |
発達障害 | 生まれつき脳の発達の仕方が異なることで、物事の捉え方や思考・行動が世間一般とずれる |
適応障害 | 特定の状況などに強いストレスを感じ、感情・言動が不安定になる |
認知症 | 脳細胞が壊死することで認知機能が低下し、日常生活に支障が出る |
PTSD | 強い精神的ダメージが原因で、不眠・めまい・動悸などの発作があらわれる |
てんかん | 脳に異常な電気信号が走り、けいれん・失神などの発作を起こす |
摂食障害 | 食事を摂れなくなったり、異常な量を食べすぎたりする |
睡眠障害 | 寝付きが悪くなったり、睡眠が浅くなったりすることで睡眠不足になる |
出典:厚生労働省「こころの病気を知る|メンタルヘルス|厚生労働省」
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うつ病の治療法の種類
うつ病は治療次第で回復が期待できます。
うつ病の主な治療方法をみていきましょう。
薬物による治療
うつ病の治療には、抗うつ薬が用いられることが一般的です。
抗うつ薬は大きく分けて以下の2種類があります。
- SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
- SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)
そもそもうつ病とは、脳内の神経伝達物質の働きが悪くなるために起こります。
そのため、神経伝達物質の働きを強化する作用がある薬を用います。
神経伝達物質の状態が正常になることで、症状の軽減が期待できます。
効果は服用開始後2週間程度であらわれはじめます。
即効性は薄いため、毎日継続して服用することが大切です。
なお、うつ病治療には、以下のような医薬品が用いられることもあります。
- 睡眠導入薬
- 抗不安薬
- 気分安定薬
いずれの薬も、医師の指示に従って適切に服薬する必要があります。
十分な休養と環境の調整
うつ病治療には十分な休養が欠かせません。
うつ病は真面目で責任感が強い方ほどかかりやすいためです。
体調が優れないにもかかわらず、無理してうつ病を悪化させることも少なくありません。
そのためうつ病を根本的に改善するには、ストレスの元から離れる必要があります。
具体的には休職・休校を視野に入れてください。
場合によっては、入院が必要な場合もあります。
どうしても休職が難しい場合は、ストレスを感じにくい環境を作りましょう。
部署異動や配置転換、残業時間を減らすだけでも、負担を減らせます。
精神的(心理的)治療
心理療法は、うつ病の再発予防に効果があります。
代表的なのは認知行動療法です。
認知行動療法は、思考の歪みを正す治療法です。
簡単にいえば、ネガティブ思考をポジティブ思考に切り替えるものです。
たとえば上司に仕事を頼まれたとしましょう。
仕事を終わらせて上司に提出したところ、ミスが見つかり叱られました。
するとネガティブ思考の方は、「上司に見限られた」「もうだめだ」と思い込んでしまいます。
しかし認知行動療法では、物事を違う視点から見つめる訓練をします。
「次の仕事で前回の仕事のミスを挽回する」というふうに、ポジティブ思考に切り替えるのです。
うつ病の方は、もともと悲観的な思考を持っています。
たとえうつ病を治療できたとしても、ネガティブ思考が残ったままだと、再発のおそれが高くなります。
そこで、認知行動療法によって思考を根本から変えることで、再びうつ病になるのを防ぐ必要があります。
出典:厚生労働省「認知行動療法 | e-ヘルスネット(厚生労働省)」
光・電気・運動での治療
物理的な刺激によってうつ病を治療する方法もあります。
代表的な種類は以下の通りです。
運動療法 | 有酸素運動などによってうつ病を予防・改善する |
高照度光療法 | 2500ルクス以上の光を浴びることでセロトニンの合成を促す |
修正型電気けいれん療法 | 電気ショックを与えることで脳を活性化させる |
経頭蓋刺激法 | 電磁気を利用して脳にショックを与え、活性化させる |
セロトニンとは、神経伝達物質の1種です。
幸せホルモンとも呼ばれており、脳をリラックスさせる作用があります。
うつ病の方は脳内のセロトニン量が不足していることが多くあります。
セロトニンを増やす方法として、運動療法・光療法などが有効です。
うつ病の検査と診断基準
うつ病が疑われる場合は、医療機関での診察・検査を受けましょう。
具体的な内容を見ていきましょう。
検査を受ける病院
うつ病の診察・検査に対応している診療科は以下の通りです。
- 内科
- 精神科
- 神経科
- 心療内科
精神科や心療内科に行くのは抵抗があるという場合は、まず内科の受診がおすすめです。
かかりつけ医がいる場合は、診療科にこだわらず、ひとまず相談してみるのもひとつの方法です。
診断基準
うつ病の診察方法は、精神科的診断面接が一般的です。
簡単にいえば、医師の問診です。
患者の体調や症状などを聞き取って、うつ病かどうかを判断します。
なお、うつ病の診断基準は以下の通りです。
- 1. 抑うつ気分
- 2. 興味または喜びの喪失
- 3. 食欲の減退あるいは増加、体重の減少あるいは増加
- 4. 不眠あるいは睡眠過多
- 5. 精神運動性の焦燥または制止(沈滞)
- 6. 易疲労感または気力の減退
- 7. 無価値観または過剰(不適切)な罪責感
- 8. 思考力や集中力の減退または決断困難
- 9. 死についての反復思考、自殺念慮、自殺企図
うつ病と診断されるのは、1・2のどちらかを満たし、かつ3~9の症状を併せて合計5つ以上当てはまる場合です。
うつ病のスクリーニングテストもある
うつ病はセルフチェックもできます。
セルフチェックは、東邦大のスクリーニングテストを利用して行います。
スクリーニングテストは全部で18項目あり、それぞれ「いいえ、時々、しばしば、常に」の4段階で回答します。
いいえを0点、時々を1点、しばしばを2点、常にを3点として計算します。
質問2、4、6、8、10、12に関してはどの選択肢を選んでも0点として計算します。
回答の合計点を出し、点数が高いほどうつ病の疑いが高くなります。
- 身体がだるく疲れやすいですか
- 騒音が気になりますか
- 最近気が沈んだり重くなることがありますか
- 音楽を聴いて楽しいですか
- 朝のうち特に無気力ですか
- 議論に集中できますか
- 首筋や肩がこって仕方ないですか
- 頭痛もちですか
- 眠れないで朝早く目覚めることがありますか
- 事故やけがをしやすいですか
- 食事が進まず味がないですか
- テレビを見て楽しいですか
- 息がつまって胸が苦しくなることがありますか
- のどの奥に物がつっかえている気がしますか
- 自分の人生がつまらなく感じますか
- 仕事の能率があがらず何をするのもおっくうですか
- 以前にも現在と似た症状がありましたか
- 本来は仕事熱心で几帳面ですか
点数判定表は以下の通りです。
合計点数 | 判定 |
0~10 | 健康です。問題はありません。 |
11~15 | 少しうつ状態なのかもしれません。 |
16~36 | うつ状態の可能性があります。 |
出典:「うつ病スクリーニングテスト/五泉市公式ホームページ」
種類別・こころの病気の年代別患者数
厚生労働省の調査によると、こころの病気を抱えている方は年々増加傾向にあります。
こころの病気とは、統合失調症・気分障害・神経症性障害です。
特に増加しているのが気分障害です。
1996年には43万3000人だったのに対し、2017年には127万6000人まで増えています。
年代別にみると、2017年では65歳以上の方の発症率が最も高く、40代、50代と続きます。
気分障害を代表するのがうつ病です。
うつ病は働き盛り世代の病気と思われがちですが、実は高齢者でも発症する方が少なくありません。
うつ病の原因の多くはストレスです。
うつ病を予防するためにも、年代にかかわらず、ストレスをためないような工夫が必要です。
出典:厚生労働省「図表1-2-9 こころの病気の患者数の状況」
うつ病の種類まとめ
ここまでうつ病の種類についてお伝えしてきました。
うつ病の種類の要点を以下にまとめます。
- うつ病の主な種類には、単極性うつ病・新型うつ病・双極性障害がある
- うつ病以外のこころの病気は、統合失調症・不安障害・摂食障害などがある
- うつ病の治療には、薬物療法・精神的療法・運動療法・光療法などがある
- うつ病をチェックするには、スクリーニングテストを利用する
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。