熱はないのに咳が続くことがあります。
乾燥やアレルギー以外にストレスによっても咳が出ます。
体に異常がないのに咳が長引いていませんか?
ストレスと咳にはどのような関係があるのでしょうか?
本記事ではストレスと咳の関係について以下の点を中心にご紹介します。
- ストレスで咳が出るのはなぜか
- 心因性咳嗽はどのように治療するのか
- ストレスによる咳に薬は効くのか
ストレスと咳の関係性について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
社会で生活していく上で、ストレスを完全に避けることは困難です。従って、正しくストレスと向き合っていくことが、人が健康的に暮らしていくためには大切です。今回はストレスについて、以下の点を中心に解説していきます。 ストレス症状[…]
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ストレスにより咳が出る「心因性咳嗽」
乾いた咳が続くのは次のような原因が考えられます。
- アレルギー
- 空気の乾燥
- 喫煙をしている
- 薬の影響
- ストレス
これらの中でストレスによる「心因性咳嗽」について具体的に説明していきます。
心因性咳嗽の症状・特徴
ストレスが原因で起こる心因性咳嗽はコンコンという乾いた咳が出ます。
心因性咳嗽では熱は出ません。
検査をしても体に異常はみつかりません。
しかし長期間にわたって咳が続きます。
3ヶ月以上続く場合もあります。
日中に咳が出ることが多いです。
特にストレスがかかったり緊張しているときに咳が出ます。
逆に何か別のことに集中しているときには咳は出ません。
睡眠中も咳が出ないというのが特徴です。
ただしストレスによる不眠症で夜間に出る可能性はあります。
職場の異動や就職、入学などのイベント事に出る場合もあります。
季節の変わり目が要因となる可能性もあります。
他の病気による咳との見分け方
心因性咳嗽を見分ける大きな手がかりは2つあります。
- 何かに集中しているときは咳が出ない
- 睡眠中は咳が出ない
この2つが心因性咳嗽の大きな特徴になります。
一般的に咳には大きく分けて2種類あります。
- 湿性咳嗽:湿った咳で痰が出る
- 乾性咳嗽:乾いた咳で痰は出ない
ストレスによる心因性の咳は乾性咳嗽に分類されます。
そのため湿性咳嗽のように痰が出る咳は他の疾患が疑われます。
心因性咳嗽以外に乾性咳嗽が出る疾患
心因性咳嗽以外に乾性咳嗽が出る疾患をいくつか紹介します。
- 空気の乾燥
- アレルギー
- 感染後咳嗽(風邪が治った後の咳)
- 薬の副作用
- 間質性肺炎
- 気胸
- 咳喘息
それぞれの特徴と心因性咳嗽との違いについて説明していきます。
空気の乾燥
空気の乾燥による咳は時間に関係なく咳が出ます。
こまめに水分補給をしたり加湿をすることで軽減します。
アレルギー
アレルギーによる咳では原因となるアレルゲンがあります。
そのためアレルゲンとなる物質を取り除くことで咳が治ります。
また喉の違和感や喉の奥のかゆみといったアレルギー性咳嗽に特有な症状があります。
感染後咳嗽(風邪が治った後の咳)
感染後咳嗽とは、風邪自体は完治した後に咳だけが続くことをいいます。
咳は日中にはあまり出ず、夜の寝る前や明け方に出ることが多いです。
風邪が治ってから約1週間程度で軽減してきます。
薬の副作用
乾性咳嗽はACE阻害薬という薬の副作用の場合もあります。
ACE阻害薬は腎臓病や心臓病、高血圧などで処方される薬です。
薬を服用されている方で咳が続く場合は一度かかりつけ医に相談してみてください。
間質性肺炎
間質性肺炎での咳は心因性咳嗽と似ています。
痰の出ない乾いた咳が長期間続きます。
しかし間質性肺炎では咳以外にも症状があります。
咳以外の症状として日常の軽い動作で息切れが出ます。
乾いた咳だけでなく息切れなどがある場合は心因性咳嗽以外を疑いましょう。
気胸
気胸では咳以外に胸痛や呼吸困難感が出ます。
胸痛が伴う咳の場合はできるだけ早く病院を受診してください。
咳喘息
咳喘息は痰の出ない乾いた咳が唯一の症状である喘息です。
心因性咳嗽との違いは咳喘息は寝る前から早朝にかけて悪化することです。
痰が出る湿性咳嗽の疾患も参考にあげておきます。
- ウイルス・細菌性肺炎
- 肺水腫
- 心不全
- 気管支喘息
- 気管支炎
ストレスによる自律神経の乱れが原因
心因性咳嗽の原因は自律神経の乱れによるものです。
ストレスにより乱れた自律神経が咳中枢を刺激します。
その結果、咳反射として咳が出ます。
一時的なストレスであれば脳がうまく対処するので症状は出ません。
しかしストレスが過度にかかったり長期間続くと脳が異常を起こします。
脳が異常を起こすと神経系にも異常が出ます。
異常が出るとストレスに対して反応が鈍くなったり敏感になったりします。
心因性咳嗽ではストレスに対して反応が敏感になっている状態です。
乱れた自律神経は咳中枢以外にも気道粘膜も刺激して咳を誘発させます。
ストレスには主に4つの因子があります。
- 環境的因子:暑さや寒さ、騒音、混雑など
- 身体的因子:病気、睡眠不足など
- 心理的因子:不安、悩みなど
- 社会的因子:人間関係、家庭の問題、仕事関係など
心因性咳嗽の場合、心理的・社会的因子が関係していることが多いです。
心因性咳嗽の治療方法
心因性咳嗽の治療方法はストレスを取り除くことと、薬物療法です。
不安や悩みなどは人それぞれです。
人間関係や家庭の問題もさまざまあります。
ストレスとなっている原因をみつけて対処することが大切です。
そのためには、まず自分の気持ちを素直に受け止めることです。
モヤモヤした気持ちのままでいるといつか爆発してしまいます。
誰かに話したり、紙に書き出すことでストレスの原因が見えてくる場合もあります。
またストレスを解消できる方法を探すことも大事です。
ストレス解消方法の例として
- 体を動かす
- 歌を歌う
- 読書や映画鑑賞をする
などがあります。
自分一人ではなかなか対処することが難しい場合もあります。
心因性咳嗽を疑う時は一人で抱え込まず心療内科や精神科を受診するようにしましょう。
薬物療法として一般的な咳止めや気管支拡張剤は効果がありません。
ただし他の疾患と区別するために処方されることもあります。
心因性咳嗽を治療するには抗うつ薬や漢方薬が処方されます。
ストレスを少しでも軽減させるために生活習慣を整えることも大切です。
生活習慣が整うと乱れた自律神経も整いやすくなります。
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気管支炎はストレスにより悪化する?
気管支炎はストレスにより悪化することがあります。
理由はストレスによって免疫力が低下するからです。
気管支炎は急性の気管支炎と慢性の気管支炎に分類されます。
急性気管支炎の原因は主にウイルスなどの感染によるものです。
慢性気管支炎は喫煙による気管支の炎症によるものがほとんどです。
症状としては咳や痰、発熱があります。
喘鳴や息切れの症状が出ることもあります。
気管支炎による発熱や息切れが治まっても咳は続く場合があります。
熱などが下がっても2〜3週間は咳が出る場合があります。
咳が長引くと喘息や肺炎になることもあります。
私たちの体は心からの影響を受けています。
ストレスを受けると自律神経系や内分泌系が乱れます。
他にも自己免疫機能にも悪影響を与え免疫力が低下します。
免疫力が落ちるとウイルスや細菌に対する抵抗力が低下します。
そのため気管支炎が悪化することになります。
自律神経の乱れは炎症を回復させるための機能も低下します。
咳がなかなか止まらず回復が遅れる可能性もあります。
自律神経とは、内臓や代謝、体温といった体の機能を24時間体制でコントロールする神経のことです。心と体を活発にする交感神経と、休ませる副交感神経がバランスを取りながら、私たちの体を支えています。自律神経が不調をきたしたり乱れたりす[…]
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ストレスが咳喘息の原因になる?
ストレスは咳喘息の原因になります。
ストレスを感じるとコルチゾールというホルモンが分泌されます。
コルチゾールはサイトカインとよばれる炎症性の物質を放出させます。
サイトカインが引き金となり全身に影響を及ぼし、咳喘息の悪化要因になります。
咳喘息の原因はストレスのような内的因子だけでなく外的因子もあります。
外的因子としては以下のようなものがあります。
- ホコリ・ダニ
- 室内外の温度差
- 花粉
- 喫煙
外的因子はわかりやすいので対処しやすいです。
しかし、内的因子であるストレスにも目を向けて対処することが大切です。
咳喘息の症状には気管支喘息のように喘鳴や息苦しさはありません。
唯一の症状は咳だけです。
気管支喘息は気管支が細くなり、呼吸がゼイゼイ(喘鳴)といいます。
ひどい場合は重篤な状態になることもあります。
一方、咳喘息では気管支はほとんど細くなりません、
そのため喘鳴はありません。
ただし咳喘息が長引くと気管支喘息に移行することもあります。
咳喘息が起こるタイミングは
- 寝る前に布団に入ってしばらくすると出る
- 早朝から起床後に出る
というのが典型的です。
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ストレスによる咳に薬は効くの?
ストレスによる心因性咳嗽の場合、一般的な咳止め薬や抗炎症薬などは効きません。
同様に喘息などで処方される気管支拡張剤などの吸入薬も効きません。
その理由は心因性咳嗽では炎症が起きているわけではないからです。
気管支も細くなっていません。
ストレスによって自律神経が乱れていることが原因になります。
そのためストレスを軽減させることが重要になります。
ストレスは肉体的疲労が精神的なストレスにつながっている場合もあります。
そのためまずは心のケアをしながら生活習慣を改善することが基本になります。
それでも改善がなければ精神安定剤や漢方薬が用いられます。
漢方薬が処方される場合も気の巡りを改善させる効果のある漢方が用いられます。
気持ちをリラックスさせる働きや重鎮安神薬などの処方が検討されます。
ストレスがある人は咳の症状を訴えやすい
国民生活基礎調査のデータをみてみると、ストレスのある人は咳の症状がでやすいことが分かります。
H28年度の統計をみると12歳以上で咳や痰が出ると訴えた人は1566千人います。
その中で悩みやストレスがあると答えた人は996千人います。
ストレスがある人は、ない人に比べて咳の症状を訴える人が多いとわかります。
ストレスのある人が咳の症状を訴えやすいのは自律神経が関係しています。
緊張すると咳払いするのも自律神経である交感神経が興奮するためです。
交感神経が興奮し唾液分泌量が低下して口渇、咳嗽を起こしやすくなります。
またストレスがかかると不安や緊張から咽喉頭の異常感が出ることがあります。
咽喉頭の異常感をとるために咳払いをして、咳嗽として続く可能性があります。
咽喉頭の異常感はストレスや心理的葛藤が体にあらわれる症状とされています。
ストレスがかかることで起こりやすいです。
長期間にわたってストレスがかかることで心因性咳嗽を発症する可能性があります。
心因性咳嗽の診断には他の疾患と鑑別する必要があります。
鑑別にはさまざまな検査が必要になることもあります。
咳や痰がでて咳止めなどの薬を飲んでも改善しない場合は心因性咳嗽も疑いましょう。
心療内科や精神科を受診するようにしてください。
出典:e-Stat【国民生活基礎調査 平成28年国民生活基礎調査 健康 報告書掲載 全国編 】
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ストレスと咳まとめ
ここまでストレスと咳の関係性についてお伝えしてきました。
ストレスと咳の関係性の要点を以下にまとめます。
- ストレスで咳が出るのは自律神経の乱れが原因
- 心因性咳嗽の主な治療はストレスを軽減して心のケアをすること
- ストレスによる咳には一般的な咳止めや気管支拡張剤は効果がない
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。