ナトリウムは、体内に必要不可欠な栄養素です。
身体を動かすことや、頭を働かせることにもナトリウムは欠かせません。
そもそもナトリウムとはどういう栄養素なのでしょうか?
ナトリウムはどのような効果を持つのでしょうか?
本記事では、ナトリウムを含む食品について以下の点を中心にご紹介します。
- ナトリウムとは何か
- ナトリウムの効果とは
- ナトリウムの適切な摂取方法
- 摂り過ぎまたは不足するとどうなるのか
ナトリウムについて理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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ナトリウムとは
ナトリウムとは、体内のミネラルバランスを保つのに欠かせない元素です。
水分バランスや血圧、浸透圧を調節する役割があります。
また、筋肉の収縮や脳内の情報伝達物質としても作用しています。
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ナトリウムの役割7選
人体におけるナトリウムの役割は以下の7つがあります。
- 体内の水分バランスの調整
- 浸透圧の維持
- 体内のpHを一定に保つ
- 筋肉の収縮
- 神経の情報伝達
- 栄養素の吸収と輸送
- 血圧の調節
それぞれについて解説します。
体内の水分バランスの調整
ナトリウムは、吸収と排泄により体内の水分バランスを調整しています。
体内の水分が不足すると口渇中枢(こうかつちゅうすう)が刺激され、のどがかわきます。
すると腎臓内で水分の調整が行われ、排尿を抑制し水分を確保します。
そして、水分を補給することで正常な状態にもどります。
体内の水分が過剰になると、抗利尿ホルモンが抑制され排尿が促進されます。
大量の水分を尿として排出することで、体内の水分バランスが調整されます。
ビールなどは、アルコールの直接作用で抗利尿ホルモンが抑制されます。
そして、抗利尿ホルモンが抑制されることで尿の排泄が促進されます。
浸透圧の維持
ナトリウムは細胞外液の浸透圧を維持します。
細胞外液とは
- 血漿(けっしょう)(血液中から赤血球、白血球、血小板を除いた液体成分)
- 組織間液(細胞の間の体液)
- リンパ液
などになります。
体重の20%が細胞外液です。
ナトリウムの濃度の調節は腎臓で行われ、体液の量に応じて
- アルドステロン(Na+再吸収)
- バソプレシン(水分再吸収(+Na+再吸収))
によって調節されます。
ナトリウムの働きで血漿浸透圧が決定されます。
体内のpHを一定に保つ
人の体液は中性に近いアルカリ性に保たれています。
体液が酸性にかたむくと抵抗力が低下します。
その結果、さまざまな病気を引き起こす可能性があります。
体内ではエネルギーを生産したあとに酸が生成されます。
酸は血管から腎臓に送られます。
そして不要な量がリンやアンモニアと結合し、尿として排出されます。
体内が酸性にかたむいたとき、腎臓は血液中に重炭酸イオン(アルカリ性)を分泌します。
重炭酸イオンは糸球体でろ過した原尿から尿細管で再吸収され、腎臓に補充されます。
呼吸器の疾患などで、肺からの二酸化炭素の排出に問題があらわれることがあります。
その場合は腎臓で二酸化炭素が排尿されます。
筋肉の収縮
筋肉の収縮にもナトリウムが必要不可欠です。
筋肉収縮のメカニズムは、
1.脳や脊髄から、筋肉を収縮するように指令が出る
2.指令が運動神経線維を通り、運動神経末端に伝えられる
3.指令を受けた運動神経末端から、アセチルコリンが放出される
4.アセチルコリンが受容体と結合し、ナトリウムイオンチャネルが開く
5.ナトリウムイオンがT管を通り、筋小胞体にながれる
6.筋小胞体からカルシウムイオンが筋繊維内に拡散する
7.ミオシンフィラメントがアクシンフィラメントを引き寄せ、筋収縮がおこる
T管は指令を筋小胞体に伝える経路のことです。
4のアセチルコリンが受容体と結合してナトリウムイオンチャンネルが開く工程と、5のナトリウムイオンがT管を通り、筋小胞体にながれる工程がなければ、その後の工程には進めません。
また、チャネルとは伝送路のことで、細胞内では「扉」の様な役割を果たしています。
神経の情報伝達
ナトリウムは神経の情報伝達にも役立っています。
電気的な神経の情報伝達にはナトリウムイオンが働いています。
神経系の情報伝達には
- 電気的情報伝達
- 化学的情報伝達
の2種類があります。
化学的な情報伝達では、ドーパミンやアセチルコリンなどの物質を分泌させます。
そして、物質を受け取った受容体は外部からの信号を内部に伝えます。
神経系の情報伝達のメカニズムは以下の通りです。
- シナプスで神経伝達物質と受容体が結合する
- 受容体が結合した反応でイオンチャネルを開く
- ナトリウムイオンがイオンチャネルから細胞内部に侵入する
神経線維細胞内は静止時にはマイナス、細胞外はプラスになっています。
イオンチャネルが開くことでナトリウムイオンが細胞内に入ります。
ナトリウムイオンはプラスイオンなので細胞内外の電位が逆転します。
電気的な情報伝達は「プラス」か「マイナス」しか判断しないのです。
栄養素の吸収と輸送
ナトリウムは、体内の栄養素の吸収や輸送にも役立っています。
体液は
- 血漿(けっしょう)(血液中から赤血球、白血球、血小板を除いた液体成分)
- 組織間液(細胞と血管の間の体液)
- リンパ液
- 細胞内液(細胞の内部の体液)
に分けられます。
血漿と組織間液やリンパ液などを、まとめて細胞外液と呼ばれることもあります。
血漿に含まれてきた酸素と栄養素が浸透圧で組織間液に移動します。
そして、組織間液に移動した酸素と栄養素は、浸透圧で細胞内液に取り込まれます。
細胞内液に取り込んだ栄養と酸素を使用してエネルギー合成がおこなわれます。
エネルギー合成によってできた老廃物と炭酸ガスが、浸透圧で組織間液に移動します。
組織間液に移動した老廃物と炭酸ガスが浸透圧で血漿に移動します。
そして、老廃物と炭酸ガスは血管を通って体外に排出されます。
血圧の調節
体内のナトリウム濃度の調節により、血圧が低下したり上昇したりします。
ナトリウムの濃度が高くなると、腎臓のバソプレシンにより水分の再吸収が行われます。
そして、余分なナトリウムを排出して水分の放出を抑制することで血圧が低下します。
また、ナトリウムの濃度が低くなると、腎臓のアルドステロンによりナトリウムの再吸収が行われます。
そして、余分な水分を排出しナトリウムの排出を抑制することで血圧が上昇します。
脱水や出血などで血圧が著しく低下した場合には、腎臓はレニンを放出します。
レニンは肝臓で作られるアンジオテンシンノーゲンを小さなペプチドに分解します。
小さなペプチドは体内にあるアンジオテンシン変換酵素によって、更に小さなペプチド(アンジオテンシンⅡ)に変換されます。
アンジオテンシンⅡは小動脈の収縮を促し、出血を止める働きをします
そして、アンジオテンシンⅡは腎臓のアルドステロンの合成も強く促し血圧が下がらないようにします。
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ナトリウムの適切な摂り方と摂取量
ナトリウムの摂りすぎは体によくありません。
ナトリウムの適切な摂り方と摂取量をご紹介します。
出典:厚生労働省「ナトリウム | e-ヘルスネット(厚生労働省)」
日本人の食塩摂取量は多すぎる
現代の日本人の食生活は、塩分の過剰摂取による高血圧やがんを主とする、生活習慣病が問題になっています。
毎日の食事で、減塩を意識することが大切です。
日本人がナトリウムを摂りすぎる理由
日本の伝統的な和食は、食塩の摂取量が多くなりやすい面があります。
みそやしょうゆなどの調味料には多くの塩分が含まれています。
ナトリウムが多いと循環器疾患のリスクが増大する
ナトリウムを多く摂ると、水分量を調節するため血液が増えて高血圧になります。
高血圧状態が続くと血管は厚く硬くなり、動脈硬化の原因になります。
食塩摂取量の目標値|WHOと厚生労働省は異なる値
ナトリウムの1日の摂取量は、WHOでは5g未満を推奨しています。
しかし厚生労働省では、男性は7.5g未満、女性は6.5g未満を目標にしています。
食品成分表示の見方|ナトリウム量と食塩相当量
ナトリウムは、食塩の約40%です。
「ナトリウム量=食塩量」ではないので、注意しましょう。
計算式は、ナトリウム(㎎)×2.54÷1,000=食塩量(g)です。
普段の食事は薄味を心がけよう
味が濃いと塩分濃度も比例的に高くなる傾向があります。
酢や出汁を利用した味付けで、減塩食を取り入れていきましょう。
ナトリウムは、体内の水分バランスや細胞外液の浸透圧を維持している必須ミネラルの1つです。ナトリウムはどのような食品に多く含まれるのでしょうか?ナトリウムは体内でどのような働きをしているのでしょうか?この記事では、ナトリウ[…]
ナトリウム過剰と不足の影響
ナトリウムを摂りすぎたり不足したりすると、体に様々な影響が起こります。
それぞれどんな問題が起こるのか説明していきます。
ナトリウム過剰で起こること
ナトリウム過剰でおこるのは、主に血管に関係する疾患です。
以下で解説していきます。
血圧が上がる
体内のナトリウムの濃度を下げるために、細胞が水分を多く吸収します。
すると、血液量が増加し血管に負担がかかるため、血圧が上がります。
体がむくむ
体内のナトリウムの濃度を下げるために、細胞が水分を多く吸収します。
すると、細胞間液の液量が増加し、むくみが生じる可能性があります。
脳や心臓の病気になりやすくなる
高血圧のままの状態が続くことで、血管にも負担がかかります。
負担のかかった血管は厚く硬くなり、動脈硬化の原因になります。
腎臓に負担がかかる
ナトリウムは、そのほとんどが腎臓から尿として排出されます。
腎臓の処理能力を超えたナトリウムを摂取すると、腎臓に負担がかかります。
長期間腎臓に負担をかけることで、腎機能障害が起こる可能性があります。
ナトリウム不足で起こること
ナトリウム不足でおこる症例を紹介します。
低血圧
ナトリウムが不足すると、血液の浸透圧を維持する身体の働きにより血液量が少なくなります。
その結果、低血圧の症状があらわれます。
意識がもうろうとする
脳は血液中のナトリウム濃度を敏感に感じます。
そのため、脳機能障害の症状が最初に発生します。
体を動かせなくなる
筋肉を動かすにはナトリウムが必要不可欠です。
足りなくなることでけいれんの症状などがあらわれます。
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ナトリウムとカリウムのバランスをとるコツ
ナトリウムとカリウムのバランスをとることが、健康に役立ちます
以下で、バランスを良くする方法をご紹介します。
ナトリウム摂取量を減らす
ナトリウム摂取量を減らす方法をご紹介します。
減塩調味料を使う
塩分ではなく、うま味調味料で味を整えるなどの方法で減塩効果は期待できます。
うま味調味料とは、昆布やかつお節に含まれる成分を利用した調味料のことです。
調味料はかけるよりつける
調味料は、小皿に入れてかけるよりも少量をつけて食べると使用量が少なくなります。
酢や香辛料で味付けする
塩味以外の味や香りで、おいしいと感じられる料理にできます。
だしや酸味のあるもの、カレー粉などの香辛料など、代用できるものを使用しましょう。
汁物は1日1杯にする
汁物は具だくさんにして、1日1杯をこころがけると効果的な減塩になります。
塩蔵食品は少量にとどめる
塩を加えた加工品の塩蔵食品は、がんのリスクを高める可能性があります。
食べすぎに注意が必要です。
麺類の汁を半分以上残す
麺類の汁には、多くの塩分が含まれています。
汁まで飲み干すことで、大量の塩分を摂取することになります。
たとえば、ラーメンの汁には7〜8gの塩分量が含まれています。
また、うどんやそばなどの汁にも塩分が多く含まれています。
麺類の汁は半分以上残しましょう。
カリウム摂取量を増やす
高血圧などの改善には塩分を控えるのと同じくらいカリウムの摂取も大切です。
カリウムの役割と摂取方法について、ご紹介します。
カリウムはナトリウムの排出を促す
カリウムは腎臓からナトリウムを排出する働きをサポートします。
野菜や果物を積極的に食べる
カリウムは、野菜や果物に豊富に含まれています。
積極的に摂取しましょう。
レンジ調理や蒸し料理で食べる
カリウムは水に溶けやすいという性質を持っています。
効率的に調理するのであれば、レンジ調理や蒸し料理が効果的です。
カリウムが豊富な食べ物
野菜や果物、海藻類の特に乾燥したものに豊富に含まれています。
ただし、海藻類にはナトリウムを多く含むものもあるので、注意が必要です。
ナトリウムまとめ
ここまでナトリウムについてお伝えしてきました。
ナトリウムの要点をまとめると以下の通りです。
- ナトリウムは体内に必要不可欠なミネラル
- 体内の水分や浸透圧、血圧などを調節する役割がある
- 1日の摂取基準量を守り、カリウムとのバランスも考えながら摂取する
- ナトリウムを摂取しすぎると、高血圧や低血圧、脳や心臓に負担がかかる
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。