みなさんは、バリンについてどのくらいご存知でしょうか。
バリンは必須アミノ酸のひとつで、体内で産生されないため食事から摂る必要があります。
さらに、筋肉の合成や肝臓機能の改善など私たちの体に重要な効果があります。
しかし、バリンは何から、どのくらいとればいいのか知っていますか?
今回の記事ではバリンについて以下の内容を中心にお話しをしていきます。
- バリンの体への効果・効能
- バリンを効率よくとることができる食べ物やタイミング
- バリンはとりすぎると良くないのか
バリンの効果やとり方を理解し、健康的な体を目指しましょう。
ぜひ最後までご覧ください。
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バリンの基本情報
まず、「バリン」という名前は聞いたことはあるが、何かはわからない、という方のため、バリンについてお話しします。
バリンとは
バリンとは体内で産生することができない「必須アミノ酸」の一種です。
また、バリンは分岐鎖アミノ酸(BCAA)のひとつで筋肉の合成に重要な役割があります。
バリンの働き
バリンは、私たちの体に様々な効果をもたらしてくれます。
バリンの働きについて、一緒に確認していきましょう。
成長に関与
バリンは成長を促したり、エネルギーの産生を行ったり、大切な働きをしています。
成長期の子供にはとくに重要であり、絶対に欠かすことができません。
血液中の窒素バランスの調整
私たちの体は、タンパク質と血中の窒素量のバランスが保たれていないといけません。
バリンは血中の窒素バランスを調整し、筋肉の成長や体の状態のサポートをしてくれます。
アンモニアの代謝改善
バリンなどのBCAAは筋肉で代謝される際に、アンモニアを解毒してくれます。
肝機能向上
バリンは血中のアルブミン量を増やし、肝臓のエネルギー不足を補ってくれます。
血中のアルブミン量が増える作用により、肝機能の向上に関与します。
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バリンの3つの効果
バリンは私たちの体に素晴らしい効果をもたらしてくれます。
さきほどお話ししたバリンの働きに加えて、以下の3点について詳しく説明していきます。
筋肉の修復
バリンはロイシン・イソロイシンとともに、BCAAに分類されます。
BCAAは摂取されると、その約4割が筋肉へ運ばれます。
そのため、バリンは筋肉の合成やエネルギーの供給に非常に重要な役割をしています。
また、バリンは筋肉の損傷を防いだり、筋肉を修復する作用をもっています。
加えて、体内の窒素のバランスを調整して筋肉の分解を防ぐこともできます。
私たちの筋肉が成長するには窒素を筋肉内に取り込むことが必要です。
体内の窒素量に見合ったタンパク質を補給できていないと、体の窒素バランスは崩れます。
このバランスの崩れを補うために、体内にタンパク質が少ない状態では、自らの筋肉を分解してしまうのです。
よって、バリンの摂取は筋肉の損傷や分解を防いだり、筋肉の修復を助けてくれます。
肝硬変の改善
バリンをはじめとして、BCAAには肝硬変を改善させる効果があります。
肝臓の代表的な働きとして、タンパク質の合成とエネルギーの貯蔵があります。
肝硬変の方は肝機能の低下により、血中アルブミンが年間平均して0.15/dl低下します。
血中のアルブミンが3.5g/dl未満の患者では、5年生存率が著明に低下するとされています。
このことから、肝硬変患者では血中のアルブミンをとることが重要となります。
ここで注意したい点は、単純にタンパク質量を増やせばいいわけではないということです。
肝硬変が進行した状態でタンパク質を摂りすぎると、血中のアンモニア値が上がります。
これにより、「肝性脳症」という昏睡状態におちいることがあるので注意が必要です。
肝硬変の方の血中アミノ酸は、BCAAとAAAのバランスが崩れてしまいます。
BCAA(バリン・ロイシン・イソロイシン)が減少し、AAA(フェニルアラニン・チロシン)が増加してしまうのです。
BCAAは筋肉で代謝される際に、アンモニアの解毒をします。
同時に肝臓のエネルギー源になり、肝臓のエネルギー不足を補うことが期待できます。
つまり、BCAAを多くとり、AAAを減らすようアミノ酸バランスを整えることが大切です。
美肌効果
バリンには肌のハリや弾力を保つ効果があります。
私たちの肌は、「エラスチン」により、内側から支えられています。
エラスチンはバリンなど5種類のアミノ酸が約8〜9割で、多くのアミノ酸からなります。
私たちの肌の表面は表皮といい、角質層や顆粒層といった層が並んでいます。
主に体外からの異物の侵入を防いだり、乾燥を防ぐバリアの役割をしています。
表皮の下は真皮と呼ばれ、肌の大部分を占めています。
真皮は約2mm程あり、主にコラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸などで構成されます。
バリンはこの層でコラーゲン同士を結びつけ、エラスチンを構成します。
このバリンの働きにより、私たちの肌はハリを保つことができるのです。
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バリンが多く含まれる食品
バリンは体内では産生できないため、体外からとる必要があることをお伝えしてきました。
以下にバリンを多く含む食べ物の一覧をご紹介します。
【食材別 バリン含有量】
食材名 | バリン 含有量(mg) ※食材100gあたり |
豚レバー、牛レバー | 1,200 |
仔牛肉 | 1,200 |
マグロ | 1,200 |
脱脂粉乳 | 2,200 |
プロセスチーズ | 1,600 |
豆腐(木綿) | 360 |
落花生 | 1,200 |
出典:文部科学省【日本食品標準成分表2020年版(八訂)】
これらの食品はいずれもタンパク質量が多い食品となっています。
食品によって、カロリーや含まれるビタミンも違うので、偏りなく選びましょう。
バリンの目安摂取量
バリンの一日における必要摂取量は年齢によって差があります。
年齢別の一覧を以下に示します。
【年齢別 バリンの必要量 ~男女共通~】
年齢(歳) | バリンの必要量(mg/kg体重/日) |
0.5 | 48 |
1~2 | 36 |
3~10 | 29 |
11~14 | 29 |
15~17 | 28 |
18以上 | 26 |
出典:厚生労働省【日本人の食品摂取基準(2020年版)】
上の表を元に計算すると、1歳で10㎏の子供の場合は、
「36(mg)×10(kg)=360(mg)」で360mgのバリンが必要となります。
プロセスチーズ25gや木綿豆腐100gと同じ程度ですね。
18歳以上の成人では、1日に26㎎×体重分が必要となります。
仮に体重が60㎏の方だと、「26(mg)×60(kg)=1560(mg)」となります。
プロセスチーズやマグロの刺身を100g摂取すれば、大体の必要量を補えます。
バリンを効率を上げる摂取タイミング
バリンを含むBCAAは筋肉内に占める割合も多く、筋肉の合成と密接に関係してます。
そのため、運動時に摂取することで効率よく体にとりこむことができます。
ある研究で、BCAA摂取後の血中BCAA濃度を調べると、30分後にピークを示しました。
加えて、2000mg以上摂取することにより、摂取2時間後も良好な数値を維持していたと報告されています。
このことからも、運動の30分前にBCAAを摂取することが望ましいといえます。
運動中にもBCAAを摂取すると、効率よくトレーニングが行えます。
運動中に摂取すると、BCAAは運動中のエネルギー源になってくれます。
このBCAAのエネルギー供給により、筋肉の分解を防ぎつつ、運動を行えるのです。
最後に運動後も重要なタイミングです。
BCAAには筋損傷の程度を軽くしたり、筋肉の修復を助ける作用があります。
また、運動後に摂取することで筋肉の成長をより促進してくれます。
運動時はとくに、以上のタイミングで摂取するように意識しましょう。
運動時に、食べ物から摂取すると消化不良などで内臓にも負担をかけます。
プロテインやサプリメントなどを利用して、効率的に栄養補給しましょう。
バリンが過剰・不足するとどうなる?
バリンが体にもたらしてくれる効果についてお話ししました。
体によい印象のバリンですが、摂りすぎた場合や足りない場合はどうなるのでしょう。
過剰摂取した場合
バリンの多くは筋肉で代謝されます。
そのため、短期間の摂取では人体への影響はほとんどありません。
サプリやプロテインを長期で摂取する際には、肝臓や腎臓が負担を受けることがあります。
従って、過剰摂取にならないように注意しておく必要があります。
妊娠中や授乳中に関しては、まだ十分な報告がなく、不透明な部分もあります。
妊娠中は活動量なども減少することを考慮すると、過剰摂取は避けたほうがよいでしょう。
不足している場合
バリンなどのBCAAの大きな役割は、筋肉の合成や維持です。
そのため、バリンの不足にともない、筋肉量の減少が起こる可能性があります。
また、バリンの不足は体内の窒素バランスを崩してしまいます。
結果、筋肉の分解は進み、さらに筋量の減少や痩せに繋がるでしょう。
また、肝臓への影響も考えられます。
バリンの不足により、肝臓へのエネルギー供給が減少します。
アンモニアの解毒も困難になり、さらなる肝機能の低下を引き起こします。
バリンには食欲の促進をする作用もあります。
従って、バリンが不足すると食欲は低下し、栄養不良などの悪循環を引き起こします。
バリンは通常の食事で十分に摂取できる
普段の食事からバリンの必要量をとるのは、難しいことではありません。
毎日、質のよいタンパク質を摂取することで、バリンの必要量は十分補うことができます。
しかし、摂取内容の偏りには注意しましょう。
動物性タンパク質や牛乳やチーズなどの乳製品はバリンを多く含みます。
同時に、脂質やカロリーも多いため、注意が必要です。
食事はタンパク質を1.2品分意識してとり、バランスよくとるようにしましょう。
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バリンのまとめ
ここまでバリンについてお伝えしてきました。
バリンの要点を以下にまとめます。
- バリンは筋肉の合成・修復をはじめとし、肝機能の改善や美肌効果もある
- 質の良いタンパク質を摂り、運動時はサプリやプロテインを利用し運動前後と運動中にBCAAを摂取する
- 過剰摂取も現状は大きな問題はないが、妊婦や授乳中は過剰な摂取を控える
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。