脳梗塞とは、脳血管が詰まり、脳へ酸素や栄養が行き届かなくなることにより、さまざまな症状がみられる病気をいいます。
日本では、脳梗塞を含む脳血管疾患が全死因の4位となっています。
脳梗塞には、どのような原因があるのでしょうか?
脳梗塞は、予防することができるのでしょうか?
この記事では、脳梗塞の原因について以下の点を中心にご紹介します。
- 脳梗塞とは
- 脳梗塞の予防方法とは
- 脳梗塞の症状とは
脳梗塞の原因について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ、最後までご覧ください。
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脳梗塞とは
脳梗塞とは、何らかの原因で脳血管が詰まり、脳へ酸素や栄養が行き届かなくなることにより、さまざまな症状がみられる病気をいいます。
脳梗塞の重症度は、詰まった血管の部位や側副血行の発達状況によりさまざまです。
脳梗塞は、要介護認定を受けている方が最も多い原因疾患の1つになっています。
出典:厚生労働省【要介護状態の原因となる疾病】
脳梗塞というと、突然倒れて意識を失うイメージを持っている方が多いかもしれません。しかし、それは脳梗塞の症状のほんの一部なのです。脳梗塞の原因や症状についてよく理解することで、もしもの時に適切な対応ができるようにしましょう。また、[…]
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脳梗塞の種類
脳梗塞には、どのような種類があるのでしょうか?
脳梗塞は、大きく以下に分けられます。
- 脳梗塞の臨床病型
- 脳梗塞の機序分類
脳梗塞の種類について分類別に詳しく見てみましょう。
脳梗塞の臨床病型分類
脳梗塞の臨床病型では、主に以下の3つに分類されます。
- ラクナ梗塞
- アテローム脳梗塞
- 心原性脳塞栓症
ラクナ梗塞
ラクナ梗塞は、脳の深い部分を流れている0.9mm以下の細い血管に発生します。
ラクナ梗塞は、直径15mm以下の小さな脳梗塞をいいます。
ラクナとは、ラテン語で「小さなくぼみ」を意味します。
高齢者や高血圧の方にみられやすい脳梗塞です。
アテローム脳梗塞
アテローム脳梗塞は、
- 脳内の太い血管
- 頚動脈
に発生します。
アテローム脳梗塞は、コレステロールなどのアテロームで血管が狭くなり、血の塊(血栓)が詰まることによる脳梗塞をいいます。
- 高血圧
- 高脂血症
- 糖尿病
などの動脈硬化に危険因子となる持病を持っている方にみられやすい脳梗塞です。
心原性脳塞栓症
心原性脳塞栓症とは、「心臓」に起因する脳梗塞で、心臓内で作られた塞栓が脳の血管に詰まることで発症します。
心原性脳塞栓症は、脳内の
- 太い血管
- 頚動脈
- 椎骨動脈
に発生します。
心原性脳塞栓症は、太い血管を血栓で突然閉塞するため、前触れがなく重篤な症状を招く危険性が高い脳梗塞になります。
不整脈や心臓弁膜症などの心疾患がある方にみられやすい脳梗塞です。
脳梗塞の機序分類
脳梗塞が発症する機序では、主に以下の3つに分類されます。
- 血栓症
- 塞栓性
- 血行力学性
血栓性
血栓性は、血管内に血栓が生じます。
血管内の血液が次第にドロドロになり、血管内壁に血栓が付着し、動脈硬化が進行します。
脳内の血管の動脈硬化が進行することで、血管が徐々に狭くなります。
最終的には、血管が血栓で閉塞してしまうことにより、さまざまな症状がみられるようになります。
塞栓性
塞栓症は、
- 大動脈
- 頚動脈
などの太い血管にできた血栓がはがれ、脳内の血管を閉塞してしまいます。
塞栓症には、以下の2タイプがあります。
- 動脈原性脳塞栓症
- 心原性脳塞栓症
突然、血管が血栓で閉塞してしまうため、症状は突発的にみられます。
血行力学性
血行力学性は、何らかの原因でショック状態となり、急激な
- 血圧低下
- 心拍出量の低下
などにより、脳梗塞を引き起こします。
心肺停止の際に脳梗塞が引き起こされるのは、この血行力学性の機序によります。
症状としては、TIAと呼ばれる一過性脳虚血発作が繰り返しみられます。
潜因性脳梗塞とは
潜因性脳梗塞とは、機序分類が不明であり、臨床病型分類が判断できない原因不明の脳梗塞になります。
出典:厚生労働省【潜因性脳梗塞と塞栓源不明脳塞栓症】
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脳梗塞に至る主な原因
脳梗塞に至るには、どのような原因があるのでしょうか?
脳梗塞に至る主な原因は、以下のような原因があります。
- 高血圧
- 糖尿病
- 心臓病
- 喫煙
- 飲酒
- 肥満
- 加齢
- ストレス
脳梗塞の原因について詳しくみてみましょう。
高血圧
高血圧は、脳梗塞の最大の危険因子といわれています。
高血圧では、ラクナ梗塞を引き起こしやすく、日本人で最も多い脳梗塞といわれています。
収縮期血圧160mmHg以上では約4倍、拡張期血圧95mmHg以上では約3倍の確率で脳梗塞を発症する可能性があるといわれています。
糖尿病
糖尿病になり、高血糖が持続することで血液がドロドロになってしまいます。
また、血流の低下や血管壁が傷つきやすくなります。
これらの状態は動脈硬化を促進し、脳梗塞の原因となります。
糖尿病では、脳梗塞を発症するリスクが2〜4倍高くなるといわれています。
心臓病
心房細動をはじめとする不整脈は、血栓ができやすくなってしまいます。
不整脈や心臓弁膜症などの心疾患を持っている方は、脳梗塞を引き起こす可能性が高くなるといわれています。
喫煙
喫煙は、
- 血管の収縮
- 血圧の上昇
- 心拍数の上昇
をもたらし、血栓をできやすくしてしまいます。
喫煙は動脈硬化を促進し、脳梗塞を発症するリスクが2〜3倍高くなるといわれています。
飲酒
アルコールには、利尿作用があります。
過度の飲酒では、体内が脱水状態になってしまいます。
脱水症状になると、血液がドロドロになり、血栓ができやすくなってしまいます。
1日のアルコール摂取量が60gを超える方は、脳梗塞を発症するリスクが約1.7倍高くなるといわれています。
(ビール500mlでアルコール20gとなります。)
肥満
肥満になると内臓脂肪が増えることで、血栓ができやすくなります。
また、肥満は、
- 糖尿病
- 高脂血症
- 高血圧
などにつながります。
肥満度をあらわすBMIが30を超える肥満の方は、脳梗塞を発症するリスクが約2倍高くなるといわれています。
加齢
加齢に伴い、脳梗塞の危険因子である
- 高血圧
- 高脂血症
- 糖尿病
を合併する方は増えています。
脳梗塞の危険因子を合併することで、脳梗塞を発症するリスクが高くなります。
ストレス
強いストレスを受けると、
- 不整脈
- 高血圧
を引き起こす場合があります。
不整脈や高血圧は血栓ができやすくなり、脳梗塞を発症するリスクが高くなります。
「遺伝」も脳梗塞の原因となる?
脳梗塞は、遺伝が関係しているといわれています。
親や兄弟姉妹など家族に脳梗塞の病歴がある場合、本人が脳梗塞を引き起こす確率は2〜4倍高くなるといわれています。
特に、近親者が45歳までに脳梗塞を発症している場合、本人が55歳までに脳梗塞を発症する確率が6.7〜11.4倍まで高くなるといわれています。
脳梗塞が家族歴にある場合は、生活習慣や食習慣に注意する必要があります。
脳梗塞の予防方法
脳梗塞を予防するためには、どのような方法があるのでしょうか?
脳梗塞を予防する方法について詳しくみてみましょう。
食生活を改善する
高血圧や高脂血症、糖尿病の要因にもなる
- 塩分
- 脂肪
- アルコール
の摂取は控えめにしましょう。
調味料や出汁をうまく利用したり、食品に含まれている塩分量にも注意したりする必要があります。
肉類や卵に含まれている動物性脂肪は、コレステロールを上昇させる作用があります。
一方、魚類・植物油などに含まれている植物性脂肪は、コレステロールを下げる作用があります。
魚に含まれるDHAやEPAは、動脈硬化を抑制する作用があります。
納豆に含まれるナットウキナーゼは、血栓を溶解する作用があります。
梅干しやレモンに含まれるクエン酸には、血液をさらさらにする作用があります。
魚や野菜を中心とした食事を心がけましょう。
禁煙をする
タバコに含まれるニコチンは、交感神経系を刺激するため、血圧の上昇につながります。
さらにタバコは血液をドロドロにし、動脈硬化を促進させてしまいます。
禁煙を心がけましょう。
飲酒を控える
1日20g程度の「ほどほどの飲酒」は、コレステロールを減少させるともいわれています。
しかし、過度の飲酒は脳梗塞のリスク因子になります。
アルコール摂取は、1日20g程度の「ほどほどの飲酒」を心がけましょう。
水分補給をする
体内が脱水状態となると、血液がドロドロになり、血栓ができやすくなってしまいます。
こまめに水分を補給し、脱水予防に努めましょう。
運動をする
適度な運動は、
- コレステロール
- 中性脂肪
などを下げ、肥満予防になります。
しかし、高強度の運動は血圧の上昇につながってしまいます。
そのため、低・中強度の「ややきつい」と感じる程度
- 心拍数が100~120拍分
- 最大酸素摂取量50%程度
の運動を1日30分以上継続することが望ましいとされています。
- 散歩
- ジョギング
- ラジオ体操
- 自転車に乗る
など、自分に合った運動をするとよいでしょう。
ストレスを発散する
毎日忙しく、ストレスのある生活を送ることは脳梗塞の危険因子である
- 高血圧
- 不整脈
につながります。
できるだけ、ストレスをためず、睡眠をしっかりとる生活を送ることで高血圧や不整脈を予防する必要があります。
適度にストレスを発散し、ゆとりのある生活を心がけましょう。
脳梗塞の自覚症状
脳梗塞では、どのような症状がみられるのでしょうか?
脳梗塞でみられる症状について詳しくみてみましょう。
主な症状
脳梗塞では、さまざまな症状がみられます。
片側の手足や顔がしびれる | 片側の手足が動かしづらい |
手足に力が入りづらい | まっすぐ歩けない |
ふらつく | つまずく |
めまいがする | 話づらい |
呂律が回らない | 言葉が出てこない |
他人が話す意味が分からない | ものがみえにくい |
ものが二重にみえる | 視野が狭い |
嘔吐する | ー |
これらの症状が1つだけみられる場合や複数みられる場合など、症状のあらわれ方はさまざまです。
また、症状が一時的にみられ、治まる場合もあります。
しかし、時間の経過によって症状が悪化する場合もあるため、症状がみられた際は、早期に医療機関を受診しましょう。
無症候性脳梗塞に注意
無症候性脳梗塞とは、症状がほとんどみられない脳梗塞をいいます。
無症候性脳梗塞は、隠れ脳梗塞、微小脳梗塞などともいわれます。
頭痛などの症状により、精密検査を受けた際に明らかになることが多く、近年増加傾向にある脳梗塞になります。
症状がみられなかったとしても、脳梗塞には違いありません。
無症候性脳梗塞がみつかってから、数年以内に約3割の方が再び脳梗塞の発作を引き起こすというデータがあります。
また、無症候性脳梗塞の方は10倍以上も、脳梗塞を含む脳卒中を引き起こしやすいといわれています。
無症候性脳梗塞と診断された場合は、生活習慣を見直し、しっかり再発予防に努める必要があります。
脳梗塞はいつ発症する?
脳梗塞は、いつ発症することが多いのでしょうか?
脳梗塞の発症時期について詳しくみてみましょう。
脳梗塞は午前中が多い
脳梗塞は、起床後から午前中に発症することが多いといわれています。
脳梗塞の発症は、血圧が変動しやすい時間帯に関係しています。
一般的に夜間睡眠中は最も血圧が下がり、血流が悪くなります。
また、睡眠中に汗をかくことにより、血液がドロドロになり、血管が詰まりやすい状態になります。
脳梗塞は、朝の8時から12時の間の起床後数時間以内の発症率が高く、血圧の変動によるものと考えられています。
脳梗塞は夏が多い
脳梗塞は、暑い夏に発症することが多いといわれています。
暑い夏は、大量の汗をかき、体内が脱水状態に陥りやすくなります。
血液がドロドロになり、血管が詰まりやすくなることで脳梗塞を発症しやすくなります。
暑い夏は、こまめに水分補給を行い、脱水予防に努めましょう。
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脳梗塞の検査方法
脳梗塞が疑われた場合は、迅速に検査をして、早急な治療を行わなければなりません。
脳梗塞が疑われた際に、医療機関で行われる検査方法について詳しくみてみましょう。
CT(コンピューター断層撮影)
MRI(核磁気共鳴画像法)
- 梗塞や出血の有無を確認
- 脳梗塞のタイプを診断
MRA(磁気共鳴血管造影)
- 動脈硬化の進行部位や動脈瘤の有無を確認
- 脳血流検査
- 脳の血流を画像で判断する
- 脳血管造影検査
- 脳の血管の状態や血流をカテーテルから造影剤を注入して調べる
心電図検査
- 不整脈の有無を確認
- 心臓超音波検査
- 血栓の有無を確認
その他にも、脳梗塞のリスク要因を確かめるために血液検査などさまざまな検査が必要に応じて行われます。
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脳梗塞の治療方法
脳梗塞には、どのような治療方法があるのでしょうか?
脳梗塞の治療方法について詳しくみてみましょう。
主な治療方法
脳梗塞の治療方法は、大きく分けると以下の2種類になります。
- 薬物療法
- 手術療法
薬物療法では、以下のような薬剤が用いられます。
- 抗血小板剤:血小板の凝集を阻害し、血管が詰まらないようにする
- 抗凝固剤:血液の凝固をふせぐ
- 降圧剤:血圧を下げる他、動脈硬化を抑制する
- スタチン系薬剤:悪玉コレステロールを減少させ、善玉コレステロールを増やす
また、手術療法では主に以下の3つに分けられます。
血管吻合術(バイパス術)
詰まってしまった血管の先にある血流が不足している状態の血管に、頭皮の血管をつなぎ、血流を回復させる方法です。
頭部内頚動脈内膜剥離術
動脈を遮断した状態で内頚動脈の厚みが増している部分を切開し、プラークを除去する方法です。
頸部内頸動脈ステント術
血管が狭窄している部分にステント(金属でできたメッシュ状の筒)を留置し、血管の狭窄を改善する方法です。
脳梗塞は繰り返す可能性が高い
脳梗塞は早期の治療により、症状を改善することができます。
しかし、原因が生活習慣にある場合は、再発することが多くなります。
また、再発を重ねるごとに、脳梗塞の症状は重度になるともいわれています。
脳梗塞を引き起こす動脈硬化を予防するためにも、
- 高血圧
- 高脂血症
- 糖尿病
などの治療をしっかり行うことが重要です。
生活習慣の見直しを行うとともに、必要な薬剤は継続して服用しましょう。
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年代別の脳卒中患者の割合
脳卒中とは、脳の血管が破れたり、詰まったりすることにより、栄養が行き届かなくなることで、脳に障害が起きる疾患をいいます。
脳梗塞は、脳卒中に含まれます。
脳卒中の発症状況の調査によると、50〜60代から増加傾向にあります。
また、脳梗塞の危険因子の1つである高血圧は、30〜40代から増加傾向にあります。
さらに、脳梗塞の危険因子の1つである糖尿病は、40代から増加傾向にあります。
これらの結果から、高血圧や糖尿病と診断され、徐々に動脈硬化が進行することにより、最終的に脳梗塞を含む脳卒中を引き起こしていることが予測できます。
日頃から、規則正しい生活習慣や食習慣を心がけ、脳卒中の危険因子となる疾患を予防することが重要になります。
出典:島根県保健環境科学研究所【脳卒中発症状況調査】
出典:【高血圧は若い人でも多いの?】
脳梗塞の原因まとめ
ここまで、脳梗塞の原因についてを中心にお伝えしてきました。
- 脳梗塞とは、脳血管が詰まり、脳へ酸素や栄養が行き届かなくなることで、さまざまな症状がみられる病気である
- 脳梗塞を予防するには、食生活の改善・禁煙・適度な飲酒・水分補給・運動・ストレス発散などがある
- 脳梗塞の症状には、運動障害、言語障害、感覚障害、視覚障害などによるさまざまな症状がある
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。