漢方は古代中国医学をもとに、日本で発展した伝統医学です。
漢方薬は2つ以上の生薬を組み合わせてつくられ、様々な種類があります。
漢方薬の1つである防風通聖散をご存知でしょうか。
防風通聖散にはどのような効果があるのでしょうか。
本記事では防風通聖散について以下の点を中心にご紹介します。
- 防風通聖散の効果
- 防風通聖散の服用に向いている人
- 防風通聖散の効果が出るまでの服用期間
漢方の1つである防風通聖散を理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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防風通聖散ってどんな漢方?
防風通聖散の読み方は「ぼうふうつうしょうさん」です。
主に、肥満症の改善目的に処方される漢方です。
防風通聖散には以下の18種類の生薬が配合されています。
生薬名 | 読み方 |
当帰 | トウキ |
芍薬 | シャクヤク |
川芎 | センキュウ |
山梔子 | サンシシ |
連翹 | レンギョウ |
薄荷 | ハッカ |
生姜 | ショウキョウ |
荊芥 | ケイガイ |
防風 | ボウフウ |
麻黄 | マオウ |
大黄 | ダイオウ |
芒硝 | ボウショウ |
白朮 | ビャクジュツ |
桔梗 | キキョウ |
黄芩 | オウゴン |
甘草 | カンゾウ |
石膏 | セッコウ |
滑石 | カッセキ |
漢方薬の市場で約8割以上を占めているツムラでは、62番の漢方薬になります。
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防風通聖散はこんな人におすすめ
防風通聖散がおすすめの方は、以下の通りです。
- 肥満が気になる方(特にお腹周りの皮下脂肪が気になる方)
- 食べすぎていないのに脂肪がつきやすい方
- 高血圧や肥満に伴う動悸、肩こり、のぼせ、むくみがある方
- 便秘ぎみの方
- 副鼻腔炎、蓄膿症の方
- にきびが気になる方
ただし、上記の症状であっても防風通聖散が必ずしも適した漢方とは限りません。
漢方では「証」により、適した漢方薬が処方されます。
「証」とは、西洋医学でいう「診断」を意味します。
証の判別要素は、以下の通りです。
証の判別要素 |
体質 |
体力 |
体の抵抗力 |
病気の原因 |
防風通聖散は「実証」の体質の方に向いています。
「実証」とは、体力や抵抗力が充実している方をいいます。
また、
- 筋肉質な体をしている
- 食欲が旺盛で胃腸が強い
- 暑がり
- 便秘ぎみ
- 声が大きく太い
- 血色がよく、肌にハリとツヤがある
なども実証の特徴です。
実証であることに加え、さらに以下の特徴がある方は防風通聖散が向いています。
- 体型がぽっちゃりしている
- 運動不足である
- 食べ過ぎることがよくある
- 脂っこい食べ物が好き
実証であることやその他の特徴を踏まえて、防風通聖散の服用を検討しましょう。
防風通聖散は市販でも手に入りますが、医師に相談し正しく服用することが大切です。
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防風通聖散の効果
防風通聖散はどのように身体に作用していくのでしょうか。
効果・効能について説明していきます。
防風通聖散のさまざまな効果
防風通聖散には、
- 脂肪分解・燃焼
- 血圧をおさえる
- 便秘解消
- 動悸・肩こり・のぼせ・むくみ解消
- 蓄膿症(副鼻腔炎)
- 湿疹・皮膚炎
などの効果があります。
それぞれ詳しく説明していきます。
また、どれくらいの服用期間で効果が期待できるか含めて解説します。
脂肪分解・燃焼
脂肪細胞を活性化させ、脂肪を分解・燃焼します。
防風通聖散は、
- お腹周り
- 太もも
といった脂肪がつきやすい部分に効果が期待できます。
血圧を抑える
防風通聖散は、肥満高血圧の血圧変動性を改善する効果が期待できます。
血圧変動性とは、血圧が常に変動しばらつきがあることを意味します。
血圧変動性は動脈硬化の原因にもなります。
便秘解消
防風通聖散に含まれる「大黄」や「芒硝」は、便を緩くする働きがあります。
そのため便を押し出す便通促進作用が期待できます。
動悸・肩こり・のぼせ・むくみの解消
防風通聖散に含まれる「川芎」には、駆瘀血薬(くおけつやく)としての作用があります。
駆瘀血薬は、簡単にいえば血流を良くし、解毒を促す効果があります。
また「滑石」「白朮」には、利尿作用があります。
血行不良の改善と利尿作用により、
- 動悸や肩こり
- のぼせ
- むくみ
を改善します。
蓄膿症(副鼻腔炎)
防風通聖散に含まれる「甘草」「桔梗」には、
- 鎮咳(ちんがい)…咳を鎮める
- 去痰(きょたん)…痰(たん)を除き去る
といった作用があります。
また、漢方では排膿薬として分類されます。
排膿薬は、溜まった膿を排出する効果があります。
そのため防風通聖散は、蓄膿症によりたまった膿を排出する働きがあります。
湿疹・皮膚炎
防風通聖散に含まれる「石膏」には、
- 消炎
- 解熱
の効能があります。
そのため、湿疹や皮膚炎による炎症などに効果が期待できます。
効果はどれくらいで出る?
防風通聖散には、即効性がありません。
少なくとも効果が出るまでに、2週間〜1ヶ月は飲み続ける必要があります。
以下の服用目安を参考にしましょう。
防風通聖散の服用目安 | |
症状 | 服用目安 |
便秘 | 約1週間 |
肥満症、むくみ | 約1ヶ月 |
根本的な改善 | 約3ヶ月〜半年以上 |
しかし、効果が出たからといって服用をやめてしまえば、元の体質に戻ります。
継続して服用することが重要です。
また効果の現れ方は、
- 症状
- 体質
などによって個人差があります。
1ヶ月程度飲み続けても効果が出なければ、体質に合っていない可能性があります。
医師に相談し、正しく服用しましょう。
また、オンライン上で医師の診療を受けることができ、自分に合った漢方やサプリを処方してくれるサービスもおすすめです。
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防風通聖散の飲み方
防風通聖散の服用方法は以下の通りです。
防風通聖散の服用方法
1日の服用回数
2〜3回
服用のタイミング
- 食前または食間
- 空腹時の服用は薬の吸収効率が上がる
服用方法
- 水またはお湯
- お湯で溶いてから服用すると、吸収されやすくなる
また、用法・用量は製品により異なります。
製品ごとの服用方法は、以下の通りです。
※服用量・服用回数は15歳以上の方について記載しています。
メーカー名
販売薬品名
1回の服用量
服用のタイミングと
1日の服用回数
ツムラ
ツムラ漢方防風通聖散エキス顆粒
1包
食前に2回/日
ロート製薬
新・ロート防風通聖散錠T
4錠
食前または食間に3回/日
クラシエ
漢方防風通聖散料エキスFC錠
4錠
食前または食間に3回/日
大正製薬
テイシ防風通聖散
4錠
食前または食間に3回/日
小林製薬
ナイシトールZa
5錠
食前または食間に3回/日
漢方生薬研究所
EGタイトlight
4錠
1日3回朝昼夕の食前
また服用に関する注意点を、以下の順にご説明します。
- 15歳未満の服用について
- 服用のタイミング
- 飲み忘れたとき
【15歳未満の服用について】
メーカーによっては、15歳未満の服用が不可の場合もあります。
しかし、15歳未満でも服用量を減らして飲める場合もあります。
服用前に必ず用法・用量、注意事項を確かめて下さい。
【服用のタイミング】
服用のタイミングは、
- 食前…食事する約30分前
- 食間…食事の約2時間後
のことです。
【飲み忘れたとき】
飲み忘れたときは、気づいたときに服用しましょう。
ただし、以下の注意点を守ってください。
- 空腹時に服用する
- 次に服用する時間を5時間以上空ける
- 2時間程度しか服用時間が空かない場合、1回分飛ばす
- 1度に2回分を服用しない
防風通聖散の注意点・副作用
防風通聖散は、副作用が出にくい漢方です。
しかし、防風通聖散にはさまざまな生薬が含まれています。
生薬が体質に合わない場合、副作用が出やすくなります。
主な副作用は以下の通りです。
発疹 | かゆみ | 不眠 | 発汗過多 |
頻脈 | 動悸 | 食欲不振 | 胃部不快感 |
悪心・嘔吐 | 腹痛 | 軟便・下痢 | 排尿障害 |
また、下痢などの消化器症状が起こる可能性があります。
防風通聖散に含まれる、「大黄」と「芒硝」が腸に働きかけるためです。
また、
- 肝機能障害
- 間質性肺炎
などの副作用が出る場合もあります。
下記の症状が出た場合は、すぐに医師に相談しましょう。
- 頭痛
- 息苦しさ
- 発熱
など
注意点について、以下の順にご説明します。
- 他の漢方を飲んでいる場合
- 薬を定期的に飲んでいる場合
【他の漢方を飲んでいる場合】
他の漢方を飲んでいる場合は、配合されている生薬が重なる場合があります。
特に「甘草」の量には注意が必要です。
甘草の量が多いと、偽アルドステロン症の危険性があります。
偽アルドステロン症は、
- むくみ
- 血圧の上昇
などの症状があります。
また防風通聖散に含まれる「麻黄」には、交感神経を刺激する作用があります。
高血圧や心臓の疾患がある方は、特に慎重に服用する必要があります。
【薬を定期的に飲んでいる場合】
薬を定期的に飲んでいる方は、注意が必要です。
飲み合わせに問題が生じると、
- 薬の効果が半減する
- 効果が出過ぎてしまう
などの危険性があります。
飲み合わせに注意が必要な薬は、以下の通りです。
- エフェドリン
- チラーヂン
- アドレナリン
- イソプレナリン
- テオドール
- グリチルリチン
など
持病などにより定期的に薬を服用されている方は、医師に相談しましょう。
防風通聖散の肥満・高血圧への効果
防風通聖散は、肥満や血圧への効果が実証されています。
それぞれのメカニズムについて説明していきます。
肥満への効果
防風通聖散が、肥満に効果があるメカニズムは主に3つです。
- 脂肪細胞活性化
- 脂質の吸収抑制
- 便通促進
それぞれ詳しく解説していきます。
脂肪細胞活性化
防風通聖散は、脂質細胞を活性化することで脂肪を分解・燃焼させます。
防風通聖散には、以下の2つの効果が明らかにされています。
- 白色脂肪組織の脂肪分解を促進する
- 熱産生組織である褐色脂肪細胞を活性化する
上記の2つの効果が、体重を減少させます。
また内臓脂肪型肥満症に効果があり、腹部内臓脂肪の減少に効果が期待できます。
脂質の吸収抑制
腸管での、脂質の吸収を阻害します。
吸収を阻害することで、脂質排泄促進効果が明らかにされています。
吸収されなかった脂質は便と一緒に排泄されます。
よって、脂質が吸収されにくくなる効果により余分な脂肪が体につきにくくなります。
便通促進
防風通聖散を服用すると、便の量が増えることも明らかにされています。
漢方医学では、肥満は毒が体内に滞っている状態と考えられています。
肥満の原因となる毒は、
- 脂質
- コレステロール
と考えられています。
つまり毒を体内から排出することで肥満改善への効果が期待されます。
その他の効果
さらに、食欲増進ホルモンである「グレリン」を抑制する働きがあります。
食欲が抑えられることで、食べ過ぎを防ぐ効果が期待できます。
肥満改善の結果がうまく出せない方は、防風通聖散の力を借りてみるのも1つの方法です。
高血圧への効果
高血圧への効果は、服用開始後4ヶ月目から現れる場合が多いようです。
収縮期血圧と拡張期血圧が4ヶ月目より有意に低下することが明らかにされています。
また、血圧の変動が大きすぎると動脈硬化が進行します。
防風通聖散は、血圧の変動を抑える効果が明らかにされています。
よって、防風通聖散の服用により動脈硬化を予防できます。
ひいては、動脈硬化による脳卒中や心血管病変を防ぐことも可能です。
防風通聖散についてより詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
漢方:防風通聖散まとめ
ここまで漢方の防風通聖散についてお伝えしてきました。
防風通聖散の要点を以下にまとめます。
- 防風通聖散は、肥満だけでなく高血圧や便秘改善の効果がある
- 防風通聖散は、体力があり食欲旺盛で胃腸が強い人におすすめ
- 防風通聖散の服用は、最低2週間〜1ヶ月必要であり、3ヶ月〜半年以上必要な場合もある
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。