脳梗塞では後遺症が残ることが少なくありません。
脳梗塞の後遺症とは、どのようなものでしょうか。
また、脳梗塞や後遺症が完全に治ることは期待できるのでしょうか。
本記事では、脳梗塞は治るのかについて、以下の点を中心にご紹介します。
- 脳梗塞の原因
- 脳梗塞や後遺症は治るのか
- 後遺症を軽くするには
脳梗塞は治るのかについて理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
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脳梗塞とは
脳梗塞は、脳の血管が詰まるなどして、脳細胞に血液が行き渡らなくなる状態です。
血管が詰まった先の脳細胞は壊死するため、脳機能が低下しやすくなります。
脳梗塞の原因の多くは高血圧・動脈硬化です。
具体的には、血管の内部が狭くなるために、脳の血流がストップしてしまいます。
あるいは、血栓という血の塊が血管内を塞ぐことも少なくありません。
脳梗塞は発症原因によって以下の3タイプに分類されます。
出典:厚生労働省「脳血管障害・脳卒中 | e-ヘルスネット」
ラクナ梗塞
ラクナ梗塞は、脳の深い部位に発生するタイプの脳梗塞です。
細い血管が詰まる点が特徴です。
ラクナ梗塞の多くは、直径15mm以下とサイズが小さめです。
梗塞範囲が狭いため、自覚症状がないことも少なくありません。
ラクナ梗塞の発症原因の多くは動脈硬化です。
細い血管の壁が厚くなることで、内部が閉塞して血流が停止します。
高血圧の方や高齢者に起こりやすいと言われています。
アテローム血栓性脳梗塞
アテローム血栓性脳梗塞は、太い動脈が詰まるタイプの脳梗塞です。
脳の太い動脈のほか、頸動脈で起こることもあります。
梗塞範囲が広いぶん、重症化しやすいのが特徴です。
原因の多くは動脈硬化・高血圧です。
具体的には、血管壁が厚くなることで、内部が閉塞します。
あるいは動脈硬化によって生じた血の塊が血管を塞ぐこともあります。
高血圧の方、糖尿病や高脂血症といった持病を持っている方に起こりやすいと言われています。
心原性脳塞栓症
心原性脳栓塞症は、心臓で生じた血栓が脳血管に詰まるタイプです。
血栓とは、血の塊のことです。
心臓で生じた血栓は、血流に乗って全身に運ばれます。
血栓が脳に到達し、血管に詰まると、脳梗塞に至ります。
心原性脳栓塞症は、脳梗塞の中でも急激に悪化しやすいのが特徴です。
多くの場合、症状は突然あらわれ、短時間で悪化します。
最悪の場合は、命を落とすこともあります。
心疾患を抱えている方に起こりやすいと言われています。
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脳梗塞を起こす危険因子
脳梗塞を誘発する要因には以下があります。
- 高血圧
- 不整脈(心房細動)
- 糖尿病
- 喫煙・大量飲酒
- 肥満・メタボ
- 脂質異常症
上記はいずれも動脈硬化のリスクを高めます。
特に高血圧は動脈硬化の最大の危険因子です。
動脈硬化が起こると、血管壁が厚くなって血流が滞りやすくなります。
さらに血の塊が生じやすくなるため、脳血管を詰まらせる原因となります。
血栓を生じさせる原因としては、不整脈も代表的です。
出典:厚生労働省「脳血管障害・脳卒中 | e-ヘルスネット」
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脳梗塞の発症は高齢になるほど多くなる
脳梗塞の発症率は、年を重ねるほど高くなります。
加齢は高血圧・動脈硬化の代表的な原因であるためです。
年齢が高くなると、血管にも老化現象が起こります。
具体的には血管が柔軟性を失い、収縮しやすくなるのです。
結果、高血圧・動脈硬化に発展することが少なくありません。
高血圧・動脈硬化は、脳梗塞を誘発する要因となります。
厚生労働省のデータによると、50代以降の方は脳血管疾患の発症率が急激に上昇します。
特にリスクが高いのは男性です。
たとえば2017年において、45~49歳の男性の発症者は9000人です。
50~54歳には1.7万人に上昇し、65歳以降では4万人を記録します。
女性も55歳以降は発症率が急激に高くなります。
高齢になるほど、脳梗塞の予防を心がけることが大切です。
出典:厚生労働省「図表1-2-4 脳血管疾患患者数の状況」
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脳梗塞の前兆を見逃さないコツ
脳梗塞の発症前には、なんらかの前兆があらわれることがあります。
代表的なのは一過性脳虚血発作です。
一過性脳虚血発作は、脳の血流が一時的に停止することで起こります。
多くの場合、血流は1時間以内に再開するため、伴って症状も消失します。
しかし、放置すると48時間以内に脳梗塞に移行することが少なくありません。
脳梗塞による死亡・後遺症を避けるには、前兆に気づいた時点で適切な治療を受けることが大切です。
脳梗塞の前兆症状には、たとえば以下があります。
麻痺・運動障害 | 片側の手足だけが動かしづらい・顔の片側だけが歪んでいる・箸が持てない・歩行中に身体が傾く・足を引きずる |
言語障害 | ろれつが回らない・言葉が出てきづらい・他人の言葉を理解できない |
感覚障害 | 片側の手足のしびれ・片側の手足の感覚がなくなる |
視覚障害 | 片目が見えない・視野の一部が欠ける・二重映しに見える |
その他 | めまい・頭痛・嘔吐・吐き気 |
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脳梗塞の治療法
脳梗塞は治療すれば完全に治るのでしょうか。
治るかどうかは、治療を始めるタイミングに左右されます。
t-PA治療
脳梗塞は発症から4、5時間以内であれば、t-PA治療が利用できます。
t-PA治療は薬剤を注射して脳の詰まりを溶かす治療法で、頸静脈血栓溶解療法とも呼ばれています。
脳細胞が壊死する前に血流を再開できれば、脳細胞の損傷は防げます。
つまりt-PA治療を用いれば、脳梗塞は完全に治る可能性があるわけです。
t-PA治療は近年の脳梗塞治療の主流であり、多くの病院で利用できます。
ただし、すべての病院で対応しているわけではありません。
また、t-PA治療は発症後4、5時間以内に行わなければ、効果を発揮しません。
速やかに治療を始めるためにも、症状に気づいたらすぐに救急車を呼びましょう。
発症後4、5時間を過ぎるとt-PA治療は利用できません。
あるいは、t-PA治療を行っても、思うような効果を得られないこともあります。
血管内治療
t-PA治療の次に選択されるのは、血管内治療が一般的です。
血管にカテーテルという細い管を通し、血管の詰まりを解消したり、血栓を取り除いたりする方法です。
血管内治療は、発症後8時間以内に有効です。
脳梗塞発症後は、必ずしもすぐに脳細胞が壊死するわけではありません。
場合によっては、酸欠による仮死状態に陥っていることもあります。
本格的に壊死する前に血流を再開できれば、脳細胞の重大な損傷は回避できます。
つまり脳梗塞が完全に治る可能性が高くなります。
一方、本格的な脳梗塞に移行した場合、1ヶ月以上の後遺症が残る確率は約50%です。
急速に回復する確率は30%で、死亡する確率は20%です。
運良く後遺症があらわれなくても、脳梗塞が完全に治る可能性はほとんどありません。
脳細胞は他の臓器と異なり、壊死すると2度と再生しないためです。
表面上は問題ないようにみえても、脳は確実に損傷を負っているのです。
現在は壊死した脳細胞を再生させるための研究が進んでいます。
将来的には、幹細胞などの移植によって、脳細胞の復活が可能となるかもしれません。
しかし、現在のところ脳細胞を復活させる方法はありません。
つまり脳梗塞はできるだけ回避することが大切です。
具体的には、発症後はできる限り速やかに治療を受けましょう。
脳梗塞の治療は時間との闘いです。
1分1秒の遅れが重篤化につながることも少なくありません。
脳梗塞の症状に気づいたら、速やかに救急車を呼び、医療機関で適切な治療を受けてください。
脳梗塞は、命に関わる重大な疾患です。しかし、適切な治療を受けることにより、重症化や後遺症のリスクを低減できます。それでは、脳梗塞の治療法とは、どのように行うのでしょうか。また、病院を受診するのはどのタイミングでしょうか。[…]
脳梗塞の後遺症は治るの?
脳梗塞で後遺症が残った場合、完全に治ることはほとんどありません。
損傷を負った脳細胞は再生しないためです。
つまり、失われた脳機能は2度と取り戻せません。
ただし、リハビリで後遺症を軽くすることはできます。
場合によっては、発症前と同程度の身体能力を取り戻せる可能性もあります。
それでは、脳梗塞の後遺症とはどのようなものでしょうか。
主な後遺症をみていきましょう。
麻痺・半身不随
身体に麻痺・運動障害が残ります。
身体の片側のみにあらわれることが多いため、半身不随とも呼ばれています。
- 片側の手足が自由に動かない
- 自力での立ち上がり・歩行が困難
- めまい・ふらつき
- 顔の片側が歪む
失語症・ろれつが回らない等の言語障害
失語症とは、言葉がうまく出てきづらくなる状態です。
脳の言語を司る分野が損傷するために起こります。
- 言葉・名前がうまく出てこない
- 言葉の意味が理解できない
- ろれつが回らない
- 話し方がぎこちない
ろれつが回らなくなるなどして言葉を発しづらくなる状態は、構音障害と呼ばれます。
記憶障害
記憶機能が低下します。
通常の物忘れと異なり、忘れたことを忘れるのが特徴です。
- 物の置き忘れが増える
- 数分前の会話の内容を覚えていない
- 何度も同じ会話・質問を繰り返す
- 記憶が前後し、現在の日付・時間などが分からなくなる
目の障害
視覚を司る機能が損傷すると、目に障害が残ります。
- 視野が狭くなる
- 片目が見えない
- 物が二重映しに見える
- 視野の一部が欠ける
しびれ・痙攣
手足や五感に異常な感覚が残ることもあります。
- 片側の手足がしびれる
- 片側の手足の感覚がにぶい・ない
- 片側の手足の感覚が過敏になる
- におい・音などに過敏になる
しびれの原因は、脊髄内の神経などが圧迫されることです。
そのため、しびれ症状は特定の姿勢をしたときに発生することが多いです。
排泄障害
排泄に支障を来すこともあります。
原因は、脳梗塞によって排尿をコントロールする神経回路が損傷することです。
主に過活動膀胱の症状があらわれます。
- トイレの間隔が短い
- トイレに間に合わない
せん妄
せん妄は一時的な意識精神障害です。
ただし持続時間は個人差があり、数日で収まる場合もあれば、数ヶ月単位で続くこともあります。
- 注意力・思考力の低下
- 時間・場所・人を正常に認識できない
- 幻覚・妄想
- 感情の起伏が大きくなる
発症後、昏睡に至ることも少なくありません。
最悪の場合は命を落とすこともあります。
せん妄の症状は1日の中でも大きな波があるのが特徴です。
夕方〜夜にかけて悪化することが一般的です。
嚥下障害
食べ物などをうまく飲み込めなくなります。
- 食べ物・飲み物を飲み下せない
- むせる
- 食べ物・飲み物が気管に入る
飲食物が気管に入る状態は誤嚥と呼ばれます。
誤嚥は、誤嚥性肺炎に発展することが少なくありません。
誤嚥性肺炎は、高齢者にとって命の危険がある疾患です。
てんかん
脳梗塞を含め脳血管障害の後遺症で、てんかんを発症する方は少なくありません。
一説では、脳卒中後にてんかんを発症する確率は全体の7%です。
原因は、脳の損傷によって脳神経細胞が異常に興奮・活発化することです。
脳梗塞後のてんかんは、多くの場合、発症後2年以内に発作があらわれます。
しかし場合によっては、2年以上経過してから発作が出ることもあります。
てんかんの発作には以下があります。
- けいれん
- 発汗・発熱
- ヒステリー
- めまい
- 失神
うつ病
脳梗塞によって脳細胞・血管が損傷すると、血流が悪くなります。
結果として、うつ症状が出ることが少なくありません。
- 気分が塞ぐ
- 意欲の低下
- 頭痛
- 疲れやすい
- 不安
うつ病は、身体状況が原因で起こることもあります。
後遺症によって身体が不自由になると、精神的なストレスがたまります。
ストレスが積み重なった結果、うつ病を発症すると言うわけです。
脳梗塞は脳の血管が詰まる疾患です。脳梗塞になると後遺症が残ることがあります。脳梗塞の後遺症にはどのようなものがあるのでしょうか。また後遺症を改善するためのリハビリにはどのようなものがあるのでしょうか。本記事では脳梗塞[…]
脳梗塞は治るの?症状を軽くするリハビリ期間について
脳梗塞の後遺症が完全に治る確率は低いです。
しかしリハビリによって、症状を軽くすることは可能です。
脳梗塞のリハビリは、大きく3つの期間に分けられます。
期間 | リハビリ内容 | |
急性期 | 発症後48時間以内~4週間程度 | 関節の柔軟性を保つ訓練・離床訓練・歩行訓練など |
回復期 | 発症後4週間~半年程度 | 日常生活動作(食事・排泄・入浴・着替え)などの訓練・言語訓練 |
慢性期(維持期) | 発症後半年以降(退院後) | 自宅でのリハビリ |
多くの場合、リハビリは発症後48時間以内に開始されます。
早めにリハビリを始めることで、その後の麻痺・運動障害を軽くするためです。
例えば麻痺・運動障害がある場合は、関節の可動域を広げるような訓練や、歩行訓練を実施します。
損なわれた身体機能をカバーするようなリハビリを行うことで、退院後もなるべく自立した生活を送りやすくなります。
言語障害・記憶障害などがある場合は、言葉を話す訓練・記憶力を高める訓練を行います。
リハビリ中は心のケアも大切です。
後遺症が残った方の多くは、大きな不安・焦り・いらだちを抱えています。
思うように動かない身体に、精神的なストレスがたまることは少なくありません。
ストレスが大きくなると、リハビリに対する意欲が失われることがあります。
すると後遺症が長引きやすくなるため、ますますストレスがたまってしまいます。
最悪の場合はうつ病を発症することもあります。
リハビリ期間中は身体のケアだけでなく、心のケアにも気を配りましょう。
脳梗塞は脳の血管が詰まって起こる病気です。脳梗塞のリハビリは、発症後の期間別に適切な内容を行うと効果が高いといわれています。では、脳梗塞のリハビリとはどのようなものなのでしょうか?本記事では、脳梗塞のリハビリについて以下[…]
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脳梗塞と間違えやすい病気
脳梗塞と症状が似ている病気をご紹介します。
ぜひご参考ください。
脳出血
脳出血は、脳の血管が破れて出血を起こす疾患です。
流出した血液が凝固すると、「血腫」となって脳細胞を圧迫・破壊します。
脳出血の代表的な症状は激しい頭痛です。
半身麻痺などがあらわれることも多いです。
くも膜下出血
くも膜下出血は、脳の表面の膜下にある血管が切れて出血する状態です。
多くの場合、出血は「脳動脈瘤」という脳の動脈にできた瘤から起こります。
くも膜下出血の代表的な症状は激しい頭痛です。
それまで経験したことのないような頭痛が急激に起こることが特徴です。
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脳梗塞が治る確率は?見込みありの「再生医療」とは
脳梗塞の治療法として、再生医療が注目されています。
再生医療とは、壊死した臓器細胞・脳細胞に幹細胞などを移植して、再生させる方法です。
つまり、脳の損傷が完全に治る可能性があるのです。
再生医療は、脳梗塞を始め既存の技術では完治が難しい疾患の治療法となることが期待されています。
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脳梗塞は治るのかのまとめ
ここまで、脳梗塞は治るのかについてお伝えしてきました。
脳梗塞は治るのかの要点を以下にまとめます。
- 脳梗塞の原因は高血圧であることが多い
- 脳梗塞や後遺症は完全に治ることは難しいが、リハビリ次第ではある程度治る可能性がある
- 後遺症を軽くするには、適切なリハビリを受けることが大切
最後までお読みいただき、ありがとうございました。